266話~今度は、負けない~
「私は今大会の主催者の1人で、ギデオンという者だ。よろしく」
流暢な日本語を操りながら、ギデオンと名乗る大柄の男が、蔵人の方に手を差し出してきた。
その名前は確か、平等党党首の名前だったはずだ。
男性優遇を推し進める張本人が、態々出向いた理由は何だ?
蔵人は疑念で、一瞬動きを止める。
大会主催者だから?そんな訳はあるまい。呼び出すならまだしも、お偉い議員様が控室まで足を運んでいるのだから、それなりの思惑があって来ていると思った方が良いだろう。
きっと、面倒な思惑だろうけど。
そう思いながらも、蔵人は直ぐに動き出し、笑顔でギデオンさんの手を取る。
「初めまして、ギデオン様。チームBCの巻島蔵人です」
主催者であれば、こちらの情報も持っているだろうと思い、蔵人は本名を名乗る。
既に、この控室には他チームも残っていないので、問題はないだろう。
蔵人の受け答えに、ギデオンさんは満足そうに頷き、蔵人の後ろで尻込みしていた面々を見渡した。
「君達の話は、私の秘書からも聞いている。あの清麗の妹達を倒し、Cランク異能力戦を見事に優勝したそうだな。加えて、今日の演武でも素晴らしい演技を披露し、見事予選を勝ち抜いていると。本当に素晴らしい事だ。何より、それらを君達男子が出場して勝ち取ったというのだから、同性として誇らしく思う」
滅茶苦茶褒め称えてくれながら、満面の笑みを浮かべるギデオンさん。
若葉さん達から聞いていた話よりも、随分とマトモそうにも見える。
だが、怪しく輝く瞳からは、どうも良い印象を受けない。
議員なんて職業なのだから、腹芸の1つや2つは出来ると考えた方が良いだろう。
「お褒めに預かり光栄です。男子が異能力戦に出場する事で、意表を突けたのが大きかったのかと」
蔵人がそう言うと、ギデオンさんは握手していない方の手でこげ茶色の顎髭をイジリながら、片頬を引き上げた。
「そりゃ、驚くだろう。私も最初、君達の活躍を聞いた時はとても信じられなかった。だが、どれ程相手の裏をかいたとしても、確かな実力が無ければ出来ない事だ。シンクロという高等技術を使いこなす、君の様な逸材がいなければ、この栄冠には届かなかっただろう」
「シンクロ?ですか?」
シンクロとはなんだ?と首を傾げる蔵人に、ギデオンさんは握手を解いて、笑いを堪えながらゆっくりと首を振った。
「くっふっふ。そうだったな。こいつは軍事機密だ。Yes、Noで答えられる筈はねぇよな」
楽しそうに笑うギデオンさんの言葉で、蔵人は何となく理解できた。
シンクロを日本語にすると同調。詰まり、異能力を同調させることを示しているのだろう。
ユニゾンに近い言葉だが、軍事機密という事はそれ相応の技量を必要とする可能性がある。
そこから考えるに、自分が行っているユニゾンが、もしかしたらシンクロと呼ばれる技術なのかもしれない。
魔力循環による技能が覚醒などと大層な名前が付いているからね。3人でのユニゾンでも驚かれたから、複数人とユニゾンが出来る事を別称で表されていても、不思議ではない。
蔵人が独り考察していると、ギデオンさんは顔を上げて、少し怖い笑みを浮かべて蔵人を見下ろした。
「君には、君達には大いに期待している。あわよくば、次の本戦でも優勝を勝ち取り、総合優勝を果たして欲しい。そして、男でも異能力を使いこなせるという所をイギリス中に見せつけてくれ」
なるほど。
彼がここに来た理由は、男である自分達を激励するためだったのか。
男が活躍することは、平等党の理念に合致する。
彼らが活動や票を集める際に、実例があった方がより有利になるのだろう。
「ギデオン様。私も常々考えておりました。魔力量が少ないから、異能力が最低種だからと全てを諦めてしまうのは、とても勿体ない事だと」
「ああ、その通りだ!男だから女に劣ると卑屈な事ばかり抜かしていれば、何時まで経っても男は女に搾取されるだけの生き物のままだ。男は女の装飾品ではないのだ!それを是非、そこらで縮こまっている男共に分からせてくれ!」
うーん。そう言う意味で言ったのではないのだがな。
思いの丈をぶちまけるギデオンさんに、蔵人は反論しようかと一瞬迷った。
だが、蔵人が口を開く前に、ギデオンさんの視線がこちらから外れた。
「それで?次の本戦は誰が出るんだ?えぇ?」
「オイラだよ!」
慶太が勢いよく手を挙げると、ギデオンさんの怪しい瞳がより一層輝き、両頬が吊り上がって狂気的な笑みを浮かべた。
「素晴らしい。実に素晴らしい采配だ。だが、次の本戦にはスターライトも出てくる。あいつらはU12で何度も優勝を経験している実力者達だ。男2人で勝算はあるんだろうな?」
「オイラとくーちゃんは最強だよ!」
慶太が勢いをそのままに啖呵を切ると、ギデオンさんは勢いよく指を鳴らした。
「はっはぁ!実に良い返事だ!イギリスの軟弱男子共に学ばせてやりてぇくらいだ!」
ギデオンさんは嬉しそうに声を上げ、外套を翻す。そのまま、小さくステップするように扉まで歩いて行き、
ドアノブに手を置いた状態で、こちらを振り返った。
「チームBCの諸君。今夜はスケジュールを開けておくように。君達を私のディナーに招待してやる。勿論、総合優勝しなけりゃこの話は無しだが、もしも総合優勝を果たせば、諸君らが味わったことのない最高の夜を約束しよう!是非とも奮闘してくれたまえ!」
ギデオンさんはもう一度高笑いし、蔵人達の返答も待たずに出て行ってしまった。
残された蔵人達は、しばし呆然としていた。
まるで、嵐が過ぎ去ったかの様だ。
「何だったんだろうね、あのおじさん…」
桃花さんが、ポツリと零す。
それを、若葉さんが拾う。
「ギデオン議員だよ。男性優遇策を推進している、平等党の党首」
「思っていたよりも、子供っぽい男性だったわね」
鶴海さんの言う通りだろう。
何と言うか、感情の起伏が激しい子供の様な人だった。
純粋で、思ったままに行動する危ない人。
だが、純粋というのは、必ずしも良い事では無い。
何やら怪しい野望を持っていそうな彼であれば、特に。
「くーちゃん。夜ご飯はあの人と食べるの?」
「…拒否は出来ないだろうな」
蔵人は、彼が去っていった扉を見つめて、深くため息を吐いた。
遅い昼食を摂り、時刻は現在15時を少し回ったところ。
蔵人と慶太は、選手入場口の前で待機している。
目の前に広がるフィールドでは、U12の本戦が行われていた。
小学生とは言え、ここまで勝ち抜いてきた精鋭だ。なかなかに派手な演出で、観客達を湧かせている。
「おめん…チーム桜城」
小学生達の演技を鑑賞していると、後ろから声を掛けられた。
振り向くと、厳しい目でこちらを見ているソフィアさんがいた。
彼女の隣では、飛鳥井さんが心配そうに彼女のドレスを掴んでいる。
彼女達もまた、派手なメイクと衣装に身を包んでいた。
蔵人は2人に正対し、胸に手を当て小さく頭を下げる。
「お久しぶりです。チームスターライト。貴女達とこうして、再びフィールドに立てる事に感謝を」
「立つだけではダメよ。私達と、ユニゾンで勝負して」
おっと、そう言えば許可を出さないと戦闘は出来ないのだった。
蔵人は彼女の提案に「承知致しました」と返答し、しっかりと頷く。
すると、彼女の眼は幾分か鋭さを失い、ゆっくりと手を差し出してきた。
交渉成立の握手だね。慶太は、飛鳥井さんとお願いするよ。
「さて、互いの合意は成立しましたが、具体的な開戦方法は如何されます?開始時間や戦闘の区域などは」
蔵人達以外にも、2組のチームが同時に競技を行う。適当な場所で開戦すると、その2組に迷惑が掛かってしまうからね。しっかりと戦地は考えた方が良い。
蔵人の問いに、ソフィアさんは真っすぐにこちらを見たままに口を開ける。
「競技開始から1分以内にユニゾンして頂戴。その準備が終わったら、私達の初期位置まで来て欲しい。多分、東西南北でそれぞれのチームが分かれると思うから」
「もしも、何かのトラブルとかがあったら教えて。私達も、何かあったら炎を高く打ち上げて連絡するから」
慶太と握手していた飛鳥井さんが、補足を入れる。
トラブルか。余り、起きては欲しくないが。
蔵人はその提案を了承し、慶太も「おっけー!」と片手を上げた。
全ての段取りが決まった時、
【本戦出場の皆さま!フィールドの準備が整いました!入場して頂きますので、呼ばれた順にお並び下さい!】
スタッフが声を上げて、選手達を整列させようとする。
選手達がゾロゾロとスタッフの元に集まる中、ソフィアさんがもう一度、こちらを見上げる。
「私達は強くなった。今度は、負けない」
そう言って、ソフィアさんはもう一度蔵人達に鋭い視線を送った後、背中を向けた。
負けないと言っているが、負けたのはこちらなのに…。
いや、違うな。彼女達は負けたと思っているのだ。我々、オメンジャーズに。
あの戦い、圧倒的に有利だったのはスターライトであった。であるのに、あそこまで苦戦を強いられた。それを、彼女は負けと思っている。
蔵人は、去っていくソフィアさんの小さな背中を見送り、心が熱くなる。
すると、その間に誰かが割り込む。
飛鳥井さんだ。
彼女が慌てて、蔵人達の前に立った。
「あっ、えっと、えっとね。ソフィアちゃんは緊張しているの。だから、その、頑張ろう!…じゃなくて、えっと…よろしくねって言いたいの」
飛鳥井さんは、ペコペコと頭を下げてから、ソフィアさんの背中を追った。
確かに、2人とも緊張している。
だが、それはこちらもだ。
片や、圧倒的なユニゾンの前に、力及ばず敗北してしまったチーム、オメンジャーズ。
片や、初めてユニゾンを行った3人に苦戦を強いられたチーム、スターライト。
その勝負から、4年の月日が経っている。
今戦えばどうなるか、誰も予測すら立てられない。
故に、緊張する。
期待する。
この勝負、互いの全力がぶつかり合う戦場となる事を。
彼女達の背を見送っていた蔵人の肩を、慶太が叩いた。
「オイラ達も行こう」
「ああ、そうだな。その前にこれを着けてくか」
「おう!」
慶太はそう言うと、アイマスク外して、代わりの物を顔に着けた。
蔵人も同じく。
「では行くか。クマよ」
「おっけー!エビちゃん!」
慶太の元気な声に、スタッフの皆さんがこちらを振り向き、そして怪訝な顔をする。
そんな彼女達の様子も視界に入らず、蔵人達は入口ゲートへと向かった。
『さぁ、いよいよ始まります。コンビネーションカップ演武、U16の部。200近くのチームから選りすぐられた4チームが、今、堂々とした姿でフィールドに入ってきました。1組目はチーム、マジシャンズクロック!アクセラレートを巧みに使う男性2人組が見せるのは、ヒップホップダンスとパントマイムを掛け合わせた次世代型のストリートパフォーマンス!他の男性2人組チームが敗退した今、彼らに掛かる期待は大きいぞ!』
【きゃぁあ!クロノ!頑張って!】
【ホワイトマジシャンも素敵よ!愛してるわ!】
黒と白のピエロのような服を着た男性2人組が、小さく俯いてフィールドの北側へと歩いて行く。
その後ろを、赤いチャイナ服を着た小さな娘達が飛び跳ねながら入場した。
『続いて現れた2組目は、Cランク異能力戦でも別格の力を見せたチーム、フォーロン!彼女達のユニゾンが、再び地上を煌々と照らすのか!?』
【リーファン!リーシャオ!いつも通りやれば勝てるぞ!】
【ここで勝てば、総合優勝の道が見えてくる!絶対に優勝だ!】
劉姉妹は、声援の意味が分かっていなさそうなのに、飛び跳ねて喜びながら、フィールドの南側へと向かった。
フォーロンのユニゾンは完成度も高く、見栄えも素晴らしいからね。これは強敵だ。
だが、もっと強敵なのは、蔵人達を置いて先にフィールド入りした2人の少女達。
『そして、今年も来ましたこのチーム!コンビネーションカップにおいて、U12を2連覇し、U16においても、最年少で総合優勝の目の前まで迫っている期待の巨星!チーム、スターライト!』
【【わぁあああ!!!】】
【待ってたわ!スターライト!】
【ソフィア!イギリス国民の力、外国人共に見せつけてくれ!】
【モミジちゃんのファイヤーストームを見る為に、態々フィンランドから来たのよ!】
『出場者達の中でも、圧倒的な火力と演出を両立させる彼女達のユニゾンが、この演武の最終戦でも花開くのか!?期待が高まるぞ!』
【【【うぉおおおおおお!!!】】】
凄い声援だ。観客席でうねりが発生している。
その中心となっている2人は、慣れたように手を振りながら、西側へと歩いていった。
さて、次は我々の番だ。
蔵人達は、スタッフに促されて入口ゲートを潜る。
途端に、観客席から無数の視線が突き刺さる。
『さぁ!最後に現れたのは、今大会随一のダークホース。いや、ブラックホースだぁ!』
【キタキタぁああ!!】
【ブラックナイトぉお!!】
【あれ?衣装を変えたのかしら?可愛い顔が見えなくなってる!】
【アイマスクじゃない!変な仮面を着けているわ!】
観客の1部が騒いでいる。
だが、それも仕方がない。
何せ、今蔵人達はアイマスクではなく、縁日で買ったお面を着けているからだ。
慶太はデフォルメされたクマのお面。
そして蔵人は、少し焦げた恵比寿のお面を。
そう、これは4年前に使ったお面。オメンジャーズの変身アイテムだ。
蔵人達は、スターライトと対峙する時に着ける為、懐かしのアイテムを日本から持ち込んでいた。
そんな蔵人達を、スターライトの2人がチラリと見返り、小さく微笑んだ。
何か2人で会話を交わしていたが、ここからでは聞き取れない。
だが、分かる。
彼女達も喜んでいることが。
『男子でありながら異能力戦に出場し、見事優勝までしてしまったその実力は、最早推し量ることすら難しい!なんでかって?そんなチーム、未だ嘗てないからだ!前代未聞を連発するこの男子達が、今度は演武の頂点に挑もうとしているぞ!果たして、彼らの演技はどんなものなのか!?チーム、ブロッサムキャッスル!!』
【【【ブラックナイッ!ブラックナイッ!】】】
【【【クーマ!クーマ!クーマ!】】】
スターライトと変わらない程の声援。
…いいや、認めよう。
スターライトよりも数段大きい歓声である。
その理由は、これまでの戦績ももちろんある。
だが他にも、登場したのが最後であり、会場の熱気が最高潮であったことも大きい。
ギデオン議員に会っていなかったら、何故ぽっと出のチームがトリで紹介されるのかと疑問に思った事だろう。
だが、今なら分かる。
これが、彼の指示なのだろうと。
少しでも優勝に近付きやすいようにと、紹介順を操作したのだ。
もしかしたら、予選でスターライトと別の組になっていたのも、彼の采配か?
分からないが、そこはあまり関係ない。
我々は、優勝しに来た訳では無い。
勝ちに来たのだ。
スターライトとの雪辱戦。それが、この演武最大にして最後の目標。
演武での栄光は、オマケに過ぎないのだ。
東側のスタート地点に着くと、蔵人は慶太に振り向く。
「さぁ、やるぞクマ」
「おー!」
【【【わぁあああ!!!】】】
慶太が腕を突き上げると、観客も一緒になって声を上げる。
盛り上げ上手だな。
蔵人もそれにならい、腕を上げる。
彼と腕を交差すると、観客は興奮で拍手をしだす。
まるで、優勝したみたいな盛り上がり方だ。
『会場も大盛り上がりです!これならもう、前置きは要らないでしょう!審判が中央で、フラッグを掲げます。今、振り下ろされました!演武本戦、最後の戦いが今、開始されました!!』
始まったか。
蔵人は周囲を見回す。
スターライトは仲良くお手手を繋ぎ、既にユニゾンの態勢に入っている。
その手前で、
蔵人達は交差させていた腕を下ろし、手を繋いで魔力も交差させる。
混じり合わせる。
魔力が、互いの体を流れ出す。
ああ、
「やはり、お前さんとのユニゾンが一番、しっくり来るな」
「あったり前だよ!だってオイラ達は、おさなな馴染みだからね!」
「そうだな」
今度は「な」が1個多いけどね。
お前さんらしい。
だからこそ、俺は安心して委ねられるんだ。
蔵人達の魔力が膨れ上がる。
それと同時に、蔵人達の体が土と盾で覆われる。
圧縮される盾と土。
黄土色に輝くそれらが合わさり、連なり、うねり出す。
『さぁ!早速、ユニゾンが始まったぞ!見事なユニゾンの龍を繰り出したのは、チーム、フォーロン!見事な火竜がフィールドを』
【【【おぉおおおお!!!】】】
『なんだ?観客のみんなは何に驚いて…うぉおっと!これは凄い!チームBCもユニゾンだぁっ!蛇?巨大な蛇が鎌首を上げているぞ!』
【でっかい蛇だな。フォーロンのレッドドラゴン並みだぞ】
【あれ?BCのユニゾンって、車じゃなかったっけ?】
【あれは、パートナーが忍者ワカバの時ですわ。今はクマ。つまり、男2人だとヘビになるのでしょう】
【なにっ!ブラックナイトは、別人2人とユニゾンが出来るって事か!?】
【2人じゃありませんわ。ワカバ、モモカ、そしてクマちゃん。3人ですわ】
【おいおい。なんなんだそれ…。日本人は何か、特殊な技能に目覚めたのか?】
複数のユニゾンを見せる蔵人達に、観客席からは歓声だけでなく、戸惑いの声も多い。
そりゃ、軍事機密になっているらしいシンクロをしているから、一般人はビックリなのだろう。
いや、機密を知っている人間は、余計に驚くか。
だが、それは観客席の反応だけ。
フィールドでは、真逆の反応であった。
ソフィアさん達が生み出した、真夏の太陽がこちらを向いていた。
さぁ、ここまでおいでと、蔵人達を誘っている。
彼女達も待っていたのだ。この瞬間を。この決戦の時を。
4年と言う長い年月の中で、心待ちにしてくれていた。
(準備は良いか?慶太)
(おっけークマ!)
(よし。では微速前進!)
(ヨーソロー!クマ!)
蔵人達のユニゾンが地面を這う。
目の前には、煌々と輝く巨星が浮いていた。
こうして目の前で見ると、良く分かる。
あの時よりも、数段レベルが上がっていることが。
だが、それはこちらも同じだ。
あの時とは違う事を、見せつけるのだ。
蔵人達が、もう少しで約束の地に辿り着こうとした時、
真上から、熱を感じた。
スターライトの熱ではない。これは、別のユニゾン。
【我〇×+@=再戦|¥!!】
加えて降って来たのは、良く分からない中国語。
蔵人達が鎌首を上げると、そこにはこちらを見下ろす紅龍の姿が。
何を言っているかは分からないが、恐らくこちらと戦いたいのだろう。
そう、蔵人が予測を付けていると、
『おおっと!ここでチームフォーロンから、チームBCに再戦の申し込みだぁ!』
実況が翻訳してくれた。
有難い。
(慶太。ちょっと寄り道してもいいか?)
(良いよー!)
慶太は躊躇なく、そう言ってくれた。
済まないね。準備運動だと思ってくれ。
『(低音)劉姉妹。貴女達の再戦を受け入れます』
『チームBCが戦闘を受け入れたぞ!異能力戦の雪辱戦となるか、チームフォーロン!』
【そんなっ!男性チームに勝負を挑むなんて、卑怯だわ!】
【いいや!これはチャンスだ!フォーロンを倒して、優勝するんだBC!】
【貴方なら出来るわ!ブラックナイト!】
声援が巻き起こる中、紅龍と大蛇が睨み合う。
いよいよ始まります、演武本戦。そして、スターライトとの雪辱戦。
…と、思ったのですが。
「中国ペアも残っていたか」
彼女達のユニゾンも見事でしたものね。
でも、まさか土壇場で勝負を挑んで来るとは。
「挟撃されるよりはマシだろう」
果たして、蔵人さん達はフォーロンを下し、スターライトまで辿り着けるのでしょうか?