表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
413/482

380話〜こうするよなぁ、あんたなら〜

他者視点です。

怪しい青い薬を飲んで凶暴化したおばさん。謎の力とバフも乗って、特区の外で規格外のBランクまで強化されていた。

けど、所詮はBランク。


「あたしの敵じゃないぜ」


浮かせた手甲をおばさんに向かわせて、丸々と肥え太ったそのボディにタッチする。溢れ出るおばさんの魔力を把握した。


「うわっ」


やっぱ、すげぇ魔力量が増えてる。しかも、荒波みたいに荒れ狂っていて扱い辛い。

あたしはおばさんを空中に浮かせて、そのまま近くで横転していた車のボンネットに叩き付けた。

それを見て、苦しんでいた男達が目を見開く。


【【姉御!?】】

【…うる、さいねぇ】


男達の悲鳴を聞いて、おばさんは立ち上がる。頭からどす黒い血が流れ出し、鼻からもツーっと鼻血が滴り落ちた。

それでも、おばさんは笑顔だ。

獣が牙を剥き出す様な笑みを浮かべて、彼女を心配そうに見ている男達に指示を飛ばす。


【何してんだい?早いとこキメなよ!】


男達は一瞬、手元に視線を落として固まる。でも直ぐに動き出し、おばさんと同じように青い小瓶を煽った。その途端、あれだけ苦痛に悶えていた男達がスッと立ち上がり、顔に奇妙な笑みを浮かべた。


【うわぁ、ホントだ。これ、めっちゃ効くぞ!】

【普通のDじゃねえ。原液なのか?これ】

【世界が俺を中心に回ってるぜ!】

【最高にハイってやつだぁ!】


さっきまでの縮こまっていた態度から一変、男達は歓喜に打ち震え、こちらへと視線を向けてくる。

その目からは、完全に恐怖の色が消えていた。あるのはただ、ギラついた危険な色。

おばさんと同じ、狂気の色。


【ホラ仕事だよ、野郎ども!】

【【【イャェエエア!!】】】


危ない目をした男達が次々と駆け寄ってくる。

アクセラレートで加速したり、リビテーションで跳躍したり。さっきまで使ってなかった異能力をフル活用していた。


「マグネパウンド!」


あたしは白銀鎧を投げつけて、そいつらを迎撃する。

けれど、筋力と異能力を強化された不良達は凄く速くなってて、放った手甲も簡単に避けてしまう。

加えて、


【おらぁ!】


強化された腕力で、そこらの石を投げつけて来る。

元々遠距離攻撃が苦手なあたしは、魔力も磁力も全く纏ってないそれを防具で弾くことしかできなかった。


セレナ達は、ちゃんと逃げてくれているか?

振り向くと、結構離れてくれている。これなら、ヤバい攻撃は避けながら後退出来る。


あたしは奴らの攻撃を回避しながら、少しずつ奴らの魔力を掌握していく。

魔力が増えてくれた分、磁化してしまえばこっちのもの。Cランクの魔力くらいまで増えてくれりゃあ、宙に浮かせることも出来る。

でも、相手の数が多いし、何より無鉄砲に突っ込んで来る奴らばかりだから、ちょっと怖く感じる。


「そら、吹っ飛べ!」

【がぁっ!】


磁化した奴を大砲の弾みたいに弾き飛ばし、近づいて来ていた他の男達も巻き込んで吹っ飛ばす。なかなか盛大に吹っ飛んでくれて、みんな仲良くゴミ捨て場に突っ込んだ。

なかなかの威力で吹っ飛ばしたはずだったけど、奴らはすぐに立ち上がる。中には、腕が変な方向に向いた奴や、身体中にガラス片が刺さった奴もいた。

それでも、男達はすくっと立ち上がった。目の焦点は虚ろで、黒ずんで欠けた歯を剥き出しにして笑う。

本当に、こいつらゾンビになっちまったんじゃねぇか?


あたしが苦戦してると、歌っていたロボットが嬉々として叫ぶ。


【良いぞお前ら!やれ、やっちまえ!その…どもを…にしろ!】


何なんだ?こいつ。なんでこんなに、あたしらに敵意を剥き出しにしてんだ?特区の人間だろ?

意味が分からなくて、あたしはロボットを睨みつける。すると、そいつはあたしに指をさしてきた。


【いい気味だぜ、オージョー。てめぇらのせいで、俺がどんだけ迷惑したのか…してやる!お前らさえいなけりゃ、俺は今頃大金持ちになってて、婚約だって破棄されたりはしなかった。全部、全部てめぇらが悪い!この俺を苦しめた罪を、死んで償え!アジア人!】


うん?今のアジア人ってフレーズ、やっぱ聞いた覚えがあるな。

あっ、あれかな?開会式前に絡んできた男が、確か同じ様な事を言っていた気がするぞ。そんな奴が、なんでこんな所に居るんだ?


あたしは不思議に思ったけど、考えている暇はなかった。不良達の攻撃は激しくて、ちょっと目を離しただけで結構ピンチになってしまった。

何とか目の前の奴を吹き飛ばして、近づいてきた奴らも巻き込んで倒したけど、あとちょっとで捕まりそうだった。


いっそ、ワザと捕まって奴らの魔力を磁化するか?

いや、ドミネーターとかヒュプノスとかいたらやべぇからな。やっぱ近付けないに越した事は無いぜ。


【おい、銀髪!】


あたしが不良3人を空中に浮かせていると、後ろから声を掛けられる。

顔だけそちらを向くと、

さっき逃げた黒人男性が瓦礫の上に立って、その太く黒い腕の中に捉えられたセレナの姿が目に入った。


【そ、それ以上動くな!こっ、こいつの喉をかく、き、掻っ切るぞ!】


セレナの喉に、デカい軍用のナイフを突き立てる男。

マジかよ!?テレポーターの姉ちゃんはどう…あ、男の足元で寝てる。くそっ、男にやられたのかよ。


【おい、そこのデブ!そのまま歌姫を捕まえてな!】


あたしが動けないでいると、おばさんが近寄ってきて黒人男性に指示を出した。

そして、こちらを向いてニヤリと片頬を上げた。


【あたいらはブラッズ。ここはあたいらの縄張りさ。ここに居る住人はみんな、あたいらの味方だ。特区のお貴族様がどれだけ強かろうと、ここの住人全てを敵に回して、生き残れる奴なんていやしないんだよ】


おばさんは勝ち誇り、磁力に問われてい不良達を無理やり引きずりおろした。そして、立ち上がった不良達にあたしの両腕を拘束させる。

くそ。こんな奴ら、盛大に打ち上げるだけの魔力は残ってるのに…。


【動くんじゃないよ。あんたらを生け捕りにしろとは言われてはいるけど、別に、五体満足かどうかなんて約束しちゃいないんだよ。下手なマネしたら、Dで興奮してるこいつらが何するか分からないよ?】


だから、Dって何なんだよ。こんな短時間で目ん玉ギラギラさせる麻薬って、絶対やべえ奴じゃん。

異様な雰囲気の不良達を見回しながら、あたしは次の行動を考える。

どうする?こいつら瞬殺して、急いでセレナを捕まえてるデブ殴り付けて、テレポーター目覚めさせて兎に角逃げる?そんなの、とてもあたしだけじゃ手が足りないぞ。


「どうすりゃ良いんだよ…ボス…」


どうしようもない。そんな弱気からか、自然とあの人の事を考えてしまう。ボスならどうするか、ボスならこうするだろうって、頭の中のボスが暴れ出す。

あの人が考えるのは、先ず人の事。

大事な人を守る事を優先する筈。

だから、ここは、


「こうするよなぁ、あんたなら」


あたしは磁力を操作し、地面に落ちていた鉄筋入りのコンクリート片を持ち上げる。

それを、思いっきりセレナの方に放った。


【がぁっ!】


コンクリート片はセレナを捕らえていた男の額に当たり、男は頭を押さえながら後ろに倒れ込んだ。

結構な速度で打ち出しちまったけど、死んだりしないよな?


【このアマ!】


おばさんが叫ぶ。手にした銃を振り上げて、持つ(ストック)をこっちに振り下ろして来た。

やっべ。セレナの安全しか考えてなかったから、こっちをどうするか考えてなかったわ。

あたしは急いで磁力操作しようと考えるが、間に合わない。

このまま、殴り倒されて…。


そう思ったその時、

高く上げたおばさんの銃が、横に吹っ飛んだ。

何かが銃に突き刺さったんだ。

銃と一緒に道路へ突き刺さったのは…剣?三又の槍の先みたいな片手剣だ。


【痛っ!誰だ!?誰がやった!】


右手を押さえて喚くおばさん。

それに答える様に、空から声が響いた。


【カゥワ・バンガー!】


なんか聞いた事ある声と共に空から降ってきたのは、4人の亀。大きな甲羅を背負った緑コスチュームの女性達だった。

あれ?こいつらって。


【トータスズ!?なんで、Sランクヒーローが、こんな所に来るんだい!?】


それそれ、トータスズ。ボスと映画の共演するとか言ってたスタントマン達だ。


【なんでって、そりゃ私達はヒーローだからね】

【そうそう。いつも誰かのピンチに駆けつけるってのがお約束なんだよ】

【まぁ実施は、偉い人から出動命令があったからだけどね】

【身も蓋もない事は言いっこなしですわよ、ドナさん】


緊張感に欠ける4人だけど、緊張感する必要も無いんだろうな。だってこの人達、全員Sランクなんだろ?だったらもう、楽勝って事じゃん。


あたしが勝ちを確信して肩の力を抜いていると、オレンジハチマキをした亀がこっちに駆け寄ってきて、あたしを抑えていた男をヌンチャクで殴り飛ばした。


【怪我して無いかい?銀髪の別嬪(べっぴん)さん】

【えっ、ああ。あたしは大丈夫。でも、セレナ達が…】


あたしがセレナ達の方を向くと、オレンジは【そりゃ、大変だ!】とそっちに駆け寄っていく。

あっちは大丈夫そうだな。


あたしが視線を戻すと、そこでは不良達を相手に無双を繰り広げるヒーローが4人。

…4人?

ありゃ?いつの間にか1人増えてるぞ?真っ赤な全身パワードスーツを着た奴が、空から悪漢共を攻撃している。パイロキネシスなのか、足から背中からロケットブーストで空を飛んでいた。

他の亀3人も、アクアキネシスの双剣やエレキネシスを纏った棒で次々と不良を倒していく。

でも、


【こいつら、タフ過ぎない?何度倒しても向かってくるよ】

【電撃を頭に食らわせてるのに、平気で立ち上がるね。まるでゾンビみたいだ】

【師匠が言っていましたでしょう?特区の外で怪しい薬が出回っていると。きっと、そのせいですわ】


相手がSランクのヒーローでも、不良達は構わずに彼女達へ突っ込んで行った。まるで、命など要らないと思っているみたいに、笑みまで浮かべてSランクに躍りかかる。

弱い男性ばかりとは言え、この異常な光景を前にして、ヒーロー達は困り顔だ。本気を出せば、この辺を焼け野原にも出来るだろうに、なんで本気を出さないのだろう?

あれか?不良とは言っても、こいつらは一般人だから、怪我させないようにしてるのか?こんな所じゃ、ヒーラーも居ないだろうから。


【おーい!アイツがバフ掛けて、不良達を強化してんだぞ!】


だからあたしは、ヒーロー達に教えてやった。この状況を厄介にしている元凶を。

指を刺された借金ロボットは、それでも胸を張っていた。これみよがしに歌い出して、不良達を強化している。


何やってんだ?アイツ。あんなことしたら、一発でバレるだろうが。

あたしが不思議に思ってると、パイロキネシスの赤いヒーローが、一目散に借金ロボットの前まで飛んで行く。そして、その片手をそいつへと突き出した。


【歌をやめろ。お前を拘束する】

【はぁ?おいおい。なに言ってんだよ、お前。俺も依頼されてこんな事やってんだよ。つまり、俺とお前らは仕事仲間なんだよ。分かったか?】

【何を言っている。私はただ、彼女達の救出を依頼されただけだ。そこに、テロリストの援助をする等といった内容は含まれていない】

【はぁ?テロリスト?お前、誰に向かってそんな事言ってんだよ?】


借金ロボットの声が掠れる。本気で分かってなかったみたい。

それに、赤いヒーローが黙って彼を指さす。お前がテロリストだと、現実を突き付ける。

途端に、借金ロボットは震え出す。

怒りに震えた声を吐き出す。


【ふざけんなよ。ふざけんな、この…が!俺はな、メロン家のご令嬢とも婚約してたんだぞ?!Bランクのこの俺を、テロリスト呼ばわりだと?ふざけんな!俺は、あの女にどうしてもって言われたから、ここに居るんだぞ!】

【あの女?】


赤いヒーローが首を傾げると、借金ロボットは胸を張る。自信を取り戻したように声を上げる。


【そうだ!俺はあいつに頼まれたんだ!あの…ほら、みんな知ってる…あれ?俺に依頼してきたのって…誰だ?】


尊大に膨れ上がっていた借金ロボットが、徐々に小さくなっていく。頭を押さえて狼狽え始めた。

そこを、赤いヒーローは容赦なく取り押さえる。借金ロボットを地面に這いつくばられて、両腕を後ろで縛った。

めっちゃ速い。流石はプロだな。


【離せ!ふざけんな!俺はBランクの男だぞ!こんな事して、タダで済むと思ってんのか!】

【Bランクでも男性でも、犯罪者は犯罪者だ。大人しく裁かれるんだ】

【ふざけんな!俺は男で、希少な存在で、お前らなんかよりよっぽど偉いんだぞ!お前なんて訴えてやるからな!絶対に、許さないぞ!】


ロボットは地べたを這いずり回り、惨めに叫び続ける。

そんな事をしている内に、周囲も静かになっていた。

バフが切れた不良達は、力が抜けたみたいに地面を転がり、ただ乾いた笑いを上げるだけになった。

こっわ。完全にヤク中じゃん。近づかないようにしようっと。


【スズカー!】


異様な光景にあたしがドン引きしていると、後ろから声がした。次いで、柔らかい衝撃が加わる。

セレナだ。


【鈴華、ありがとう。めっちゃ格好良かったよ】

「おう、セレナ。怪我は大丈夫か?」


あたしは抱きつかれた手を解いて、セレナの体を見回す。

うーん、うん。大丈夫そう。ちょっと首筋が赤くなっているのは、あの黒人男に掴まれたからか?


【お2人さん。怪我は無かったかな?】


セレナの無事を確認していると、オレンジハチマキの亀が近づいてきて、あたし達を上から下まで見回した。

セレナが無事だと答えると、亀は【良かったぁ〜】と大きく息を吐いた。

なんか、憎めない亀だな。


そう思っていると、急にオレンジ亀の目が吊り上がる。

その目のまま、借金ロボットを見下ろす赤いヒーローまでズンズン近づいてい行った。

そして、赤いヒーローの胸ぐらをグイッと掴んだ。

なにっ!?仲間割れか!?


【お前、どう言うつもりだ!】

【なっ、何を、いきなり!?】


何が起きたと、あたしが目を白黒させている前で、2人のヒーローが取っ組み合う。

赤いヒーローは驚きで声を震わせるも、オレンジ亀は手を離さない。それどころか、他の亀達も集まってきて、同じ表情で赤いヒーローを睨みつける。

4人同時に、赤いヒーローを睨み上げる。


【お前、私らよりも早く来ておいて、ずっと空でホバリングしてただろ!】

【ピンチになるのを待ってたのか?浅ましい奴だ】

【お陰で目印にはなったけどさ、取り返しのつかない事になったらどうするつもりだったんだ?】

【ヒーローの風上に置けませんわね。いっその事、ここで罪を償わせてあげましょうか?】


マジかよ。そんな事してたのか?だから、いつの間にか1人増えてたのか。

あたしも呆れて赤いヒーローを見ていると、彼女は必死になって首を振った。


【違う!私はただ、依頼を誠実に遂行していただけだ!指示があるまで上空で待機するようにと、そう契約時に強く言われていただけなんだ!】


【なんだそれ?そんな任務があるかよ】

【貴女それ、受注した際に怪しいと思わなかったのですか?】

【犯罪の臭いがプンプンするねぇ】

【依頼主誰よ?ウチらが代わりにとっちめてやる】


【そ、それは言えん!私にも、守秘義務があるんだ!】


【犯罪かもしれないんだぞ?】

【ヒーローとして、恥ずかしくはございませんの?】

【ヒントだけでもくれないか?女?男?白人?黒人?】

【仕方ない。後でデラックスピザ奢ってやるからさ。なぁ、それなら良いだろ?】


赤いヒーローは頑なだ。亀達がいくら説得しても、口を割ろうとしない。

…ピザで釣ろうとするのは、あたしでもどうかと思うけどよ。


「鈴華!」


亀達のコントを前に呆れていると、上でボスの声が聞こえた。

見上げると、ボスとデカい鳥が追いかけっこしていた。

なんだ?あの鳥。新しい敵か?


「鈴華!良かった。怪我は無いか?」


ボスは降り立つと、あたしの両肩を掴んでちょっと揺すり、あたしが答えるより先に身体中を見回す。


「あ、ああ。大丈夫だボス。特にやられちゃいないからよ」


あたしは嬉しさと気恥しさが入り交じって、ちょっと素っ気なく返してしまった。

そして、真っ直ぐに見詰めて来る彼の視線に居たたまれなくなって、ボスと一緒に降り立った大きな鳥を指さした。


「それより、なんだその鳥は?敵か?」

「おいおい。てめぇの目は節穴かぁ?こいつはどう見てもテラザ…じゃねぇ。プテラノドンだろうがよ」


あたしが指さした途端、鳥が低い男性の声を出して反論してきた。そのまま、体が溶けて人間に変身した。

…逆か。ボスの護衛が鳥…プテラノドンに変身してたんだ。

ボスが彼を振り返る。


「大野さんはBランクのメタモルフォーゼで、色んな恐竜に変身出来るんだ」

「マジか。かっけぇじゃん」


って事は、ティラノサウルスとかにもなれるってことだろ?それって最強じゃん。


「それより鈴華。彼女達は何を揉めてるんだ?」

「うん?ああ、まぁ、色々あってな」


ボスが亀達を不思議そうに見ていたから、あたしはテレポートしてからの話をする。

あたしが襲われた下りになると、いつも鋭いボスの目が更にヤバくなって、拘束されている不良達に射殺ろしそうな雰囲気を向けていた。

ちょっと嬉しかったけど、これ以上ボスに負担を掛けたら不味いと思って、そこら辺の状況は軽く流して話す。そして、ヒーロー達が駆けつけたところで漸く、ボスのヤバい目が戻った。


「そうか。トータスズの皆さんには感謝しないとな」


話を終えると、ボスは再び優しい表情になって、あたし達の無事を喜んでくれた。

ボスが言うには、桜城のみんなも配していて、特区のゲート前で待ってくれているんだとか。一部の護衛や警察も、今こちらに向かっているそうだ。

ボスもそこで待つように言われていたみたいだけど、無茶を言って捜索隊に加わったそうだ。だから、護衛のプテラノドンがピッタリ張り付いていた訳だ。


そうして話している内に、テレポーターの姉ちゃんも意識が戻った。これで、プテラノドンとのコンボで直ぐにでも特区に戻れる。

あたしが「疲れたぁ」と伸びをすると、ボスは「今日はゆっくり休もう」と労ってくれる。

そして、


ボスの目が、再び鋭くなった。

その目で、真っすぐに見つめるのは、あたしの方。


えっ?な、なんだよ?ボス。あたしの顔に、何か付いてるのか?

あたしは慌てて、顔を手で(ぬぐ)う。

…でも、特に何も無い。無理しすぎたから、鼻血でも出たかと思ったけど、違ったみたい。


「なんだよボス。どうしたんだ?」


問いかけても、ボスは答えない。目を鋭くしたまま固まっている。あたしがボスに近づいても、ボスの視線は全く動かなかった。

ボスが見ているのは、あたしじゃない。あたしの後ろ。古びた建物?


「なんだ?この感覚は…?」


ボスがポツリと言葉を漏らす。

いつの間にか顔面蒼白になっていて、まるで去年の夏祭りみたいに震えている。

貧血…じゃねぇ。腕を落とされた時の貧血でも、こんな風じゃなかった。

この人がこんなに震えている時は、きっと何かが起きようとしているんだ。

何か、良くないことが。


「ボス。何がどう…」


あたしが問いかけようとした丁度その時、電話が鳴った。

ボスの携帯だ。

良く、分かりませんね。


「カトリーナ嬢の思惑か?」


はい。彼女は、何がしたいのでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
上等なLTD?の青いお薬には、デュポン・ブルー(「D」uPont blue )的なお名前付いてたりせんやろね?w 社会実験ならぬ社会治験でお薬無料・廉価配布でキメキメ人口増やしてるなら、そこゾンビ予備…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ