森の探検隊
休憩所を離れた一行は、山の奥へ入り昆虫採集のできるスポットへ向かった。
「昨日の夜だが、樹木の近くにバナナとか仕掛けておいたぞ。餌の匂いに誘われて、今日はたくさん捕まえられるといいな」
「目指すはオオクワガタの大歯ですね」
矢島先生と下沢の会話に古橋が割って入る。
「大歯ってなんですか?」
「オオクワガタには大歯、中歯、小歯の三種類があってだな、大歯型はだいたい60ミリは超えるから、かなりデカい個体なんだよ。しかもなかなか捕まえられなくて、レアな昆虫でもある」
「ふ~ん」
「まあ、カブトムシやミヤマクワガタとかも去年は捕れたから、オオクワガタに拘る必要はないぞ。それに、まだ午後3時くらいだし、適当にその辺りの昆虫でも観察していなさい」
「カブトムシとかクワガタとかは、夜に動き回るからね」
「えっ、夜なの?」
「午後7時から深夜帯がゴールデンタイムと呼ばれている。後で昼寝の時間を入れるけど、あまり遊び回って体力を消耗するなよ。それから近くに川があるが、絶対に子供だけで行くんじゃないぞ!」
「は~い」
新庄と古橋は同時に返事をした。
ミーン、ミーン、ミンミンミン、ミーン。
――遠くでセミの鳴く声が聞こえる中、一行は歩き続けて矢島先生が仕掛けた罠の場所へ辿り着くと、まず周囲の状況をじっくり観察してみた。
「……さすがにまだ見つからないな」
「もう少し暗くならないと、寄って来ないかもしれないです」
「ちゃんとライトも用意しておいた。この辺りに設置しておこう」
矢島先生はリュックからライトを取り出し、樹木の周りにセットし始める。
「なんかプロっぽいね矢島先生」
「ライトを置いておくと寄って来るんだよ。先生はそういうの知ってるからね」
「へえ~」
「そういやしもっち、ほっちゃんは今日来なかったの? あいつも好きそうじゃん、こういうの」
「それがね~、トモ君は昆虫が苦手なんだ。毎年誘っても絶対に来ないから、今日はしんちゃんとハッシー(古橋のこと)を呼んだの」
「昆虫が苦手なんだ……」
「なんかカブトムシが巨大なゴキブリに見えるらしい」
「ギャハハハ! 戸波さんと一緒だ」
「お、俺はゴキブリが苦手だけど、カブトムシが巨大なゴキブリなんて思ったことないからな!」
古橋が必死に言い訳をしていると、矢島先生が作業を終えてこちらへ歩いて来た。
「よし、後は夜が来るのを待つのみだ。ちょっと涼みに川まで行こうか?」
「行こう行こう!」
そして一行は森を抜け、数分ほど歩いて川まで向かうと、砂利が敷かれた開けた場所に出た。
「あったあった、川だ川だ!」
「おっ、水がつめてぇ~!」
「あそこに魚も泳いでるぞ。しまった~、釣りの道具を持ってくれば良かった」
「ふふふ、そう言うと思って、ちゃんと釣りの道具を持って来たんだ」
矢島先生はリュックから携帯型の釣り道具を取り出す。
「先生さっすが~!」
「私はあそこの木陰にブルーシートを敷いて休んでるから、しばらく皆で遊んでいなさい。ただし、川を泳ぐのは禁止だからな!」
「は~い!」
子供たちは釣りの道具を持って川へ駆け寄り、下手ながらもそれぞれ釣りを楽しんだ。




