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72話~俺にとって、ここが明日だ!~

「諸君。よく来てくれた。付いてきてくれた。ここまで、この場所まで」

「では、嵌めようか。あの時見た断片(ピース)を」

ガシャン、ガシャン、ガシャン。


白銀の鎧が、音を奏でる。

蔵人が一歩、足を前に出す度に。腕を大きく振り上げる度に。


その音は何処か、懐かしい。

弾薬を背負って走り抜いた戦場を思い出す。重装備で縦走(じゅうそう)した雪山を思い出す。


その時は辛く、苦い思い出だったはずだが、今思い出せば、全てが懐かしく、そして、確かな経験となって足元を固めてくれる。


蔵人はまた一歩、地面を踏み締め、前へ、前へと体を押し出す。

目の部分だけが空いている蔵人の兜は、視界も良好だ。

自軍領に侵入した相手選手に向けて、蔵人は真っすぐに進む。

挿絵(By みてみん)

声が降りかかる。


『迎え撃つのは桜坂96番!Cランクの、男子!たった1人で、猛然と突き進む足立中の選手を相手にしようとしています!』


「「ええぇえ!!」」

「CランクがBランク相手にとか、そんなの無茶だよ!」

「男の子でしょ?無謀すぎる。死んじゃうわよ!?」


周囲の様子は、まさに阿鼻叫喚。

まるで子ウサギがライオンに突撃でもしているかのように、観客達からは悲鳴が上がる。


彼女達の悲鳴を聞いて、蔵人は自然と頬が吊り上がる。

この戦場に送り出される前の、部長の一言が、頭の中で反響する。


『巻島。交代よ。貴方にはこれと言って指示を出さないわ。貴方が自分で最善と思う道を選んで、円柱を、そして、桜城を守って頂戴』


最善と思う道。

それは、今蔵人の目の前に、一本の線として描かれている道の事。

その道の上に、

壁が、立ち塞がった。


「舐められたもんだね。Cランクの、それも男の分際で、このあたしを止めようって言うんだからさ!」


深紅のプロテクターに身を包んだ少女が、獰猛な笑みを浮かべる。

彼女の眼には、蔵人はただの的にしか見えていないだろう。

円柱にタッチして、華々しく自校の勝利を飾る。その過程に落ちている、石ころのようにしか映らない。


深紅の少女との距離が10mを切ろうとした時、彼女の周囲に、バスケットボール大の水球が幾つも浮遊する。

アクアキネシスか。


「さぁ!早く退きな!あたしはBランクだ。Cランクのあんたが、勝てる訳ないんだよ!」


彼女はそう言いながら、己の拳を大きく振りかぶる。すると、その拳に引き寄せられるように、水球が次々と集まり、固まり、氷の大槌へと変貌する。

彼女の異能力はクリオキネシス。最上位種であった。


少女の目が、こちらを蔑むように見据えてくる。

さぁ、ビビり散らかして、逃げ帰っちまいな。

そう言うかの如く。


それでも蔵人は止まらない。

それどころか、彼女に向けて、更に加速し、言う。


「いいや、そんなことはない」


そう言って、蔵人は少女と同じように、拳を振り上げる。

そこに集まるのは、白銀の盾達。

鋭利に尖った盾達は、切っ先を少女に向ける。


それと同時に、相手との距離が射程圏内に入る。

二人は同時に、引き絞っていた拳を放ち、互いに互いへ向けて振り下ろす。

蔵人の白銀の拳と、少女の白色の氷塊が激突した。

ガキンッと、金属同士が盛大にぶつかる音が、フィールドに弾け飛ぶ。


相手の氷はただの氷ではなく、やはり異能力で出来た物質。蔵人の魔銀盾と同等の硬度を持っているようだ。

ただでさえランク差のある蔵人の拳は、ただぶつけ合うだけでは木っ端みじんになってしまう。


彼女と同じ、Bランク相当の拳であったなら。


「なっ、なんだとっ!」


少女が目を見開く。

その目の先には、今なおぶつかり合い続ける互いの拳があった。

蔵人の拳は、砕けなかった。

それどころか、


「た、盾が…」


ギュィイイイイイン!!!


「盾が回転してるっ!?」


高速回転する蔵人の盾が、相手の大槌を受け止め、そして削り始める。

ガリガリガリッ!


ぶ厚かった氷の装甲が、みるみる薄くなっていく。


「な、なんでそんなことが!?あたしはBランクだぞ!?Cランクが、なんで耐えられる?なんで盾が動くんだ!?」


驚き、瞠目する相手。


なぜ、か。

蔵人は嗤う。


「何故ならな、この世界(ちじょう)に、限界(てんじょう)なんて、ないからだよ!」


その瞬間、

ピキッ…


小さな崩壊の音が響き、少女の氷塊が割れた。

蔵人の拳は、そのまま彼女のヘルメットへと振り下ろされる。


「ぐぅぶっ!」


金属と肉を潰した音を反響させながら、少女を芝の上に叩きつけた。


倒れた少女は、動かない。

ヘルメットは変形し、口を守っていた金属製のフレームは折れて、一部が地面に突き刺さっていた。


『だ、ダウンです!足立中7番、ダウンです!』

「「うぉおおぉ…」」


観衆のどよめきが、すぐそばまで押し寄せる。


「なに?何が起きたの?」

「スリップ?コケただけ?」

「私には、殴って倒したように見えたけど?」

「そんな訳ないわ!あの子はCランクの男の子よ!?」

「Bランクが押し返された?Cランク相手に?何かの冗談だろ?」


観客からは、先ほどの攻防がしっかりと見えていなかった模様。

今、倒れ伏す彼女の状況が見えていたら、これが倒れただけ等と思わないだろう。


蔵人が、さてこの娘はどうするべきかと思案していると、直ぐ近くに男性が現れた。

一瞬、相手校の選手かと身構えたが、見れば彼のゼッケンには〈STAFF〉の文字が。

テレポーターだ。倒れる少女の状況を把握した彼は、血相変えて彼女をテレポートした。


それでいい。

蔵人は前を向き、近づく敵に向けて走り出す。

その背中に、


『べ、ベイルアウト!足立中7番、ベイルアウトです!』

「「うぇええええ?!?」」


悲鳴に近い唸り声が追いかけてきた。

蔵人は、一瞬観客の表情を見ようと後ろを振り返りかける。

だが、


「蔵人!前!」


声が降りかかる。

仲間の声だ。

そうだ、集中しろ。


蔵人は振り向きかけた顔を前へ戻し、周囲に広げていたパラボラも、前へと向ける。

そこには、完全に足を止めてこちらを凝視する2人の足立選手。

Bランクが倒されたことで、こちらを警戒したのだろう。

それは仕方ない。だが、あまりにも警戒しすぎだ。


蔵人は走り出す。鎧の下に纏った龍鱗を稼働させ、前に前にと速度を上げる。

手前で止まる相手選手との距離が5mとなったところで、蔵人は両腕に二重の龍鱗を纏わせる。


その頃になって、漸く相手は動く。

両手を広げ、蔵人に無数の火炎弾を放つ。

野球ボール大の、Cランクの攻撃。


しかしその攻撃を、蔵人は腕に張り巡らせた龍鱗のみで弾き飛ばす。

この程度、盾を出す必要もない。


残り、3m。

蔵人は足と腰に盾を集め、力を溜めて、

放つ。


全身が、グワンッと前に出る。

一瞬で、相手選手との距離を0にする。

蔵人の目の前には、赤いヘルメット越しに見える、相手の顔があった。

尋常じゃない速さで接近した蔵人に、驚きで目を見開いていた。


「ふっ!」


蔵人の右フックが、吸い込まれる様に相手選手の腹部に伸びる。

相手は、手で防ごうと動き出しているが、間に合わない。


手が、手から出された炎の塊が、蔵人の右フックを防ごうとするも、ガードが形になる前に、

蔵人の拳が、盾の鱗が、相手の腹部に到達する。

飛び込んだ勢いも加味されて、蔵人の拳は深々と相手の腹に食い込み、相手は転がりながら吹き飛ばされた。


漸く止まったのは、蔵人から5m程離れた位置。うつ伏せで、動く気配はない。


『だ、ダウン!』


放送が、響いた。


『足立中23番ダウンです!』

「「おおおお…」」


何とも言えない、観客のどよめき。

そしてすぐに、男性テレポーターに搬送される相手選手。

ベイルアウトだ。


蔵人は、相手が消えると同時に走り出す。

侵入者は、残り1人。

その最後の1人は、完全に足を止めて、腰まで落として構えていた。

立ち止まっている訳ではない。蔵人の力を認めて、迎え撃とうとしているのだ。


面白い。

蔵人は走り出す。


それと同時に、相手も動く。

地面から、芝生入りの土がモコモコと持ち上がり、少女を完全に隠す程の大きな壁となった。

なるほど。最後の相手はソイルキネシスか。


「さぁ、来い!」


土壁の向こう、顔の部分だけ空けた穴から、少女の声が届く。

なるほど。確かにこれほど分厚い土壁であれば、蔵人の突撃を止めることが出来る。


だが、蔵人は止まらない。

少女の挑戦的な言葉に、両手を開く。


「穿て、女王蜂(ホーネット)!」


小さなドリル群が、突撃する蔵人よりも先行して、相手の壁へと殺到する。

相手の壁に、小さくも確かな穴をあけるドリル達。

まるでチーズの切れ端の様に、至る所に穴を開けられた壁。

その壁に、蔵人は体ごと突撃する。


穴が開いた壁は、蔵人の突撃によって易々と粉砕する。

土塊が飛び跳ねる中、蔵人は構わず突き進み、両腕を前に構えて、僅かばかりの抵抗を見せる相手を、構わず跳ね飛ばして、更に先へと進む。


『ベイルアウト!足立中11番!』


実況の声が、後ろから追いかけてくる。


「嘘だろ!?」

「体当たりだけで2人も倒したぞ!?」

「なんなんだ!あの96番は!」

「本当に男の子なの?!」


まるで叫び声のような観客の声。

だが、それに答えている余裕はない。


何せ、蔵人の目の前には、今にも崩壊寸前の桜城前線が見えていたから。

相手前線の攻撃に、もはや防戦一方で、踏みとどまるだけで精一杯になっている先輩達。


「行きますよ!先輩!」


その先輩達に向けて、蔵人は走る。

走り続ける。

前線まで、残り10m、7m、5m…。


相手前線の後ろの方にいた中衛部隊がこちらに気付き、遠距離役達が土塊を蔵人に発射する。

だが、


「ふんっ」


蔵人は水晶盾を前方に展開し、全てを弾き飛ばす。

同じCランクの攻撃なら、蔵人の盾にはかすり傷程度しか付けられない。


盾はそのまま、全て正面に構える。

ただ、目の前の敵を


「殲滅する」


蔵人が更に、加速する。


「うぉおおおおお!!!!」


雄叫び。


己を鼓舞するだけじゃない。

目の前は、既に中立地帯。

味方の前衛が点在していた。


彼女達は声に気づいて振り向き、蔵人を見ると急いでその場を飛び退いた。

結構ギリギリで回避したので、転んでしまった先輩もいた。

だが、


「ぎゃぁ!」

「ぐぁ!」

「がぁっ」


先輩達が直前まで蔵人を隠してくれていたお陰で、蔵人に直前まで気づけなかった相手前衛の選手達は、勢い良く蔵人に轢き飛ばされた。


『足立中、18番!26番!連続ベイルアウト!』


放送に、蔵人は相手領域を走りながら首を傾げる。

2人か。

確か、轢いた感触は3人だった。


1人やり損ねたかと、蔵人は考えながらも、足は止めない。

このまま、最後までやりきる。


そう思っていると。


殺気。

後ろ!


刹那、横へ飛ぶ蔵人。

先程まで蔵人が立っていた所に、火柱が立ち上る。


蔵人は芝生の上を転がり、受身を取って立ち上がる。

目を上げると、そこにはオレンジ色の短髪少女がいた。


「やってくれたね」


背番号は01。

相手校の主将。

Aランクだ。


とんでもないのが、釣れてしまった。

普通、Aランクの相手はBランクだろ。なんで敵の大将がルーキーの前に来るんだよ。

蔵人が心の中で、先輩に愚痴を零していると、


『桜坂03番、06番、ベイルアウト!』


そんな放送が、蔵人の耳に届いた。


03番、佐々木先輩。06番、秋山先輩。

どちらも、この01番を止めるために身を張り続けてくれたBランクの先輩だ。

彼女達がやられたから、今この娘は蔵人の所に来ている。


もしも蔵人が殺られれば、そのままフリーになるAランク。

それは、また盛り返し始めた桜城にとって、最悪のシナリオ。


だが、どうする。相手はAランクだ。

美原先輩や安綱先輩と同じ、Aランク。

勝てるビジョンが全く見えなかった、猛者達の領域。


知らない内に、蔵人の足は止まり、小さく、後ろへと動き出していた。

蔵人がジリジリと相手との距離を図っていると、


「アカン!カシラ!そいつAランクやで!」

「逃げろ!ボス!」


急に、クリアな声が聞こえた。


向こうの方に、フィールドの端で手を無茶苦茶に振っているのは、伏見さんと鈴華。

いつの間にか、桜城ベンチ近くまで来ていたのか。


蔵人は周囲に目線を配る。

蔵人と相手エース以外、誰もいない。

蔵人は、小さく息を吐く。


ふぅ。

”良かった”と。


直ぐに、思考を切り替える。

さて、どうやって”この危機を乗り越えるべきか”。


相手はAランク。しかもパイロキネシスであれば、広範囲に強力な攻撃が可能であろう。

完全に防ぎ切ろうとすれば、金剛盾でなければ対処できない。だが、金剛盾は出せても掌大が関の山。相手の攻撃を防ぐには小さすぎる。

では、あれを使うか?未だ試験もしていない技を、この大事な局面で使う気か?


蔵人の思考は、知らずと逃げる方向へシフトしていた。

そこに、明るい光が灯る。

同時、焼けるような熱さ。


蔵人は、半分反射で飛び退る。

そこに、再度火柱が立ち上る。

ゴウッと、短くも恐ろしい咆哮を聞いた気がした。


「へぇ、良い反応だね。じゃあ、これはどうかな?」


そう言って、相手は炎を空中に泳がせて、大きな一本の川にする。それを、


「さぁ!楽しい曲芸の時間だよ!」


振り回す。

まるでそれは、太く長い鞭の様である。

炎の鞭。それを振りかざし、蔵人を追い詰める。


さながら、蔵人はサーカスのライオンだ。

猛獣使いに追われる、囚われのライオン。


「さぁ、逃げろ逃げろ!そうやって君が逃げている内に、僕らの勝ちが決まるよ!」


そう言って、Aランクの少女は顔を上げる。

そこには電光掲示板があり、現在の試合状況を映し出している。


桜坂領域:28%。足立領域:72%。試合時間、12分03秒。


試合15分経過時に、70%の領域があればコールドゲームだ。

つまり、後3分もしない内に、桜城の負けが決まる。

それが分かっているから、相手は遊んでいる。

蔵人をおもちゃの様に、弄んでいる。


それが分かっていても、蔵人は手を出せないでいた。

相手の手の内が判明しない内に、下手に攻めたくなかった。相手がカウンターを得意とする場合、攻めれば一瞬で勝負が決まってしまう。

今、Aランクをフリーにはさせられない。先輩の為にも。


だが、その考えは相手も一緒の様だ。

先ほどから、蔵人と一定間隔を保ちながら攻撃を繰り返す赤髪の少女。

Cランクとはいえ、5人もベイルアウトさせた蔵人を警戒している。

だから、距離を取っている。もしも蔵人が攻めてきたらカウンターを決めて、もしも攻めてこなかったら、足立中の勝利となるから。


つまり、彼女にとってはどちらに転んでも美味しいのだ。

足を止めた時点で、蔵人の負けであった。


現状であれば、であるが。

蔵人は鎧兜の下で、笑う。


「その余裕、覆してみせよう」

「…何言ってんの?」


蔵人の自信ありげな発言に、彼女の周りをうねり泳いでいた炎が揺らぐ。

そして、蔵人が彼女の疑問に答える前に、答えがフィールドを駆け抜けた。


『セカンドタッチ!桜坂!背番号20番!2年生!レオン選手!』


蔵人の口が、更にひん曲がり、相手エースの眉が寄った。


これが、蔵人が時間を稼いだ理由。

サーミン先輩は、ずっと蔵人の後ろを着いてきていた。時折、蔵人に声を掛ける事はあったが、終始透明化を切らす事は無かった。


彼が蔵人と離れたのは、敵前線を突破した時。

目立ち過ぎた蔵人が、何時か捕まるのが分かっていたから、彼は去り際を間違えなかった。


蔵人も、炎で攻撃された直後、サーミン先輩がいない事を確認し、安堵の息を吐いていた。

これなら、いずれセカンドタッチは成功してくれるだろうと。


「形勢逆転だな、Aランク。早く俺を倒して行かないと、ポイントを逆転されてしまうぞ?」


サーミン先輩は、今も敵の円柱の上でタッチし続けている。

セカンドタッチの800点(400+400)と、2分間の無敵時間を利用した敵円柱へのタッチ1200点(10×120)で2000点。


これが成功した場合、桜城領域は48%となる。つまり、


「コールドの可能性は無くなった」

「…そうだね。でも、だからなんだって言うのさ」


蔵人の挑発に、しかし、少女は笑って炎の渦を出現させる。


「どちらにしても、こっちの有利は覆らない。僕達が勝つのは変わっていない。君がこの場で、黒焦げになるのもね」


そう言って笑う相手に、蔵人は汗をかいて、半歩後ろに下がる。


冷静な相手だ。タッチを奪われたことで、焦って攻めてくれたら助かったのだが。

蔵人は、相手がハッタリに引っ掛からなかった冷静さに感心すると同時に、苦々しくも思う。


これは、素直に撤退した方が良いかもしれない。

桜城前線に逃げ込んで態勢を立て直すか。

そう、蔵人が結論を出そうとした時。


声が、響いた。


「蔵人!」


その声は、前から聞こえた。

相手の円柱。そこに手を着くサーミン先輩が、

拳を高く突き上げた。


「俺にとって、ここが明日だ!」


その声が、蔵人の心に響く。浸透する。


ああ、そうだ。

俺は、何を考えているのだ。

何を、弱気になっているのだ。


蔵人は、笑う。

退いた足を、元の位置に戻す。


明日を掴むために踏み出した一歩を、ここで戻してはいけない。

この世界の天井を突破する。そう誓ったはずだろう。

今、このAランクから逃げていたら、世界の真実にも届かなくなるぞ。


蔵人は、前を向く。

自分の前に立ちはだかる、Aランクに。

魔力ランクという、絶対の壁に。


「行くぞ!Aランク!」


蔵人は駆けだす。

世界の天井を、突破する為に。


「今、CランクがAランク(あなた)を超える!」

ほぼ、Aランクとの一騎打ち。

ランクが2つも上の人間に、果たして勝てるのでしょうか。


「Dランクの時は負けていたな。白羽とかいう雷使いに」


でも、今度はあの時ほどの年齢差はありません。体格差も。


「あるのは、魔力の差だけ。それを覆せねば、天を穿つなど夢物語よ」


イノセスメモ:

魔力量…ランクが一つ上がるごとに、人間が保有できる魔力は10倍増えると言われている。

例:E-を1とすると、

Dは11~100

Cは101~1000

Bは1001~1万

Aは1万~10万

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― 新着の感想 ―
>「今、CランクがAランクあなたを超える!」  今後語り継がれるであろう、”黒騎士”の伝説(下剋上)はここから始まる。
[良い点] 主人公最高! 熱い展開に気分上々です! [一言] ブックマーク&星5不可避 毎話楽しみにしてます。 応援してます!
[良い点] 引きが最高!! サーミン先輩も意外と熱いね!
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