398話~ふふふっ~
青い空。白い雲。
煌々と照らす陽光を返す、白い砂浜。
その沿岸で体を揺らすのは、亜熱帯型の植物達。
「もう着いたのか、沖縄」
さっきまで大阪のホテルに居たというのに、気付いたら常夏の世界に来ていた。
史実よりも劇的に早い到着に、蔵人は砂浜を見て感慨にふけっていた。空港への道すがら、所々でテレポートを使っていたし、飛行機自体も1時間掛かっていなかったと思う。
「そりゃ、最速便を使ったからね」
前を行く若葉さんが、得意げに振り返ってそう言う。
最速便。そんな便利な物もあるのか。きっと、エアロキネシスなどの異能力を使って、飛行機の速度を上げていたのだろう。
流石は、異能力が普及した世界である。
「あっ、蔵人君。こっちだよ」
若葉さんが何かを見つけて、蔵人を招く。
彼女の背中を目印についていくと、そこにはアロハシャツを着た女性達が待ち構えていた。
一瞬、観光客かとも思ってしまったが、沖縄ではこれが正装なんだっけ?
蔵人は後ろをチラリと見て、ピッタリ後ろに張り付いている橙子さんに目配せする。
変装は大丈夫ですかね?あ、お任せ下さいって敬礼している。
「ようこそ皆様。お待ちしておりました」
蔵人達が近付くと、アロハシャツの一団が一斉に頭を下げる。
雰囲気からして、ホテルやイベントのスタッフでは無い。どちらかと言うと、軍人や護衛の類いの動きだ。
この人達は、一体?
「お出迎え、誠にありがとうございます」
蔵人は笑顔で受け答えながら、内心で彼女達を探る。
ずっと橙子さんが傍に居たから、ここに来るまで若葉さんとまともに会話が出来ていなかった。でもまぁ彼女の事だから、怪しい人達を呼んだりはしないと思うけれど。
そう思いながら、アロハシャツの一団に連れられて高級車に乗り込む蔵人達。
そうして、車に揺られる事10分。一度那覇市に入った車は、そこから少し離れた所で停車した。
女性達と共に降りた蔵人達が見たのは、
「着きました、黒騎士選手。こちらが本邸でございます」
石造りの立派な豪邸であった。
巻島本家よりも一回りも二回りも大きな家の前には、一対のシーサーが門の上で睨みを効かせている。
その間を、護衛の方々に案内されるままに進む蔵人達。大きな正面玄関から通されて、豪邸の中へと入っていく。
そして、一番奥の部屋に通され…。
「お連れの方は、こちらへどうぞ」
通される前に、橙子さんだけ別室へと案内された。
護衛の方は別室で、と言う事らしい。
一瞬迷った様子を見せる橙子さんだったが、蔵人が大丈夫と頷くと、渋々別室へと向かうのだった。
そして、蔵人と若葉さんは部屋に入る。
入ってすぐに、部屋の真ん中で待機していた女性に目が行く。綺麗な着物を着た女性が、真っすぐに蔵人達に視線を送る。
「ようこそ黒騎士選手。そして、望月若葉さん。我が家にお越しいただき、大変嬉しく思います」
女性がたおやかに笑みを浮かべてそう迎え、優雅な礼を向けてくる。その拍子に、彼女の深く鮮やかな蒼色の長髪が、肩からサラリと流れ落ちる。
デージエイサーで蔵人達と対峙した女性。沖縄で大きな権力を持つ家の当主、尚様だった。
まぁ、これだけの豪邸だから、そんな所だろうなとは思っていたけれど。
蔵人は緊張を少しだけ解いて、深く頭を下げる。
「こちらこそ、急な申し出を受けて頂き、誠にありがとうございます」
どんなに早くとも、アポイントメントを取れたとしたら一昨日の夜だろうからね。下手をすると、今朝の話かもしれない。
お忙しい立場であろう尚様が、そんな急な話でお会いしてくれるなんてなかなかない事だ。
偶然、ご予定が空いていたのか、無理して空けてくれたのか。
どちらにせよ、有難い事には変わりない。
「畏まらなくて結構ですよ、黒騎士選手。私達の歴史に興味を持って頂けたと聞き、私も嬉しいのですから」
「そう言って頂けると、助かります」
はて?私達の歴史?なんの事だ?
頭の中で疑問符がいっぱい飛び交っているが、取り敢えず話の流れに乗る事にした蔵人。
そのまま、尚様に導かれてソファーに座り、尚様と対面する。目の前のテーブルには、3つのお茶とお茶請け。そして、古いアルバムが置かれていた。
アルバム…という事は、この中にツルさんご本人、もしくはその縁者が載っているのだろうか?
期待してアルバムに注目する蔵人。その前で、尚様が恭しくアルバムを手に取り、真ん中辺りを開いた。
白黒の写真が、ページ一面に貼られていた。
尚様が、その中の1枚に人差し指を置く。古い学校の様な所で敬礼をする、若い男女の写真だ。
「この方が、鶴お祖母様です」
その指先では、大柄な女性が凛々しい姿で敬礼していた。
ツル…おばあさま!?
「ツルさん…いえ、ツル様は、尚様のお祖母様だったのですね…」
「いえ。正しくは、私のお祖母様の妹に当たる血筋です」
と言う事は、従祖母という事か。
どちらにせよ、想像以上の高貴な血筋だと分かり、蔵人は言葉を喉に詰まらせる。
それを気にした素振りも無く、尚様はお話を続ける。
「鶴お祖母様はBランクで、フィジカルブーストの異能力種をお持ちの方でした。ですので、代々アクアキネシスの家柄であった我が家において、お祖母様は家督を継ぐ権利が初めからありませんでした。その為でしょうか、彼女は尚家での生活と身分を捨てて、身一つで軍へと志願し、お国のために力を尽くされたのです」
なるほど。だから、雷門様が嘆いたのか。きっとツル様は立派にお勤めをされて、そんなツル様が使われていた装備が戻ってきたから、嬉しくて泣いていたのかもしれない。
しかし、どの家もあったみたいだな、異能力種による差別が。
「尚家では評価さえなかった鶴お祖母様でしたが、Bランクの力は軍隊でも重宝され、スピード出世をされたと聞いています」
蔵人は残念に思ったが、尚様のお話を聞いているとそうでもないと分かってきた。
Bランクのフィジカルブースト力は使い勝手も良く、様々な作戦の中核を担うようになっていく。すると、自然と上官達の目にもとまり、活躍の場が増えていったのだとか。
Bランクでそこまで活躍できる物だろうか?とも思ったが、当時はまだ異能力が発現したばかりで、Bランクでも十分に強い部類に分けられていたらしい。加えて、フィジカルブーストも扱いやすい異能力であったから、より重宝されたのだろう。
炎や雷を扱うよりも、剛力の方が当時の人達には馴染みやすかったのだろう。
今でこそ、手から炎が出ることが当たり前になった現代人だが、当時の人達には異能の力としてしか見られなかっただろう。
蔵人が当時の人達に思いをはせていると、尚様は別のファイルを取り出す。
その中には、黄色く変色した封筒が保存されていた。
「鶴お祖母様から、私の祖母や家族に宛てた手紙です。当時は軍の規律も厳しく、また戦乱の時代でしたので、手紙のやり取り自体が難しいく貴重なものでした。それに、仮に手紙が届いたとしても、検閲がとても厳しく、手紙の半分を黒塗りにされている物も珍しくありませんでした」
確かに、物によっては殆ど真っ黒の物も見受けられる。
こういう所は、第二次世界大戦が起きても起きなくても、似たような事をするらしい。戦乱の世と尚様は言っているが、きっとアグレスの侵攻が激しい時代だったのだろう。その中でも、人々にアグレスの情報を漏らさない様にする為に、史実並の情報統制を掛けたと推測できる。
多くの文字を黒く塗り潰された手紙。だが中には、ほとんど無傷な物もあった。そう言う手紙には、ツル様の人柄が良く現れたプライベートなお話が綴られていた。
勤務地先で参加したお祭りの事や、地元の子供達と遊んだこと。同じ部隊の仲間と馬鹿やった事などが、達筆な字で感情豊かに綴られていた。
仲間の所属や名前等は、検閲で黒く塗り潰されていた。でも、あだ名や愛称は残されていた。その数が多い事からも、軍部の雰囲気はとても良好であったと推測できる。
その中で、良く出てくる人物が2人居た。
鶴さんが所属していた部隊の隊長さんと、部隊最年少の女の子だ。
隊長さんは同じBランクだけど、歳が一回り以上離れているらしく、まるで大きな子供が出来たみたいだと嘆いていた。
そして、もう1人は入ってきたばかりの新人さんらしく、妹の様に可愛がっている事が文章からも読み取れた。
その子の名前は…文ちゃん。
「…尚様。その文ちゃんの異能力をご存知でしょうか?」
「いえ。そう言う情報は、塗り潰されてしまっているわ」
そうだろうな。
蔵人は落胆する。その文ちゃんとやらが、妙に気になったからだ。
聞いた事のある名前だなと。
「ですが、幾つか推測する事は出来ます」
「本当ですか?」
蔵人は顔を上げて、期待を込めた目で尚様を見る。
彼女はそれに、小さく頷く。
「ええ。手紙の中で、地元の子供たちと釣りに赴いた時がありまして、その時、釣り糸が切れて無くなってしまったので、文ちゃんに釣って貰ったとありました。ここから、彼女の異能力が糸の代用品にもなる異能力だと推測出来ます。
ただ、それがゴルドキネシスなのか、メタモルフォーゼなのかまでは定かではありませんが」
もしくは、サイコキネシスかだな。
蔵人は、あの時を思い出していた。蜂須賀さんに襲われたあの夜。彼女の糸の様な異能力を。
そして、倒れた白百合の首に巻かれていた髪の毛を。
「尚様。お話頂き、ありがとうございます」
「こちらこそ、鶴お祖母様の事を知ってくれて嬉しかったわ。立派に戦った彼女が、こうして人々の記憶に残ってくれるのなら、彼女はいつまでも生き続けてくれるもの」
そう言って微笑む尚様は、普通の女性のように見えた。
今まで纏っていたオーラが消えて、素の彼女で接している様な気がする。
本当に、ツル様の事を話せて嬉しいみたいだ。それだけ、彼女の事を公に出来ない何かがあるのかも知れない。
蔵人が邪推していると、部屋のドアがノックされた。
誰か来たのかと思ったら、尚様がこちらに小さく頭を下げた。
「ごめんなさい。次の来客が来てしまったみたい」
尚様がスっと立ち上がったので、蔵人達も立ち上がる。
「では、我々はこれで」
「あら?泊まって頂いて結構ですよ?この時間から帰るのは大変でしょう」
「大変魅力的なご提案なのですが、我々も、次の予定が出来てしまいましたので」
そう言って頭を下げた蔵人の目には、薄らと紫色の光が灯っていた。
若葉さんの協力もあり、蔵人達はその日の内に家へと帰りつくことが出来た。
最速便。やはり強い。
そして、翌日。
蔵人は、今日も出掛けていた。
同行したのは、昨日に引き続いての若葉さんと橙子さん。それに加えて、
「着きましたよ、蔵人様」
「ありがとうございます、柳さん」
今回は、柳さんも一緒だ。
彼女が車を停めた場所は、薄暗い林道の端に設けられた駐車スペース。GWの最終日だからか、こんな早朝でも何台か車が停まっている。
記憶では、車が停まっている所なんて見た事もなかった蔵人は、その光景に少し驚く。
驚きながらながらも、蔵人達はそそくさと林道を歩き進める。
徐々に道幅が狭くなってきて、横を流れていた小川が細い沢になりつつある。
車では通れないだろう道幅を、蔵人と若葉さんが先頭になって登っていると、リアカーを引いた人が上から降りてきた。
その人は、片手でリアカーの取っ手を持ちながら、もう片方の手を高く挙げて、こちらへと手をフリフリ振った。
林業家の田丸さんだ。
「やぁ、君。また遊びに来たのかい?」
「はい。久々にトレーニングをしようと思いまして」
「そいつは良い。雲厳さんも上で元気にしているよ。是非、声を掛けてやってよ」
田丸さんはそう言うと、空のリアカーを引っ張って降りて行った。
きっと、原木を中腹に降ろしてきた帰りなのだろう。彼女は相変わらず、お爺さんを気にかけてくれているみたいだ。
これだったら、お爺さんも寂しくは無いだろうな。
そう思って、蔵人は中腹まで登って行った。
でも、それが間違いだったと、中腹に着いて思い知らされた。
「わぁ!凄い!薪割りをしているわ!」
「私達も体験させてもらいましょう!」
蔵人達がそこに着くと、依然と変わらないボロ宿がぽつねんと座っており、朝露に濡れた草花が周囲でお辞儀をしていた。
だが、その周りを黄色い声で彩っているのは、沢山の女性達。
「みんな!お爺ちゃんがお茶を入れてくれたよ!朝食もすぐ出来るって!」
「私、その前に温泉に入って来るわ」
「私達は展望台に行ってみない?昨日は暗くなっちゃって断念したでしょ?」
「良いわね!そこに行ってから、お風呂と朝ごはんにしましょう!」
10人ほどの団体様が、玉木を置いてある小屋の中を覗いたり、山頂へと続く山道を見上げたりしていた。
言動からして、彼女達は観光客みたいだ。トレーニングウエアを着ている人が多いから、大学とかの運動部が合宿で来ているのかも。
橙子さんは彼女達を見て、一瞬で蔵人を変身させる。少し髪を長くした、巻きちゃんスタイルだ。
蔵人は、ただされるがままになりながら、随分と賑やかになってしまった宿の様子を呆然と眺めていた。
風のうわさで、予約でいっぱいになっているとは聞いていたが、まさかこんなことになっているなんて…。
「おぉお~い。みんなぁ。朝食がでけたけども、中で食べるけぇ?」
ボーっと見回していると、ボロ宿の中からお爺さんが出てきた。
「外で食べる方が良えよ。景色も良えし、そこに机を出しといたから、そこで食べた方が良え。そうしなさいて」
「「「はーいっ!」」」
「うんうん」
女性達の元気な返事に、お爺さんは嬉しそうに頷いて宿の中に引っ込もうとする。
と、戻る間際にこちらと目が合って、そこで動きを止めた。
しわくちゃで殆ど閉じた目が少しだけ開いて、黒い瞳をキラリと輝かせた。
「おぉお~。黒ヤギさんかい?黒ヤギさんじゃろ?」
すすすっと、音もなく近づいて来るお爺さん。それに、橙子さんが前に出ようかどうか迷うそぶりを見せるも、結局蔵人の横に立つだけに留めた。
お爺さんを相手に、あまり強く出ることは出来ないからね。
「(高音)ええ。お久しぶりです、お爺さん」
声を変えて、蔵人はゆっくりと淑女の礼をする。
それでも、お爺さんは満足そうに頷いている。
「久しいの、黒ヤギさん。大きくなって」
「(高音)えっと、前とそんなに変わっていないと思いますよ?」
変身では背丈までは変えていない。お爺さんと会ったのも半年前くらいだし、そこからはそれほど背も伸びていない筈だ。確か、4月の健康診断でも173cm程度だったからね。去年と1cmしか変わっていない。
それでも、お爺さんは満足そうに「うんうん」と頷いている。
…本当に大きくなったかどうかは関係ない。きっと、孫でも見ている気分なのだろうか。
お爺さんが「まぁ中にでも入って、お茶でも飲みなさい」と促すので、蔵人達はそれに甘えて宿の中へと入っていく。
「もうちょっとで朝食が出来上がるでの、中で待っとってくれんかね?」
「お手伝い致します」
お爺さんがヨロヨロと台所に戻ろうとするので、すかさず橙子さんが補助に入る。
蔵人は2人を見送り、囲炉裏の前に立つ。
そして、
「突然押しかけてしまって、申し訳ございません」
天井に向って、そう呟いた。
蔵人の後ろに立っていた柳さんと若葉さんが、顔を見合わせて不思議そうにしているが、蔵人はそれを気にしない。じっと、その場に立って天井を見詰め続けていた。
時間が過ぎる。
柱時計のカチカチという音と、奥の台所でリズムを刻む包丁の音だけが響く。
そうして暫く待っていると、それらの音に加えてシュルシュルという衣擦れの様な音が何処かから聞こえてきた。
次いで、何かが袖を引っ張る感覚を覚える。
「く、蔵人様!?」
柳さんの声に振り返ると、彼女は青い顔でこちらを見ていた。
彼女の視線を追って視線を下げると、右手に長い髪の毛が数本、纏わりついていた。
「こっちか」
蔵人はその髪の毛を握り、それが続いている方へと歩みを進めて行く。
「あの、蔵人様。大丈夫なんでしょうか?その、なんだか、ホラー的な雰囲気を感じるのですが…」
慌てて蔵人の後ろをついて来る柳さんが、恐る恐る聞いて来る。
それに、蔵人は軽い口調で返す。
「ええ、大丈夫ですよ」
なにせここに来た理由は、この髪の毛の先で待つ彼女なのだから。
蔵人は髪の毛に引っ張られるままに、古い廊下をギィギィ言わせながら進み、古ぼけたドアの前に立つ。
そのドアを開けると、薄暗い部屋が広がっており、同時に、酸っぱい匂いが鼻孔をくすぐる。全日本大会の時、蔵人が使わせてもらった部屋だ。
その部屋の片隅には、段ボールで作った棺桶が置かれていた。髪の毛は、その段ボールの中へと続いている。
若葉さんが興味深そうに、段ボール棺桶へとカメラを向ける。
「そこに居るみたいだね」
「ああ。ここはまだ、寒いからな」
柳さんが躊躇している中で、蔵人と若葉さんは部屋へと入っていく。そして、棺桶の蓋を開けると、そこにはすまし顔の人形がちょこんと座っていた。髪の毛は通常の長さまで戻り、まるで何事もなかったかのように振舞う彼女。
蔵人は棺桶の蓋を畳の上に置くと、彼女に深々と一礼した。
「文子さん。貴女にお聞きしたいことがあり、はせ参じました」
蔵人のお辞儀に、市松人形は微動だにしない。ただじっと、自分の足元を見ているだけだ。
それを見て、若葉さんも表情を暗くさせた。
「蔵人君。こういうのって、時と場合があるんだよ。今は日も登っているし、幽霊ってのは夜じゃないと動かないよ」
「蔵人様。その、下手なことをすると、呪われたりするって聞きますし…」
2人が服を引っ張るも、蔵人は動こうとはしない。
ジッと、市松人形を見詰める。
そして、
「文子さん。ツルさん、という名前に聞き覚えはありませんか?」
そう、問うた。
その途端、市松人形の口が「カタカタ」と小さな音を鳴らし、蔵人の後ろでは「ガタガタ」と柳さんが震える。
そして、頭の中で『ふふふっ』という少女の声がはっきりと聞こえた。
文子さん…。
貴女は、ただの幽霊じゃないのですか?
「幽霊な時点で、”ただ”は付かんと思うがな」
まぁ、確かに。