90話~お任せを、軍師殿~
美原先輩が帰ってきてから、早3日。
異能力ファランクス中等部の、関東大会が始まろうとしていた。
関東大会の会場は、東京湾を一望できることで有名な、千葉県アクアラインWTCで行われる。
海に隣接したその設備は、そのまま海に出ることも出来るビーチを併設しており、海水浴や観光目的で訪れる人も多いらしい。
そんな、半分リゾート地の様な場所で、ファランクス関東大会の開会式が開かれていた。
開会式に集められたのは、各県大会を勝ち抜いた精鋭校達だ。
東京都、8校。
茨城県、3校。
栃木県、3校。
群馬県、3校。
千葉県、5校。
埼玉県、4校。
神奈川県、6校。
総勢32校が、広大なフィールドにずらりと並ぶ。
その姿は、何処か荘厳な雰囲気を醸し出していた。
都大会の時よりも数が少ないのにもかかわらず、そこに立つ1人1人の意気込みがすこぶる高く、良い緊張感を生み出しているのかもしれない。
昨年度に関東大会を優勝した天隆選手団から、河崎先輩が壇前に出て開会宣言を行う。
彼女の堂々とした立ち居振る舞いは、今から戦う筈の他校からもため息が出るほどであった。
若葉さんの校内新聞が悪さした様子は無い。
蔵人は1人、安堵の吐息を吐く。
その後、各校の選手団は一旦フィールドを後にするが、代表者だけは別の場所に集められていた。
これからトーナメントの抽選を行うらしい。
桜城からは部長と美原先輩が行っている。
蔵人達はその間、佐々木副部長の元で簡単なアップを行う。
今回の関東大会は、全日程5日間を予定している。
1日目、開会式と第1回戦の前半。
2日目、第1回戦の後半。
3日目、第2回戦。
4日目、第3回戦、準決勝。
5日目、5位決定戦、3位決定戦、決勝。そして閉会式となっている。
蔵人達の初戦は、恐らく2日目と先輩達から聞いている。
順位が良い中学は、後ろの方で組むことが多いのだとか。
お陰で、今日はゆっくりと調整を行い、明日の試合に臨める。
体が良い具合に解れてきた時に、部長達が帰ってきた。
先輩達の言う通り、桜城の1回戦は明日の第2試合となった。
相手は茨城県大会優勝校の筑波中学。
先日部長が話していた、下剋上を果たした危険な学校だ。
優秀な科学者の子供達が集まる学園都市のエリート校で、毎年様々な研究結果で世間の度肝を抜いているらしい。
だが、異能力部が活躍した話は今までになく、相変わらず謎の学校だ。
情報が無い分、余計に怖い。
「今更、怖がっても仕方ないよ。頭が良い事と、ファランクスが強いことは別だからね!」
そう言って、高速の拳で衝撃波を放つのは美原先輩だ。
物凄い気合だ。
今日は試合が無いというのに、今にも誰かと試合を始めそうな気迫すら感じる。
鶴海さんが言っていたことも気にはなったが、蔵人は彼女の様子に異変を感じなかった。
いや、思いたくなかったのかもしれない。
彼女のはち切れんばかりの元気が、先輩達にも勇気とやる気を与えており、みんなの練習風景は今までにない程に熱く、そして輝いていたから。
まるで、足立中戦を終えた後の先輩達の様である。
美原先輩が帰ってきて、更に蔵人がいることで、先輩達は夢が現実になるのではと思い始めていたのだろう。
この調子であれば、俺の出番はないのでは?
そう、蔵人は思っていた。
関東大会2日目。
午前10時。
真夏の太陽が空の中頃を過ぎて、じりじりと輝く陽光で人々を焼き始める頃。
アクアラインWTC内のフィールドと観客席には、大量の電力を消費して、涼しい風が送られていた。
電力は余るほどあるからね。使いまくっても電気代などたかが知れている。
観客の中には、自ら氷や風を作り出して、涼を取る方も見受けられる。
そんな中、選手達は額に汗を垂らし、手のひらの汗を握りしめて、向かい合う相手選手に鋭い視線を向けていた。
1回戦。本日第2試合。
桜城VS筑波中学。
白銀の騎士達に対して、相手方は簡素な黒色のプロテクターを着けていた。
パッと見は、地区大会で見たような安い防具。
だが、よく見て見ると、そのプロテクターの間に、銀色のフレームが入っているのが分かる。
それは、選手が動くたびに、フレーム自体も伸縮して、まるで筋肉のように動いている。
パワードスーツ。
筑波選手達は、全員がそのスーツを着ている。
これが、部長の聞いた新装備の正体だった。
更に、列の先頭。下村先輩と近藤先輩の前に立つ人達はもの凄い物を着ている。
全長2メートルにもなるパワードスーツ。
着ている2人は背番号が03番と04番なので、Bランクなのだろうが、威圧感がAランク並みだ。
赤黒い装甲に、腕と足は巨木でも生えているのかと思う程に太い。
あんな拳でパンチされたら、車に撥ねられたのと同じくらいのダメージを負うだろう。
そんな巨大パワードスーツ持ちが2人もいるのだ。
これが科学の力かよ。ちょっとヤバいのではないか?
蔵人が不安を抱きながら円柱の横で座る中、試合は始まった。
実況の声が、青々と生える芝生の上を駆け巡る。
『さぁ!始まりました!第1回戦9試合目。赤軍は東京都の名門、桜坂聖城学園!これまで全国大会まで出場したこともある名門ですが、ここ最近は芳しくない成績ばかりでした。ですが!今年は東京都大会優勝を果たし、嘗ての栄光を取り戻した勢いのある学校です!』
「「「わぁああああ!!!」」」
「「「おーじょうっ!パンパンパン!おーじょうっ!パンパンパン!」」」
「美原せんぱーい!がんばってぇ!」
「佐々木ぃぃい!応援してるぞ!」
桜城の応援団が沸き立ち、一斉に楽器と声援を鳴り響かせる。
『対する青軍は茨城の英知!筑波中学校!学園都市から参戦した若き研究者達です!まだ部が出来て3年と歴史は浅いが、県大会で毎年1位だった常磐学院を下したその実力は疑いようがない!』
「「「うぉおおお!!!!」」」
「いけぇ!つくばぁあ!」
「私達が作ったスーツの実力見せつけろぉ!」
「「「つくばの科学力は、日本一ィィイ!」」」
筑波中。
若葉さんの情報では、それ程強い相手だとはされていなかった学校だ。
それもその筈。彼女の情報には、2mの巨大パワードスーツなどなかったのだから。
少なくとも、県大会までは普通のパワードスーツのみで戦っていた。
つまり、この関東大会から使用し始めた新兵器という事。
それだけ、相手が本気で勝ちに来ているという証拠か。
それは分かるのだが…。
「鹿島先輩。あのロボ…パワードスーツは良いのでしょうか?ファランクスのルールに抵触しないのかと思いまして」
蔵人は、隣に座る鹿島先輩に疑問を投げかける。
ファランクスで使用する武具については、色々と規定があったはずだ。
刃を潰すことや、重火器禁止など。
蔵人の疑問に、鹿島先輩は前を見ながら小さく頷く。
「確かに、重火器も禁止だし、車とか、乗り物も禁止。でも、それは”異能力と関係ない”物は禁止という事よ」
鹿島先輩曰く、異能力と関連すると認められれば、それは使用が認められるのだとか。
例えば、若葉さんの様に、機械を操る異能力者だった場合、大型機械使用禁止だと異能力戦に出られなくなってしまう。
彼女のような異能力者は少なくないらしく、そういう異能力を持つ人は、重火器や大型機械での攻撃も許されるのだとか。
そういえば、特区の検問には巨大な二足歩行ロボットが常備されていたなと、蔵人は何時のも風景を思い出して納得する。
あれは、若葉さんのような異能力者が扱うために備わっていたのか。
という事は、
「あの巨大パワードスーツを着ている人は、機械を操る系の異能力者という事ですね?」
「もしくは、あのスーツが彼女達の異能力を増強するための装置。なのかもしれないわ」
なるほど。そうも考えられるか。
蔵人達は前を向き、答えはどうなのか確かめようとする。
だが、すぐには分からなかった。
巨大パワードスーツを着た2人は、何故か前線から離れて、中衛の所まで退いてしまったからだ。
その中衛の位置で、前線に向かって何かを放っている。
見えない弾。恐らくエアロ系の異能力だ。
鹿島先輩が言ったように、あのスーツは異能力者の能力を増強するためにあるようだ。
太い幹のような腕から、絶えず前線に向かって援護射撃を繰り返す。
まるで大砲だ。
確かに、便利なスーツである。
だが、
『海麗を中心に、どんどん前線を上げなさい!』
「木元!左翼は十分だ!中央に行って押し上げて頂戴!」
「遠距離部隊!次は右翼を削るぞ!走れ走れ!」
桜城の先輩達の前では、所詮は機械仕掛けのおもちゃ。異能力の前に、現代兵器では太刀打ち出来ないようであった。
確かに、パワードスーツを着ている筑波選手の動きは素早く、また動き疲れている様子もない。
だが、桜城の猛攻撃に耐える為、しっかりと防御をしなければならず、次第に動けなくなってきている。
そんな中、我が校のエースが突破口を作る。
「チェストォオ!」
美原先輩の正拳突きに、相手の前衛が数m吹き飛ぶ。
そのあまりの威力に、相手前衛はビビッて退いてしまい、一文字が大きく歪んでしまった。
足立戦の逆の状況。この状況であれば、
『今よ!タッチを狙いなさい!』
部長の声が響き、それを待っていたかのように、桜城の前線から数人が相手陣地に突撃する。
筑波選手はそれを阻止するため、前線から人を割こうとするが、桜城の遠距離部隊がそこに弾幕を張り、足止めをする。
そうしている内に、相手陣地に侵入した桜城選手が、相手の円柱にタッチする。
と、思った。
次の瞬間。
筑波円柱の目の前に、巨大パワードスーツが立ち塞がった。
なに!?さっきまで、中衛に居たはずだろ。
驚愕した蔵人が目を開いた次の瞬間には、円柱に向かっていた桜城選手が、空を舞っていた。
『ベイルアウト!桜城16番!』
巨大パワードスーツが腕から放った一撃。
たった一撃で、ベイルアウトさせられてしまった。
更に、
『ベイルアウト!桜城19番!21番!連続ベルアウト!信じられない出力と機動力だ!筑波中の開発したパワードスーツ!えっと、手元の資料では、グレイト2?とか言うらしいです!凄いですね!開発に1億もかけているらしいですよ!』
敵地に侵入していた先輩達が、次々と巨大パワードスーツ…もとい、グレイト2の餌食となっていく。
強力な一撃を放つだけでなく、機動性も異常に高い。
どうやら、グレイト2の足の部分からも、強力な風が出るらしく、それを使って高速移動をしている様だ。
1億円の開発費用は伊達ではないな。
蔵人が金額の面で驚いていた、
その時、
『駄目よ!戻りなさい!戻って!海麗!』
部長の悲痛な叫びが聞こえた。
見ると、美原先輩が前線から飛び出して、桜城選手を襲っているグレイト2に向かって突っ走っている。
部長の命令に、しかし、美原先輩は従う様子がない。
普段、命令違反などしない彼女だから、目の前の仲間たちのピンチに、体が動いてしまったのだろう。
分かる。分かるぞ。
蔵人は頷き、そして首を振る。
分かるけど不味いぞ。
今、美原先輩は完全に孤立してしまっている。
先ほどまでたわんでいた相手前線は、いつの間にか一直線に戻ってしまっている。
その中心にいるのは、筑波中の02番。
水球を幾つも浮遊させ、桜城前線に絶え間ない攻撃を繰り出している。
恐らく、彼女が相手校の巨星。
今まで鳴りを潜めていたのは、もしやこの反撃を狙ってか。
相手の狙いは、恐らく美原先輩。
孤立してしまった彼女は、今やグレイト2の2機に囲まれている。
「くそっ!このぉ!」
美原先輩は攻撃を繰り出すが、相手のグレイト2に乗った03番はスピードも凄まじく、簡単に避けられてしまう。
更に、折角攻撃が当たったと思ったら、風を逆噴射させて威力を殺してしまっていた。
そんな防御策まで用意しているのか。流石1億…。
そうして、先輩と距離を取ったグレイト2は、彼女に向かって風の槍を放つ。
「こんな、もんっ!」
美原先輩は、風の槍を受け流しながら、相手に近づく。
強引に、無理矢理に。
そんな無茶をしたために、作ってしまった。大きな隙を。
グレイト2はもう一機いるというのに。
それを忘れた彼女は、
もう一機のグレイト2に乗った04番の接近を許し、背後を取られてしまった。
不味い。
美原先輩が慌てて振り返り、追い払うように拳を振り回す。
だが、背後から03番機のエアロランスが追撃をしてきた。
美原先輩の体が浮き上がる。
そこを、04番機が、その大きく太い拳を振り抜いた。
美原先輩が、地面に叩きつけられた。
『うららぁあ!』
『ここでダウゥウン!!筑波中のグレイト2によって、桜城のエース、美原選手が地面に倒れ込んだぞ!立てるか?立てないのか!?』
部長の絶叫。それと時を同じくして、実況の絶望的な宣言。
それを受けても、美原先輩は、地面に横たわったままだ。
ブーストが間に合わなかったのか?
蔵人が心配していると、彼女の元に、1人の男性が現れてしまった。
『ベイルアウト!桜城1番、美原選手が、なんと、ベイルアウトだぁ!』
「「「あぁああ…」」」
「「「うぉおおおお!!!」」」
ベイルアウトの宣言。
桜城応援席から言葉にならないため息が。
反対に、筑波応援席は大盛り上がりだ。
これは不味い。
下手をすると、流れが一気に相手方に行ってしまう。
蔵人は監督席を見る。
部長ならば、このピンチに自分を出動させると考えたから。
だが、蔵人が見たのは、未だに敵陣の中に視線を落とす部長の姿。
もういない筈の美原先輩を探す、1人の少女の姿だった。
ふぅむ。ダメだな、これは。
蔵人は隣を見る。
冨道戦で見事な指揮を執った、鹿島先輩を。
「先輩。行ってもよろしいですか?」
「えっ?行くって、何処に?」
だが、先輩は震える瞳で蔵人を見つめ返すだけだった。
まさか、この人までも…。
今、桜城前線は崩壊の危機だ。
右翼は相手のAランクによる攻撃で手一杯。それに加え、中央にはグレイト2が戻ってこようとしている。
あの3人が揃ってしまえば、桜城前線は崩壊し、敵がこちらに雪崩れ込んでくる。
いくら蔵人とて、大人数で攻め込まれれば太刀打ちできない。
なので、今は一刻も早く前線を補強して、押し返すのが最善手。
それは、普段の鹿島先輩なら直ぐに導き出す答えである筈。
だが、彼女も、他の先輩達も、大きく動揺している。
エースである美原先輩が倒された。それも、Bランクを相手にして。
今まで蔵人がやってきたことの真逆の状況。
なるほど、俺は随分と酷い事をしていたのだな。
蔵人は苦笑しながら、立ち上がり、前線へと走り出す。
こうなれば、独自に動くしかあるまい。
蔵人は、桜城前線の右翼へと駆け寄る。
先ずは相手のAランクだ。
「盾・密集形態!」
桜城前線に着いて早々、蔵人は目の前に水晶盾を10数枚並べる。
その姿は、正しくファランクス。
古代ギリシャで用いられた重装歩兵団による密集形態防御陣だ。
蔵人の盾は、Aランクが放った無数の水球を尽く防ぎきる。
相手の攻撃は、広範囲へ分散しているからか、威力は精々Cランク程度しかなかった。
さて、こちらは何とかなった。次は…。
「先輩達は中央に行ってください!グレイト2達が来ます!」
「えっ?でも…」
「相手Aランクだよ?誰か残った方が…」
蔵人の指示に、しかし、先輩達は戸惑いを見せる。
彼女達も、エース撃墜の影響を少なからず受けているみたいだ。
最近の彼女達なら、もっとハキハキと動いていただろうから。
蔵人は、心を鬼にする。
「早く行け!負けたいのか!」
蔵人の怒号に、先輩達は飛び上がって駆け出す。
その背中を、蔵人は目礼で送り出す。
すみません、先輩。後でお詫びさせていただきますので…。
「蔵人。私は残ろう」
そう言って、蔵人の隣に立ったのは近藤先輩だ。
この人の瞳は、真っ直ぐに相手を見ている。
動揺している様子はない。
流石は、桜城城壁の要。近藤先輩だ。
蔵人と近藤先輩は、相手のAランク達の攻撃を何とか防ぐ。
何の合図もしていないが、広範囲の攻撃を蔵人が、強力な一撃を近藤先輩が防ぐという役割分担がいつの間にか出来ていた。
おお。この娘との連携は、すごく楽しい。
蔵人が場違いに興奮していると、向こうの方で悲鳴が上がる。
同時に、興奮気味な声が、マイクで拡張されて響き渡る。
『中央では筑波中のBランクが大暴れだ!強力なグレイト2の猛攻に、桜城選手、うまく連携が取れていません!エースを失った桜城にはかなり苦しい流れとなっている!』
声が気になって向こう側を見ると、確かに、先輩達の動きは悪い。
必要以上に、グレイト2の攻撃を恐れてしまっている。
美原先輩ですら倒した謎の兵器に、及び腰になってしまっているのだ。
そのせいで、桜城前線は押され気味になっている。
そんな彼女達に、指示を与えるはずの最高指揮官は、未だに帰ってきていない。
このままではこの右翼が守れたとしても、中央が突破されてしまう。
俺が、右翼を守りながら中央に指示を出すか?
蔵人は半分諦めモードで、口に盾を集めす。
そして、声を張ろうとしたその時、
『佐々木先輩!秋山先輩!カバー入って!』
ベンチからの声。
監督にだけ渡されたメガホンから聞こえたそれは、部長の声じゃない。他の先輩方でもない。
鶴海さんの声だ。
『左翼はもっと下がって!中央に合わせて!先ずは陣形を整えるのよ!遠距離部隊は相手03番と04番に集中砲火!前線に近づけさせないで』
部長の補佐としてベンチ入りしていた彼女は、部長達の状況を見て、メガホンをひったくり、指示を飛ばしていた。
この采配。今出来る最大限のリカバリーだ。
その指示を聞いて、彷徨っていた先輩達の動きが、徐々に統一性を取り戻す。
それと同時に、桜城前線本来の動きが戻り始める。
桜城の遠距離攻撃で敵の動きが鈍り、その間に近距離部隊が態勢を立て直した。
相手の03番と04番も、桜城の集中砲火が嫌なのか、また中衛に下がってしまった。
…見た目ほど防御力がないのかもしれない。
これは僥倖。
『蔵人ちゃん!』
おっと、鶴海さんから指示が飛んできた。
『右翼は任せたわ!Aランクの足止めをお願い!』
的確な指示だ。
蔵人は鎧兜の中で微笑む。
まだ硬く閉ざされていると思っていた新芽が、今、芽吹こうとしている。
「お任せを、軍師殿」
蔵人は、嗤った。
活動報告でも触れたのですが、次話からとても危険な水域に入ります。
もしかしたら、著作権の問題で消されるかも…。
「運営よ。せめて、警告なしに消すのは、なしにしてくれよ?」
イノセスメモ:
・グレイト0(アーキタイプ)…筑波中が作った異能力者用最新スーツ。収縮運動をサポートし、走るなどの動作負荷を軽減する。運送業などの業種でも活用が期待されている。制作費用はおよそ120万円。
・グレイト2…アーキタイプを戦闘用に改造した異能力者用スーツ。実戦配備を想定した仕様で、異能力の放出をサポートする。現在対応しているのは、4大属性のみである。制作費用は1億円を超える。