257話~そ、それは、大変な国だねぇ~
イギリスに着いた翌日。
蔵人は、ふかふかのベッドの中で目覚める。
体が沈みすぎて、逆に寝辛かったので、薄っすらと膜を張らせてもらった。
ベッドから降りると、自宅より少々手狭な、しかし高級感あふれる内装の部屋が広がっている。
大山さんが取ってくれたホテル、ザ・リッチ・ロンドンの一室だ。
まるでスイートの様な部屋だが、これでもスタンダードというのだから驚きだ。
スイートはきっと、上級貴族の部屋並みに豪華なのだろう。
「おはよう」
部屋を出て、1階の朝食会場でみんなと合流する。
だが、
「ああ、おはよう、蔵人君…」
「く~ちゃん、おはよ~…」
桃花さん達のテンションが低い。
鶴海さんまで目を擦っているし、慶太に至っては半分目が閉じている。
元々薄目の彼だ、更に目が閉じたら、もう寝ているも同義。
これは時差ボケだな。
蔵人が苦笑いしていると、若葉さんが「やれやれ」と首を振った。
「昨日は散々、ホテルの中ではしゃいでいたからね。夜も殆ど寝れなかったらしいよ」
そうだろうな。
こんな高級ホテル、中々泊まれないから、テンションが振り切れてしまったのだろう。
慶太に至っては、飛行機の中で殆ど寝ていたから、余計に夜寝れなかったみたいだし。
これは、今日も体調を整えた方が良さそうだ。
そう考えながら、朝食会場へと赴く。
朝食会場も豪華であった。
会場の入り口には2人のドアウーマンが立っており、ホテルのルームキーを見せると直ぐに扉を開けてくれた。
会場でも支給係が控えており、蔵人達の座る席を引いて待ってくれる。
至れり尽くせりだな。
朝食はビュッフェになっており、中央の長テーブルには様々な料理がキレイに並んでいる。
ハム、ソーセージ、ローストビーフにお魚、クロワッサンにパンケーキ、オムレツにプリンにヨーグルト…。
色とりどりの品々。選り取り見取りである。
もう、どれを取ろうか迷ってしまう。
これは、慶太も迷っているだろうと席に戻ると、そこには大量の料理を掻き込む慶太の姿が。
…そうか、慶太よ。お前さんは迷わずに手当たり次第に取ってきたのだな。
朝食会場に入る前は、今日はお休みにしようと考えていた蔵人は、やはり訓練をするべきかと悩んだ。
朝食を食べ終えた蔵人は、柳さんと若葉さん、それと数人の護衛達と一緒に外出することにした。
大会会場までの道順を覚えたいから、車も使わず徒歩である。
それに、桃花さん達が睡眠不足なので、回復するまで時間が出来たのもある。
慶太は行けるかと思ったのに、朝食の最中に寝てしまった。
パンケーキを枕代わりに寝てしまったから、起き上がった時の顔がハチミツだらけであった。
選手名であるクマの後ろにプーを付けてやろうかと、本気で考えたものだ。
柳さんに却下されたけど。
そんなこんなで、元気だった人達だけでの外出だ。
柳さんは海外旅行も慣れていると聞いていたけれど、若葉さんもそうらしい。
ご両親が良く海外に行かれるらしく、偶に付き合っていたらしい。
通りで、英語も堪能だったわけだ。
ロンドンの街並みは、東京特区とはまた違った美しさがあった。
理路整然と並べられた石畳に、白亜の建物が連なる。
オシャレなカフェや洋服店などが並ぶ細い通りは、まるで19世紀にタイムスリップしたかと思うような趣がある。
だが、見かける看板や標識には、英語の下に日本語が書かれていた。
同盟国で、日本からの旅行者も多いのだろう。
加えて、
【ハァイ!】
【あら、男の子】
道行くお姉さん達が、蔵人を見かけると手を振ってくる。
こういう所は、日本と変わらないな。
そう思った蔵人だったが、彼女達の様子に違和感を覚えた。
誰も突撃してこようとか、舌舐りをする人がいないのだ。
人によっては、チラ見するだけで通り過ぎる人もいるくらい。
別に、蔵人が女装している訳では無い。
それでも、女性達は過剰な反応をせず、寧ろ日本よりも淑女的な振る舞いをしている。
これが、イギリスの国民性か。
紳士、淑女の国と呼ばれるイギリスの気品は、あべこべ世界でもしっかりと受け継がれていた。
素晴らしい。
そう思っていたのだが。
【きゃぁっ!】
蔵人達を走って追い抜いて行った30代くらいの女性が、目の前で盛大にコケた。
いや、コケる前に、蔵人が盾で受け止めた。
盾の内側には膜を張ったので、痛くない筈だ。
【大丈夫ですか?】
蔵人は英語で話しかけながら、女性に手を差し出す。
差し出した後に、しまったと思った。
咄嗟にやってしまったが、この世界でこれは悪手過ぎる。最悪、手を引きちぎられるかも。
そう、思ったのだが、
【あっ、ごっ、ごめんなさい!】
女性は蔵人の手から逃れる様に立ち上がり、スカートを抑えた状態でこちらに頭を下げた。
顔を上げた彼女の瞳には、明らかに恐怖の色が混じっていた。
【ワザとじゃないの!お願い!セキュリティには通報しないで!】
セキュリティ?
なんだ?こいつ、我々から何か盗んだのか?
蔵人は自然と、目が鋭くなる。
そんな蔵人の目の前に、若葉さんが体を割り込ませた。
【大丈夫ですよ。彼も分かっています。男性管理官には通報しませんよ】
【本当!?ああ、ありがとう!じゃあ、私はもう行くから、さようなら!】
そう言いながら、女性は全力疾走で路地に消えてしまった。
彼女の消えた辺りを、呆気に取られて見つめていたら、若葉さんが疲れた笑みを浮かべてこちらを向いた。
「異常だと思った?でもこれが、今のイギリス女性の普通だよ」
「ふむ。つまりは...平等党か」
蔵人がそう言うと、若葉さんは満足そうに頷いた。
やはり、正解だったか。
彼女の発言、男性管理官とは、昨日のハーマンさんの役職に似ていた。
女性はそれを、セキュリティと呼んでいたから、きっと男性専用の警察か何かなのだろう。
男性優遇策が推し進められると聞くイギリス。更に彼女の慌てようから、男性との接触だけでも、何らかの罰が与えられるのかも知れない。
蔵人の推測に、若葉さんはウンウン頷く。
「流石は蔵人君だね。大体合ってるよ」
若葉さんが、詳しく説明してくれる。
女性が恐れていたのは、やはり男性管理官を呼ばれて、逮捕される事だった。
ただ、蔵人に触れそうになったから慌てたのでは無く、転んだ拍子にパンティを見せてしまったと思ったからだそうだ。
女性が男性に下着を見せたら、公然わいせつ罪に引っかかるらしい。
なんて厳しい法律だ。
蔵人は信じられないと首を振ると、若葉さんが肩をすくめる。
「仕方ないよ。イギリスの特区では、男性はかなり厳重に守られているからね。それこそ、男性特区が認められるくらい」
若葉さんに聞いたところ、イギリスではちょっとした事で、男性に訴えられるのだとか。
偶然手が男性に当たっただけで、痴女として捕まったり、救助のために衣服を脱がせたら、実刑判決を受けた事例もあるのだとか。
それを逆手に取った犯罪も起きており、痴女にあったと男性が騒ぎ立て、無実の女性から金を巻き上げると言った事件も起きているらしい。
そこまで行かなくても、男性に対して誹謗中傷を言うと、セクハラとして訴えられてしまう。
彼女は何人居るのかとか、身長は何cmなのかとか。
挙句の果てに、男性に対して「おじさん」と言うだけで、周りから犯罪者の様な扱いをされる事もあるらしい。
男性側は散々、オバサンだの、若作りだの、化粧が臭いからどっか行けだの平気で言うのに、自分達が言われるのは我慢ならないのだ。
それを聞いて蔵人は...。
「そ、それは、大変な国だねぇ」
言葉を濁しながら、視線をさ迷わせた。
何せこの状況、程度の差はあれ、2000年初期の現実世界と似たようなものだったから。
違うのは、男女があべこべなだけである。
社会を支えてきた男性達を、臭いだのキモイだの言って、散々イジメてきたあの時代と、変わらない気がした。
確かに、元の世界基準で先ほどの出来事を考えてみると、女性が焦るのも理解できる。
30過ぎのおじさんが、女子中学生にパンツを見せてしまったのだ。おじさんの立場だったら、警察を呼ばないでくれと泣いて謝るかも知れない。
そう考えると、このイギリスは異常では無いのか?
男性の権限が強くなったお陰で、女性達は淑女的に振舞ってくれるのだから。
...いや。違うな。
やはり、今のイギリスは異常だ。
何せ、比べている2000年初期という時代が、異常な世界だったのだから。
弱い人間の権利を強くしようとし過ぎて、結局、みんなが生きにくい世界になってしまうぞ?
蔵人は心の内で結論を出し、話を進める。
「そして、そんな大変な風潮にしているのが、平等党という訳か」
「そうだね。でも、イギリスがこんな風になったのは、結構最近のことなんだ」
おや?そうなのか?
蔵人が意外だと顔に出すと、後ろで聞いていた柳さんが頷く。
「ここ10年くらいでしょうか。イギリスで様々な男性優遇策が打ち出され始めたのは。真紀子…蔵人様達が生まれる前に来英した時は、まだ男性特区もありませんでしたし、日本とさほど変わらない印象でした」
「その原因は、平等党の党首が変わって、路線変更したことが大きいだろうね」
8年前に平等党の党首が変わってから、男性優遇策が次々と打ち出されたらしい。
ロンドン特区の中に壁を作り、そこを男性特区としたのもその頃。
その党首の名前が、ギデオン議員。
男性議員で、30代で議員となった若きエース。
その手腕と、魔力量Sランクという圧倒的なブランドにより、平等党は第4党でありながら絶大な影響力を持っているのだという。
「議員数こそ、2大政党に比べたら少ない平等党だけどね。党員の大半が男性議員って言うのもあるし、ギデオン議員のコネが強力って言うのもあって、議会に及ぼす影響力はかなり大きいらしいよ」
男性のSランクだからね。男性女性問わず、票を集めやすいのだろう。
世論が味方に付いている議員に対しては、他の議員も強くは出れないのだという。
こんな所でも魔力絶対主義か。
蔵人はやるせなくなり、小さくため息を吐く。
そう聞いてしまうと、至る所に男性優遇の一端が見えて来た。
レストランではメンズセットというお得な定食が用意されていて、男性限定の飲み物や料理などがメニュー表の中で広く幅を利かせていた。
映画館には〈今日はメンズデイ、50%OFF〉と大きく書かれていたし、地下鉄には男性専用車両が2両も連なっていた。他の車両はキャリアウーマン達でパンパンなのに、その車両だけはスッカスカである。
今はまだ、史実のあべこべバージョン程度の優遇策である。
だが、既に男性特区という異様な地域も出来上がっているので、女性達に厳しい制度が、今後成立する可能性が高い。
平等党が、ギデオン議員が目指す世界とは、どんなものなのか。
「蔵人様。会場が見えましたよ」
悩む蔵人の横で、柳さんが前を指さす。
そちらを見ると、見上げる程に大きな鉄門が聳え立っており、その向こう側に緑豊かな公園が見える。
「こちらが、王立公園のリージェンツパークです」
「そして、コンビネーションカップが開かれる会場は、この中にあるカムデンWTCで行われるんだよ」
柳さんの言葉を引き継いで、若葉さんが蔵人の横に進み出る。
随分と大きく、立派な門構えだと思ったが、なるほど王立なのか。
蔵人は感慨深く見渡しながら、リージェンツ公園の中を進む。
広々とした敷地内には、噴水や湖、バラ園などもあり、見ているだけで1日が過ぎてしまいそうだ。
そんな広大な公園の中に、見慣れた建物群が見えてくる。
WTCだ。
身分証として、パスポートを見せて中に入ると、そこには日本のWTCと同じような建物が連なっている。
入っているレストランとかのショップは、地元のお店が入っているみたいだが。
見回すと、一般客の中に選手らしき人達の姿も見られる。
お揃いの装備に身を包んだ集団や、周囲に厳しい目を向ける2人組などが目に付く。
恐らく、彼女達もコンビネーションカップの出場選手だろう。
事前受付会場の付近になると、そう言う人達ばかりとなる。
集まった選手達は、受付で手続きをする人を眺めては、彼女が何の異能力者かを推測したり、勝てるかどうかをチームで話し合っていた。
【ねぇ!見て!男の子がいるよ!】
そして、蔵人が並ぶと、そんな驚き声も聞こえてくる。
だが、それは他の大会と比べれば少ない方だ。
何せ、
【きっと、演武にエントリーするんでしょ?今年は多いね。演武に出る男性チーム】
そう。演武があるからだ。
周りを見ても、男性の姿がちらほら見られる。
彼らは全員、演武の出場者だ。
中には、アジア系や中東系の男性もいる。
演武を取り入れている試合は少ないらしいので、普段異能力を活用出来ない男性達が、各国からエントリーしている。
なるほど。戦闘やスポーツ以外で異能力を競わせるとなると、演武くらいしかないのか。
蔵人はそう納得しながら、受付をする柳さんを待つ。
すると、受付の申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
【ちょっと宜しいでしょうか?インターネットでのお申込を確認しましたが、異能力戦に男の子も参加する事になっていますよ。今からでも選手の入れ替えや削除が可能ですが、如何されますか?】
【問題ありません。そのままで登録して下さい】
柳さんの返答に、受付は笑顔で頷きながら手元の用紙に書き込みをしようとして、途中で手を止めて驚きの表情で柳さんを見上げた。
そして、カタコトの日本語で問いかけてきた。
「あー、貴女が持つエントリーシートは、男の子が戦います。男の子はコンビネーションカップで怪我をします。それは良くないですね?」
【怪我はして欲しくありませんが、男の子達は異能力戦も演武も両方出場します】
柳さんの返答に、完全に固まってしまった受付。
何を言っているか分からないと言ったご様子だ。
男子が異能力戦に出るなんて、申請間違いだと思い込んでいたのだろう。それは仕方がない。
そう思った蔵人は、柳さんの横に進み出て、ホーネットを1匹出して見せた。
【僕は日本の異能力選手です。大会で優勝もしました。僕が女性と戦う事は、問題ありません】
【は、はい...分かり、ました】
受付はホーネットに目を釘付けになりながらも、蔵人達のエントリーを受け付けた。
日本の大会では簡単にエントリー出来ていたが、それは黒騎士の名前が知られていたから出来た事だった。
だから、もしもビッグゲームで活躍していなかったら、日本でも同じ対応を受けていただろう。
ビッグゲームで名を知られたのは、良い事だったのか。
蔵人は改めて、そう思った。
ホテルに着くと、慶太達はまだ夢の中だったが、鶴海さんは起きていた。
インターネットを使って、コンビネーションカップ出場者の情報収集をしてくれていたらしい。
「助かります、鶴海さん」
「いいえ。大会に出場しないんですもの。せめてこうして、みんなの役に立ちたいと思っただけよ」
そう言って意気込む鶴海さん。
そんな彼女に、蔵人は苦い顔をする。すると、それを瞬時に見抜かれてしまった。
「どうしたの?蔵人ちゃん。何か不味い事でも起きたの?」
「ええ。その、今日受付で聞いた話なのですが、大会にエントリーする選手は、異能力戦か演武のどちらかに必ず参加しなければならないそうなのです」
つまり、鶴海さんも何処かには出場しないといけないのだ。
戦いが苦手な彼女を、異能力戦に駆り出すのは忍びない。
ファランクスとは違い、彼女をマークされる可能性がかなり高いからね。
折角のイギリス旅行で、トラウマを抱えてしまうリスクは避けたい。
なので、
「ですので、鶴海さんには演武の予選に出場して欲しいのです」
演武であれば、こちらが戦闘を許可しない限り攻撃されることはない。
予選であれば、ユニゾンが出来なくても十分に通過できるみたいだからね。
蔵人が両手を合わせると、鶴海さんは少し不安そうな顔をする。
「大丈夫かしら。私、人様に披露できるような芸は持ち合わせていないのだけれど…」
「そこは、文化祭の応用をしてみてはいかがでしょうか?」
「文化祭という事は、人魚姫のミュージカルの事?ダンスをするの?」
「ええ、そうです。ちょっとやってみませんか?」
そう言って、蔵人は彼女の前に手を出して、軽く腰を折る。
それを見て、鶴海さんは少し顔を赤らめながらも、その手を優しく取ってくれる。
「私、それ程ダンスは得意じゃないわよ」
「安心してください。僕はからきしです」
「それ、安心するところじゃないと思うわ」
そう言いながらも、鶴海さんは緊張していた表情を和らげてくれた。
そのまま、2人はホテルの中庭へと歩みを進める。
その後ろで、柳さんが小さく手を叩いているみたいなのだが、何を期待されているのでしょうか?
そうして、コンビネーションカップ予選当日となった。
慶太はまだ若干眠そうだが、他のみんなは元気いっぱいだ。
昨日、ちゃんと夜に寝られるようにと、訓練もしっかり行ったからね。
お陰で、桃花さんもパッチリお目目だ。
「ううぅ。ちょっとお尻が筋肉だよぉ〜」
...うん。大丈夫。少し負い目がある方が、緊張しないだろう?
蔵人は、兜の隙間から覗く目を、彼女から逸らして控え室の中を彷徨わせる。
控え室は広く、ここには10組以上の人達が詰めている。
みんなの目が、時折蔵人と慶太の方に向くが、近づいて来ることはなかった。
ここでも、通報されるのが怖いのか?
彼女達の会話が聞こえる。
【今日の試合、最初から全力で行くわよ】
【相手の子、ソイルキネシスみたい。足元注意ね】
【ねぇ貴女、顔色悪くない?やめてよ?私を残して地面で居眠りなんて】
【3回戦でリュウ姉妹と当たるのね。クジ運悪いわ...】
違った。
みんな、己の試合に集中している様だ。
流石はイギリスの淑女達。男などに惑わされず、自己を大切にしている。
大切にし過ぎて、ちょっと冷たいイメージを持たれるみたいだけど、それは容姿が整い過ぎているのもあるだろう。
蔵人が選手達を眺めていると、放送で呼び出しを受けた。
『U16の部、チーム番号7番、会場へお越しください』
U16の部。これが、今回蔵人達の出場する部門となる。
つまりは16歳以下の子供が出場できる大会だが、日本とは違い、ここもイギリス式となっている。
日本では中学生は3年生までだが、イギリスの中学…セカンダリースクールは5年となっている。それに合わせて、階級も12歳から16歳までで括られているのだ。
当然、16歳も出場できるから、日本のU15よりもレベルが高くなるだろう。
望むところだ。
蔵人は瞳を輝かせ、背後を振り返る。
「さて、行くか。みんな」
「おー!」
「あっ、ヤバい。僕ちょっと、緊張してきた…」
「大丈夫よ、桃ちゃん。初戦は蔵人ちゃんと慶太ちゃんだから」
「カメラって、フラッシュ焚かなければOKだよね?もう一度スタッフに聞いておこうっと」
うん。自由だな。
蔵人は笑いを堪えながら、試合会場へ向かった。
コンビネーションカップ、異能力戦の予選前日でした。
「イギリスの男性優遇策は、史実の女性優遇策に似ている所があるみたいだな」
そうですね。ですが、セクハラが厳しかったり、男性特区があったりと、イギリス女性には厳しい物もあるようです。
「それでも、イギリス女性にも人気なのか、平等党は」
恐らく、外国の男性が多く来英するからではないでしょうか?心情的にも、経済的にも豊かになるので、人気なのかと。
「それとコネか」
次回は8月27日火曜日です。
よろしくお願いいたします。