いざ出陣!
しばらくして、一緒に遊んでいた裕翔が眠そうに目を擦り出す。
「あれ? 裕翔君、眠いの?」
新庄の問いに裕翔はコクンと頷く。
「そっかそっか、じゃあ先生のところへ一緒に行こう」
「俺がおんぶしてあげるよ。背中に乗りな」
古橋が裕翔の前でしゃがむと、言われた通り裕翔は背中に乗る。
そして「えっほ、えっほ」と言いながら、裕翔を背負って矢島先生が休んでいる場所まで運んだ。
「……どうした?」
「先生、裕翔君が眠いんだって」
「ああそうか。裕ちゃんおいでおいで、汗を拭いてあげるから」
矢島先生はタオルで裕翔の汗を拭くと、二人で一緒に横になってそのまま眠ろうとする。
「皆も少し寝ておけよ。一時間くらい経ったら、私が起こしてやるから」
「分かりました~」
「ちょっと疲れたし、寝ておきやすか」
新庄と古橋、下沢の三人は、ブルーシートの上でザコ寝し、数分後にはガーガーといびきをかいて寝ていた。
――そして一時間後。
日が傾くか傾かないかくらいの時間に、矢島先生が目を覚まして三人を起こす。
新庄と下沢は寝惚けながらも、すぐに立ち上がって大きく背伸びをしたが、最後まで起きそうにないのが古橋である。
「ふるちん、一度寝たら絶対に起きないからな~」
新庄は軽くため息を吐くと、近くの草を引っこ抜いて、先端を古橋の鼻の穴へ突っ込む。
古橋は眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をしたが、新庄は手を止めずに鼻をくすぐり続けた。
「ふが……ふが……ふがぁ」
くしゃみが出そうな雰囲気でも、古橋は何故か耐えており、一向に目を覚まそうとしない。
「もう! どんだけしぶといんだよ!」
「これは起きそうにないね……まあいいや、僕たちだけでも夕飯を食べとこう」
「えっ、ご飯を用意してあるの?」
「そうだよ、僕と矢島先生で全員分の食べ物を用意したんだ」
「んんっ!? ご飯だって?」
下沢の話を聞くと、突然、古橋は目を覚まして凄まじい勢いで起き上がる。
「……そこはスイッチが入るのか」
「おっそろしい食欲だね」
――そして三人は矢島先生の前で集合すると、先生がリュックからそれぞれ食べ物を取り出して皆に分ける。
「本当はキャンプ用品でちゃんと食事を作りたかったんだが、荷物が多くなるから今回は断念した。菓子パンとか缶詰とか非常食が中心になるけど、これで勘弁してくれ」
「大丈夫です。お腹が膨れればオッケー!」
「このスモークチーズ、けっこう美味しい」
「こっちにはお菓子もあるよ~」
三人と先生親子は、ワイワイ言いながらそれぞれ食事を楽しんだ。
……いつしか日も沈み、辺りはだんだんと暗くなって足元が次第に見えなくなる。
矢島先生は古橋と下沢に懐中電灯を手渡し、昆虫採集のスポットへ戻る準備をした。
「よっし! それじゃあ行こうか。いざ出陣ってところだ」
矢島先生がそう言うと、新庄は何故か興奮して目が血走り出す。
「お、おい新庄。目が怖いぞ目が」
「頑張るぞ~! 来るなら来いっ!」
――新庄が気合いを入れて叫ぶため、下沢が虫取り網の柄で新庄の頭をポコポコ叩く。
「イタタタ……」
「静かにしてっ! しんちゃん声がデカいから、虫が逃げちゃうでしょ!」
「あのな新庄。これは昆虫採集であって、虫の駆除じゃないんだぞ。殺気立つんじゃないよ」
矢島先生は顔に手を当てて、はあ~っと大きくため息を吐いた。




