318話〜充分に思い知りましたよ〜
大人達が地面に這いつくばって苦しむ中、蔵人は氷雨様を背後に隠し、首謀者と思わしき火蘭と対峙する。
「総督?それは誰だ?」
まさか中国がこの件に関わっているのかと、蔵人は彼女の背後を想像して、表情を強張らせる。
しかし、蔵人の問いに、火蘭は答えようとしない。紫眼の瞳を真っ直ぐに見返して、小さく首を振った。
「何故、そのような顔をされるのです?蔵人様。貴方様が背後で匿うその女は、貴方にとっても邪魔な存在な筈。ならば、貴方の立つべき場所はそこではなくこちら側、私の隣ではございませんか?」
火蘭はそう言って、拳で燃えていた炎を消し去り、その手で自身の横を手で示す。
それに、蔵人はふっと口だけ笑みを作って、目を鋭くさせる。
「試合前に声掛けてしてくれたら、有り得なくもない話だった。少なくとも、話を聞いて悩むくらいはしていただろうよ。だがな、貴様は流子さんを傷付けた。もっと色々な解決策があっただろうに、こんな短絡的で最悪の方法に頼っちまった。俺の大切な人達を巻き込んだ貴様の横で、俺が寄り添うと本気で思っているのか?」
仲間を傷つけた。それは、蔵人の中では一番の禁忌。一番のトラウマだ。
どんな事情があれ、もう、目の前で立つ女に与するルートは完全に無くなっていた。
笑顔で唸る蔵人を見て、火蘭は余計に悲しそうな顔をする。そして、小さくため息を吐いた。
「分かりません、貴方が。貴方の正義が何処にあるのか。目の前で無力な男達が焼き殺されても、一欠けらの怒りも見せてくれなかったと言うのに」
「なに?」
火蘭の出方を伺っていた蔵人は、動きを止めた。
彼女が言っているのは、神奈川のライブ会場での事だろう。アグリアが攻めてきて、蔵人と火蘭が迎撃したあの事件。青龍会の奴らがライブ会場で銃撃戦を企てていたから、彼らが突撃する前に殲滅したのだ。
だが、改めて振り返ってみても、おかしな部分がある。
巻島家の護衛であり、荒事のスペシャリストでもある筈の火蘭はあの時、あろうことか証拠物品ごと燃やし尽くす勢いで、男達を火刑に処していた。
それだけ、彼女にとって護衛するとはそれだけ必死な事。第一優先は護衛対象の安全だから、対象を完全に無力化していたのだ。
あの時は、そう思う事で納得した。
だが、今の彼女の発言を聞くと、意図的に彼らを焼き殺した様に聞こえる。
まるで、証拠品を燃やし尽くす方が利点だと言うように。
まるで、低ランクの実情と高ランクの非道さを蔵人自身に知らしめるかのように。
そう考えた途端、最悪のシナリオが浮かんできた。
「貴様…アグリアか」
もしも火蘭がアグリアなら、この事も納得が出来る。
火蘭が男達を惨たらしく殺した理由も。あれだけの大観衆が詰めかけた会場の中で、いち早く危ない客を見つけることが出来た事も。
全ては、仕組まれていたことだった。
あの襲撃は、ステップステップを狙ったものではなかった。
巻島蔵人を、アグリアに取り込むための布石だったのだ。
蔵人の推測に、火蘭は、
「フフッ。流石は龍鱗様。我らの象徴となったお方です」
とても嬉しそうに笑った。
まるで、仮面を履いだかのような彼女の笑顔は、蔵人が初めて見た巻島火蘭の素顔。
ずっと今まで隠していた、彼女の本心だった。
「何故だ。何故、Bランクで財閥家に属する貴女が、アグリアなんてテロ組織に加担する」
そんなものに手を染めてしまえば、家督どころかこの特区での永住権までもを棒に振る事になる。護衛と言う道を歩まされたとはいえ、Bランクで良家に属する彼女にはそれなりの道が用意されている。それなのに、まるで自殺でもするような道を選択したことに、蔵人は疑問をぶつけた。
「何故って?決まっているじゃない。復讐よ」
火蘭は顔を顰め、蔵人を、その後ろで這い蹲る氷雨様を指さす。
「私は長女で、Bランク。なのに、パイロキネシスというだけで、魔力量も戦闘力も才能も、何も持たない妹に全てを奪われた。全てよ!次期当主という座を奪われ、使用人としての人生を強要された。良い環境で、最高の教育を受けられるのは何時も妹。私はただ、戦う事ばかりを押し付けられた。母から、親族から、寵愛と尊敬を浴びる妹の横で、私が渡されるのはカバンや荷物ばかり!私がこんな異能力を手にしたばかりにっ!私が望んだ事じゃないのにっ!」
口から炎と怨嗟の声を飛ばしながら、火蘭さんはこちらを見つめてくる。分かってくれと言わんばかりに強い視線をこちらに送り、ふっと、歪な笑みを向けてくる。
「分かってくれますよね?巻島蔵人様。貴方は私と同じなんですから。貴方も、兄に全てを奪われた可哀想な存在。母親も、人生も、全てを狂わされた私の同類なんですよ。頼人様さへこの世界に居なければ、貴方の能力はもっと評価されて、もっと良い人生が送れた。だから、貴方のその仮面の中にもきっと、彼を恨む心がある筈」
彼、と言って、火蘭さんは横を向く。
そこには、青い顔でこちらを見ている頼人の姿があった。
お酒も飲めず、蔵人の真似をして水も殆ど飲まなかった頼人は、ただこの状況に怯えて青くなっているだけだった。だが、彼の周囲に集まった護衛達が、頼人の腕を掴んで動けないようにしていた。
まともに立っている護衛の数は…18人。中庭に出て来た護衛の半数以上が、大人達と同じように地べたに這いつくばるか、無事な護衛に無力化されていた。
「さぁ、蔵人様。共に参りましょう。今こそ、復讐の時です」
火蘭さんはそう言って、蔵人の方に手を差し伸べる。
彼女は嬉々とした表情で、しかし、瞳の奥は復讐心と恨みで黒く揺らめいている。
蔵人は彼女の瞳を真っ直ぐに見て、横を見る。
護衛達に囲まれて、不安そうにこちらを見る頼人と目を合わせる。
彼の姿を見て、あの日を思い出した。
途端に、頭の中で声が響く。
『蔵人、お前は、兄が…頼人が憎いか?』
母親が出ていった日に、流子さんから問われた言葉。蔵人達兄弟の内情を知らなければ、そう問うてしまうのは仕方が無い家庭事情であった。
能力的に優れた兄がいて、母親も、親族も、世間すらも、兄にばかり注目していた。挙句の果てに、兄は特区に招かれ、母親もそれに着いて行った。
自分の場合は、柳さんを守り切り、流子さんとの縁を結んでいたから、1人にはならなかった。
だが蔵人君は、ゲームの中の彼は1人取り残されて復讐を誓い、ディザスターへと変貌していった。
林さんからは、そう聞かされていた。だが、本当にそれだけなのだろうか?
その物語には随分と、空白の部分がある気がする。
確かに、蔵人君の憎しみは推し量るに余りある。だが、それだけでアグリアに辿り着けたり、まだ高校生と言う年齢で幹部にまでのし上がる事なんて出来るだろうか?
ゲームの世界だから。戦乱と困窮が極まった状況だから。
そう思って、深く考えなかった彼の前日譚。
だがもしも、その空白の部分に彼女の存在があったら?
今目の前で行っている様に、手を差し伸べていたとしたら?
右も左も分からない蔵人君に、アグリアへの入信を勧め、彼の活動を後押しし、ディザスターという地位まで引き上げたのではないか。
蔵人君と同じ境遇の、血縁者である彼女が。
『さぁ、蔵人君。私と一緒に復讐しましょう?貴方を要らないと言った母親に、貴方を拒絶するこの世界に。私達のこの手で!』
有りもしない言葉。だが、有り得る言葉が頭の中で響く。
蔵人君がもし、1人であの場に立ち尽くしていたら、きっと迎えに来たのは流子さんではなく、この人だったのだろう。
そう思うと蔵人は、
「ふっはっはっは!」
笑った。
腹の底から、笑いが込み上げてきて止められなかった。
そんな蔵人に、頼人は不安そうに顔を歪め、火蘭さんは嬉しそうに口を歪めた。
「蔵人様。ご理解頂けましたか」
「ええ。充分に思い知りましたよ。恐ろしいものですな、因果律という奴は」
或いは、世界の強制力とでも言おうか。
ゲームの世界では無い現実の世界でありながら、ゲームのストーリーに沿わせようとする強制力がこの様に働くとは。
だが、所詮は形だけ。中身は既に別物となっているのだ、この世界は。
「火蘭さん。貴女には以前、こう申し上げた筈だ。私が、この世界に天井が無いことを示すと。それは先日、お見せした筈です。この世界の天井を、私は突破して見せました。もう既に、天井には大きな風穴が空いているのです」
「…何を、仰りたいのです?」
火蘭さんの表情が、一気に険しくなる。
そんな彼女に、蔵人は笑う。
嗤い掛ける。
「私が頼人を憎むなど、ありはしない。我らは兄弟だ。兄弟は互いに大切な存在。そりゃ、別人同士だからすれ違う事もあるだろう。だが、そうなる原因の邪魔な壁は私が既に貫いた。クリオキネシスだシールドだ、AだEだという煩わしい言葉は見直されつつある。古い考えだと皆が気付き始めた。
悲しい事に、氷雨様は乗り遅れている。だが遅れながらも、この会に俺を招いた。技術を教えてくれと頭を下げて頼み込んできた。6年前ならあり得ない事だ。そんなあり得ないことが、起き始めている。少しずつ変わって来ているんだよ、この巻島家も。アクアキネシスでないと当主に成れないなんて壁は、貴女が壊せばいい。実力を見せ、技を見せ、正々堂々と氷雨様にぶつかれば、考え直してくれたかもしれない。毒物混入事件をしなくてもな」
蔵人はグイッと、彼女と開いていた距離を縮める。
彼女の目線に合わせて、蔵人は少しだけ屈む。
「火蘭さん。もう直ぐ、物語の中の人達と、俺達とが対等になる。だからもう、貴女が妹さんを憎む必要は無くなるんですよ」
「ふ、ふふ…」
火蘭さんは笑う。力無く笑う。
笑いながら、小さく首を振る。
そして、怒る炎の瞳で蔵人を見上げる。
「無くならない。貴方が幾ら壁を壊そうと、私の恨みも、私達の受けて来た仕打ちも、全部!無くなりはしない!私が奪われた25年という歳月は、もう二度と帰って来ない!」
火蘭さんは叫び、蔵人へと手を前に出す。
敵意を、向けて来る。
蔵人も構え、周囲に盾を展開する。それらを組み合わせ、凶悪な羽音を奏でる女王蜂を作り出す。
それを彼女に、
「動くな!龍鱗!」
火蘭さんの照準が、蔵人から外れた。
横を指さし、鋭い目でこちらを見る。
「貴方が大切だと言った頼人様が、どうなっても良いのですか?」
彼女の指を追って視線を反らすと、頼人を囲っていた護衛達の手が幾つも、彼に向けて構えられていた。いつでもハチの巣にするぞと、彼女達の強張った顔が脅してくる。
なるほどな。
蔵人はホーネットを下ろしながら、理解した。
火蘭さんはこの為に、頼人を新年会へ招いたのか。もしも自分が邪魔になったら、彼を人質にこちらの動きを封じる為に。
そして、集まっているこの18人の護衛全てが、火蘭さんの思いに従う敵であると。
思えば、護衛の境遇は火蘭さんと似ている。魔力量や異能力種がそぐわないからと、家から出された丁稚奉公。そんな彼女達が、この異能力社会を憎むのも理解できる。
きっと、こんな人達が特区にはまだまだいる。そんな人達がアグリアとなってしまえば、特区の内外で大きな反乱が起こる。
これが、ゲーム世界で侵略者が特区を侵略する一因なのだろう。
蔵人が視線を火蘭さんに戻すと、彼女は少しほっとした笑みを浮かべていた。頼人を手中に納めた事で、こちらが動けなくなったと安心したみたいだ。
そんな彼女に、蔵人は首を振る。
ヤレヤレと。
「全く、甘く見られたものだな」
「甘い?それを強がりと言うのですよ、蔵人様。貴方の事はよく理解しております。大切な人を見殺しに出来ないというお優しさを」
「ええ、そうです。動けません。故にホーネットも消した。俺の弱点をよく理解している。
だが、頼人の事はよく理解していないみたいだな」
「はぁ?頼人様が何だと言」
火蘭さんの苛立った言葉は、途中で止まった。
向こうで上がった悲鳴に、掻き消された。
悲鳴が上がったのは、頼人が拘束されている場所だった。
だが、今そこに頼人の姿は無い。あるのは、大きな氷塊が地面から突き出し、その周囲で護衛達が慌てふためいている姿だけだった。
氷塊は頼人が出したものだ。それが彼女達と頼人を分断し、彼へと向いていた銃口を散らせた。
そして、頼人は、
「兄さん!」
地面を滑っていた。地面の表面に平らな氷道を作り出し、足の裏に作り出したアイスブレードで滑走し、こちらへと突っ込んで来た。
流石はアイススケート部。部活の練習が見事に生かされていた。
蔵人は飛び込んでくる頼人をしっかりと受け止める。少し震える彼の肩越しに、火蘭さんを見る。
「忘れてはおりませんか?貴女が入りたいと切望していた蔵人塾。そこの第1期生が、この頼人なんですよ?」
蔵人の笑みに、火蘭さんは歯を食いしばり、両手を真っ直ぐに伸ばしてきた。
「それが何だと言うのです!ただ貴方の元に頼人様が移動しただけ。2人纏まってくれたのなら、こちらとしては好都合ですよ!」
火蘭さんは横を向き、慌ててこちらへと駆け寄る護衛に号令をかける。
「総員!龍鱗と頼人様に集中砲火開始!的当て訓練を思い出せ!」
「「「了解!」」」
火蘭さんの号令で、護衛が蔵人達を取り囲み、一斉に異能力を行使し始める。
色とりどりの弾丸が、蔵人達に迫る。
「シールド・ファランクス!」
「アイスウォール!」
蔵人の盾が前面を守り、頼人の氷が背面を守る。かなり広範囲まで防御陣を構築し、氷雨様だけでなく流子さんも確保する。
その兄弟の守りに、無数の弾丸が突き刺さった。
大半の弾丸がCランク程度の弱い攻撃。水晶盾のファランクスであっても、十分に防ぐことが出来る。
蔵人がそう考えていると、盾の向こうで火蘭さんの命令が飛ぶ。
「総員、B陣形へ移行!休む隙を与えるな!」
「「「了解!」」」
どうやら、陣形を整えるらしい。
水晶盾の向こう側で、護衛達が素早く移動する。一列だった陣形が、3段構えとなり、先頭の人達だけが攻撃を続けていた。
なるほど。魔力を温存させて、ジワジワと嬲り殺すつもりか。
これは厄介だ。
「頼人。そっちは大丈夫か?」
「うん。防御は任せてよ。でも、ウォールを出しちゃうと、アイスニードルは出せないんだ」
それは仕方が無い。頼人は元々、防御を得意としているから。
では、攻撃は俺がやるべきだな。
頼人が反面を防御してくれる分、魔力が余った蔵人は盾を浮かせて、それを回す。
「シールドカッター!」
10枚近い回転盾が空を飛び、火蘭さん達へと向かう。
だが、彼女達も巻島家の護衛。後方で控えていた数人が前に出てきて、土と風のガードを構築した。
3段構えの最終列は、防御型で固めていたのか。
「兄さん、ホーネットだ!」
ふむ。頼人にまで技を知られているか。
蔵人は苦笑いを浮かべて、首を振る。
護衛部隊の後方には、まだ控えがいる。彼女達の異能力種が何かは分からないが、きっとこちらの攻撃は予測されているだろう。
何せ、ここまで念入りに計画を組んだ火蘭さんがあちらには居るのだ。頼人が把握している様に、向こうもこちらの攻撃手段は把握している筈。イタズラに魔力を消費したら、彼女の思う壺。
さて、どうするか。頼人を背に乗せて、装甲列車でも使って蹂躙してやるとするか。
蔵人が次の手を考えていると、シールドファランクスの向こう側から火蘭さんの声が飛んできた。
「さぁ、どうするんです?蔵人様。このままでは何れ、貴方達の魔力が先に尽きることになりますよ?文化祭の時みたいに、誰かが助けに入ってくれることも無い。何せ、ここは巻島家の敷地。当主の許可なく入ることは出来ず、この敷地内で動けるのは、この場で立っている我々と貴方達2人だけです!」
ほぉほぉ。という事は、ここにいる護衛達を倒せば終わりか。
蔵人は安堵する。
何せ、巻島家には多くの護衛や警備員を雇っていて、その多くが屋敷の中にいる。そいつら全員アグリアだったらどうしたものかと、考えていたのだ。
だが、どうやらアグリアに賛同したのは、今目の前に展開する18人だけ。頼人の護衛達の姿もないから、そこも安心材料だ。
蔵人が小さく笑っていると、それが見えない火蘭さんが声で急かしてくる。
「さぁさぁ、どうします?水晶盾でも身に纏いさえすれば、我々の包囲網を食い破るなんて訳ないでしょう?でもそうすると、後ろの頼人様を犠牲にしてしまいます。魔力量と異能力種だけ恵まれた貴方の兄君が、今、貴方の足を引っ張っているんですよ!貴方が必死に上を目指している間に、お兄さんは稽古だ花婿修行だと恵まれた教育を享受し、特区の生活を謳歌していたんですよ!それでもまだ、その兄を庇うつもりですか?!蔵人様!」
まるで、自分の境遇を押し付けようとする火蘭さんの声。
その怨嗟の声を受けて、蔵人は、
「はっはっは!面白い冗談だ!」
笑い飛ばした。
同時に、頼人を背に乗せようと屈んだ腰を上げ直す。
頼人に向けて、右手を差し出す。
「頼人がただ恵まれただけの少年?上を目指さずに堕落していた?本当にそう見えていたなら、貴女達の目は節穴だ!」
蔵人の伸ばした手に、頼人の柔らかい手が重なる。
蔵人の手を、しっかりと握り返してくる。
蔵人は、そんな頼人に笑みを返す。彼から流れて来た膨大な魔力を、体の中に受け入れる。
「頼人よ!見せてやるぞ、我らが兄弟の力を。我ら兄弟の絆を、ここに居る皆々に!」
「分かったよ兄さん、やろう!あの時みたいに。僕が兄さんの足手まといじゃないって証明してやる!だって、僕は兄さんの一番弟子なんだから!」
頼人の強い心が、魔力の波動となって伝わって来る。
本当に、懐かしい魔力だ。
生まれた時は、よくこうして手を繋いでいた。
頼人が特区に行ってしまってからは、疎遠となってしまった感覚。
だが、直ぐに思い出した。頼人との絆を。
あの時の感覚を。
蔵人と頼人は、同時に叫んだ。
「「兄弟合体!!」」
Bランクで地位がある人でも、アグリアに靡いてしまうのですね…。
「この社会を変えたいという思いは、特区の内外で共通なのだろう」
変えたいと思う事は良いですけど、こうして強行に出るのはいただけませんね。
「やりやすい方に流れるのが人だ。低き所に流れた水は、1人ではもう上がれない」
易きに流れるという言葉ですね。