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22話〜これが俺の、異能力だ!!〜

※注意※

主人公は、とある作品の影響をもろに受けております。

全日本異能力Dランク戦、最終日。

この日は、開幕前から応援合戦が白熱していた。


相手の十文字学園初等部は、東京特区の超名門校である冨道学園の姉妹校なだけあって、応援の規模が今までよりも大きい。

応援している人の中に、中高生くらいのグループも混じっている。

何時もだったら、その圧倒的アウェイ感に居心地を悪くしていた蔵人だったが、今日は違う。

と言うのも、


『ドンッ!ドンッ!ドンッ!』

「「「く・ら・と!く・ら・と!」」」


腹に響く和太鼓の衝撃と、厳つい漢達の野太い声が、蔵人の後ろから背中を押しまくる。

そこに視線を送ると、真っ黒なスーツに身を包んだオジサン達が、直立不動で腕を振っている。

和太鼓を叩いているおっちゃんだけ、半裸にハチマキだが。

何故、蔵人の試合に白虎会が。それに、


「くーちゃん!優勝だ!かっ飛ばせ!」


何故かその中で、平然と蔵人に向かって檄を飛ばす慶太と、


「くー太郎!てめぇ負けたらぶっ殺すぞ!」


慶太の横で、檄というよりも脅し文句を飛ばす日向さん。

いつの間にか、蔵人の呼び名も変わっていた。明らかに、慶太の呼び方に引っ張られたんだろうけど、あの2人、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?


「くーちゃん!勝たないと死んじゃうよ!」


慌てた慶太の悲鳴に、蔵人の頭が少し痛くなってきた所で、審判の合図が入る。

正直、助かった。

蔵人は今このカオスな状況を、とっとと終わらせたかった。


「始め!」


相手はゴルドキネシス。

頼人と同じ、最上位種と呼ばれる最強の一角。

昨日の日向さんのブーストが上位種であるから、それよりも白熱した試合を臨んだ蔵人だったが、幕が開けてみれば地味な立ち上がりであった。


試合開始直後、相手は早速異能力を使用して、己の全身にメタリックな膜を形成した。膜は幾重にも重なり、ぶ厚い鎧に成る。

相手にどんな攻撃手段があるか分からなかったので、今まで通り1分間防御に徹しようとした蔵人。

だが、試合開始のその場所から、相手も一切動かない。

相手も防御主体の戦法らしく、十数秒間睨み合いを繰り広げる両者。


真田(さなだ)さん!その調子よ!」

「相手、ビビってるよ!」


相手ベンチからの応援が降り注ぐ。

どうやら相手の真田さんは、このまま亀の子戦法を撮り続けるみたいだ。

仕方なく、蔵人は1分が経つ前に動き出す。

相手の構えている腕の隙間を狙って、腹への一撃。


ゴンッ!


到底、肉体同士がぶつかったとは思えない金属音をまき散らしながら、蔵人の拳は真田さんの金属鎧に阻まれる。

水晶盾(Cランク)の拳では、傷すら付かないか。


「ふんっ!」


蔵人目掛けて、真田さんの腕がフルスイングされる。

その防御力を逆手に取った攻撃は、かなりの威力があるだろう。

だが、重いが故に攻撃速度は遅く、相手の懐深くに入り込んでいた蔵人でも、余裕で躱すことが出来た。


相手に攻撃させて、自分の射程範囲に入り込んだところをカウンターで攻撃。

真田さんの攻撃パターンは、凡そこんなスタイルなのだろう。

蔵人は、拳に盾を集約する。

その盾は、拳一つ分まで小さくなり、白く輝きだす。

吉成先生を吹き飛ばした盾、Bランクの魔銀盾である。


蔵人は走り出す。体の動きをサポートしていた盾まで拳に回してしまったので、先ほどよりもかなり遅い。

それでも、相手の攻撃を躱して、何とか懐まで潜り込む。

目の前には、カウンター攻撃を外した無防備な胴体。

そこに、一撃を入れ、


「ふんっ!」


入れる前に、真田さんが膝蹴りを蔵人に繰り出す。

蔵人は、本来腹に居れるはずだった拳をその膝に着弾させて、その反動で真田さんの懐から飛び退いた。

数歩分の距離を取り、両者は再び睨み合う。


真田さんの膝には、蜘蛛の巣状にひび割れた金属の板が張り付いており、彼女が足を振ると粉々になって消滅した。

鎧を粉砕することは出来たが、ダメージは殆ど無さそうだ。

相手も攻撃する時に、その部分を分厚くして防御力を上げたようだ。そうなってしまうと、蔵人の魔銀パンチでは肉体にダメージが通らない。


それは多分、攻撃する場所を変えても一緒だろう。

蔵人が一撃を加えようとした途端、その部分を厚くして防御するか、今の様にカウンターを狙われる恐れがある。

後者の場合、下手すると致命傷となるだろう。


さて、どうするか。

蔵人はチラリと時計を確認する。

試合開始から既に3分が経っている。

残り7分。時間に余裕はない。

蔵人は考える。

今自分に足りないのは、速度と攻撃力。その2つを同時に上げるためにはどうするべきか…。


「なぁ?」


蔵人が思考の海に深く潜っていると、そんな声が海上から浴びせられた。

見ると、対戦者相手の真田さんが、少し構えを降ろしてこちらを見ていた。


「勝ちたいかい?あたいに」

「えっ?…ええ、それは、そうですが…」


そうでなければ、このような場で死力を尽くしたりはしない。

当然のことを聞く彼女に、蔵人はこれが、ただの時間稼ぎであると断定する。時間切れで判定勝ちを狙う。もしくは、蔵人が導き出そうとした答えを雲散霧消させたいのか。後者なら、なかなかの策士である。流石は、真田の家名を名乗る者。

そう、思っていたが、


「そうか。じゃあ、あんた、あたいの婿になりな」

「…なに?」


突拍子もないその提案に、蔵人は地が飛び出す。

この真剣勝負の場に何故、色恋沙汰を持ち込もうとするのか。これも特区の男女比が歪な事の弊害なのか。はたまた、これもこちらを動揺させるための戦略か。

どちらにせよ、試合は残り5分程度。手を止め続けるのは愚策というもの。

蔵人は相手の提案を無視して、構え直す。すると、相手はため息を着いて首を振る。


「分からない奴だね。見込みのありそうな男の子だから、折角花を持たせようってあたいの女心がさ」

「ほぉ?随分と自信がお有りで」

「当然だ!」


叫ぶと同時に、彼女は金属甲冑の肩部分を前に、突っ込んできた。


「あたいは最上位種、ゴルドキネシスだっ!」


突っ込んできた相手に、蔵人は盾を構えて迎え撃とうとする。

だが、直前で見えた彼女の”変化”に、蔵人はその場から飛び退く。

直後、その場に残した鉄盾は、彼女のショルダータックルによって”貫かれた”。


「ふんっ!避けたか。勘のいい奴だ」


蔵人の方に振り向きながら、真田さんが鼻を鳴らす。

彼女の肩には、金ぴかに輝く一本の棘が生えていた。金属で出来た棘。それは、彼女の体を覆う甲冑と同じ色、同じ質。

防御だけが取り柄と言われた、ゴルドキネシスのもう一つの顔であった。

彼女は勝ち誇ったように、顔中に笑みを浮かべる。


「もう一度言う。あたいと婚約しな。そうすれば、このゴールデンスピアは使わないでやるよ。残り時間、あたいは一切攻撃しないから、好きに殴ってあんたの勝ちだ」

「そいつは御免被ります」


蔵人は即答する。

別段、相手が好みでないとか言う話ではない。

折角、面白くなってきているのに、それを放り投げるメリットがないからであり、また、黒戸自身が”そういう関係に成れない存在”だからである。

だが相手は、蔵人の返答をそうは取らなかった様であった。

ヘルメットから出た顔が、みるみる真っ赤になる真田さん。

そして、


「男の癖に、生意気な!」


猛然と、蔵人に突っ込んで来た。

両肩に金ぴかの棘を生やして突っ込んでくるその姿は、まさに金の猛牛。

蔵人は目前に、複数枚の鉄盾を出現させる。

それを見て、真田さんは笑う。


「はっ!いくら盾を出そうが無駄だよ!最下位種の能力じゃあ、勝てる訳ないって教えてやるよ!」


真田さんはそのまま、密集した盾群の中へと突っ込む。

真田さんの一撃に、盾は無残にもバラバラになる。まるでこの後の、蔵人の行く末を指し示すかのように。

そう思っていた彼女は、目の前にいるはずの蔵人の姿が消えていることに驚き、急停止を掛ける。


「なにっ!?何処だ、何処に隠れた!」

「ここだ」


後ろから声。

蔵人の声に、真田さんは振り向く。だが、蔵人の姿を捉えられずに、目を見張る。その目に映るのは、粉々になった盾が舞っている様子だけ。

邪魔だ。くそっ!早く消えろよ、このゴミ能力が!

そう言う声が聞こえるかのように、彼女は両手で盾の舞をかき分けるのだが、そんなことで消える訳がない。何せ、その盾たちは、ワザとバラバラに”分解”したのだから。


真田さんが盾の舞から抜け出た時、既に蔵人の準備は整っていた。

蔵人は、右腕だけを突き出していた。その右拳の周りに、バラバラに飛んでいた鈍色の盾が集まりだす。その盾は結合し、蔵人を隠す程の大きな4枚の鉄盾となった。蔵人は更に、盾の先端に魔力を集め、それらを凝縮する。盾の先端数センチだけが、半透明の水晶盾となり、更に先端の数㎜は白銀の魔銀となる。


盾・一極集中(シールド・クラウズ)


まるで盾の傘にも見えるそれの、先端を向けられた真田さんは顔をしかめる。


「…まさか、あたいの真似をしてるのか?尖らせれば盾でも戦えるって?」


真田さんは、心底呆れたように言葉を吐いた。苦々し気な表情が、語る。

同じ防御主体の戦い方だからと、ゴルドキネシスの技をパクるなんて、なんて浅はかな奴なのかと。

ゴルドキネシスとクリエイトシールドでは、次元が違う能力であるのにと。

そうとでも言うように。


だが蔵人は、そんな彼女の失望を、


「まさしく、その通り」


全肯定する。


「一点突破こそがこの場の最適解。貴女を倒す、最善の手段だ」


堂々と、肯定する。

そんな蔵人の姿に、真田さんは、


「…ああ、そう。あんた、馬鹿だったんだね。じゃあ、いいや…」


落ち込む。

落ち込ませる。体を、姿勢を。

しっかりと、ずっしりと、超低空姿勢。

その姿勢のまま、顔だけを上げて、定める。

自身が破壊するべき、目標に。


「バカは、死にな!!」


猛然と突き進む、金色の槍。もう、左右には逃がさんとばかりに開かれた両腕は、まるでトライデントである。

ただ獲物を狩るだけの無機質な武具となった真田さんは、しかし、急に視線を上げる。

蔵人の方から聞こえた異音に気付いて、意識を割いた。

そこには、


「なっ!?」


高速で回転する、蔵人の腕。

否、

蔵人の腕の周りに浮遊していた、4枚の盾であった物。

だが、今それは原型を留めず、高速回転するその様は、まるで鋭利な一本の角のように見えた。


ウィィイイイイイイン!


空気を掻き切る、高音の風切り音。

過去のトラウマが蘇るような、不快音。

しかし、猛牛の如く突き進む彼女に、もはや後退という選択肢は存在しなかった。

高速で回転する盾に、今、真田さんの矛先が激突した。


ギィィイイイイイイイイン!!!!


耳をつんざく高音。轟音。

金属同士がこすれ合い、削れ合うことで起きる、不協和音。

蔵人の高速盾と、真田さんの槍がぶつかり合う。拮抗する。

対等となる。


「な、なにっ!?」


真田さんは、目を丸くする。

最強の一角とされるゴルドキネシスと、最弱の代名詞であるクリエイトシールド。その両者が衝突し、均衡し、同等となっているこの現状に、理解が追いつかない。

故に、答えを求めた。


「何なんだ、何なんだよそれは!」

「これか?これはな、螺旋盾(ドリル)だ」

「ど、ドリル、だと?」

「そうだ。そして…」


蔵人は、猛々しく笑い、言い放つ。


「これが俺の、異能力(たましい)だ!」


その瞬間、ピキッという小さな悲鳴が聞こえた。

それは、崩壊の音。黄金に輝く槍の先端で起きた、小さな亀裂。

だがその亀裂は、瞬く間に広がり浸透し、槍全体に走り回った。

そして、


パァンッ!


弾け飛ぶ、金属の礫。

甲高く短い悲鳴を最後に、かつて甲冑を形作っていた物は、金色の飛沫を上げて飛び散った。

蔵人のドリルが、驚愕する真田さん目掛けて振り下ろされる。


「う、嘘だ!こんなこと、あたいの最強、あたいの、ゴールデンス…」


彼女の叫び声が、次の瞬間に消えた。

いや、彼女の姿ごと消えてしまった。

しかし、蔵人の拳は止まらない。止まれない。その勢いのまま、先ほどまで彼女が居たその場所を、穿つ。

地面を削り、固い何かに当たって漸く、蔵人の螺旋盾が止まった。

後には、子供1人なら隠れられる程の大穴を作り出していた。


何処に?

蔵人は鋭く、辺りを見回す。

何処に行った?


蔵人はつぶさに周囲を探すも、真田さんらしき人影は見当たらない。

上下左右。何処にもいない。

地面の中か?それとも透明化しているのか?

ゴルドキネシスには、そんな能力もあるのか?

冷や汗が背中を伝う。

その時、


「そこまで!」


審判の声が響いた。

時間切れか?

そう思った蔵人だったが、時計を見るとまだ2分も残っていた。

では、何故?


「勝者、巻島蔵人!」


なに!?

蔵人は驚愕のあまり、腕を上げる事すら出来なかった。

だが、試合の熱が引き、冷静に考えると思い至る。

あっ、ベイルアウトしたのか。


「「「わぁあああ!!!!」」」


その瞬間、会場中から大きな拍手の波が押し寄せた。

白虎会の方からは和太鼓や野太い声援も来ているが、驚いたのが十文字学園側からも少なくない歓声が聞こえる。

敵だった者に対しても称賛を送れるとは、なんと出来た子供達だろうと蔵人が感心していると、蔵人のパラボラ耳に、声が届く。


「凄いよ!男の子が勝っちゃった。しかも、あの真田先輩にだよ!?」

「確かに凄いけど、けど、真田先輩は油断しすぎだよ」

「油断というか、欲出し過ぎ。あの子を勧誘しようって話にはなったけど、自分だけの物にしようとした。きっと天罰が当たった」

「そうそう。いい気味だよ」


…なるほど。裏事情があったのか。

蔵人への拍手の意味は、純粋な称賛だけではなく、不正を働こうとした者を成敗した、一種の憂さ晴らし的な感情も含まれているらしい。

何はともあれ、蔵人は向けられる拍手に対して、手を上げ感謝の意を示すのだった。




試合が終わり、簡単な表彰式も終えて、蔵人は帰路に着いた。

応援に来てくれた慶太は、お父さんと一緒に伊豆観光へ行くのだと言っていた。お土産買ってくるね!と言われたけれど、俺ではなく他の子に買った方がいいのではないだろうか?

蔵人は不安になる。


日向さんとは、あまり話すことが出来なかった。表彰式の時、蔵人の左側に並んだのを最後に、そのまま会場からも居なくなってしまった。

お連れのおじ様達と共に、いつの間にか帰宅されてしまっていた。少し仲良くなれたかと思ったのだが、やはり蔵人に敗北したことに、少なからず(わだかま)りを感じていたのだろうか。


しかし、こうして終わってみると、Dランク戦はあっけなく終わってしまったように蔵人は感じた。

蔵人個人の感想としては、日向戦と真田戦では得るものがあったが、他の子供達との戦闘では、物足りなさを感じていた。

とは言え、色々と考案していた技を実践投入出来た事と、何より日向さんという可能性の原石に出会えたことは、とても幸運であったと言える。


だが、それを上回るデメリットも舞い込んで来ていた。

大会終了後、蔵人と少しでもお近づきになりたいと思ったであろう女児や女性達が、大挙して押し寄せるという事態に陥った。

蔵人と柳さんは、大会運営の必死の援護の元、何とか外まで逃げ切り、テレポートによって駐車場近くまでたどり着くことが出来た。

それで終わりと思ったら、今度はもっと厄介な相手が、駐車場入り口付近で待ち伏せをしていたのであった。


蔵人は、道を塞ぐように現れた目の前の女性2人に対し、厳しい視線を送る。

女性の片方が、胡散臭い微笑みを携えながら口を開く。


「神様がお与え下さった、大変名誉あるご機会です。この世の安寧の為に、是非とも我々と共に、貴方のその力を振るってはいただけませんか?」


白と黒の修道女服に身を包んだおばさん達が、目の中の怪しい光を蔵人達に向ける。

内容は、宗教への勧誘だ。それもかなり胡散臭く、きな臭い類いの。

恐らく、宗教の皮を被ったアンダーグラウンド的な組織であろう。

蔵人と柳さんが幾ら断っても、やれ神様がどうの、これは天命がどうのと道を譲らない。

仕舞いには、彼女達の後ろから、目つきの悪い兄ちゃん達も出てくる始末。


これは不味いな。

蔵人が柳さんの手を掴み、後ろの道をシールドスケボーで逃げようと振り返る。しかし、後ろにも厳つい漢達がゾロゾロと寄ってきた。

これで逃げ道は断たれた。やるしかないのか。


「おう、おめぇら」


後ろの漢達から、だみ声が一喝入る。蔵人は柳さんを守る様に前へ出て、漢達を睨む。

だが、よく見るとこの男達、見たことがあるぞ?


「誰に粉掛けようとしてるか分かってるのか?このお坊ちゃんは、ウチのお嬢のご友人だ!」


見たことあると思ったら、後ろの漢達全員、日向さんの護衛である白虎会の面々であった。今凄んでいる人も、半裸になって和太鼓を叩いてくれていたおっちゃんである。


「てめぇら、カタギの人間に手ぇ出すんじゃねぇよ」


そのおっちゃんの後ろから、日向さんが出てきた。彼女は蔵人の横まで来て、シスター2人を睨み付けて凄む。


「見ねぇ顔だな。地元の零細組織か?おい、てめぇらどこの組のもんだ。うちを白虎会と分かってメンチ切ってるんだろうな?」

「びっ、びゃっこ!?」

「関東の虎!」

「なっ、なんでそんな上層部がここに!?」


日向さんの啖呵に、シスター達は顔を真っ青にして逃げていった。

凄い。怖そうな兄ちゃん達も一目散に逃げてしまうとは。それほど、白虎会って力がある組織なのか。

それに、関東のトラって、凄いパワーワードだな。

何はともあれ、助かった。

蔵人達は日向さんに礼を言う。すると、日向さんはたくましい笑みを浮かべて、言った。


「あんまり目立ち過ぎるのも、考えもんだな」


そう言って、何処か達観した顔つきの日向さん。

色々と見てきているのだろうな、彼女も。

蔵人は再度、彼女にお礼を言って、帰宅の途に着こうとした。

だが、その蔵人達をぴったりと付いてくる日向さん御一行。

彼女は言う。


「見送りだ。礼はいらねぇ」


そう言ってそのまま、蔵人達の車を何台もの高級車が取り囲んで、県道を突き進んだ。

結局、県をまたぐまで送ってくれた白虎会の皆さん。

彼女たちはどうも、大会が終わってからずっと、蔵人達を陰ながら護衛してくれていたらしい。男があれだけ目立てば、何かしらのトラブルに巻き込まれると思っていたと。


そんな大げさな。

なんて考えは、今は無い。

この世界で異能力は兵器の代わりとなる力だ。今まで周りが異能力を疎んでいる人達だから考えが及ばなかったが、強い力には必ず、悪い人間も寄ってくる。蔵人だけなら撃退出来たかもしれない。もしも撃退出来なかったとしても、スケボーとかで逃げ伸びればいい。だが、今回は柳さんがいた。柳さんでなくても、親しい仲間が、友が、蔵人を取り込む為に利用されるかもしれない。

目立ち過ぎた。


それは、日向さん達だけでなく、流子さんも思っていた様だった。



後日。

呼び出された蔵人の前には、少し厳しい顔をした流子さんが佇んでいた。

そして、いきなりこう言われた。


「蔵人。全日本Cランク戦は、出場を辞退しなさい」

特区の外は、極道漫画みたいな世界ですね。

この頃の史実日本では、随分対策されて、数を減らしていたと記録されているのですが…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く読ませて頂いています。 [一言] 俺のドリルは天を貫くドリルだ!
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