356話〜おい!どうなっている!?〜
『『おはようございます』』
『朝7時、N〇Kおはようニュースです。先ずは、政府から出されている避難警報をお知らせします』
『本日午後3時、千葉県館山市の海水浴場付近で、反社会組織によるテロ活動が予想されています。既に避難されている方も多いとは思いますが、地図に赤色で示されている地域にお住いの方は、警察の指示に従い、お近くの避難所への避難を…』
テレビの中で、キャスターの男性が原稿を読み上げ、同時にテロップで注意報と、避難区域の簡略地図が出される。
まるで災害警報さながらの対応だが、報道するキャスターも、映し出される避難者達も落ち着いた様子を見せている。
これが発令された当初は、まだ戸惑う人達の様子もあったのだが、何度か発令されている内に随分と慣れたものとなった。
漁港での激闘から、数日が経った。
望月家がこっそり流すテロ情報は、随分と信ぴょう性が高まったみたいだ。情報を流した途端、政府でもそれを取り上げて、こうして災害警報並に警報を出してくれる様になった。
若葉さん曰く、政府は情報元である出版会社を抱き込もうとしているらしい。政府公認の情報機関にして、いち早く情報の拡散を狙っているのだとか。
と言うのは表向きで、みんなが注目し始めているその出版会社を早めに抑えて、情報をコントロールしたいのだとか思う。信ぴょう性と人気がうなぎ登りの企業に、下手な情報を流されたくないと言う、政府の思惑が薄っすら見えている。
その政府が隠したい情報と言うのが、アグレスの情報だ。
『続いてのニュースです。一昨日発令された、大阪府堺市埠頭で発令されたテロ警戒警報ですが、実際にテロ活動が起こり、10人余りのテロ組織幹部を拘束したと、軍関係者筋の話で分かりました。この事件で、埠頭周辺の民間人およそ10万人が避難し、およそ120万人に影響が出ましたが、死傷者はいませんでした』
今の報道の様に、侵略者の侵略は全てテロ組織の犯行とすり替えて報道される。
今に始まった事では無いが、政府の情報統制は更に厳しくなっているように感じる。
若葉さんの話では、テロ活動を取材しようとする者も少なくなく、中にはアグレスの姿を撮影した人もいたらしい。そういう人達はすぐにネットや新聞記者に情報を上げているのだが、政府はそれをテロ組織が作り出したイリュージョンだと説明していた。
頑なにアグレスの情報を開示しない政府と軍。彼女達は何故そこまで、アグレスを恐れているのだろうか?
「なんだか顔が怖いよ?お爺ちゃん」
いつの間にかテレビを睨み付けていた蔵人に、美来ちゃんが心配そうに見上げてきた。
おっと、イカン。ついつい、考え込んでしまった。
「(低音)すみません。最近暗いニュースばかりでしたので、顔まで暗くなっていました」
「ううん。私も同じ気持ちだよ。なんか、みんなが暗くなってる気がしてさ。私まで落ち込んじゃうよ」
そう言って、美来ちゃんは手に持っていたトーストに齧り付き、朝食を再開した。
確かに、最近はテロの話題を良く耳にする。こうして公に報道しされているのが一番の理由だと思うが、みんながそれだけ不安に思っているのも事実だ。
暗い雰囲気になりつつある。でも、悪いことでは無い。少なくとも、アグレスの侵攻は水際で押さえられており、民間人への被害は0だ。ハチャメチャにやられているゲームとの差を考えると、大成功と言っても良い成果だろう。
暗い雰囲気だが、未来は決して暗くない。
「落ち込んでる暇なんてねぇぞ?美来。なんたって、俺達はあと数日でアメリカに殴り込むんだからよ」
「ちょっとレオ。私達は黒騎士君の護衛。それに、彼らも喧嘩を売りに行く訳じゃないわ」
「喧嘩もファランクスも、似たようなもんだろうがよ」
恵美さんの訂正を、レオさんは軽く手を振って受け流す。そして、机に肘を着いて、テロ情報を流すテレビを横目で見た。
「楽しみだぜ、異能力大国アメリカ。強え奴で溢れかえってるだろうし、日本みたいに硬っ苦しくないんだろ?何より、また黒騎士に会えるだろ」
「あれあれ?レオってばとうとう、男の子に興味が出始めた感じ?」
美来ちゃんがニヤニヤと茶化すと、レオさんはうるさそうに目を細めて片方の眉を上げた。
「違ぇよ。俺はただ、アイツの力に興味があるだけだよ。アイツのシンク…ぶっ飛んだ力は必ず、また何かやらかしてくれるだろうからな。沖縄みたいなワクワクが、俺達を待ってんだよ」
嬉々として語るレオさんだが、その認識は不本意である。まるで黒騎士が事件を呼び寄せているみたいじゃないか?俺はどこぞの少年探偵ではないんだぞ?
「沖縄か。私は不安よ、アメリカなんて。タダでさえ治安が悪いって聞くでしょ?またあんな事に…」
恵美さんが眉を顰めて不安を吐き出そうとしたが、こちらをチラリと見て語尾を濁した。
一般人である蔵人が近くにいるから、言葉を慎んだみたいだ。
でも彼女達、普段はもっと堂々と仕事の話をしている。こちらにパラボラ耳がある事を知らないからだとは思うが、とても不用心である。
その不用心のお陰で、若葉さんでは仕入れにくい情報を頂けている。
有難い。
「ご安心ください、恵美さん。LA特区の中でしたら、治安は良好と聞いております」
コーヒーを片手に、橙子さんが柔らかい声で恵美さんを励ます。
そう。今回クリスタルエッグが開催されるのは、ロサンゼルスである。
ニューヨークに次ぐ人口と都市GDPを誇る大都市であり、ハリウッドやビバリーヒルズと言った有名地区がある事から、セレブの街としても有名だ。
反面、特区から離れると一気に治安が悪くなり、地元警察も近寄れない無法地帯となる。史実ではサウスロサンゼルスと呼ばれる地域でそうだったらしいが、この世界のアメリカで言うと、特区の外の海岸線沿いがそれ以上に危険な地域となっているらしい。
麻薬組織やテロ組織が昼間っから闊歩する世界…異能力がある分、余計に治安が悪いらしい。
「そのような所に態々足を踏み入らなければ、無用な争いは起こらないと愚考致します」
「どうだろうな?あっちは大国アメリカだぜ?俺達アジア人を舐めてかかってくるだろ?喧嘩し放題じゃねぇか」
「またレオは…」
呆れる恵美さんだが、レオさんの意見は最もだ。
この前の交流戦でアイリーンさんが絡んで来たみたいに、現地の人が喧嘩を吹っかけてくる可能性もある。
少なくとも、アジア人差別はあると身構えた方が良いかもしれない。
…フランスじゃないんだから、そこまで酷くはないと考えたいが…?
蔵人が心配していると、トーストを食べ終わった美来ちゃんも、不安そうにお皿の上に視線を落とした。
「私も心配だよ。だって向こうのご飯って、こっちみたいに美味しくないんでしょ?なんか、サイズも凄く大きいって聞くし、もしもおデブさんになっちゃったら、どうしよって思って」
「それは…私も聞いたことある」
恵美さんも、不安そうに机を見つめる。
確かに、食文化は大きく異なるだろう。サイズの事もそうだし、カロリーも凄そうだ。日本ではお菓子感覚で食べている物を、向こうでは主食やサラダ感覚で食べていたりする。
肥満大国なだけはある。
「あーあ。お爺ちゃんも一緒に来てくれたらなぁ」
意味深な目で見上げてくる美来ちゃん。
悪いけどね、それは物理的に無理なんだよ。
そう思いながらも蔵人は、美来ちゃんに「(低音)お気持ち、ありがとうございます」と頭を下げるだけにした。
「もういくつ寝ると、アメリカだね」
桜城のだだっ広い廊下を歩きながら、桃花さんは小さくステップを刻みながら、周りを歩くファランクス部メンバーに問いかける。
今は放課後。蔵人達は部活へ向かう最中であり、その道すがらに雑談を交わしていた。その雑談の中でも、今週末に行われるクリスタルエッグの話題が中心となっていた。
「そうね。明明後日の木曜日に旅立って、約1週間の旅になる予定みたい」
「イギリスの次はアメリカで、なんだか僕、セレブにでもなった気分だよ」
みんなは大会の事やアメリカの文化について議論しており、その大半は期待を込めた話題であった。
向こうでどんな事をしたいか。有名人に会えるか。地元チームにスカウトされたらどうしよう…等など。アメリカンドリームを夢見て、足取りも軽くなっていた。
「ヤバいな、どうしよう。こんなに早く、ハリウッドで女優デビュー出来るなんて思ってなかったぞ」
中には、既にハリウッドスターになった気分の娘もいる。軽くなりすぎて宙に浮いてしまっている。
本当に、何処からそんな自信が生まれてくるんだい?デトキネシスの特徴だったりするのか?
「アホ抜かせや自分。祭月が女優になるんやったら、ウチはスタントマンになっとるわ。アメコミヒーローの蜘蛛女も真っ青やで」
「なるほど。そっち路線も面白そうだな。だったら私は、向こうの最新パワードスーツでアイアンウーマンになってやろうじゃないか」
能天気な祭月さんの暴走は、そうそう簡単には止められない。
だが、彼女のお陰で雰囲気が明るくなっている。特に先輩達は、クリスタルエッグに対して萎縮気味だったから。
でも、祭月さんがこうやって楽しみを爆発させる姿を見て、いつの間にか先輩達も楽しみだと前向きになりつつあった。
伏見さんがファランクスのまとめ役なら、祭月さんはムードメーカーだ。
「オイラは大食いするぞ!アメリカのハンバーガーはめっちゃ大きいって、若ちゃんが言ってたんだ!」
もう1人のムードメーカーが、薄目を輝かせて宣言する。
楽しげな彼の様子に、周囲も和やかになる。それ自体は良いのだが…。
「慶太。向こうのはマジでデカイみたいだから。やり過ぎるとお前さん、体重までビッグになって帰る事になるぞ?」
慶太がハンバーガーに齧り付く場面は、想像に容易い。ちょっと気を抜くと、体型までアメリカンサイズになりそうで怖かった。ハンバーガー、ポテト、ピザ…。向こうにも誘惑がいっぱいだ。
蔵人の心配を他所に、慶太はグッと親指を立てる。
「だいじょーぶだよ、くーちゃん。オイラいっぱい活躍して、名前も心もビックになるから」
全部を大きくしたら関係ないってことか?体重が増えることは前提なんだな…。
余計に心配になった。
「慶太の言う通りや。試合でぎょうさん暴れて、アメリカさんに目に物見せてやろうやないか!」
「おおっ!オイラの可愛いゴーレムを、アメリカでいっぱい見せつけるよ!」
伏見さんも慶太も、気合い十分だ。
彼らだけでなく、ファランクス部はクリスタルエッグに向けて熱の入った練習をしている。
特に、最近は新1年生も入ってきているから、先輩となった我々2年生の気合いも入っていた。
まだ体験入部の段階だが、一部の新入生は入部する事を前提に、仮入部扱いで活動していた。
余りにも入部希望者が多すぎて、選考を早める前から体験してもらっていたのだった。体験して、少しでも違うと思ったら入部を取りやめてもらうために。
だが、今のところ入部取り下げを行った子は居ない。それどころか、日に日に入部希望者が増えている現状だ。
この前数えたところ、159人が申請してきている。募集人数30人に対してだから、求人倍率5倍越えの超買い手市場となってしまっている。今年入学した新入生も300人程度だから、約半分が申請してきていることになる。
学年の半数近くがマイナー部活に集まるってどういうこと?と、体験入部希望者のリストを見て目を疑ったレベル。まるで、去年のアイススケート部だ。
その理由は、恐らく黒騎士の存在に寄るもの。中にはファランクスに純粋な興味を持つ子もいるが、大半は黒騎士を目当てに来ていた。
それは、今感じる視線でも分かる。
「大注目だな、ボス」
「そうだな」
鈴華も感じている様で、周囲にキョロキョロと視線を飛ばしていた。
彼女の見る方へと目を向けると、そこには廊下の端や教室の窓からこちらを見る、新1年生達の姿があった。
「キャー!黒騎士様と目が合っちゃったわ!」
「噂で聞いた通りだね。堂々とされてて、本当にカッコイイわぁ…」
「鈴華お姉様も負けてないよ」
彼女達が入学してから、学校で感じる視線は倍になった。
黒騎士に対して耐性が無いからか、今までの在校生よりも遠慮がない視線を送ってくる。その癖、こちらから話しかけたり手を振り返そうものなら、小動物の様に逃げ隠れてしまう。
中々に難しいものだ、後輩という者は。
「すげぇ人気だな、黒騎士様はよぉ」
「他人事じゃないぞ?鈴華。お前さんのファンもいるみたいだからな」
「あー。そりゃまぁ、分かってるよ。何度か告白されたからな」
もうされとるんかい!
奥手なのか積極的なのか余計に分からんぞ、今年の新1年生達。
訓練棟に着くと、既に数人の新1年生達と、2年生達が訓練前の準備に勤しんでいた。新1年生達に、掃除や片付けを指導していた。
1年前は、俺が先輩達に教えて貰っていたなぁと、蔵人は懐かしく思い返す。
あの時は新入部員の数も少なくて、俺と先輩達でやっていたんだ。その後、鈴華達が入って来て、漸く1年生だけで回せるようになった。
でも、今年は違う。100人余りもの入部希望者が居るので、仮入部期間の今でも人手は足りている。なので、掃除の指導をしている先輩達は、自らが動く必要は無かった。
後輩が多いと、こう言う所が楽だ。
その分、選考会が大変になるんだけど…。
「あっ!お疲れ様です!先輩!」
「「「お疲れ様です!!」」」
蔵人達に気付いた後輩ちゃんが声を上げると、四方八方から一斉に挨拶が押し寄せる。
どうやら、観客席部分にも掃除の手が入っている様で、雑巾を手にした1年生達が深々と頭を下げていた。
少し過剰とも思える対応だが、これから選考される立場の人間達だと思えば、妥当なのかも知れない。
「お疲れ様!俺達の事は気にせず、掃除に戻って下さい!」
「「「はいっ!!」」」
う〜ん。既に統制が取れている。
この中から30人を選ばないといけないんだろ?かなり心苦しいんだが…。
蔵人はこの時初めて、副部長と言う立場が重いと感じた。
それから少し時間が経ち、部活動開始の時間となる。
「はい!じゃあ今日は3つのグループに別れて活動するからね!」
集まった部員に対し、部長が前に立って今日の予定を伝える。
総勢200人を超える前でそうしているもんだから、傍から見たら演説しているように見えてきた。
部長の指示の元、蔵人達は3つのグループに別れる。
1つは鈴華達のクリスタルエッグ選手チーム。アメリカ行きの精鋭達だ。
鈴華や伏見さん、桃花さんや鶴海さん等、交流戦でも活躍したレギュラー陣に加え、3年生の先輩数人と、この大会の為に呼んだスペシャルゲスト達のチームだ。
「よろしくね、鈴華ちゃん達」
「ホント久しぶりっすね、先輩。今日はあたしも本気でやるんで、覚悟して下さいよ?」
「ははっ。流石は桜城1位だね、鈴華ちゃん。私と手合わせするって言ったら、高等部の先輩みんな逃げちゃうのに」
そう言って苦笑いを浮かべるのは、桜城高等部1年生になった海麗先輩だ。
今回の大会はU18。高校生の彼女も出場可能である。
なので声を掛けたのだけれど…。
「私は逃げていないわよ、美原海麗。貴女との勝負は、まだ決着が着いていないもの」
「ウチはどっちでもええよ。この中等部に来るんが、元々の目的やったさかい」
何故か、河崎先輩と久遠先輩まで着いてきていた。
海麗先輩に声を掛けた時に、2人も参戦したいと言い出したらしい。
ベイカーさんは何人連れてきても良いと言っていたから、同行するのは可能であった。でも、流石に今から選手登録するのは難しかった。桜城の参戦も、随分と無理を言ってねじ込んだらしいから。
だから、2人は選手としてではなく、練習のサポーターとして同行することとなった。
「慶太君は私と訓練しましょうね」
「ほーい!オイラ頑張るよ、お姉ちゃん!」
加えて、島津巴さんも同行するらしい。
彼女もサポーターとしての同行者だ。ソイルキネシスである彼女は、遠距離役の的や塹壕の作成など、様々な場面で活躍しそうだ。
彼女達のようなサポーターを含め、総勢32名がアメリカへと渡る事になった。
他の部員達は留守番だ。彼女達は1年生の面倒を見てもらうと言う、重大なミッションがある。
その1年生を選考するのが最後のグループであり、蔵人と部長が担当する事となった。
選考される1年生達の中には、祭月さんの妹である雪花ちゃんと、一条様の姿もあった。
「おい!どうなっている!?」
選考会を今か今かと待っている1年生達の中から、怒りの声が飛んできた。
「何故、一条家の人間が試される様な事になっているんだ!」
そう発言しているのは一条様…ではなく、彼の両脇に陣取った赤髪の護衛からだった。
「Bランクの透矢様が入部して下さるんですよ?普通、部員総出で頭を下げて出迎えるところだと思いますよ?」
もう片方の護衛からも、憮然とした声と視線が投げつけられる。
うん。分かるよ。君達の言っている事も、怒る理由も理解はできる。一条家と言う雲の上のお人で、しかも高ランクの男子と来たら、無条件に入部出来るのが暗黙のルールだ。
貴族社会であるこの世界では、特にそうなんだろうなとは思う。
けど…。
蔵人は、肩を怒らせる2人の間に視線を送る。
ジッと目を閉じて腕組みをしていた少年は、ゆっくりと目を開けて、ふぅと息を漏らす。
「やめろ、東小路。土居」
「透矢様!ですが、これでは余りにも不敬が過ぎ…」
「やめろと言っている、東小路。お前は今、俺の顔に泥を塗っているんだぞ?一条家ともあろう者が、我先にと割って入る様な真似をするなど、それこそ一条家の人間として恥ずかしくはないのか?」
「そ、それは…」
押し黙る東小路さん。そして、何故かこちらを睨み付けてくる。
そんな顔をされても、あんたらの雇い主が試験を受けたいって言うからこうなっているんだぞ?部長も俺も、一条様は無条件で入部されて良いと思ってたのに。
そう思う蔵人だったが、同時に、一条様に好印象を持ったのも事実だ。
彼はそこらの男性達とは違う。なんと言うか、心の芯がしっかりしていて、強くなりたいと言う気持ちが強く伝わってくる。
彼なら、アニキの様に成れるかも知れない。
「じゃあ、1年生はダッシュから入るから、私の後に着いて来てね」
「おい、貴様!一条様をその様な蛮行に…」
「やめろと言っている、東小路」
…これ、最後まで選考出来るんだろうか?
蔵人は、部長の背中を追う1年生達を見て、不安に眉を寄せた。
150人余りも募集に応じてくれるなんて、去年とは大きな違いですね。
「去年は部の継続も危ぶまれていたからな。これなら安泰だろう」
安泰…なんでしょうかね?