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382話~何してんだ?お前~

気が付いたら、何にもない真っ白な空間を漂っていた。

見渡す限り全てが真っ白な空間に、何処からか光が煌々と降り注いでいて、それでも眩しくはない不思議な空間。

ここは…天界か。

随分と唐突だし、そもそも何故こんな所に来ているんだ?

俺が不思議に思っていると、上空から翼を羽ばたかせる音が聞こえた。

次いで、鈴を転がした様な声が。


【ようこそ、闇の眷属様】


大天使様だ。

お正月ぶりのご尊顔は、相変わらず作られたような究極の美を携えている。

完成された存在に、俺は深々と腰を折る。


『お久しぶりです、大天使様。再びお会い出来て光栄です。

光栄なのですが…何故、私はここに居るのでしょう?』


確か、さっきまでコンプトンで暴徒達の鎮圧を行っていた筈だ。鈴華達を助け出して、Sランクヒーローの足止めをして…その後は…ええっと…。


【眷属様はその後、深い眠りについてしまったのです。強力なバグの力によって】


ああ、そうだった。確か急に眠くなって、赤カメさんの背中に負ぶさろうとしたんだった。そこで、記憶が途切れた気がする。

俺が顔を伏せて記憶を辿っていると、大天使様が不安そうな顔で覗き込んで来た。


【あのままでは眷属様までが操られてしまうと思いましたので、私が貴方様の魂をこちらへと避難させて、事無きを得たのでございます】

『なるほど。そう言う経緯だったのですね。助けて頂き、本当にありがとうございました』


危なく、俺まで暴徒の仲間入りをするところだったのか。自慢になってしまうが、ミラブレイクはかなり強力な技だからな。あんなものを野放しにしてしまえば、特区の壁だって危なかった。


【眷属様。目覚めて早々で心苦しいのですが、直ぐにでも地上にお戻り頂いて、バグを消滅して頂けませんでしょうか?今、地上で暴れている個体は強力でして、こうしている今も地上の子供達を巻き込んで、世界を壊そうとしているのです】

『まぁそりゃ、強力でしょうね』


何せ、ゲームでも日輪を壊滅寸前まで追い込んだアグレスなのだから。

Sランクアグレス、機械(デウス)仕掛け(エクス)()神様(マキナ)

復興が進み、いよいよ南諸島の島を奪還するぞ!となっていた主人公達を、突如襲ったアグレスは、一夜にして特区外の暴徒を掌握し、次の日の朝にはトーキョー特区を壊滅させた恐ろしい敵。

何が恐ろしいってこいつ、ヒュプノスとドミネーションの合わせ技で一般人を操り、操られた人も異能力を使うという1人旅団みたいなことをするトンデモないアグレスなのである。

主人公達も一般人を攻撃することは出来ず、防衛に成功した北の大地に逃げて態勢を整えることにしたのだった。


侵攻は5月のGW。だから、それまでは安全だろうと思ってアメリカに来たというのに、まさかこっちにカイザー級が来るとは思わなかった。

とはいえ、ここで機械神を仕留めてしまえば、血のGWは発生しなくなる。甚大な被害が出る筈だった日本では、被害をなくすことが出来るかもしれない。

浅ましい考えだが、それが事実だ。


不安そうな大天使様に、俺は一つ頷いて見せる。


『お任せください、大天使様。必ずや、機械神を倒して見せます』


場所は異能力大国アメリカ。Sランクの異能力を2つ以上使う強敵に、俺一人では太刀打ちできない。だが、みんなと協力したら、きっと何らかの突破口は見える筈だ。

俺が大きく出て見せると、大天使様はお顔を緩められた。


【流石は闇の眷属様です。では、直ぐに地上へお送りしますね】

『はい。よろしくお願い致します』


俺がそう言った途端、視界ががらりと切り替わる。真っ白な空間から、薄暗く狭い空間が視界を狭めて来た。

これは…箱?いや、バスの中みたいだ。朽ちたバスの中で、俺は1人寝かされていた。周囲には暴徒も居なければ、鈴華達の姿もない。

これは…どう言う事だ?


【眷属様、貴方様を敵地の真っ只中にお送りいたしました。ああ、ご安心ください。いきなり敵に襲われない様。そして、もうカイザー級の異能力に干渉されない様に、眷属様には私の加護を付けておりますので】

『えっ!?大天使様のご加護?それって、バグを発生させたりしない奴ですよね?』


そんなチート能力を備え付けられたら、今後の活動に支障をきたすぞ?最悪、この世界からおさらばしなきちゃいけなくなる。

蔵人が心配すると、大天使様はドヤ顔で頷いた。


【大丈夫です。この戦い限定ですので】


ならば…まぁ、良いか。今回はカイザー級の方がヤバいバグだから、奴を早く倒す方が先決だ。

そう思った俺の目の前に突然、アグレスが現れた。

大きさからして、ソルジャー級。それがすぐ目の前に6体、奥に2体居る。

唐突に現れたぞ?なんだ?こいつら。


【さぁ。戦ってください、眷属様。侵略者は我々の敵です。アメリカを、この世界を、どうかお救い下さい】


大天使様の切なる願いに、しかし、蔵人は動けないでいた。

いや、分かっているんだけどね、大天使様。なんか、こいつらに違和感があるんだよ。

一向に襲ってこないアグレス共を見て、俺は少し躊躇していた。

そこに、


【あなただけ…なぁ〜いで♪】


何処からか歌声が聞こえて来た。この歌声は…セレナさんだ。

何故、こんな場所で彼女の声が聞こえる?敵軍の真っただ中に送ってもらっているんだぞ?彼女も、この近くに居るとでも言うのか?いや、この声は…上から聞こえる気がする。

これは…。


【何をされているのですか?眷属様。早くアグレスを殺してください。侵略者は悪です。人間を脅かす侵略者を殺して、日本に平和を取り戻してください】


大天使様の声が、バスの天井を睨みつけていた俺を急かす様に降りかかって来た。

まるで、余計な事を考えるなとでも言うように。セレナさんの歌声をかき消すかのように。

大天使様は、必死に声を張っていた。


だが、俺は動かない。歌声に、鈴華の声も聞こえた気がしたからだ。

こうやって、天から声が降って来るっていうのは、俺の経験上で言うと夢の場合が多い。もしくは、俺が死の淵を彷徨っていて、ベッドの端で誰かが叫んでいるかのどっちかだな。

まぁ、どっちにしても…。


『ここは現実じゃねぇってことだよなぁ』


俺がそう呟いた瞬間、眩い光が視界に入る。その光源は、俺の真横で発生していた。

俺が驚き、その光源から身を引くと、光は収まっていき、白い翼を折りたたんだ大天使様の姿がそこに現れた。

彼女は、両手を胸の前に組んでこちらを見上げた。


【眷属様。貴方様だけが頼りなのです。どうか、どうかこの世界をお救い下さい。か弱き子羊達にどうか、貴方様のお力添えを…】


泣きそうな顔で懇願する彼女は、心の底から守ってあげたいと思える存在に見える。目を潤ませて、本当に俺しか頼りになる者が居ないと訴えかけてくる。

そんな彼女に、俺は笑いかける。

そして、


『何してんだ?お前』


俺はその笑顔のままで、冷たい言葉を吐きかけた。

目を点にして見上げてくる大天使に、俺はため息混じりに説明してやる。


『大天使様程のお力を持つ方が、この地上へ降りられる訳ねぇだろ。世界の秩序が崩壊するぞ?』


だから大天使様以上の方は、信託とか、勇者や俺なんかを派遣してバグ退治をしてるのだ。

だと言うのに、こいつはそんな事も知らずに地上へノコノコやって来た。平気な顔して、俺の前に現れやがった。

それはつまり、自分が大天使様じゃないと言っている様なものだ。

尻尾を出したんだ、この阿保は。


俺がそう言う意味で乾いた笑みを向けると、大天使モドキは表情を引っ込めた。

そして、次の瞬間には、キラキラ潤んでいた瞳が落ちくぼみ、真っ暗な空洞を俺に向けてきた。

その空洞に、怪しい赤を光らせる。


【シンリャクシャをコロセ。コロセ。ニンゲンを脅かすシンリャクシャをコロセ。ニホンをシンリャクする奴らをコロセ】

『はっ。そうやってお前は、他の人達も操っているんだな?』


大方、その人物が敵意を向きやすい人や物を、標的の座標と挿げ替えて攻撃させているのだろう。俺の記憶でも読み取って、バグであるアグレスを配置したら攻撃するとでも思って。

だから今、俺の目の前にいるアグレス共は本物のアグレスではなく、こいつにとって都合の悪い存在なんだと思う。バスの中だから、最悪、鈴華達って可能性も十分に有り得る。

だがな、


『その手には乗らねぇぞ?機械神』


気付いてしまえばこっちのもの。この空間では一切、手出ししない。そうすれば、少なくとも現実世界の俺は大人しく寝ているだけの置物となる。


【あっそ。じゃあいいよ】


大天使だった者はそう言うと、変身を解いていく。

美しい金髪が真っ白に染まり、愛らしい顔はあどけない少年の物となった。

何処か冷めた様子の少年が、蔵人を詰まらない物を見る目で見下ろしてくる。


【なんか僕に似ていたから声を掛けてやったのに、全然詰まらない奴じゃないか。あーあ。だったら、あのピーチク歌ってた小鳥を先に取り込んでやれば良かったよ】


舐めた態度でそう言う少年の姿が、霧になって薄くなっていく。そしてすぐに、空気に溶けて消えてしまった。

少年だけじゃない。周囲の景色も全て消え去り、あるのはただ真っ暗な闇だけになった。


【他にもいっぱい操り人形(へいたい)は居るんだ。お前はそのゴミ箱で、一生を過ごすと良いよ】

『おい!待ってくれ!せめて話し相手くらいにはなってくれないか!?頼むよ!』


俺が少し情けない声を出したが、少年はもう居なくなったみたいだ。さっきまであった気配が無くなってる。

しまったな。拗ねさせないで、もう少し情報を引き出せばよかった。あんな流暢に喋るアグレスだ。色々と奴らの情報を持っているに違いない。だが、ここが本当にゴミ箱なのだとしたら、彼はもう戻ってこない可能性が高い。


仕方ない。脱出方法を探すか。

俺は周囲を探るが、本当に何もない。と言うよりも、ここは俺の夢なのだから、先ずは起きることを最優先にするべきだと思う。

頬でもつねってみるかみるか?意味なし。じゃあドリルで風穴でも開ける?現実でもやっちまったら大変だから、やめとこ。

さて、どうするかと俺が知恵を搾っていると。


「坊ちゃま!」


声が聞こえた。それもまた、上空から。

この声。そして、俺を坊ちゃま呼びするのは…。


『柳さんか!』

「坊ちゃま!見つかって良かったぁ!」


見上げていると、柳さんがこちらへと泳いできているのが目に入り、近くまで来ると、彼女は俺を抱き寄せた。

夢の中なのに、温かさを感じるとは不思議だ。これも柳さんの覚醒した力か。


「随分と探してしまいました。とても広いんですもの、この空間」

『それはそれは、流石は柳さんだ。その力で、俺を夢から目覚めさせることも出来ます?』

「出来る…と思うんですけど…取り敢えず、出口は分かるので付いて来て頂けますか?」

『ええ、勿論です。あっ、手を繋いで貰えます?俺1人だと、ここの流れに逆らえないみたいなので』

「ふふふっ。昔を思い出しますね」


昔って、相当昔を言ってますよね?

俺は柳さんに手を引かれ、上へと泳いでいく。

すると、真っ暗だった空間に星の様なものが現れ始めた。泳ぎ進めるとそれは星ではなく、光が漏れる窓だと分かる。

何の窓だろうか?

俺が覗き込むと、窓の向こう側の風景が頭の中に飛び込んでくる。


『Eランクのゴミが。こんな所をうろついてんじゃないよ!』

『お前がどんなに頑張っても、この肥溜めからは出られない。俺達と壁の向こうに住む人間は違う種族なのさ』

『Eランクだからって、警官に信じて貰えなかったって?そんなのいつもの事だ。ほれ、これでも吸って忘れろよ』

『壁なんて見ても、何も面白い事なんてありゃしねぇよ。それより酒だ、薬だ。それ決めて歌えばハッピーだ。ラップが俺達の生きがいよ』

『あと、セレナの歌もな』

『それそれぇ!』


どうやら、先ほどの暴徒達の夢らしい。彼らも押し込められた鬱憤があったから、機械神に操られてしまったのだろうか?それとも何か、操られやすい条件があるのか?

窓の中を垣間見ながら、俺は泳ぎ続ける。すると、ひと際強い光を漏らす窓があった。


【%*#=dushu@&][@!!】

【%*++detyuamu-[-#@@!?】

【%*+#=@!%&ura!!】

【【%&ura!!】】


その中では、武装した多くの女性兵士が何かを叫びながら、こちらに立ち向かって来る場面だった。

だが、彼女達は近づいた途端に倒れ込んで昏睡している。

これは…恐らく機械神の夢。と言うか記憶か?


俺は立ち止まり、その窓を覗き込む。何か、ヒントがあるんじゃないかと思って。

そうしていると、


『あんた、あんたは一体、何なんだい?』


古いカメラを持った初老の女性が、目の前に飛び出して来た。お婆さんは、恐ろしい者を見る目でこちらを睨みつける。

驚いたことに、彼女の発する言葉は日本語だった。こん睡させられる兵士はみんな、聞き取れない外国語を叫ぶ中で。

それに、彼女には何処か、見覚えがある気がする。


【それはなに?怖いもの?痛いもの?】


窓枠の外から、幼い声が聞こえる。きっと、機械神の声だ。

それに、お婆さんが硬い笑顔で答える。


『怖くないさ。こいつはカメラだよ。大事な記録を取っておく為の機械さ。まぁ私は、この中にも一生記録されるんだがね』


お婆さんはそう言って、自分のこめかみを指さす。

そんな彼女に向けて、窓枠の下から白い霧で覆われた手が伸びる。


【カメラ…欲しい。大切、欲しい。おまえ、欲しい】

『はっはっは。この年で求愛されるとは思わなかったよ。だが悪いね、私には家族がいる。近いうちに孫も生まれるんだ。だから、絶対に帰らにゃならんのよ』

【家族…分からない。命、欲しい。敵、命、コロス】

『あっ、待ちな!あんた、何処に行くんだい!戻りなs…』


画面が急に反転し、暗闇ばかりが映る。

まだ何か映らないかと期待したが、どうやらこの記憶はここまでの様だ。


「蔵人様。あの、皆さんもお待ちなので」

『ああ。すみません、柳さん』


俺は後ろ髪を引かれる思いで窓から離れ、柳さんと一緒に泳ぎを再開させた。

暫く泳ぎ続けると、目の前の水面が現れた。明るい光が入って来る、ユラユラと揺らぐ海面だ。ここが、夢の終着点らしい。


『いやぁ。助かりましたよ、柳さん』

「お役に立てて良かったです。さぁ、早く皆さんの所に」


そう言って柳さんは消えた。きっと、向こう側に戻ったのだろう。

俺も戻ろうと手を伸ばした時、


【待って!】


後ろで声がした。

振り返ると、海底に鶴海さんの姿があった。

彼女は必死な形相で、こちらに手を伸ばしていた。


【待って蔵人ちゃん!一人にしないで!】


彼女の様子に、蔵人は鋭い視線を返す。


『鶴海さんを擬態するとは良い度胸だな、てめぇ。現実(むこう)で首を洗って…いや、胸を洗って待っていろよ』


俺が指を突きつけると、泣き顔だった鶴海さんは表情を消し、ニヤリと笑った。余りに大きく笑うので、口が裂けて耳まで達していた。


【やってみたらいいわ。私には今、大勢の兵隊が居るの。それも、もっともっといっぱい集めるわ。その中に、貴方の大切な人も、全部、全部取り込んであげる】

『良いだろう。勝負と行こうじゃないか、デウス・エクス・マキナ』

【望むところよ。闇の勇者様】


その言葉を最後に、鶴海さんだった者は白い霧となって消えた。

俺は今度こそ、輝く海面に手を伸ばす。

光が、目の前いっぱいに広がった。


〈◆〉


目を開けると、そこには染み一つない真っ白な天井が広がっており、少し薬臭い空気が鼻を突いた。

医務室…いわゆる、知らない天井だ状態という事か。

蔵人が自分の状態を確認していると、視界の端から柳さんの顔が現れた。


「お帰りなさいませ、蔵人様」

「ええ…ただいま帰りました、柳さん。まさか、この歳で迷子になるとは…お恥ずかしい限りです」

「私は楽しかったですよ?久しぶりの、蔵人様とのお散歩は」

「そいつは…良かったです」


冗談を飛ばしながら、蔵人は上半身だけ起き上がられる。すると、いきなり肩を掴まれた。

目の前には、目を真っ赤に泣き腫らした鈴華が居た。


「ボス…もう、大丈夫なのか?何処も痛くないか?」

「えっ?ああ、大丈夫だ。これと言って…」

「良かったぁ」


鈴華はそう言いながら、抱き着いてきた。

あの目、そしてこの態度。相当心配させてしまった様だ。


「済まない、鈴華。心配を掛けた。もう大丈夫だ」

「良かった、ぜ。グスッ。ほんと、良かった」


鈴華は声を震わせながら、蔵人が目覚めた事を喜んでくれた。

蔵人はそれに感謝するように、彼女の頭を優しく撫でた。撫でながら、周囲を見渡す。起きた時に思った通り、小さな医務室だった。簡易ベットが3つほど並んでおいてあり、奥の方には医療品の棚が置いてあった。そして、出口にはこっそりと出て行こうとする大野さん達の姿があった。


「大野さん」


蔵人が声を掛けると、抜き足差し足で出て行こうとしていた大野さんが、ピクリッと肩を跳ねさせて止まった。そして、怒った風の顔でこちらを振り返った。


「空気を読めや、黒騎士。てめぇらの為に、俺らが気を使って出て行こうとしてんのに、呼び止める奴があるかよ」

「それはそれは、お気遣いありがとうございます。ですが、今は一刻も早く状況を知りたいんです」


蔵人がそう言うと、大野さんの瞳が更に鋭くなる。


「どういうつもりだぁ?黒騎士。まさかてめぇ、また首突っ込もうとしてんじゃねぇだろうな?病み上がりの体でよぉ?あぁん?」


作った風ではない本気の怒りで、大野さんがこちらを睨みつけて来る。

その鋭い視線を見ていると、本気でこちらを心配してくれているのが分かる。鈴華の様な態度では示さないでも、彼なりに気を揉んでくれたのだろう。

そう思うと、蔵人は嬉しくなる反面、絶対に彼らを守りたいと思った。

機械神になぞ、この人達はやれないと。


「大野さん。敵は強大です。ただ力の強い異能力者だったら、Sランクヒーロー達でも対処出来たでしょう。ですが、今回の相手はただ強いだけでは対処できない相手だ。逆に、相手の戦力を増やす結果となってしまう」

「てめぇ。随分と詳しいな」

「ベイカーさんから聞きましたし、現地でも見ましたからね」


本当は、林さんの事前情報と、機械神本人から体験させてもらった経験が大きのだがね。


「大野さん。俺を、いえ、俺達を連れて行ってください。必ず、突破口を作って見せます」


蔵人はそう言って、大野さんを、彼の後ろに居る人物に目配せをする。

きっと、貴女の力が必要なんです、柳さん。

見事、柳さんが連れ帰ってくれました。

けど…エグい事をしてくれますね、カイザー級。


「悪意の塊であったな」

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― 新着の感想 ―
今までの情報から、大天使様がそこまで一つの世界に固執するのか疑問でしたが…偽物でしたか。人間的思考を持つアグレスというのも面白いですし、記憶に出てきたご老人も気になる…異能力が林嬢と同じものだとして、…
柳さん死んじゃうかとちょっと不安だった。良かった良かった。このあとは柳さんとシンクロかな?
黒戸≒蔵人の記憶を解析して最適の舞台装置(大天使含む)を構築したのか、それとも両者共に時を越え存在を 替えて戦い続ける半神的存在?ゆえ互いの背景・手の内はお見通しなのか。あと大天使様は観戦してそうw …
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