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黒猫クロの孤高のグルメアメリカ横断編

黒猫のクロと朱鷺子の旅物語

作者: 西山公亮

 


 香織と朱鷺子の旅

私は朱鷺子。新潟県佐渡島に住んでいます。


ある日、私の家に一匹の猫が入ってきました。どこかで見覚えのある、野良猫でした。

キャットフードがなぜか残っていたので、小さな皿に乗せて彼の前に差し出しました。


しかし彼はそれには見向きもせず、私に訴えかけるようにしきりに鳴き声を上げます。

私はそれに気づき、彼の名前をとりあえず香織と名付けました。そして彼の後をついていくとある洞窟の前に着きます。その前には白いユリが一本咲いていました。私たちは中に入りました。と、その時、私はそこで気を失ってしまいました。


次の瞬間、私は目を開けると、なんと猫になっていました!あたりを見回すと、そこは江戸時代の長屋。私は香織になっていて、香織は人間の姿になっていました。


「にゃあ?」(どういうこと?)


私は戸惑いながらも、ニャーと鳴いてみました。すると香織は、まるで私の気持ちがわかるかのように、優しく微笑んで言いました。


「朱鷺子、驚いたでしょう。でも大丈夫。きっと元に戻れるわ。」


香織は、この時代では「おりょう」という名前の町娘になっていました。私は猫の姿のまま、おりょうと一緒に江戸の町を駆け回りました。魚屋の前で美味しそうな匂いにつられて飛びついたり、長屋の屋根の上で昼寝をしたり、武士の行列を追いかけ回したり。猫として生きるのも、なかなか楽しいものでした。


おりょうは、心優しい娘でした。貧しい人々に施しをしたり、迷子の子猫を助けたり、いつも誰かのために尽くしていました。そんなおりょうの姿を見て、私は心から尊敬の念を抱きました。


ある日、おりょうは、病気で苦しんでいる子供を助けるために、高価な薬を買おうとしますが、お金が足りません。そこで私は、得意の猫の動きで、金持ちの屋敷に忍び込み、小判を盗み出してきました。おりょうは最初は驚いていましたが、私の気持ちを知ると、涙を流して喜んでくれました。これって猫に小判じゃないっと内心私は思いました。


「香織、ありがとう。あなたのおかげで、あの子を助けることができるわ。」


私は、おりょうの役に立てたことが嬉しくて、胸がいっぱいになりました。


そんな日々を過ごすうちに、私は、この時代の人々の温かさや、自然の美しさ、そして命の尊さを改めて感じることができました。そして、香織の優しさに触れ、人間として大切なことをたくさん学びました。


しかし、楽しい時間は永遠には続きません。ある夜、私は夢を見ました。夢の中で、白いユリの花が咲き乱れる洞窟が現れ、不思議な声が聞こえてきました。


「時が満ちた。元の世界へ帰る時が来たのだ。」


目を覚ますと、私は元の洞窟の前にいました。香織も猫の姿に戻っています。私たちは、まるで長い夢を見ていたかのように、お互いを見つめ合いました。


「朱鷺子、楽しかったわね。江戸時代での暮らしは。」


「うん、香織。本当にありがとう。たくさんのことを学んだわ。」


私たちは、洞窟の前で別れを告げ、それぞれの道へと進みました。私は、香織と過ごした江戸時代での日々を、一生忘れません。そして、香織から教わった優しさと強さを胸に、これからも力強く生きていこうと思います。


私の家に戻ると、いつもの日常が待っていました。しかし、私はもう以前の私ではありません。猫の目を通して見た世界、香織と過ごした江戸時代での経験は、私の人生を大きく変えました。


そして、時々、窓の外を眺めていると、香織の姿が見え隠れするような気がします。もしかしたら、彼女は今もどこかで、私を見守ってくれているのかもしれません。

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