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432話~俺だけじゃねぇんだよ~

突然現れた日本選手団に、中国選手達は混乱し、足を止めていた。

Sランクの王選手もまた、地面に手足を着いたままにこちらを見上げていた。

そんな彼女に睨みを聞かせながら、蔵人は高々と飛び上がり、両拳を頭の高さで組み合わせた。そして、彼女へと飛び掛かると同時に、その両拳を思いっきり振り下ろした。


「(低音)ス(トン)ピングゥウ!!」

【ちっ!】


振り下ろした両拳は、しかし、焼き焦がされたフィールドに虚しく突き刺さる。

狙いを付けていた王選手の体は、火炎を吹き出しながら後退しており、易々と避けられてしまった。


ふむ。奇襲の動揺が抜けきってしまったか。

軽やかなステップを刻む彼女を見て、蔵人はそう判断する。ロゴの体を作り出すという最大ミッションはクリアしたものの、出来ればベイルアウトを取るまで動揺していて欲しかった。

だが、(なげ)いても仕方がない。ここでこの者を討ち取らねば、我らに勝機は巡って来ないのだから。


蔵人は拳を握り直す。

すると、王選手が構えを解いた。

何をする気だ?


【ははっ。なんだよ、焦らせないでくれない?よく見たらアンタ、ただの風船じゃん。Cランクの盾生成(虫けら)が、仲間を守る為に体を張っているってこと?泣かせるねぇ。これぞ日本お得意の、チームプレイって奴だねぇ】


そう言いながら、こちらに両手を突き出した王選手。

来る!


【でもさぁ、そう言うちゃちな見世物は、学芸会でやってなよ!Cランク男子(ゴミ屑やろう)!】


彼女の両手から、真っ黒な獄炎が放たれる。


焔龍(フレイム)爆炸(バースト)!】


視界が、真っ黒い炎で塞がれる。

その獄炎の向こうから、彼女の高笑いが聞こえる。


【あはははは!ひゃはははは!燃えろ、燃えろ!弱小国家の偽善者がぁ!】

『決まったぁ!王選手のSランクパイロキネシスが、黒騎士選手を飲み込んだ!ランパートも構えない黒騎士選手は、一瞬でベイルアウト判定にな…』


観客席の悲鳴を聴きながら、蔵人は横へとステップを刻む。

物凄い熱量が体を包んでいたが、2歩ズレるとそこから解放された。獄炎で塞がれていた視界もクリアになり、目の前の様子が入ってくる。

そこには、目を見開いた王選手がいた。


【なっ!?なんで無事でっ】


チャンス到来。


「(低音)ショットガン・ブラスト!」

【ぐぉっ!】


盾の礫を食らった王選手は、地面を転がりながら吹っ飛んでいく。

Sランクでも、遠距離型の彼女であれば、今の一撃でベイルアウトしてくれるかと思ったのだが、王選手は転がった衝撃を利用して、そのまますくっと立ち上がってしまった。

ふむ。まぁ、いい。

これで倒れぬのなら、倒れるまで打ち込むまで!

蔵人は地面に横たわる王選手に向かって、高く飛び上がる。


「(低音)ストンピングゥウ!」

焔龍(フレイム)障碍(ウォール)!】


渾身の一撃。

しかし、それは王選手が生成した獄炎のカーテンによって阻まれた。

ふむ。まだ動けるか。

では、これはどうだ?


「(低音)低空滑空弾(スマッシュ)!」


地面スレスレから放った一撃は、カーテンの隙間から入り込み、王選手を襲う。

だがその攻撃は、彼女の放った黒炎弾に迎撃され、魔力スパークを発生させながら消えてしまった。


なかなかの反応速度。それに、正確な射撃。

こいつは、ただ魔力が多いだけのSランクじゃないな。さっきのショットガンの時も、何かしらの防御技で威力を殺していたのだろうし、技術力をそれなりに有している。


厄介な相手。

だからこそ、手を緩める訳にはいかない。

蔵人は両拳を大きく引き絞り、それを一気に解き放つ。


「(低音)ガトリング・アヴァランチ!」


乱打される拳から、勢いよく水晶盾の破片が降り注ぐ。

それに、王選手も両手から無数の火炎弾を放った。


焔龍(フレイム)暴雨(レイン)!】


無数の火炎弾が水晶盾とぶつかり、盾を蒸発させる。それだけで火炎弾の威力は衰えず、そのままロゴの体へと突き刺さった。


『黒騎士選手の攻撃を、王選手は防ぐ、反撃している!流石はSランク!乱雑に撃ち込んでいる様に見える一撃一撃も、相当な魔力が込められているみたいです!』

『Bランクのファイアランスでしょうね。黒騎士選手の攻撃はCランクのクリスタルシールドみたいですから、それではファイアランスを防ぎきれないのでしょう』


なるほど。ここでランクの差が出たのか。

だが、


『しかし、黒騎士選手は退かない!一歩も退かない!鋭利な火炎槍をその体に幾つ突き刺されようとも、全く退く様子がない!』

『Bランクの炎に炙られているというのに…何故だ?何故抗える?』


何故かって?それはなぁ。


「(低音)効かねぇからだよ、俺の脂肪にはなぁ!」


蔵人は撃ち合いながら、前に出る。そうすると、より威力が乗ったファイアランスが体に突き刺さるが…そんなもの、蚊程も痛くはない。ロゴの脂肪はぶ厚く、ランスの穂先はその途中で止まっていた。

流石に熱までは遮断しきれていないが、それも着ているグレイトリンカーが大幅に軽減してくれていた。

蔵人の技術とつくばの技術が、Sランクの攻撃を完全に無効化していた。


「(低音)ショットガン・ランパート!」


左ストレートを放つと同時、左手の先端を犠牲に強烈なショットガンの弾幕を撃ち出す。すると、目の前を埋め尽くしていたファイアランスが吹き飛び、王選手の驚き顔が再び現れた。


【なっ、嘘だろ、この風船…】

「(低音)オークだと言ってるだろ!愚か者が!」

【ぐぁあっ!】


蔵人は残った右拳を下から振り上げ、王選手のボディに突き立てる。

彼女の小さな体は、それだけで宙へと高く舞い上がり、そのまま地面へと叩きつけられる。


『きまったぁあ!』

「「【【わぁああああああ!!!】】」」

『黒騎士選手が、Sランクを吹っ飛ばしたぁ!』

『信じられません!』

「「「くっろきし!くっろきし!」」」

【【ブラックナイッ!ブラックナイッ!】】


大盛り上がりの会場。だが蔵人は、それらを無視して突き進む。その先には、吹き飛ばされて寝ている王選手の姿が。

さっきの一撃、手ごたえが人間の物ではなかった。恐らく、先ほどから彼女を守っている何か、その何かで威力を殺されている。

つまり、彼女はまだ生きている。


【うぉおおおおおおおおおおお!!】


蔵人が止めを刺す前に、王選手は起き上がった。起き上がり、獣のような低い声の雄たけびを上げる。

彼女の体から、怒りの炎が(ほとばし)る。


【クソがっ!低能ランクのゴミ屑の分際でぇ…】

「(低音)ブハハハッ!負け犬の遠吠えか?随分と気の早い娘だな」

【調子乗ってんじゃねぇよ!ゴミ屑野郎!!】


少し煽ってみると、王選手は顔を真っ赤にして叫ぶ。余りに怒りが抑えられないのか、彼女の周囲の熱が更に上昇し、足元の焦土から蒸気が上がり始める。そして、彼女の鎧まで溶けだしていた。

そんなことも気に留めずに、王選手はこちらに走り出す。炎を背中からジェット噴射させて、かなりの速度で突っ込んできた。

それに、蔵人も前に出る。修復した左拳を構えて、王選手に負けじと走り出す。だが、彼女とぶつかる直前で、右へと大きくステップで跳んだ。


【逃がさねぇぞ!】


急な方向転換に、しかし、王選手もジェット噴射を直ぐに合わせて付いて来た。

頭に血が上っていても、そう言う判断はまだまだ出来る様子。

でも、


【喰らえ!風船野、ぐべっ!】


怒りに任せて攻撃を繰り出そうとした彼女は、片腕を上げたポーズのままに止まった。

そこには、両面をクオンタムシールドに挟まれた水晶盾が置かれていた。

ステップで逃げる際に、瞬時に作り出した蔵人の盾トラップだ。

よく見ていれば、近づいた時に何かあると分かったかもしれない。でも、今の彼女の思考能力は著しく落ちている。

Sランクだ頂点だと、持て(はや)されて育まれた彼女のプライドが、彼女を盲目にしてしまっていた。Cランクに弄ばれている事実を認めたくなくて、早く倒したいと思考を短絡的にしていた。

そんな彼女の攻撃は、とても読み易いものに成り下がっていた。


【ああぁぁあっ!!焔龍(フレイム)胡乱射击(バルカン)!!】


獄炎の火炎弾が、四方八方に打ち出される。

だが、来るのが分かっていたから、それらの攻撃は簡単に避けることが出来た。

彼女の動きは、こちらと少し距離が空いたら遠距離攻撃を行い、近くに来たらジェットアタックを繰り出すという単純なもの。

その動きが分かっているので、こちらはそれらを容易に回避し、避けながら攻撃が出来た。


「(低音)超高速(ラピッド)射撃(ショット)!」

【ぐぁっ!】


素早く放ったクリアバレットの弾丸が腹部に当たり、王選手は顔を歪める。

通常であれば、アクリル板なんて弱い攻撃は彼女の鎧に阻まれてしまって、ダメージを与えられることはない。だが、彼女の鎧は殆ど溶けてしまって、今やインナーだけの状態であった。

その状態であれば、仮令Sランクの熱量を周囲に纏っていても、アクリルの弾丸でも小さなダメージを与えることが出来た。


【うがぁああああ!】


だが、所詮はアクリル板。彼女の足を止めるまでのダメージは期待できない。

それでも蔵人がチマチマダメージを入れたのは、彼女をより怒らせる為。Cランクに負けそうになっているという現実を突きつけて、より焦らせる為であった。

その作戦は見事に嵌り、彼女は唸り声を上げるだけの獣となった。

Sランクのプライドが、彼女を本能だけで動く、考えない肉塊へと変貌させていた。


【うらぁああああ!】


逃げる蔵人を追って、真っ直ぐに突進してくる王選手。

蔵人は急転身して、彼女に向う。両手を上げて大ぶりで襲ってくる彼女の左横をすり抜ける。

すり抜け際で、左拳を振るった。


「(低音)スマッシュ!」

【ぐぇっ!】


その一撃は、炎のベールに包まれて有効打にならなかった。でも、彼女の体は宙に浮きあがり、そのまま地面へと落ちていく。

そこに、蔵人は追撃を入れる。


「(低音)3点バースト・アサルト!」

【ぐぁっ!ぐぉっ!ぐべっ!】


少女の体は地面に落ちきらずに、3発の弾丸で宙を舞い続ける。

そして、背中から壁にぶつかった。

会場の壁だ。

いつの間にか、蔵人達は左翼の壁際まで移動していた。

…まぁ、ワザとここまで誘い込んだのだがな。


【ぐっ…クソ…が、調子、乗り…】


ロゴの強力な連打を食らっても、王選手は倒れなかった。壁に背中を預け、額から流れる血に手を当てて荒い息を整えようとしていた。

息も絶え絶え。瀕死の王選手。

そんな彼女に、蔵人は詰め寄る。右手を引いて、拳の周りに4枚の盾を設置した。

その盾を、回す。

高速回転させる。


「(低音)マグナム!」

【ぐぅうっ!】


『高速回転する黒騎士選手のドリルシールドを、王選手が黒い炎で受け止めたぁ!』


そのまま決まるかと思ったが、王選手は何とか獄炎のカーテンを繰り出して、マグナムを阻んだ。

高速回転する盾の刃と、メラメラと燃える炎をカーテンがぶつかり合う。

ドリルが炎を削り、炎がドリルを溶かす。

観客達が盛り上がる中、冷静な声がそれを抑える。

解説席だ。


『これは、黒騎士選手が不利ですね』

『ええっ?そうなんですか?王選手の方が苦しそうで、黒騎士選手の方が余裕に見えますけど…』

『確かに、背中を壁に押し付けられた王選手は身動きが取れません。ですが、我慢比べとなれば、魔力量が少ない黒騎士選手の方が不利となります。Sランクの王選手の方が、高威力の異能力を行使できますからね。現に、黒騎士選手のドリルの方が、溶ける速度が速い』


流石は解説者。見る目がある。

蔵人は、既に半分が溶けてしまった螺旋盾を見て苦笑いを浮かべる。

それを見て、片目が血で塞がれた王選手も、ニヤリと笑みを浮かべた。


【どうだ、Cランク!私のSランクに、手が、出ないだろう!これが、魔力の差だ!Sランク(わたし)Cランク(おまえ)の、覆せない差なんだよ!】

「(低音)ブハハハッ!確かに、お前の火炎は凄まじい。今の俺のドリルでは、貫く前に燃え尽きちまうだろうな。

だが」


だがと言って、蔵人は笑う。

嗤う。


「(低音)燃え尽きちまうのは、俺だけじゃねぇんだよ」

【はぁ?何を言って…】


王選手が疑問を投げかける前に、それは起きた。

彼女の体が、更に壁へとめり込んだのだ。


【なっ!?】

『こ、これはっ!溶解している!王選手を支えていたコンクリートの壁が、溶解しているぅう!』

『Sランクの魔力に耐えられないんだ!スタッフが張っていたAランクのバリアも、割れ始めましたよ!』

『最前列の皆様!退避してください!スタッフの指示で退避を!フィールドが、持ちません!』


「(低音)ブハハハハッ!分かったか?孤独な王よ。お前の独りよがりな炎は、この世界には受け入れられんのだ!」

【クソッ、がっ!この、退きやがれ、風船野郎!】


王選手が逃げ出そうと、背中からジェット噴射を始める。

だが、蔵人は退かない。両拳に螺旋盾を生成し直して、それで獄炎の壁を殴り続ける。


「(低音)落ちろ、孤独な王よ!回転盾(マグナム)()無限乱打(アヴァランチ)!!」


『連打連打!れんだぁああ!黒騎士選手の連打が、王選手を押し留める!溶解した壁に押し付ける!』

『黒騎士選手の拳も溶け始めている。それでも止めない…熱くないのか!?』


熱いさ。流石のリンカーも、限界が近い。

だが、止めない。

こいつを落とすまで!


「(低音)おらぁあああ!」

【ぐぅぅ…誰か、おい!誰か助けろ!】


最後の最後になって、王選手はプライドを捨てた。

他の選手に向かって、助けを叫んだ。

それだけ、必死なのだろう。僅かの希望も掴もうと、日本領域へと腕を伸ばした。

だが、遅かった。

彼女が伸ばした手のひらの先に居たのは、白銀の騎士団のみ。中国の赤い鎧は、何処にもいなかった。中国人選手達は全員、鈴華達に葬られた後だった。

王選手はただ1人、フィールドに取り残されていた。


【そ、そんな…馬鹿な。私達は、世界一位の中国だぞ?こんな、こんな小国に…】

「その小さな力でも、貴女達を超えられるのですよ」


王選手の嘆きに、蔵人は右腕を構えながら返す。その拳には、先ほどまでよりも遥かに大きく、美しい盾が回転していた。

ロゴの体を全て分解して作った、対巨星盾。

格上を倒すために作られた、最強の盾だ。


「終わりだ。世界一位!」

【ま、待て!待ってく…】


王選手の命乞いに、蔵人は対巨星盾を高速回転させる。

それを、思いっきり獄炎の壁に叩きつけた。


砕けろ(ミラァ)巨星(ブレイクゥウ)!!」

【ぐぁあああ!】


ミラブレイクが、王選手を押しつける。

その威力を受け止めるために、獄炎のカーテンを厚くする王選手だが、そうすると背中のブースターが衰える。

彼女の体が壁に押し付けられ、押し込まれる。超高温の彼女の体に、壁が悲鳴を上げながら崩壊した。

王選手と蔵人はそのまま、壁の中へと落ちていく。

その背中を、放送の声が追いかけてきた。


『べ、ベイルアウト!中国1番、王選手にベイルアウト判定!そして、彼女がベイルアウトしたこの瞬間、全ての中国選手がフィールドから離れた為、日本のパーフェクト勝利。パーフェクト勝利が確定です!!』

「「「【【うぉおおおおおお!!!!】】」」」」


蔵人の背中と頭の上から、多くの歓声が降り注ぐ。

蔵人はドリルを消して、崩れた瓦礫の間から上を見上げる。そこには、避難していた筈の観客達が割れ目の周囲に集まって、蔵人と王選手の頭上を取り囲んでいた。

その内の1人が、コンクリートの谷間に入って来た。

大会の制服を着た男性スタッフだ。


「済みません、黒騎士選手。ちょっと退いてもらっても良いですか?彼女をテレポートしたいので」

「えっ?」


もう試合が終わったのだから、場外でベイルアウトしただけの彼女はテレポートしなくても良いんじゃないか?

そう思って王選手を振り返ったのだが、彼女は瓦礫に埋もれて完全に伸びていた。

あら。どちらにせよベイルアウトしていたのか。

蔵人は男性テレポーターに道を譲り、そのままフィールドへと戻った。


「ボスゥウウウウ!」


すると、真っ先にサイレンの様な声が近づいて来て、ガバッと目の前が何か柔らかい物に包まれた。

…まぁ、鈴華だろう。


鈴華(ふふは)ちょっと離れてくれ(ひょっとはなえてふれ)

「やったな!ボス。とうとうSランクまでぶっ倒しちまったな!最強だぜ、あんたは!」


聞いてないな、こりゃ。

蔵人が諦めると、他にも足音が聞こえた。

そして、誰かに持ち上げられる感覚を覚える。その途端に、目の前が空く。

そこには、夏の青空が広がっていた。


「行くよ!みんな!せーの…」

「「「バンザーイ!」」」


背中を強く押され、蔵人はそのまま宙に投げ出された。

胴上げ。

好きだね、君達。


『日本チーム、やってくれました!とうとうやってくれました!世界一位の中国を倒し、堂々の胴上げです!』

「「「バンザーイ!日本チームバンザーイ!」」」

【ワーオ!ジャパニーズ土下座!】

【違う違う!バンザーイだよ!土下座違うよ!】

【【バンザーイ!バンザーイ!】】


浮遊している時に周囲を見回すと、日本選手団と同じように両手を上げてくれる観客達の姿があった。その中には、日本人だけでなく海外の人達も大勢いた。白人や黒人、アジア人。敵であった中国観光客も半分くらいが諸手を上げて喜んでくれている。


【ありがとう!日本!感動をありがとう!】

【素晴らしい!良くぞ中国を倒してくれた!】

【低ランクがSランクに勝った!頂点に勝った!】

【ジャイアントキリング!ジャパンサイコー!】

【【【ニッポン!ニッポン!ニッポン!】】】

「「「日本!日本!日本!」」」


多くの感情が、こちらへと押し寄せてくる。

驚き、感動、感謝、労い。

みんなの暖かい気持ちが痛いほど伝わって来て、蔵人も心が躍る。

空を飛びながら、両拳を突き出した。


『俺達の、勝ちだぁあ!!』


「「「【【【わぁあああああああああああああああ!!!!】】】」」」


熱い歓声が、焦土と化したフィールドに降り注いだ。

世界がSランクの魔力に耐えられなくなりましたか。


「強力な力を持つ者が、必ずしも生き残るとは限らないのが、この世の摂理である」


傲慢、孤独。

チート能力を持っていても、幸せになるとは限らないのですね。


イノセスメモ:

オリンピック本戦、3回戦。準決勝。

日本VS中国。

日本領域:48%、中国領域:52%。

試合時間14分38秒。フィールド上に中国選手が1人も存在しない為、日本のパーフェクト勝利。決勝進出決定。

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― 新着の感想 ―
今回はさすがのSランクだと思いました。ルールと競技に救われた印象です。 なんでもありの殺し合いだったら、さすがにSランクにはやられるのではと感じました。 ていうか、パイロ系が強すぎるw ただ、勝ちは…
ロゴブブ「動けるデブです! パワー殺法と軽快なフットワーク、脂肪Gunアクションが得意です!」 王「サモ・ハ○・ランボ○かよ!Cランクの癖に遠近欲張りセットとか生意気だ!チャーシューにしてやる!」 …
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