264話~この作戦は失敗よ!~
一昨日、昨日と続いて開かれたコンビネーションカップの異能力戦を見事優勝で飾った蔵人達は、現在演武に出場するべく、おめかしして控室で待機していた。
蔵人の格好は、肩の所に銀色のラインが入った黒いシャツと、伸縮性に優れた黒のダンススラックスだ。
黒で固めたのは、蔵人の趣味というのもあるが、演武の男性衣装はこれが一般的であることも大きい。
出場する他の男性陣も、黒を基調とする服装の割合がかなり高いように見える。
その中には、蔵人の様にベネチアンマスク(仮面舞踏会等で、目の周辺だけを隠すマスク)を付け者もいれば、フェイスペイントで顔を真っ白にする者もいる。
本人は真面目に素顔隠しをしているつもりなのだろうが、傍から見るとピエロの様に見えてしまう。
それが狙いの人達も、何組かいるみたいだけど。
逆に、女性陣には派手な衣装を着る人が多い。
フリフリのフリルが大量に付いたドレスや、体のラインが強調されたボディースーツ。露出度が激しすぎて、殆ど水着じゃないかという破廉恥な衣装で出る者もいる。
その殆どの人は、目鼻立ちがくっきりするようにお化粧をしている。
男性陣と違って、素顔を隠す意味合いではないからね。社交ダンスの様に、顔立ちが目立つ意味でのお化粧なのだ。
それは、我々チームBCの女性陣も一緒である。
「どう?ミドリン。僕、変じゃないかな?」
「大丈夫よ、桃ちゃん。とっても可愛くなったわ」
「そうかな?僕、お化粧なんて口紅くらいしかしたことないから、ちょっと変な感じだよ」
桃花さんと鶴海さんが、互いの着飾った姿をお披露目している。
桃花さんも、目元にアイシャドウを書かれて、口元には真っ赤な口紅を薄っすらと塗られていた。
他の出場者と比べたら、かなり抑え気味なお化粧ではあるけれど、普段すっぴんの彼女達からしたら、他人からどう見られるかと不安なのだろう。
そのメイク担当である柳さんも、少々困り顔だ。
「私の様な素人で宜しかったのでしょうか?大会運営が用意したプロに依頼した方が、しっかりとしたメイクをしてくれたと思うのですが…」
「それだと、かなり待ちますから。それに、柳さんのメイクで十分、彼女達は可愛くなっていますよ」
それに、大事なのは異能力を如何に魅せるかという部分である。衣装や装飾は、異能力を生えさせるための舞台装置の一部に過ぎない。
蔵人が自信を持ってそう言うと、柳さんは小さく首を振り、ため息を吐いた。
「蔵人様。貴方のそういう所が、罪作りなのですよ」
そういう所?
蔵人が首を傾げると、柳さんが後ろを示す。
彼女の指に導かれて後ろを向くと、赤面した3人の姿が。
「か、かわっ!」
「蔵人ちゃん、その、しれっと言われると、心の準備が…」
「流石は、プレイボーイだね」
おっと、配慮が足りなかった。
だがな、若葉さん。その称号は、ちょっと不名誉だぞ?
今日出場する演武は、3つのステージで振るい落とされていく。
先ずは、今から開始される第1予選。
U16での出場チームはそれなりに多いらしく、1回の試合で15チームが競い合うらしい。
その第1予選で演技をして、審査員達に点数を付けてもらう。その点数で順位を付けてもらい、上位30チームが第2予選へと駒を進める。
第2予選でも演技をして、ランキングで4位までに入れば、本戦と呼ばれる決勝ラウンドに進出することが出来る流れである。
蔵人は第1予選に挑むべく、隣に鶴海さんを連れ立って、選手入場口の前で待機していた。
この場所には、同じ組で競い合うチームが控えていた。
殆どが女性のペアであるが、男性のペアの姿も見える。
誰もが緊張で顔を強張らせ、最後の打ち合わせに余念がない。
そんな彼女達だったが、入口の向こう側から歓声が上がると、一斉にフィールドの方を伺い始める。
前の組の演技が、スタートしたのだ。
蔵人達の様にダンスをしているチームもあれば、異能力戦の様に火炎弾や雷撃を撃ち合うチームもあった。
他にも、サイコキネシスでジャグリングをするチーム。超聴覚を持つ男性2人が、バイオリンを奏でるチーム。ソイルキネシスで銅像を作り、パントマイムをするチーム。パイロキネシスで作った炎の縄跳びを飛ぶチームなど、様々だ。
これだけ多くのチームが一度に大道芸を披露しても、フィールドが広大なのでぶつかり合う事は殆どない。もしもぶつかりそうになった場合は、テレポートで安全な位置に移動してくれるらしいので安心だ。
ファァアアアン!!
『演技終了です!選手の皆さまは速やかに、退出ゲートから控室にお戻りください!』
実況の声に従い、フィールドに居た選手達が、蔵人達とは反対側のゲートへと出ていく。
その後、10分程でフィールドの整地を行うと、蔵人達の出番となった。
入口付近で立つスタッフさんから入場するようにせかされて、入口を出る。
途端に、周囲から割れんばかりの拍手で迎えられた。
【【わぁああああ!!】】
【ロレッタ!絶対優勝よ!】
【チーム、リッキソー!今年こそは第2予選進出だからね!】
【ちょっと、リリー!緊張しすぎて、手と足が一緒に出ているわ!】
凄い声援だ。今は朝の9時を少し過ぎたばかりだというのに、観客席は殆ど満員に近い。
異能力戦の予選なんて、スカスカであったのに比べると、大きな差だ。
これは、コンビネーションカップが演武に力を入れているからというのもあるのだろう。
だが、一番は、
【【きゃぁあ!!キングアーサーく~ん!】】
【【ロビンハットく~ん!こっち向いてぇえ!】】
少ないながらも、男性の選手が参加することが主な要因だろう。
女性達が挙って、黒い衣装に身を包んだ選手達に手を振り黄色い声を上げる。
仮面を被っているのに、彼らの名前が分かるのは、彼らが常連だからだろう。
名前自体は、多分仮名や二つ名だとは思うけど。
彼らのお陰で、こちらに向けられる視線は随分と減ってくれている。
そう思ったのだが、
【やっほー!見に来たよ、チームBC!】
【スターライトみたいに二冠目指しちゃって頂戴よ~!】
ポップコーン片手に応援してくれているのは、チーム、フェアリープルームのアリッサさんとニーナさんだ。
昨日は4回戦から姿を見せなかったから、今日応援に来てくれるとは思わなかった。
更に、彼女達の近くには赤と黒の制服を着た集団も。
チーム、Eスコードの皆さんか。
【おーい!チームBC!応援しに来たぞ!】
更に前列の端の方には、ケヴィン君の姿までがあった。
凄いな。イギリスの知り合いが殆ど勢ぞろいだ。
それだけ、自分達に期待をしており、それだけの重荷を背負っているのか。
恥ずかしい姿は見せられないな。
「蔵人ちゃん。行きましょう」
鶴海さんが、蔵人の袖をツンツン引っ張る。
彼女が導く先を見ると、こちらを誘導するスタッフさんの姿が。
チームごとにスタート位置が決まっているのだ。
所定の位置に着いて、互いに向かい合う蔵人と鶴海さん。
鶴海さんが着ているのは、青いロングドレスだ。
このドレスも、蔵人のシャツも、全て大会からの借りものである。
どうも、この大会のスポンサーの中にはファッション業界も絡んでいるみたいで、そこから提供された衣類や装飾品を無償で提供してくれている。
恐らくだが、こうして公の場で披露させることで、宣伝効果を狙っているのだろう。
その為、今回の衣装には大山製薬のロゴは入っていない。入っていると、商品の邪魔になってしまうからね。
その代わりに、演技中に名前を呼ばれる際には、必ずスポンサー名も紹介され、大会パンフレットやモニターで映される際もスポンサーの名前が付随するらしい。
お金を出してくれる組織あっての大会だから、そういう所は抜け目がない。
「鶴海さん、転ばないように気を付けて下さいね」
そう言いながら、蔵人は鶴海さんの手を下から包み、転ばないようにと軽くリードする。
普段は、ロングスカートなんて着慣れていないと言っていたからね。
鶴海さんが、薄っすらとチークで桃色に染められた頬を、更に赤らめながら小さく頷いた。
「ありがとう、蔵人ちゃん。でも大丈夫よ。盾のサポートもしれくれているから、そうそう転んだりしないわ」
「ええ。それは分かっているつもりなのですが、こうして手でも繋がる事で、僕も安心できるのです。僕の為にも、是非エスコートさせて下さい」
本音を言えば、今からダンスをするというのに、男性が女性をリードしないなんて蔵人には考えられなかった。
そうやって、教えられてきたからね。
だが、この世界でそれは非常識。男性はリードなんてしないし、女性同士で踊る機会の方が圧倒的に多いと聞く。
なので、この申し出は蔵人のワガママという事にした。
「蔵人ちゃんらしいわね。じゃあ、甘えさせてもらおうかしら」
それに、鶴海さんは微笑みを返して、重ねた蔵人の手を軽く握り返してくれる。
暖かいぬくもりが蔵人の手に伝わり、そして、
【【【きゃぁあああ!!!】】】
観客席からは、黄色い声援が沸き起こった。
【女の子が!男の子と手を繋いでるわ!】
【男装した女性!?それとも、女装した男性なの?】
【違うわよ!本物の男の子が、本物の女の子をエスコートしているのよ!】
【なんて事なの!男女が一緒に出場するだけでも奇跡なのに、こんなに仲良しなんて!これはきっと、私の夢に違いないわ!】
何を今更?
異能力戦で、我々は何度も男女混合で戦ってきたのだが?
そう、疑問に思った蔵人だったが、埋め尽くされた観客席を見て何となく理解する。
ああ、きっとここにいる多くの観客は、異能力戦では別会場に行った人達なのだなと。
AランクやBランクの会場は別会場だったからね。演武からはランクの壁がなくなり、選手だけでなく観客も合流したのだろう。
それ故に、チームBCが男女混合チームだと言うのを知らないのだ。
その証拠に、
【あの黒髪の男の子は、一体誰なの?!】
【フォックス兄弟…じゃないわよね。彼らは成人してるもの】
蔵人が誰なのか分からずに、困惑している。
元々、白銀鎧を脱いでいることもあり、チームBCを知っている人にも見分けが付けにくくなっているのだ。
分かるのは、蔵人達と直接戦ったチームと、鶴海さんの事を知っている人くらい。
その為に、男女が手を繋ぐと言う行為だけで注目が集まってしまった。
だが、今回はそれは追い風となるだろう。
この大会は、目だってなんぼの世界。
さぁ、存分にご覧頂き、審査員の目も向くように盛り上げて下さいね。
『それではこれより、5組目の演武を始めます!レッツ、エンジョイ!』
ファァアアン!!
競技が始まった。
至る所で、各々が得意なパフォーマンスが繰り広げられ、異能力の光が鮮やかにフィールドを照らす。
蔵人も鶴海さんと向き合う。
彼女の両手を取り、ゆっくりとステップを踏む。
なんてことは無い、基本的なワルツの動きだ。
ダンスが苦手な蔵人だったが、これくらいなら猿真似で出来る。異世界の舞踏会に参加する為に、散々仕込まれたからね。
それと同時に、異能力も発動し始める。
蔵人が出したのは、大量の水晶盾。
10㎝角の物から、1㎝角の大きさまで、小さな半透明の盾を周囲前面にばら撒いた。
そこに、鶴海さんのアクアキネシスも加わる。
彼女の作り出した水の帯が、盾の合間を通り、また時折盾にぶつかって小さく水しぶきを上げる。
すると、その水に太陽光が当たり、キラキラと陽光を跳ね返す。
水晶盾も、角度によって光を反射し、淡くも美しい光のカーテンが出来上がる。
それを見て、観客達は声を上げる。
【見て!あのカップルの周りが、光のベールで包まれているわ!】
【綺麗ねぇ。まるで太陽に祝福されているみたい】
【ええ、ええ。わたしゃこういう光の方が好きですよぉ。ビカビカ無遠慮な明かりは、どうも気持ちが騒めいてしまってねぇ】
先ほどまでは黄色い声が多かったが、今は感嘆の吐息の方が多い。
太陽光をただ反射しているだけなので、それ程派手なパフォーマンスではない。周囲では、信号機の様に己の体を光らせて踊っているチームもあるのだが、淡く輝く蔵人達の方に注目が行く。
自然な光なので、味が出ているのだろう。
その淡い輝きと、簡単なゆっくりとしたダンスとが上手い事マッチしていた。
それに、
【わぁ!見て、虹が見えるわ】
【綺麗ねぇ。あの子達の空間だけ、絵本の世界に居るみたい】
【良いぞ!チームBC!めっちゃ目立ってるぞ!この調子だ!】
観客席の角度によっては、虹も見えるらしい。
鶴海さんのお陰だな。室内で練習した時よりも、良い効果が出ている。
ケヴィン君も、絶賛してくれるし。
すると、観客達の声に釣られたのか、実況もこちらに目を付け始めた。
『さぁ、フィールドの右奥では幻想的な世界が広がっているぞ!キラキラと光り輝く無数の星々は、太陽光を浴びたアクアキネシスとクリエイトシールドの合わせ技だ!この世界を作り上げているチームは、大山製薬がサポーターのチームBC、チームBCがまたもややってくれているぞ!流石はチームBC!Cランク異能力戦を制した実力は、演武でも光り輝いている!』
【うぇえ!?チームBCが、優勝!?】
ケヴィン君の驚き声が、ここまで聞こえた。
彼の方を見ると、応援で使っていた団扇を取り落として、呆然とこちらを見ている彼が居た。
昨晩伝えてはいたんだけどね。笑って信じて貰えなかったのだ。
そんな彼と同じように、周囲の観客も驚きの声を上げる。
【何ですって!?Cランクのチャンピオンが、あの子達なの!?】
【中国の選手じゃなかったのね!エーデルワイスが負けたって聞いてたから、てっきり】
【女の子の方が初出場だから、分からなかったわ!】
【流石はチームBCね!強いだけじゃなくて、美しさまで携えているなんて!】
【あれ?でもチームBCってことは…あの人がブラックナイトなんじゃない?!】
【クマちゃん…じゃないわね。背丈で見ても、彼がそうよ!】
【思っていた通りのイケメンだったのね!】
チーム名が伝えられた途端、観客達の中で蔵人達の正体に気付く人が続々と現れ出す。
だが、アイマスクをしているのだから、顔の美醜など判断できないだろう?
疑問に思う蔵人の前で、鶴海さんが表情を強張らせる。
「なんだか、注目されちゃっているわね。周りからも凄い視線が集まっている気がするわ」
「そうですね。虹まで掛かっているので、より注目を集めたみたいです」
「それは…演武としては良い事なのだと分かるけれど、ちょっと緊張してしまうわ」
鶴海さんはそう言って、弱弱しく笑みを浮かべる。
ちょっと緊張していると言うけれど、かなり無理をしているのが分かる。
何とかしないと。
蔵人は少しだけ、彼女に顔を寄せる。
「では、僕の目を見てください。この目を見ることに集中して、周囲の雑音をシャットアウトしてください」
「わ、分かったわ。やってみる」
そう言って、鶴海さんの大きなお目目が、こちらをジッと見つめる。
周囲の光を集めて、彼女の瞳の中で星々が輝く。
美しい紺色の髪が、ステップを踏むたびに美しく流れている。
その姿に、蔵人も自然と彼女を凝視してしまった。
そのせいで、
「や、やっぱり無理よ!蔵人ちゃん、この作戦は失敗よ!ぜんっぜん、集中出来ないわ!」
頬だけでなく、顔全体を真っ赤にした鶴海さんが、涙目になって叫んだ。
そんな彼女の姿に、蔵人も頷く。
「確かに、これはダメだ。予想以上の破壊力です」
そう言う蔵人自身も、気恥ずかしさで顔を上に逃がしてしまう。
そんな2人に、
【なんて可愛らしいの!】
【まるで少女漫画の中の一コマを見ている気分だわ!】
【初々しいお姫様と王子様ね!】
【もっと私の近くで躍って頂戴!その雰囲気だけでも感じさせてちょうだい!】
『チームBCの初々しさに、会場中から堪らず拍手が湧いているぞ!素晴らしい!素晴らしいのですが会場の皆さま!競技中にフィールドへ侵入しようとしないで下さい!最前列の方!そんなに乗り出さないで下さい!』
大盛況となっている会場に、蔵人達は更に盾と水の量を増やし、煌めきで視線を防ごうとした。
だが、そんな事では観客達の熱い眼差しを防ぐことは出来ず、蔵人達はより顔を赤面させて、無心でステップを踏むのだった。
「済まん。落ちたかもしれん」
「ごめんなさい、みんな」
第1予選を終えて、控室へと戻って来た蔵人達は、まだ顔を赤くしたままにそう言って、頭を下げた。
途中までは順調にワルツを踊れていた蔵人達だったが、途中から観客席からの視線を気にしてしまい、動きがぎこちなくなってしまった。
それもこれも、鶴海さんと見つめ合おうとしたのが敗因だ。
作戦失敗。
だが、悔いはない。
蔵人達が頭を下げていると、若葉さんが蔵人の肩をツンツンと突いた。
なんでしょう?
「2人とも、あれを見てみなよ」
そう言われて見てみた先は、会場の巨大スクリーン。
試合中は、注目選手を映し出していたその画面に、今は何やら文字と数字が羅列していた。
それは、現在までの高得点チームの一覧表であった。
そこには、
「ほら、4位の所。私達の名前だよ」
かなり上位の所に、チームBCが躍り出ていた。
現在75チームが演技を終えており、残りは100チーム余りである。
第2予選に進めるのが上位30チームなので、単純計算したらその内に入れそうな気がする。
その様に予測していた蔵人だったが、現実は違った。
いい方向に。
「総合順位7位だってさ。流石だね、黒騎士とお姫様」
「やめて若ちゃん!恥ずかしさで汗が凄い事になってるから!」
結局、10位以内に入れてしまった蔵人達。
それを祝して、若葉さんが軽口を叩いて、見事に鶴海さんが撃沈されている。
おいおい。あまり鶴海さんをイジメるんじゃないぞ?
「う~…ミドリンが7位だったら、僕じゃあ最下位になっちゃうよ…」
鶴海さんの横で、桃花さんまで小さくなってしまっている。
次に出場するのが彼女なので、プレッシャーを感じているのだろう。
それはそうだ。何せ、本戦に行けるのはこの30チームの内の僅か4チームだけだから。
流石に、第2予選は厳しい。
それは、蔵人も思っていた。
だが、
「大丈夫だ、桃花さん。俺達だったら出来る。あの体育祭の、二人三脚の時を思い出すんだ」
圧倒的な逆境でも、全てを覆したあの一戦。
それさえ再現出来れば、本戦への切符も掴めるだろう。
蔵人の励ましに、桃花さんは顔を上げた。
そんな彼女に、蔵人は手を差し伸べる。
「さぁ、行こうか。次のステージに」
「う、うん…」
演武の第1予選は、かなり高順位になりましたね。
「あ奴は、ダンスが苦手ではなかったか?」
簡単なステップだったら、踊れるみたいですね。
それでも、水晶盾と水の共演で、自然な輝きを見方を着けて勝利出来ました。
「うむ。加えて、初々しさもウケたみたいだな」
本人達は、本気で悶えていたみたいですけれど。