50話~もしも頼れる仲間が近くにいるなら~
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「なかなか、確信に迫る質問もあったな」
はい。皆様の目と勘が鋭いので、筆者もタジタジでございます。
晴れ渡った春の空。
平日でも車の往来が少ない特区で、更に今日は日曜日だから、通る車は更に少ない。それ故か、空気は清々しく澄んでおり、小鳥たちが囀りながら気持ちよさそうに飛んでいる。
だが急に、彼らは鋭い鳴き声を発すると、慌てふためいてどこかに飛んでいってしまった。
そして、今まで小鳥達が飛んでいた空間を、黒い塊が風切り音を立てて切り裂いていく。
その黒い物体は…蔵人であった。
蔵人は、日曜日の特区上空を少し急いで飛んでいた。
彼の服装は制服ではなく、黒のパーカーに群青のデニムと、傍から見たら真っ黒であった。背中に背負った若草色のリュックと、腕に巻いた水色の腕章が無ければ、通報されても文句が言えないスタイルである。通称、黒戸スタイルとも言う。
今日はこの格好からも分かる通り、通学ではない。これから、安綱先輩との2つ目の約束を果たしに行くところである。
途中、特区の検問で捕まってしまったので、少し急いでいた。
最近はほぼ素通りだった検査だが、いつもの制服スタイルではなかったからか、久々に学園への連絡をされてしまう。しかも日曜日だからか、なかなか学校に繋がらなくて、かなり時間を食ってしまった。まぁ、警察のお仕事だから仕方が無いし、別れ際のお姉さん達に相当謝られてしまったから、もういいのだけれど。
検査の際に渡されたのが、この腕に巻かれた腕章だ。これは特区の通行証のようなもので、これがあれば検査もかなり容易になるので、今後は付けるように言われた。
また、特区に滞在する間も、これを着用していれば職質などを受けなくて済むらしい。学生服の代わりなのだろう。ただの腕章に見えるが、何か特殊な素材、もしくは作成方法で出来ているみたいだ。
勿論、出来れば色を選ばせてもらいたかったが、それは出来なかった。学校のネクタイと一緒で、ランク毎に色分けされている。寧ろ、学校のネクタイがこれを模しているのだろう。厄介なものだ。
蔵人は小さく、首を振る。
それから少し航行した蔵人は、とある施設を目掛けて高度を下げる。
ワールドトレーニングセンター。通称WTC。
世界各国が運営する国営施設であり、異能力を鍛えることを目的とした大規模訓練施設である。
そう言うと、道場のような印象を持たれるかもしれないが、傍から見ればそれは、でぃ…ネズミーランドのようなテーマパークやアミューズメント施設に近い風貌をしており、中に設けられた各設備も、それらのアトラクションに近いらしい。
ネットで情報を漁っただけなので、定かではないのだが、入試試験で行ったアグレスとの模擬戦のような設備も有ったり、ゲームや異世界で言うダンジョンを攻略する施設もあるらしい。ダンジョンと言っても、ゴブリンやスライム、ドラゴンなんかは出ず、もっぱらの敵役はアグレスが担っているらしいが。
安綱先輩との約束。それは、入試試験の時に交わした「続きは、君が正式に入学してからにしよう」と言う言葉の事。蔵人ともう一度、あの模擬戦の続きをしたいと、生徒会室に呼び出した先輩から申し出があり、今日この場所を指定されていた。
現在の時刻は午前9時を少し回ったところ。
待ち合わせの時間には何とか間に合ったのだが、さて、先輩はもう来ているだろうか?
蔵人が施設の入場ゲートで辺りを見回していると、こちらに近づいて来る人の気配を感じた。
先輩か?と蔵人がそちらを見ると…。
違った。
高校生くらいの女子生徒が2人、たまたま蔵人の方面に向けて歩いていただけ。
蔵人がそう判断して、再び先輩探しを再開する。すると、
「ねぇねぇ、君。もしかして1人?」
女子高生の1人が、話しかけてきた。
これは、俺に話しかけているんだよな?
蔵人は用心の為、振り返って後ろを見る。
後ろに別の人がいて、あ、俺じゃなかったのね?という恥ずか死行為をしない為だ。
うん。後ろには誰もいない。
「君だよ、君。リュック背負った、可愛らしい君に話しかけてるの」
可愛らしい?じゃあ俺じゃない…よな?
「僕の事でしょうか?」
蔵人が、まさか違うだろうと確認をとると、女子高生達は互いにキャッキャと笑い合う。
「僕だって。めっちゃ可愛い!」
「ヤバっ。年下ないな~とか思ってたけど、この子はありだわ」
興奮した様子の彼女達は、どちらかと言うと好意的に取られている様子。
まるでクラスの女子生徒達の様であるが、まさか高校生が中学生には…ないよな?
やがて、興奮が少し治まった2人が、蔵人を狩人の様な目で見つめてきた。
「私達、今からダンジョンダイバーズに潜るんだけど、君も来ない?」
「心配しないで大丈夫。今日は浅い層までしか潜らないから、そんなに怖くないし、君は私達の後ろで応援してくれていたら良いよ。私達、ここの3階層までは何時も潜ってるから、安心して」
「そうそう。あ、もし良かったら、お昼は私達が奢るよ。ここのトレセン内で、パスタがめっちゃ美味しいお店知ってるから、そこに行こう!」
お姉さん達の圧が凄い。蔵人が口を開いていないのに、もうお昼までのスケジュールを立てられてしまった。このままだと、夜まで埋めらるのも時間の問題だ。
こんな可愛い女子高生に言い寄られて、少しは嬉しい蔵人だったが、如何せん、今日は先約があるのだ。
蔵人はすっと、2人に頭を下げる。
「折角のお誘いですが、申し訳ありません。先約がありますので、お断りさせていただきます」
蔵人がそう言うと、少しの沈黙。
怒るかな?それとも強引に連れて行かれるかな?もしも強硬策を取るのなら、異能力を使う他ない。
蔵人がそう思っていると、女子高生の片方が口を開く。
「う〜ん…そうかぁ。じゃあ、仕方ないな」
「ええ〜。まぁ、そうだよね。こんな可愛いくて素直な子、彼女の2、3人いても普通だよね。日曜日だし、トレセンデートかぁ。良いなぁ」
もう片方の娘もそう言って、諦めてくれた。
何だかんだ言っても、強硬策に出たりはしない。流子さんの言っていた通り、特区の中は治安が良いらしい。
だが、彼女が2、3人って?
「あ、じゃあさ!連絡先交換しよ!また別の日に、私達ともデートしてよ」
うん。諦めてなかった。しかも、中一相手に高校生がデートに誘うのか。
改めて、特区は男子が少ない事を肌で感じる蔵人。
これは、あれだな。連絡先教えたら最後、下手すると家族にも迷惑がかかる可能性がある。
蔵人は、笑顔でお姉さん達に向き直る。
「すみません。まだ携帯とか持っていないので、家電は、ちょっとご勘弁を」
嘘である。
だが、嘘も方便だ。身を守る防御策だ。
「そっかぁ。じゃあ、私の連絡先渡すから、何時でもかけてきて!」
そう言って、2人はメモの切れ端に電話番号と名前、魔力ランク、異能力種、好きな物、そして何故かスリーサイズまで書いて渡してきた。
蔵人がそれを見て固まっている内に、彼女達は歩いて行ってしまった。
異世界怖い。
久方ぶりに、そう思う蔵人。
ブルルッと蔵人は震える。また、前から視線を感じたのだ。
恐々と、メモ用紙から目を離して、視線を上げる。
すると…。
今度は、大学生くらいの女性がこちらに歩いて来ているのが見えた。その奥からは、またもや高校生くらいの女子生徒達が…。
いや、もう、勘弁してくれ。
蔵人は、とりあえずその場から離脱した。
結局、蔵人が先輩と会えたのは、それから20分くらい経ってからだった。
あれからもう3組の女性パーティに勧誘されたが、全て走って逃げまくった。
途中、足に自信があった女子高生が追って来たが、蔵人は足だけ龍鱗を発動させて、なりふり構わずに逃げた。あれは僅差であった。多分彼女はブーストの異能力者だったのだろう。指先が蔵人の背を触った時は、もう飛んで帰ろうかとすら考えた。
結局、それらの女性達は全て撒き、汗だくな状態ではあったが、先輩と合流することが叶った。
蔵人の姿を見た先輩は、最初こそ驚いた表情をしていたが、直ぐに察してくれて、2人は急いでトレセンの中へと入場した。
施設に入っても、蔵人を狙う粘っこい視線は四方八方から感じるのだが、安綱先輩が隣にいてくれるからか、話しかけてくる人まではいなかった。
先輩がAランクというのも大きいのだろう。これで蔵人が1人になったら、先ほどの二の舞になるので注意しろと先輩に言われた。
トイレはどうするの…。
「さて、では早速、こちらから行こうか」
デパートのような4、5階建ての建物に入っていく先輩。それについて行くと、先輩は手慣れた感じで受付を行い、蔵人を連れて一室に入った。大きさは、入試試験の時と同じくらいであり、これまた同じように真っ白な部屋だった。
その部屋が、変貌していく。
平地の駐車場が現れた。周囲を見ると、高級そうな住宅街が取り囲んでおり、前面の奥の方には、大きなスーパーが見えた。
部屋の大きさよりも広く見えるが、恐らくは壁に投影しているのだろう。壁があったであろう場所には背の高いフェンスがあるので、気付かずに壁に激突という事態は避けられそうだ。駐車場には、車が数台、バイクと自転車が端に止まっており、障害物のようにも見える。
入試の時は薄暗い洞窟だったからか、この部屋は気持ち明るい気がする。部屋の光量自体は一緒なのだろうが。
そんなことを考えながら周りの様子を見ていると、駐車場の真ん中くらいに、空中に浮かんだ半透明のディスプレイが浮き上がって、そこに文字が書かれているのが見えた。
〈1stステージ 開始300秒前〉
蔵人が食い入る様に画面を見ていると、安綱先輩がくすくすと声を殺して笑った。
「初めはそうなるよな。私も、初めてステージを体験した時は落ち着きがなかったそうだ」
「ステージ、ですか?」
蔵人の問に、先輩はああ、と頷いた。
ステージとは、1人から5人で行うアトラクションの名称である。やることは入試試験の模擬戦と同じだが、難易度はプレイヤー側は選べず、徐々に上がっていく仕様。
ステージ毎に制限時間が決まっており、それまでに敵を全滅させられないか、プレイヤーが全滅もしくは降参したら終了。その時のステージ数が記録される。
ステージとステージの間には、短いインターバルがあるが、息を整える程度のもの。その間に、次のステージの準備をする。敵の攻撃は見せかけだけらしく、実際には怪我をしないそうだが、プレイ中は痛いし、気絶もするらしい。どうも、精神干渉系の異能力を応用しているらしいが、企業秘密なのだとか。
「ちなみに、記録はチーム人数によって分けられていて、上位の記録は抜かれない限り1ヶ月間掲示されるんだ。私達は2人だから、今の最高記録は…これ、131ステージのヘビーレイン。大学生Aランク2人のチームらしい」
先輩はそう言いながら、半透明のディスプレイをタッチするかの様な仕草をして、画面を切り替えながら説明してくれた。そこには、ズラリと並ぶチーム名とステージ数、チームの構成員の名前が1位から10位まで並んでいた。
蔵人が、なるほどっと頷いていると、先輩が操作していないのに画面が勝手に切り替わる。
最初の画面だ。開始時間が10カウントを始めていた。
「後は戦いながら説明しよう、と言っても、もうあまり面倒なルールはない。入試試験の続きと思ってくれ」
先輩がちょうど言い終わった時に、バスケ開始のブザーの様な音がなり、端に停めてあったバイクが爆発と共に吹き飛ばされる。
そこに居たのは、小型の影。
久しぶりに見る、アグレス。小型で短剣しか持っていないから、恐らく兵種がスカウトで、ソルジャー級だ。
そんな事を思っている内に、先輩がさっさとアグレスを倒してしまった。
「とりあえず、20ステージまでは雑魚しか出ないから、蔵人は魔力を温存してくれ」
先輩曰く、今回は行けるところまで行きたいのだとか。
目指せ100ステージを掲げているそうだ。
再び空中にディスプレイが浮かび、準備時間終了300秒前と出ている。
先輩は、その画面の横に出ていたスキップボタンを押して、準備完了ボタンを押す。
すると、画面が切り替わり、2ndステージ開始10秒前と出た。
準備時間は5分あるが、必要なければ飛ばせるのか。
確かに、100ステージを目指すなら、準備時間いっぱい使ってしまうと、かなり時間がかかる。今は午前10時を少し回ったところだが、それだと終わりは18時過ぎ…戦闘時間を入れたら20時になるんじゃないか?明日からの部活に響くので、積極的にスキップしよう。
蔵人達は、そのまま難なく20ステージをクリアし、そこからは敵の数も増えてきたので、蔵人も参戦する。とは言えまだ中型のナイト級は出てきていない。蔵人は盾での足止め程度なので、殆ど魔力を消費しなかった。
40ステージを超えると、ナイト級も出現するようになり、駐車場の空も曇り空となる。地味に周りの風景が暗くなるのはプレッシャーだ。気持ちフィールドが狭くなった気がする。気のせいだとは思うが。
60ステージを超えると、ナイト級が同時に複数体出るようになり、1ステージに登場するアグレスの数が、合計で20体程に膨れ上がった。今までは多くて8体とかだったから、一気に倍増した。
「蔵人。君にも攻撃に参加してほしいのだが…あれを頼めるか?」
先輩が、同時に現れたナイト級2体とソルジャー級3体を蹴散らした後、蔵人の近くまで戻ってそう言った。
「シールドカッターですか?」
蔵人の確認の問に、先輩は頷きながら走り出す。左からナイト級2体。右からナイト級1体とソルジャー級3体の波状攻撃だ。
先輩が左のナイト級2体に突っ込んだので、蔵人は右にシールドカッターを放つ。ソルジャー級は瞬時に切り刻まれたが、ナイト級は盾を1枚切り裂いて消してしまった。
だが、蔵人が放っていたもう一枚が、相手の死角から迫り、見事首を切り落として消滅させた。
この程度であれば、まだ対処できる。
蔵人が少し心に余裕を感じると同時に、直ぐにナイト級とソルジャー級が入り交じった8体の集団が正面に現れる。
対処は出来るが…これは、魔力の回復が間に合うのか?
蔵人は額の汗をぬぐいながら、自身の問いかける。
Cランクとなっている蔵人は、魔力の完全回復までの時間も伸びてしまっている。具体的には、30分近く経たないと完全回復とはならない。
Dランクの時が5分以内であったから、およそ6~8倍の時間が掛かる。ステージの合間が最大5分であるから、気を付けないと直ぐにガス欠となるだろう。
蔵人が思考している間にも、アグレスが生まれる。
先輩は駆け出し、蔵人は後ろで杖と弓を構える遠距離型のアグレスにシールドカッターを浴びせる。それで、このステージの敵は一掃したようで、目の前に半透明のディスプレイが現れる。
流石に、この60ステージを超え始めてからは、準備時間に少し休憩を入れている。蔵人は持ってきていた水を飲み、先輩は駐車場に設置されている自販機でジュースを飲んでいた。
その自販機、幻影じゃないのね。地味に驚いた。
「気付いているとは思うが、ステージは5ステージ毎に敵の強さや数が1段階上がり、20ステージで大きく増強される」
先輩が軽く肩を回しながら、蔵人に話しかける。
蔵人は、それに頷く。
「はい。何となくは、そのような気がしていました」
「そう。そして、次の81ステージからはジェネラル級が出てくる」
先輩の言葉に、蔵人は気を引き締めた。
ジェネラル級。蔵人の水晶盾レベルでは、相手にすらされない次元の敵。
蔵人のその様子に、先輩は少し表情を崩した。
「そんなに気負わなくて良い。ジェネラル級とは言え、入試試験レベルはまだ少し先だ。あの時は、かなり難易度の高い設定でジェネラル級と戦ったから、質も量も上だった。85ステージまでは多分、私1人でも勝てるよ」
先輩が頼もしい笑を浮かべたが、実際そうなった。
81ステージで出てきたのは、スカウトのジェネラル級1体で、素早いが、攻撃力も防御力もそれほどでもなく、蔵人の水晶盾でも対応出来た。
むしろ、1体しか出て来なかったので、76ステージよりも余裕が出来た。弱くとも、波状攻撃をされる方がよっぽど辛い。
戦いは数だよ!という奴か。
しかし、それも85ステージまで。86ステージからは雑魚敵の数も増え、91ステージからは、ウォーリアやウィッチのジェネラル級が出るようになってきた。入試試験レベルのアグレスだ。
蔵人は雑魚敵をシールドカッターで相手取りながら、先輩の為にシールドでジェネラル級を撹乱していた。それでも、1ステージに2分程度はかかる様になってきて、魔力消費量の心配は勿論、肉体的疲労も気にかかるようになった。
そして、96ステージ。
最後尾にウィッチタイプのジェネラル級1体。その前列にスカウト、ウィッチのナイト級2体ずつ。それを守りように最前列にはタンクタイプのソルジャー級が11体。規則正しく並び立つ。
まるでアメフトのスクラムみたいだ。
今度は蔵人が、シールドカッターにて後方主力部隊と交戦し、先輩がタンクを切り裂く作戦で行った。蔵人の盾は、あくまで囮。先輩が遠距離から攻撃されないよう、特に、ウィッチジェネラル級が先輩に狙いを絞らない様に立ち回った。
何とかクリアすることは出来たが、5分もかかってしまった。今回は、準備時間をいっぱいまで使って、全力で休む2人。
「流石に、近距離攻撃型が2人では、厳しくなって来たな」
先輩が、頬を伝う汗をタオルで拭きながら、息を上げてそう呟く。
「先輩、私は盾役なのですが」
少なくとも、ファランクス部では専ら防御専門だ。攻撃したことなんて、伏見さんとの一件だけだ。
しかし、先輩はそんな蔵人を笑い飛ばす。
「ふっ、何を言ってる。盾役が盾を飛ばす訳ないだろう。お前は万能型だ。近距離も遠距離も出来て、防御も妨害も出来る。なんでも出来る万能型だ」
「万能型…ですか…」
蔵人の呟きに、先輩はそうだと頷き、少し真剣な顔をする。
「だが、万能っていうのは、裏を返せば器用貧乏ともなる。お前が1人で全部やろうとすれば、必ず何処かに綻びが生まれる。今は仕方が無い。でも、もしも頼れる仲間が近くにいるなら」
先輩は立ち上がり、構える。
ディスプレイが、次のステージ開始までをテンカウントし始めた。
「仲間に頼り、お前は足りない役に集中するべきだ」
「はい」
蔵人が頷くと同時に、アグレスが現れ、陣を敷く。
「行くぞ!」
「はい!」
2人は、敵の構えている中に突っ込む。
「イノセスよ。何か言う事はあるか?」
え~…。これって、デートと言えるのでしょうか?
「少なくとも、あ奴らはそうは思っておるまい」
イノセスメモ:
・WTC…世界中にある異能力トレーニング施設。アグレスを相手取ったものや、巨大なコロシアム、競技場も備えており、全日本(シングル全国大会)やビッグゲーム(ファランクス全国大会)スーパースター(セクション全国大会)などの大会にも使用される。また各種施設の記録は、1か月間保存され、全国の記録が随時更新されている。
・特区の学園外…飢えた女性達が闊歩する世界…。