272話~さぁ、言ってみろ黒騎士~
『(低音)航空母艦、蒼・龍・改!!』
航空母艦、蒼龍。
その名前を聞いても、人々は戸惑いの表情を見せるだけだった。
この世界に、空母の威力を知る者は居ない。
それは、議員も同じであった。
「なんだその歪な船は?タンカー船?そんな物で、どうやって戦うつもりだ。石油でもぶっかけようってか?えぇ?」
『(低音)否。これが運ぶは荷物に有らず。誇り高き、龍の戦士達である!』
蔵人がそう叫ぶと、蒼龍の甲板に何かが出てきた。
それは龍。大型犬程の大きさの、小さな飛龍。
翼を真っ直ぐに、地面と平行に広げ、甲板の先をジッと睨む。
そんな龍の子供が、甲板の上に次々と現れた。
『(低音)誇り高き龍の子らよ。蒼穹なる青を目指し、今こそ我が元から飛び立つのだ!』
蔵人からの指令を受けると、飛龍達は次々と甲板からカタパルトで射出され、勢い良く大空へと飛び立っていく。
ハンググライダーの様に翼を大きく開き、風を捕らえて自由に舞う飛龍達。彼らは風を操り、自らも風を生み出すことで、急上昇、急降下を自由自在に繰り返した。
そうして、空を駆ける飛龍が狙うは、羽の生えた赤子。
その内の1人が、飛龍に向けて小さな弓矢を番える。
放つ。
白い矢は、真っ直ぐに飛龍へと迫り、その小さな鱗で覆われた体に当たった。
だが、直ぐに跳ね返されてしまった。
飛龍の鱗は、ソイルキネシスの力が含まれており、魔銀程度の威力では傷一つ付ける事は出来なかったのだ。
飛龍はお返しとばかりに、大きく口を開ける。
小さな歯が生えたその口から、土の弾丸を飛ばした。
ダダダダダッ!
飛龍の撃ち込んだ弾丸が、天使の体に幾つもの穴を開ける。
土の弾丸には、エアロキネシスの力が加わっており、ライフリング加工を受けた弾丸の様に螺旋を描いて相手を穿っていた。
それ故に、魔銀で出来た天使の体を貫くことが出来たのだった。
ハチの巣にされた天使が、煙の様に消えていく。
その横を、金星を上げた飛龍が通り過ぎる。
天使を屠った飛龍が通り過ぎると、その後から、4匹の飛龍が続いて飛び去って行った。
5匹の飛龍が、V字の連隊を組んで飛行していく。
そんな飛龍連隊が、10組以上。
天使達で埋め尽くされた空を、鋭く駆け巡っていた。
それぞれの連隊が、天使の集団に突撃していく。
天使達はそれに対し、弓を構えて迎撃しようと試みるも、硬い外皮に守られた龍の集団には、殆どダメージを与えられなかった。
やがて、天使達の軍団は空のあちらこちらで散り散りになり、連携の取れた飛龍連隊によって、次々と撃ち落とされていった。
それを見て、議員が吠える。
「クソがっ!何なんだ、このハエ共は!俺のクリエイトを上回るなんて、ある筈が無い。あってはならない!俺の能力は、最高を創り出す最強の異能力だっ!」
言葉と共に、熾天使が動き出す。
両手を前に構え、空中でキーボードを打つ様な仕草をする。
「全天使共に告ぐ。羽を狙え。龍1匹に対して3人以上の数で責め立てろ。先ずは一部の天使共を囮に、他の部隊が待ち構え、一斉攻撃で撃ち落とせ」
議員の言葉に、天使達が動き出す。
5体の飛龍に対して何倍もの天使軍団を割き、迫り来る飛龍の集団に、一部の天使達が前へ出て、両手を広げる。
それに対して、飛龍は容赦なく弾丸を撃ち込み、囮の天使達を蹴散らした。
消えゆく天使達の煙の中を、5体の連隊が潜り抜ける。
その集団が飛び去る時、竜達の飛行ルートの両脇から、別働隊の天使達が弓矢を一斉に放ってきた。
その無数の矢は、まるで雨のように飛龍連隊を襲った。
その殆どは龍の鱗に阻まれたが、幾本かは翼へと到達した。
到達したのだが、全て吹き飛んでしまった。
飛龍達の翼は、風のベールで包まれていたのだ。
風は、飛龍達の移動をサポートするだけでなく、風の護りも授けていた。
「クソっ!エアロまで使ってるのか。本当に、4人でのシンクロが成功しているって言うのか!」
悔しがる議員。
だが、これで終わりではなかった。
飛龍連隊を取り逃した天使達の頭上から、無数の弾丸が降り注いだ。
見上げると、そこには別の飛龍20体が連隊を組み、留まっていた天使達に向かって機銃掃射を放っていた。
目の前の飛龍を撃ち落とすことだけに集中していた天使達は、突然現れた飛龍連隊を迎撃する事も出来ず、イタズラに部隊を消耗していた。
そんな戦闘が、空のあちらこちらで起きていた。
航空戦開始時、圧倒的な数の有利を得ていた天使達であったが、今では飛龍連隊と変わらない数まで激減していた。
勿論、ギデオン議員は負けじと天使達を産み落としていたのだが、供給される天使の数よりも、蹴散らされる天使の方が断然多く、みるみる数を減らしたのだった。
圧倒的な飛龍の殲滅力。
それを可能にしているのが、蒼龍の中で指揮を執っている蔵人であった。
(第1から第3航空機連隊は、熾天使周辺の敵機を掃討せよ)
(了解クマ!)
(蔵人君!追加の飛龍が出来上がったよ!)
(よろしい。ならば、第12連隊に組み込むとする。直ちに甲板へ移動し、離陸態勢に移行してくれ)
(了解!)
蒼龍の艦内で、蔵人の号令が飛ぶ。
それを受けて、他の2人がテキパキと動いていた。
蔵人達は、役割分担をしているのだ。
全面的な飛龍の操作を蔵人が。
細かい調整や、機銃掃射を慶太が。
そして、新たな飛龍の生産と、この蒼龍の操舵を若葉さんが担っていた。
加えて、
『みんな!天使の数が減って、巨大天使までのルートが空いたわ!』
艦内放送で、地上の鶴海さんが情報を流してくれる。
さながら彼女はオペレーター。
的確な情報分析があるから、蔵人も飛龍のルートを決定付けられていた。
(了解だ、管制室)
(蔵人君!12連隊を甲板まで誘導が完了。カタパルトの発射準備もバッチリだよ!)
(よろしい。飛龍の操縦を貰う。アイハブコントロール!デッキ、発艦許可を)
(カタパルト固定完了。飛龍の射出準備が整ったよ!)
(了解。第12飛龍連隊、射出!)
(カタパルト射出!)
飛龍の足元で、カタパルトの板が物凄い速度で前に動き出し、飛龍を甲板の先へと放り出す。
蒼龍の甲板から飛び出した飛龍は、めいいっぱいハンググライダーの翼を広げ、目標へと進路を取り出す。
その先は、中空で留まっていた熾天使。
彼の周囲を護衛していた天使達は、既に第1から第3連隊が駆除していた。
丸裸になった熾天使に、今、第12連隊が襲い掛かる。
(12連隊、一斉射撃!)
(くまくま、一斉射撃だクマー!)
5匹の飛龍達から、土塊の弾丸が一斉に放たれる。
熾天使は己を守る様に、6枚の黒い羽で体を覆ってしまった。
その翼に、弾丸が突き刺さる。
だが、
「効かねぇんだよっ!」
議員は簡単に、跳ね飛ばして見せた。
その黒金剛で作られた翼には、全くダメージを与えられていなかった。
硬い。流石は敵の本丸。
さて、その本丸の攻略だが、やはりこれしかないかな?
蔵人が次の作戦を構想していると、下から大きな魔力が動き出す。
熾天使だ。
また両手を前に突き出し、魔力をこねくり回していた。
その魔力で出来上がったのは、
「量産型では勝負にならねぇ。俺の本当の力が分かるには、一点物でないとな」
太陽光を乱反射する、1体の兵士だった。
その兵士には、技巧を凝らした装備が着けられ、手には黒く光るロングソードが握られていた。
その兵士の背中に、今、クリスタルの翼が生えた。
「キング・アーサー、美しき俺の傑作よ。あの不細工な船を叩き落としてやれ!」
議員の命を受け、騎士王が飛び立つ。
苦戦を強いられる天使達には目もくれず、一直線に蒼龍の方へと飛んでくる。
それに対して、蔵人達は、
(第6、7連隊は騎士王を迎撃)
(りょかーい!)
飛龍連隊を差し向け、迎撃をする。
何せこの蒼龍、攻撃能力は皆無と言っても過言では無いからだ。
元々、航空機で攻撃する事を第1に設計された航空母艦だが、ブルードラゴンも例外では無い。
ドラゴンモードであれば、ドラゴンテールで抗ったりも出来るが、航空母艦モードでは突撃くらいしか出来ない。
なので、飛龍連隊を頼ったのだが、
(くーちゃん!ダメだ!弾が弾かれちゃうよ!)
飛龍から射出される弾丸は、金剛の体には通用しなかった。
流石は、Aランクの魔力で作られた兵士。そこらの天使とは違うのか。ザコとは。
騎士王が迫って来る。
ここまで来ると、その大きさもよく理解出来る。
地上で戦った円卓の騎士。その彼らよりも一回り大きい巨人であった。
流石は王様。
だが、それだけだ。
強靭で、強力な武具を持ち合わせようと、立派な翼で空を駆けようと、結局は1体の戦士。
孤独な王よ。
(第7連隊、変形!)
(ドリルモードクマっ!)
騎士王の上空を飛んでいた飛龍達の形態が、変わる。
翼を折りたたみ、騎士王へと一直線で急降下する。
大きく開けていた口が閉じ、鋭利なドリルに変形する。
そして、体を纏っていた風で体を回転させ、高速の螺旋を描いた。
その数、5本。
全てが、騎士王に向かっていく。
騎士王がそれに気付き、ロングソードを構えた。
(今だ!第6連隊突撃!)
(ドリルモード2弾だクマっ!)
後ろを向いた騎士王に、第6連隊が突っ込む。
彼らも直ぐに、ドリルモードへと移行し、ガラ空きの騎士王の背に向けて突っ込んだ。
飛龍達の連携に、騎士王はどちらに対処するべきかを迷い、ドリルモードとなった飛龍達にその両翼を撃ち抜かれた。
翼を失った騎士王は、為す術もなく落下していき、地面に叩き付けられて粉々になった。
「ああぁっ!クソっ!役立ずがっ!」
議員が吠える。
完全に心の内が露呈し、感情のままに動いていた。
良し。相手から冷静さが完全に消えたぞ。
戦場がこちらに傾いている事に、蔵人は心を踊らせる。
そこに、
『蔵人ちゃん!』
司令だ。
『ギデオン議員の強い思念が、巨大天使の胸部から感じるわ!』
つまり、議員はそこに居ると。
感情を垂れ流した事で、鶴海レーダーにも引っ掛かってしまいましたなぁ。
蔵人はしめたと、蒼龍の艦内でほくそ笑んだ。
『(低音)この程度ですか、オールクリエイトとは。最上位と呼ばれる異能力とは…』
「あぁ?!」
『(低音)万物を生み出すとは言え、使いこなせねばただの猿真似。1つを極める者には勝てぬのですよ』
「言ってくれるねぇ。たかが小間使いを倒した程度で意気揚々とっ!」
熾天使が動き出す。
6枚の翼を大きく広げ、両手に真っ赤な槍を複製する。
そして、飛翔した。
「そう言うセリフはなぁ、俺のこの最高傑作を倒してから言うもんだぞっ!ガキどもっ!」
蒼龍に猛然と突き進む熾天使。
それに、蔵人は全飛龍を向かわせて迎撃させる。
既に、天使軍団は殲滅が終わっていたのだ。
後は、この元凶だけ。
だが、
「いい加減分かれよ!てめぇらCランクの魔力なんざ、Sランクの前では全くの無駄なんだって事くらいよォ!」
スコールの様に叩き付ける弾丸の雨に、熾天使は一切の躊躇もなく、一切の速度も落とさずに、真っ直ぐに飛行する。
土塊の弾丸は、熾天使にも効かなかった。
だが、それでいい。
大雨は、確実に熾天使から奪っていた。
彼の、視界を。
弾丸の雨から抜け出た熾天使は、槍を構える。
本丸である蒼龍を貫く為に、槍を投擲する準備に入っていた。
だが、止まった。
熾天使が投げようとしていた位置に、蒼龍がいなかったからだ。
熾天使の視線の先には、蒼穹の青が広がるばかりだった。
蒼龍を探す様に、首を動かす熾天使。
そして、発見する。
すぐ、目の前で。
蒼龍は、熾天使がスコールに突撃したと同時に移動していた。
熾天使の、もっと近くに。
熾天使が出てくるであろう予測地点の、直ぐ近くにまで接近していた。
物凄い速度を維持したまま、全速前進で。
その勢いのまま、蒼龍が熾天使に突っ込んだ。
「なっ!がぁああっ!!」
蒼龍の特攻を、腹部に受けた熾天使から、苦しそうな声が響く。
それでも、蒼龍は止まらない。
熾天使の体をくの字に曲げながら、地上へと急降下していく。
そして、
激突。
ぶつかった先は、観客席。
そこを守る、Aランク達のバリアであった。
「ぐぁっ!」
議員の短い呻き声。
熾天使は、蒼龍の船体とバリアの間に挟まっていた。
バリアの先には、誰も居ない。先程議員が槍を投げた場所だったから、観客達は避難が完了していた。
バリアが、ミシリッ、ミシリッ!と小さな悲鳴を上げる。
それだけ、蒼龍が物凄い力で押さえつけているのだ。
それでも、熾天使の体はダメージを受けていなかった。
しきりに体を起こそうと藻掻き、蒼龍の甲板を掴んだ。
「ぐっ、ふっふ…驚いたなぁ。まさか、ここまでやるとは。だが、所詮はCランクの異能力。俺のSランクには傷1つ付けられはしなかった。それが、俺とお前達との差。ぜってぇに覆らねぇ、ランクの壁だっ!」
熾天使は左手で船体を掴んだまま、右手に持った真っ赤な槍をこちらに向ける。そして、邪悪な笑みを浮かべてきた。
いや、実際の熾天使の表情は変わっていない。それでも、変わった様に感じる程に、議員の感情が漏れ出ていた。
熾天使が右手の槍をこちらに突き付ける。
勝ち誇った声が、響く。
「これで理解出来たか?ガキ共。出来たなら、許しを乞え。僕達が間違ってましたと詫びろ。でないと」
熾天使は突き付けていた槍を持ち直し、甲板目掛けて力いっぱいに槍を振り下ろした。
ガスッ
甲板に、深々と刺さる真紅の槍。
熾天使はもう一度こちらを向いて、無表情の中に狂気的な笑みを浮かべる。
「てめぇらの大事な作品を、このままボロ雑巾になるまでなぶり殺す」
熾天使が甲板に突き刺さった槍を引き抜き、もう一度構えた。
その時、
甲板に、何かが持ち上げられた。
それは、
「議員」
蔵人であった。
生身の姿で出てきた蔵人は、そのまま甲板の上を進み、熾天使を真っ直ぐに見詰める。
それを見て、議員は笑った。
「はっ、漸く観念したか。全く、手間を取らせやがって。だが許してやろう。お前も、そのお前の口車に乗せられた哀れなお友達も、全部纏めて不問にしてやる。この俺に、一生の忠誠を誓うならな」
熾天使はそう言いながら、蔵人に槍を向ける。
おかしな真似をしたら、そのまま串刺しにすると言うことだろう。
蔵人は止まり、一瞬迷う素振りをしてから、
ゆっくりと、膝を折った。
片膝を地面に着け、跪いた。
それを見て、熾天使は槍を握っていた手から、少しだけ力を抜く。
「そうだ。それで良い。さぁ、言ってみろ黒騎士。この俺に、忠誠を誓うと」
「ギデオン議員。私達は、貴方に……勝ちます」
「くっは…はぁ?」
議員の間抜けな声が、熾天使の中から抜け出る。
それと同時に、蔵人の体は前へと飛び出し、甲板の上を走り出した。
クラウチングスタート。
その為に、蔵人は一旦、膝を着いたのだった。
下り坂となっている甲板の上を、蔵人は猛スピードで駆け下りる。
坂の下の、熾天使を目指して。
駆けながらも、盾を操作する。
身体中に配置していた盾を、一極に集中する。
右手の先へ。
「シールド・クラウズ!」
集まった盾を、回す。
高速回転する。
強大なドリルとなった蔵人は、弾丸の様に真っ直ぐに、熾天使へと飛んだ。
それに、
「この、バカがっ!」
熾天使は槍を握り直し、迫り来る弾丸に向けて振り抜いた。
だが、
ギィィイインッ!!
槍は、蔵人を貫く前に止まった。
そこに居たのは、5匹の飛龍。
ドリルモードとなった飛龍が、槍を抑えてくれた。
『1番連隊、くーちゃんを守って!』
「クソがっ!」
議員が悪態をつき、熾天使が船体から抜け出そうと藻掻き出す。
だが、蒼龍はそれを許さなかった。
甲板が悲鳴を上げるのも構わず、更に前進して熾天使をバリアに張り付けにした。
熾天使が、藻掻くのを止めた。
「ああ、そうかよ。だったら、試してみるがいい。そのチンケな盾で、この6枚の翼を傷付けられるかをな!」
逃げられないと悟った熾天使が、黒い翼で体を包み込もうとする。
だが、
「なっ、う、動かねぇえ!」
6枚の内、4枚の翼が船体に挟まって動かせないでいた。
そのせいで、蔵人を阻む翼は、肩の上の方に付いた2枚だけ。
これが、蒼龍を突っ込ませた理由であった。
翼を自由に使わせない為の策。
更に、動く2枚の翼も、先の方が白く色あせ始めていた。
魔力の使い過ぎ。
無駄に、眷属を増やし過ぎたのだ。
Sランクと自負するが故、魔力枯渇と言う初歩的なミスにも気付けなかった。
Cランクに負ける筈が無いと言うプライドが、彼の目を曇らせていた。
そんな状態の議員に、
「ミラァア!ブレイクゥウ!!」
ドリルが突っ込んだ。
狙うは、熾天使の胸部。
鶴海さんが教えてくれた、相手の心臓部。
その直上で、黒い翼とドリルが拮抗する。
だが、徐々に、徐々に蔵人のドリルが翼を穿ち始めた。
完全に甲板から足が離れた蔵人。
それでも、前へ前へと進んでいく。
風だ。
蔵人の後ろから、風が吹いていた。
蔵人の背中を、桃花さんが押していた。
その力が、熾天使の翼を削っていた。
1枚目の翼が粉々に砕け散り、2枚目にもヒビが入った。
「ふざけるなっ!」
熾天使から、焦った議員の声が響く。
「何故だ!どうして俺の邪魔をしようとする!?お前が!」
「相容れぬ道だからですよ」
今更な質問に、蔵人は突き放す様に答える。
蔵人のドリルが2枚の翼も貫いた。
そのまま、熾天使の胸に突き刺さった。
ギィィイインッ!!!
熾天使の白い装甲がみるみる内に削れ、周囲にヒビが入った。
「バカなっ!俺が負ける?俺は最強のSランクで、最上位のオールクリエイトだぞ!?そんな俺が負けるだと?何故だ!何故、何故!?」
そのヒビは、瞬く間に熾天使の体全体に走り、そして、
「何故こんな化け物を送って来やがった!おおやまぁああ!!」
熾天使の体が、砕け散った。
ギデオン戦…決着でしょうか?
Sランクを相手に、5人の力が合わさった見事な勝利でしたね。
「あ奴ら3人だけでなく、ゲスト出演の2人も良い動きをした」
ゲストって…。
確かに、素晴らしい動きでした。
桃花さんのエアロキネシスが、飛龍連隊の動きをサポートし、最後は蔵人さんの一押しまで。
「鶴海嬢の情報も役に立った」
チームBC5人での勝利…ですね。