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夜の校舎

――そして三日後。


日中の暑さが収まり、夜風が頬を撫で涼しく過ごせる夏の夜。

遠くでは鈴虫が鳴いており、空を見上げれば、都会の人が羨むほどの満天の星空が広がっている。

そんな夏らしい景色に心躍ることなく、冴えない顔をした新庄と古橋が、北里先生と校門の前で立っていた。


「よしおまえたち、覚悟はできただろうな?」

「できてません」

「じゃあなんで来たんだよ!」

「だって、戸波さんが怒るんだもん」

「情けないな~、ちったぁ度胸のあるところを見せろよ、度胸のあるところ!」

「先生はあのトイレを見てないから、そんな強がって言えるんだよ。昼でもめちゃくちゃ怖かったんだからねっ!」

「俺だってあの辺りを掃除する時はあるぞ。それに、あの教室には学校の備品とかけっこう置いてあるし、時々だが利用するんだ」

「それは昼だから怖くないんだと思います。夜だと100万倍くらい怖くなるよ、多分」

「分かった分かった、おまえたちに無理強いはしない。俺だけでも見て来るから安心しろ」

「なんでそんなに気になるんですか? 誰かの作り話かもしれないのに」

「前にも言ったが、俺はこの学校に通ってた生徒の一人だ。噂で首吊りした生徒がいたとか、根も葉もない不名誉な記録をこの学校に残したくないんだよ。来年は閉校になるし、ここで決着を付けたいと思ってる」

「ふ~ん、この学校が好きなんだね先生」

「まあな。おまえたちだってそうだろ?」

そう言われると、新庄はなんとなく寂しい気持ちになった。

「わ、分かりました……一緒に行きます!」

「無理はするなよ。怖くなったら俺を置いて、明るい職員室の前まで逃げなさい」


――そして三人は、暗くなった校舎へ懐中電灯を手にして入って行った。


校舎二階の奥、噂のトイレがある付近は電灯が撤廃され、足元が見えないほど辺りは暗闇に包まれている。

そのためか、二階へ続く階段を上る時点ですでに怖い、

「こええ……」

「あの辺りって窓が少ないから、月の光とかも届かないね」

「昼でも懐中電灯がいるって感じだったもんな。今は持ってるから大丈夫だけど、ないと絶対にコケそう」

「……着いたぞ、あの奥が噂のトイレだ」

新庄と古橋は、北里先生が指差した方向を見る。

真っ暗な廊下の奥に、さらに暗くなって入口すら見えないトイレを二人は確認した。

「全然、昼に見た感じと違う……」

「なんだか深い落とし穴みたいに見えるね」

あれなら「幽霊が出る」と言われても、まったく違和感がないと断言できる。

「じ、じゃあ行くか……」

大人の北里先生でも声が上ずっており、その不気味な威圧感に押されている様子だった。


――そして、不可解な出来事は次の瞬間に起きる。


新庄が目を凝らすと、トイレの前に一人の少女が立っているように見えたのだ。

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