271話~新たな世界を創生するのだ!~
「さぁ、絶望の海に沈め!」
嬉しそうな議員の声がフィールドに響き、熾天使の目の前に、大きな赤い槍が生成される。
熾天使の無機質な瞳が蔵人達を見下ろし、その槍を手に取り、容赦なく振り下ろしてきた。
【きゃぁあ!】
【不味い!】
【逃げろBC!】
観客席からの悲鳴も虚しく、槍は音を立てて蔵人達諸共、地面へと突き刺さった。
と、誰もが思った。
だが、実際は違った。
槍は、地面に突き刺さる前に止まっていた。
空間に現れた、巨大な盾によって。
いや、違う。それは盾ではなかった。
平たく、数mにもなる長方形の板。
白銀に輝く、白龍の肩パットであった。
「あぁ?何なんだ、このデカ物は?」
ギデオン議員の疑問に答えるかのように、熾天使の足元から、4人の声が響いた。
「「「「ユニゾン!!」」」」
膨大な魔力が放出され、その威力に押された熾天使が後ろへと下がる。
空中に浮いた板に、白銀の盾達が集まりだす。
それは、やがて腕となり、足となり、尾となり、体となった。
そして、1匹の白龍と成った。
龍が、吠える。
『(低音)ブルードラゴン・リヴァイス!!』
白龍が地面に足を付けると、周囲に風が生まれる。
大きくしなる首を上に向け、蒼い空を仰ぎ見る。
そして、見下ろす。6枚の羽を広げる、熾天使を。
熾天使よりもブルードラゴンの方が、1周りも大きかった。
熾天使が、更に一歩退く。
「はぁ?4人でユニゾンだと?」
【【【うぇえええ!!!】】】
【よ、4人!?】
【3人以上のユニゾンなんて、聞いたこと無いわよ!】
【それに、本当にSランクにも匹敵する大きさだわ!】
議員も、観客も驚いているが、実は蔵人達も少々驚いていた。
何せ、本当に4人でユニゾンが出来てしまったから。
議員が熾天使を生成し始めるた時、蔵人もすぐに動き出した。
鶴海さんが、相手の動きを早めに察知してくれたので、思考する余裕が十分に出来ていたのが大きい。
慶太と若葉さんと手を繋ぎ、魔力循環を始めようとすると、慶太が桃花さんの手を掴んでいた。
「大じょーぶ!くーちゃんなら出来る!」
妙な自信を持つ親友に、蔵人はやるだけやってみようと循環を続けた。
すると、思いの外簡単に、魔力の流れを整える事が出来て、ユニゾンに成功した。
魔力は3人の時より増えているし、桃花さんの力も感じる。
彼女もしっかりと魔力循環を行っていたから、その分、ユニゾンをしても違和感なく魔力が回っているのだ。
ただ、桃花さんとのコンタクトは出来ないみたいだ。
そこは練度が必要なのかも知れない。
仕方がない事だ。
蔵人は前を向く。
及び腰だった熾天使だったが、急に立ち直ってこちらに槍を構えた。
その白亜の体の中から、小さな笑い声が響いた。
「くっはは…馬鹿な奴らだ。そんな見え透いたコケ脅し、引っかかるとでも思ったか?4人でユニゾンなんざ、出来る訳がねぇ。大方、ユニゾンをしたと見せかけて、ただ大きく膨らましただけの風船野郎なんだろう?その紛い物の中で、仲良くお手て繋いで震えているんだろう?ガキども!」
槍の穂をこちらに向け、熾天使が突っ込んで来る。
真っ赤に血塗られた穂が、陽光を受けて怪しく輝く。
「くだらねぇお遊びだ。とっとと終わらせてやる!」
その突撃に、白龍は肩を突き出して迎え撃った。
フィールドの中央で、穂先と肩パットがぶつかる。
その激突の瞬間、白龍は肩を勢い良く持ち上げる。
すると、肩パットが穂先を跳ね上げ、それに釣られて熾天使の腕も上がる。
そこに、大きな隙が生まれた。
その隙間に、白龍は長い尾を叩き込んだ。
「ぐぉおっ!」
議員の苦しそうな声を置き去りに、熾天使が吹き飛ぶ。
熾天使はフィールドの壁にぶつかり、観客席に張られていたバリアが波紋を描いた。
それを見て、観客席は大盛り上がりだ。
【【うぉおおお!】】
【【すごぉお!】】
【本物だ!風船なんかじゃないぞ!】
『凄い!大怪獣バトルが繰り広げられているぞ!正に、特別試合に相応しい大規模異能力戦だ!』
実況まで付き出した。お祭りみたいな盛り上がりだ。
だが、その中心にいる蔵人達は集中していた。
吹き飛んだ相手に、追撃せんと白龍を突っ込ませる。
バリアから離れ、千鳥足でこちらに歩いて来ていた熾天使相手に、肩パットを前に突き出したタックルをかます。
だが、
「くそがっ!」
もう少しの所で、熾天使は空へと飛び立ってしまった。
勢い余った白龍が、観客席のバリアにぶつかる。
バリアは大きな波紋を作り、観客達は椅子から転げ落ちる。
だが、蔵人はすぐに後ろを向く。
なんて素早さだ。グレイト・エボルヴとは比べ物にならない。
蔵人達が見上げた空に、熾天使は6枚の翼を羽ばたかせて宙に浮いていた。
「生意気な奴らだ。4人ユニゾンなんて無茶苦茶な技で、この俺に勝つつもりか。だったら教えてやるよ。本物のSランクって奴をな!」
熾天使が両手を広げる。そこに、膨大な魔力の塊が生まれる。
「これが俺の、最上位種であるオールクリエイトの戦い方だ。本当の強者ってのはなぁ、仲間だって作り出せるんだよ!」
熾天使の手から落とされた膨大な4つの魔力。それらが地面に降り立つと、大きな人間の形となっていく。
長剣を持つ剣士。
ハルバートを振るう戦士。
槍を構える兵士。
馬にまたがる騎士。
まるで彫刻の様に白く、精密に作り出されたギデオン議員の部下達が、蔵人達に向けて武器を構える。
背丈は白龍の半分ほど。それでも、彼らから感じる魔力は侮れない。
「さぁ、行け!円卓の騎士ども!」
議員の声に反応したように、彫刻達が一斉に走り出す。
それに対し、蔵人は体を覆う鱗の一部を外し、彫刻戦士に向けて放った。
『(低音)シールドカッター!』
高速回転する白銀の盾達が、彫刻に向かって飛来する。
だが、剣士や戦士はそれを切り裂いてしまい、騎士は全て避けきってしまった。
攻撃力だけでなく、俊敏性もかなり高い。
更に、走り寄っていた4体は、急に3方向にバラけて走り出した。
これでは、遠距離攻撃では狙い難い。
先にどれを相手取るべきかと視線を迷わせている間にも、騎士が正面から踊りかかってきた。
蔵人はそれを、シールドカッターで切り刻む。
今度は、避けられる前に攻撃が着弾した。
あと3人。
そう思っていると、左右から同時に剣士と戦士が飛びかかってきた。
戦士の攻撃は、右の肩パットで受け止める事が出来た。
だが、左の剣士が肩パットに取り付いてしまい、そのまま白龍の首に剣を突き立てた。
長剣は、切っ先を鱗に阻まれて、剣士は反動を受けて仰け反る。
そこに、白龍は左肩を振り回す。
すると、簡単にバランスを崩す剣士。
その隙に、白龍は肩パットで剣士を吹き飛ばし、地面でもがいている所を、シールドカッターで切り刻んだ。
同時に、背後に回っていた戦士を尾で叩き潰す。
これで、残るは1体。
最後の兵士は、槍を真っ直ぐに構えて、こちらへと駆け寄って来た。
何をするつもりなのか。
蔵人は構えながら、相手の出方を伺う。
すると、兵士の姿がブレた。
まるで影分身の様に、体が何重にも重なって見える。
そのまま、兵士が突っ込んできた。
いや、左右に別れる奴らもいた。
兵士は、いつの間にか3人になっていた。
蔵人は驚き、堪らず大きく後退した。
そこに、議員の高笑いが降り掛かってくる。
「くっははは!どうした?数が多くてビビったか?俺がいつ、4体しか兵隊を出さないなんて言ったよ?」
気持ち良く言い放つ議員の言葉と連動して、熾天使も嬉しそうに翼を広げる。
すると、また強大な魔力が幾つも生まれ落ち、そこから何体もの剣士や戦士が産まれた。
「蹂躙しろ」
目の前を埋め尽くす程の彫刻達が、白龍を目指して殺到する。
圧倒的な数の暴力。
これは不味い。
蔵人は危機感を覚え、槍を突き出してきた3体の兵士をシールドカッターで切り刻むと直ぐに、翼を広げた。
そして、一気に上空へと退避する。
【【【おぉおおお…】】】
【飛んだ、飛んだぞ!】
【あの巨体で飛べるのか…】
【流石、王者BC…】
観客達が、目を見開いてこちらを見上げる。
その視線を感じながらも、蔵人は上空で留まる。目先には熾天使の姿を見据えて。
熾天使が右手を上げて、こめかみの辺りを指で叩く。
「おいおい。それで逃げたつもりか?本当に分かってねぇな、お前らは。オールクリエイトっていう、最上位の力を」
熾天使の魔力が増大していく。
地上から、魔力が一気に熾天使へと集まっていく。
見ると、地上に取り残されていた軍隊が消えつつあった。
その集まった魔力が、再び結晶化し、具現化していく。
そうして作り出されたのは、随分と小さな赤子。
白龍の手のひら程度の赤ちゃんが、小さな白い羽を羽ばたかせて空を飛ぶ。
まるで天使様だ。
そんなのが、無数。
空を埋め尽くす程の天使様が、熾天使の周りを飛び回る。
熾天使から、高らかに声が響く。
「俺の異能力は万物を作り出す。最適の姿を作り上げ、最高の武具を生成する。どんな相手でも、何処に逃げようとも、俺のこの手からは逃れられねぇんだよ」
熾天使が右手を突き出した。
「さぁて、楽しい楽しい第二ラウンドの始まりだぁ!」
小さな天使達が、こちらへと飛び立つ。
1体1体は小さな赤子の姿だが、一斉に蠢く姿は1体の巨大な生物。
その群衆に飲まれてしまえば、円卓の騎士達よりも悲惨な末路を辿るのは、誰が見ても明らかだった。
(飛ばすぞ!総員、対衝撃態勢!)
(分かった!)
(了解くまぁああ!)
慶太が声を上げている最中に飛翔してしまったので、彼の叫び声を聞きながらの逃走となってしまった。
済まんな。
だが、そう返す余裕もない。
白龍が空を駆けると、その後ろにピッタリくっ付いて飛行する天使の群れ。
速い。
こちらの最高速度を、物ともせずに着いてきている。
蔵人は、白龍の全身を覆う鱗を操作して、白龍の軌道を激しく変化させる。
急上昇。急旋回。急降下。
【【【うぉおおお!!】】】
『物凄い空中アクロバットが繰り広げられています!まるで、航空ショーだぁ!』
下界では、大興奮の歓声が湧き上がる。
だが、上空ではそんな悠長な事を言っていられなかった。
急旋回する白龍の後ろを、天使達はしっかりと着いてくる。
その距離は、徐々に、徐々に詰められている。
なんて奴らだ。
トップスピードでは若干有利となるが、小回りは完全に向こうが上。
下手に小細工しないで、直線だけの飛行で引き剥がすしかない。
蔵人は瞬時に作戦を変更し、会場の外へと舵を切る。
だが、いざ外へ出ようとすると、
「腹がガラ空きだぁ!」
下から熾天使が急上昇してきて、白龍目掛けて槍を突き出してきた。
だが、それは十分に余裕をもって回避できた。
…回避させる為に声を上げたのかも知れない。
槍を避ける為に、会場の内側へと舞い戻ってしまったから。
そのせいで、後ろをついて来ていた天使達が追い付いてしまった。
彼らは直ぐに、白龍の翼や肩パットに取り付いた。
手に持った小さな槍で、白龍の鱗を剥がしに掛かる。
そうか、ならばやってみるが良い。
蔵人は、天使達に剥がされた鱗を操作し、シールドカッターで群がる天使を切り裂いた。
天使は、体から真っ二つにされて消えていく。
なるほど。量産型だから、先程の騎士達よりは回避性能が悪いみたいだ。
だが、直ぐに別の天使が同じ場所に降り立つ。
今や、白龍の体は、天使の群れで見えなくなっていた。
余りにも、敵の数が多すぎる。
降り立った天使は、鱗が無くなった部分に浅く槍を差し込んだ。
小さなダメージ。
だが、目の前に飛び交う天使達に続けて攻撃されれば、白龍の体が崩壊するのも時間の問題だ。
(くーちゃん!逃げないと!)
(いや、慶太。逃げても一緒だ)
(じゃあ、どうするの?)
慶太の問いに、蔵人はもう1人のユニゾン相手に声を掛ける。
(桃花さん。君の力を使わせてもらうぞ!)
声は聞こえない。
だが、反応は分かる。
桃花さんの魔力が、蔵人の周りを取り囲む。
それを、蔵人は掴む。
彼女の魔力を引き出して、白龍の鱗に練り込む。
そして、
『(低音)ウィング・ブラスト!』
白龍の体中から、暴風を発生させた。
攻撃力はない、吹き飛ばしの風だ。
だが、天使達には効果的だった。
白龍の高速飛行を追う為に、天使達は軽く設計されていたみたいで、一吹きで紙屑みたいに吹き飛ばされていった。
熾天使も、その6枚の羽で体を包み、風を受け流していた。
風の攻撃は、成功した。
だが、直ぐに風は止み、飛ばされた天使達は態勢を整えた。
「無駄だ。そんな弱い攻撃、俺の芸術品にはヒビ一つ入れられねぇ。所詮はCランクが寄り集まっただけのユニゾンって事だ」
彼の言う通りだ。
この攻撃では、勝負にならない。
ただ、勝機は見い出せる。
少しでもチャンスを掴むこの足掻きは、決して無駄ではない。
そう思っていた蔵人の元に、声が届いた。
【いけぇ!チームBC!】
【勝てるわよ!ブラックナイト!】
【勝ってくれ!ブラックナイト!】
観客達からの、必死な声援。
それは瞬く間に、大きな波となって、蔵人達に押し寄せて来る。
【【【ブラックナイッ!ブラックナイッ!】】】
『さぁ!チームBC!Sランクの最上位種を相手に、互角の戦いを見せているぞ!イギリス最強のギデオン選手を相手に、果たして、Cランクの彼ら彼女らは勝てるのか!?期待が高まるぞ!』
【【【わぁあああ!!!】】】
実況まで盛り上げに参加し、会場中から大歓声が昇って来る。
その声に、白龍へと殺到していた天使達が、止まった。
熾天使も止まり、地上を見下ろす。
「はっ!どいつもこいつも無駄なことを。てめぇらがいくら叫ぼうとも、強大な力の前では全くの無力。この戦いには、蚊程も影響を与えられねぇんだ」
そう言い捨てて、熾天使は再びこちらを向いた。
だが、その最上位者の背中に、再び実況の声が掛かる。
『あっ、ちょっと、坊やだめっマイク返し…キィーン…おい!聞こえるか!ギデオン・コッククロフト!』
その声は、男性の声。
ケヴィン君の声だった。
下を見ると、実況の机に立って、マイクを両手で持つ彼の姿があった。
『チームBCは負けない!彼らは、俺達の為に戦っているんだ。俺達が、歩み出せる為に戦っているんだ!それを、あんたは潰そうとしている。あんたは一体、何のために戦おうとしているんだ!?ギデオン・コッククロフト!』
『あぁあああ!!!』
突然、議員が大声を上げ、ケヴィン君に向けて赤い槍を放り投げた。
槍は、物凄い勢いで観客席へと飛んで行き、張られていたバリアに突き刺さった。
それを見て、観客達は実況席から一斉に逃げ出す。
ケヴィン君も、机の上で腰を抜かしていた。
その彼に向かって、議員が吠える。
『黙れ!二度とその名で、俺を呼ぶんじゃねぇ!侮辱罪で極刑にしてやるぞ!』
激高。
正に、怒髪冠を衝く様子。
一般市民に怒号を飛ばし、恐喝紛いのことまでしている。
議員としてあるまじき行為だ。
そんな愚行に及ぶ程、彼にとってコッククロフトと言う家名はタブーなのだろう。
試合開始前に久我を名乗っていたが、どちらかが旧姓なのだろうか?
そもそもコッククロフトと言えば、ラザフォードメダル賞を取ったイギリスの物理学者と同じ家名だ。
もしかしたら彼の祖先も、侵略者の秘密と何らかの接点があったりするのだろうか?
興味がある。
だが、今はそれを置いておこう。この戦いには、関係のない事だから。
いや、関係あるか。
お陰で、十二分に時間が稼げたのだから。
(若葉さん。準備は出来たかな?)
(うん。取り敢えず、60匹くらいでいいかな?)
(ああ、十分だよ。それが、この龍が搭載できる最大数だからね)
蔵人は胸を撫で下ろし、前を見る。
こちらに背を向け、今だに観客席を見下ろす熾天使に向かって、声を掛ける。
『(低音)随分と横暴ですな、ギデオン議員』
その声に反応し、熾天使が半分だけ体をこちらに向けた。
何処を見ているか分からない天使の目が、こちらを向く。
『(低音)家名を呼んだ程度で、罪に問われることはないでしょう』
「はっ!今はそうだがな、そう言う法律を俺が作ってやるよ」
『(低音)自分勝手に法を作り変える。それこそ横暴ですぞ』
「はっはっは!本当に、何も分かってねぇな、お前らは!」
熾天使はこちらを正対し、胸に手を当てた。
「俺は天下のオールクリエイトだ。俺が作れない物なんて、この世界に何一つない。法も、秩序も、そして世界すらも。俺が男の為の、新たな世界を創生するのだ!」
高らかに宣言するその様子は、正に創世神。
自分の思うように世界を変えようとする、傲慢な神であった。
やはり、そうか。
蔵人は小さくため息を落とす。
こいつが、創造主。林さんに忠告された、テロ組織のボスとなる者。
こいつだけは、完膚なきまでに潰さねばならない。
今、この場所で。
『(低音)議員。貴方は危険だ。貴方がやろうとしている事は、この世界を破滅に導く』
「それはお前の方だ。女と手を取り合おうなんて言うお前らの考え方が、また男を、世界を殺す!」
痺れる程の殺気が、蔵人達を貫く。
議員の敵意が、完全にこちらを向いた。
蔵人は構える。
次の、作戦に移る為に。
『(低音)議員。貴方はここで倒す。この龍がもつ、真の力によって』
「はっ!今まで本気じゃなかったってか?そいつは楽しみだ。ユニゾンまでしている今、次は何を見せようって言うんだ?ヒーローにでも変身するか?あぁ?」
『(低音)正しく、変身…いや、変形だぁ!』
蔵人がそう叫ぶと、龍は翼を体に密着させ、小さくなった。
『(低音)今こそ!我が真の姿を見せる時!』
白龍の長い首が折れて、お腹の方へと格納される。
その首が無くなったスペースに、両腕が寄って来て、合わさった。
すると、腕に釣られて肩パットもそこに移動し、両方が平行に合わさった。
それは、まるで1枚の大きな平板。
折りたたまれた龍の背中を全て覆ってしまう程の、大きな甲板となっていた。
その姿を見た者は、
【何だあれは?】
【箱か?空飛ぶ箱?】
【ああ、ノアの箱舟か!】
【いや、それにしては何だか平た過ぎるわ】
【タンカー船…かしら?】
揃いも揃って、首を傾げた。
無理もない。
誰も、この船と同種の物を見た者はいないのだから。
空想上の産物。いや、
史実の日本でのみ実在した船。
その名も、
『(低音)我は竜の母。祖国の空を護りし者。航空母艦、蒼・龍・改!!』
ブルードラゴン…。
まさか、蒼龍の英語読みだったとは…。
だから、白龍なのにブルーだったのですね。
「だが、航空母艦でどうやって戦うかだ。激高のギデオンは手強いぞ?」
怒ってましたね。
2つの家名がありましたけど、父親と母親の姓という事でしょうか?
「恐らく、そうだろうな」




