228話~これはみんなの物語だ~
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体育祭や炎上事件が終わって、戻って来た日常に四苦八苦していたある日。
蔵人は、朝のホームルームで呼び出しを喰らった。
呼び出し相手は、生徒会。
なんてことは無い。夏休み明けにもあった、クラス委員の集会だ。
今回は、文化祭についての話し合いがあるのだとか。
「昼休みの間に行われるので、委員の人達は、遅れないようにしてくださいね」
担任の先生が、蔵人達に注意する。
マジか。昼食は急いで食べないといけない。
今日は、柳さんスペシャル弁当の日だから、掻きこまないと間に合わないぞ?白井さんに半分食べてもらうか?
蔵人の頭の中では、昼食の心配で埋め尽くされていた。
そして、集会に出たのだが、壇上に上がった人は、何時ぞやの書記の人。
蔵人が、安綱先輩に会いに行って、不在だったので手紙を託した人だ。
『残り1ヶ月程で文化祭が始まります。由緒正しき桜坂聖城学園の文化祭は、気品と知的溢れる物でなければいけません。体育祭の様に、ただ暴れるだけで評価はされませんので、十分に計画を練るよう文化祭委員にもお伝えください』
随分と鋭い視線を、周囲にばら撒いている様に感じた。
気のせいかも知れないが、「ただ暴れるだけ」と発言した時、こちらを睨んだ様にも見えたし。
さては、貴女も白百合会ですね?だから、あの時厳しい態度を取ったのでしょう?
蔵人は、何となくそう感じた。
降壇する書記さんは、ニヤニヤしながら次の人にマイクを渡す。
何か嫌な予感がして、次の人を見ると。
蔵人は呆気に取られた。
『皆様、お久しぶりです。風紀委員長の近衛瑞姫です』
近衛様が、そこにいらっしゃった。
何で?高等部も文化祭準備で忙しいんじゃないんです?また、釘を刺しに来たんです?
蔵人が困惑する中、近衛様は全員を見回して、鋭い視線を送る。
『文化祭とは、普段皆様が育んでいる教養を発表する場でございます。教養とは学力だけではありません。桜城生としての気品、誠実さ、誇り。そして何より、皆様1人1人のチームワークが試される場です』
チームワーク。
その言葉に、会場の生徒達は「おや?」と首を傾げた。
そんな生徒達に、近衛様は小さく微笑みを送られる。
『桜城には、様々な生徒が在籍しています。華族の生徒、一般の生徒、異能力推薦の生徒。その生まれや境遇は確かに違いますが、その違いは壁ではなく個性であると認識してください。各々が持つ能力は違い、考え方も違います。その違いを反発させるのではなく、互いに認め合い、作品として表現してください。その作品を知らしめることこそが、この文化祭の意義だと、私は思います』
前回、近衛様が登壇された時とは、大きく考え方が方向転換している。
その彼女を、会場の生徒達は穴が開く程凝視していた。
その視線を受けて、近衛様は目を伏せる。
『お恥ずかしい話。高等部の文化祭では、生徒会と風紀委員との間で溝が出来ておりました。ですが、私達はその溝を乗り越え、今は前へと進んでいます。その架け橋となっていただいた方のお陰で、高等部は一丸となって文化祭の準備を進めております。皆様もどうか、手と手を取り合って、文化祭を成功させて頂きますよう、私からのお願いでございました』
そう言って、近衛様が小さくお辞儀をした。
それに対し、生徒達は互いに顔を見合わせていた。
理解できないと、どの生徒の顔にも書かれている。
まぁ、九鬼会長とのやり取りを知らないと、こうなるわな。
蔵人はそう思いながら、大きな拍手を近衛様に送る。
己の考え方を客観的に評価し、改め、尚且つそれを他者にさらけ出すのは大きな苦痛を伴ったでしょう。
それでも、こうして堂々と宣うそのお姿は、日本を背負うお方のそれでしたよ。
そうしていると、漸く他の生徒達も近衛様のお言葉の意味を理解したみたいで、蔵人に続いて拍手をし始めた。
盛大な拍手に送られて降壇する近衛様の背中は、何処か嬉しそうに見えた。
反対に、降壇する彼女を見る書記さんは、随分と悔しそうに顔を歪めている。
もっと身分差別的な発言を期待していたのかな?残念だったね。
「架け橋って、蔵人ちゃんの事よね?」
蔵人がスッキリした気持ちで手を叩いていると、鶴海さんが微笑みながらそう聞いてきた。
「えっ?鶴海さん。そんな情報を何処から?」
「若ちゃんからよ。九鬼会長と勝負して、見事に勝ったんでしょ?そのご褒美で、風紀委員のお墨付きを貰ったって聞いているわ」
敏腕記者こえぇえ!
蔵人は、ただ口をパクパクする事しか出来なかった。
蔵人達がクラスに文化祭の話を持ち帰ると、その日の6限目は文化祭の話し合いとなった。
教卓の上に上がったのは、文化祭実行委員の2人だ。
「それでは、どちらが良いか挙手をお願いいたします!」
黒板を手で指しながら軽く頭を下げる2人。
黒板に書かれた文字は、合唱と演劇の2つ。このどちらをやりたいか、多数決で決めるとの事。
ちなみに、これしか意見が出なかった訳では無い。1年生は最初から、選択肢が少ないのだ。
2年生になれば、喫茶店やクレープ屋さん等の軽食屋さんも選択可能となり、3年生までなればステーキハウスみたいな本格的な食事処や、お化け屋敷のようなアトラクションも可能となる。
因みに、1年生には他にも展示店と言う選択肢もあるにはあるが、これは委員が最初から除外している。勉強したことを張り出し、当日は殆どやる事なしという企画なのだが、文化祭初参加の生徒達からしたら、魅力に欠けるみたいだ。
「では、先ずは合唱がよろしい方、どうぞ」
そうして始まった挙手制民主主義だが、結果は大差で演劇に決まった。
ほぅ。また随分と難しい方を選ぶな。
桜城の文化祭は2日間に渡って開催される。桜城中等部のみが参加する前日と、桜城付属の小学校、桜城高等部、招待客が参加する後日。
合唱は1クラス3曲までと言う制限があり、長くとも20分くらいで終わる。
だが演劇の制限は1時間以内だ。
どちらも両日1回舞台に立つ必要があり、合唱の方が圧倒的に短い時間で終える。
それに、衣装や舞台セット、小道具の制作や、舞台稽古も必要で、オリジナルストーリーなら台本も必要となる。
圧倒的に演劇の方が手間がかかる。
だが、それがいいのかも知れない。
苦労して成した事は、後々の人生で良い財産になる。
中学1年生と言う、輝かしくも二度と戻らないこの時期であるなら、尚更に。
「劇かぁ。僕、小さい頃に1回やったきりだよ」
桃花さんが、斜め上を見ながら思い出に浸っている様だった。
本田さんも、それに同調する。
「私も、やった記憶はないなぁ。小学生の時は殆ど合唱だったし、演劇はテレビで見たくらい」
「お花の役やったー」
白井さんはお花か。それって役なのかな?
「演劇って時間掛かりますよね?間に合うんでしょうか?」
テンションが上がってきたクラスを見て、林さんが心配そうに呟く。
林さんの言う通りだ。あと1ヶ月と少ししかないのに、出来るのだろうか?特に、舞台セット。
蔵人と林さんが心配で顔を見つめていると、その横から本田さんが胸を張る。
「大丈夫よ。桜城には歴代卒業生の美品が残っているし、もしも必要なら、外注もありだから」
「ブルジョワだな」
つい突っ込んでしまった蔵人。
でも、心の底からそう思ったのだ、仕方がない。
桃花さんが首を傾げる。
「ガイチュウって?蜘蛛とかゴキブリとか?」
そりゃ害虫だ。さらに言うと蜘蛛は害虫じゃなくて益虫だよ。害虫を食べてくれるから殺さないでね。
でも、そうだよな。普通の中学生じゃ分からない言葉だよな。
蔵人は、少し安心して頷く。
「外注ってのは外部発注の略で、文字通り外、つまりは一般企業に仕事を依頼するんだ。演劇で言うと背景や備品、衣装なんかを作って貰って、それを俺達が買うんだ」
「うぇえっ。そんな事出来るの?」
びっくりする桃花さん。そして、少し考えて顔を曇らせる。
「でも、それってなんか楽しそうじゃないよね?僕達の劇なのに、そうじゃないっていう感じがするよ」
その通りだな。なんの為の文化祭か分からん。
蔵人が頷く横で、林さんが腕を組む。
「でも、公演までの時間が決まっているから、間に合わないことは任せるべきだと思いますよ。ほら、衣装は私達が作って、備品は発注やレンタルするとか」
「あっ、なるほど。全部お任せって訳じゃないんだね」
「衣装つくるー!」
衣装作りに目を輝かせる白井さん。装飾が趣味なのかな?
意外な趣味があるなと思いながら、蔵人は気になっていた事を話題にする。
「そうなると、話し合うべきは題材をどうするかだな」
「どんな物語を選ぶかって事だね?僕、白雪姫の7人の小人やりたいな。掘った宝石を目に嵌めるのやってみたかったんだ」
またマニアックな憧れを抱いているな、桃花さん。
「シンデレラー。カボチャの馬車やりたーい」
白井さん。とりあえず生物になろう。チョイスが特殊過ぎるわ。
「蔵人様が主人公のオリジナルストーリーにしましょう!ファランクス部で全国制覇する話を表現するんです!絶対大ウケしますよ!」
本田さんが目をクワっとさせて近付いてきた。
勘弁してくれ。
蔵人がそう否定する前に、声が上がる。
「素晴らしいですわ!」
「それ良いね!蔵人君なら天下取れる!」
「今年のビッグゲームを再現するの!黒騎士様の勇姿を世界に広めるのよ!」
「ちょっと待ってくれぇ!!」
蔵人は全力で止めた。
今、本田さんに同調した人達全員、絶対にファンクラブ会員だろ?
それに、実行委員。黒板に嬉々として書き出さんでくれ。〈黒騎士物語〉って言葉を消してくれ!
蔵人は興奮するクラスを見回し、両手を広げる。
「これはみんなの物語だ。俺1人が目立っても意味がない」
「私からしたら、意味がありまくりですよ?」
本田さん。ちょっと冷静になろうね?
「俺は十分目立った。目立ち過ぎている。出来ればこのような形では目立ちたくない。それに、文化祭はみんなが主役だ。みんなが納得出来て、出来れば多くの人に配役があるものにしないか?」
蔵人の意見に、クラス中が肯定的な反応を返してくる。
いつの間にか話し合いの中心になっているな、蔵人の席。
いかん、いかん。実権を返さねば。
「実行委員さん。やりたい題材の候補を募っては?」
蔵人が話を振ると、進行を始める委員の2人。
だが、なかなか候補が上がらない。
黒板には白雪姫と黒騎士物語が両立している。
黒騎士物語の名前を推す声が強くなってきた。
不味いぞ。
蔵人は、彼女達の会議に介入するのもどうかと思いながら、仕方なく手をあげる。
「はい!くろき…蔵人様!」
「……ごほんっ。もしもみんなが、既存の物語じゃ詰まらないから、オリジナルでやりたいと思っているなら、既存の物語を改変したら如何でしょうか?」
物語の大筋は既存物語を使用し、エンディングを変えるなどのシナリオ変更を行えば、ただ使い古した物語を使うより面白そうでは無いだろうか。
これで、黒騎士物語から目を逸らせられないかな?と蔵人はみんなの様子を伺う。
すると、
「それは面白そうね!」
「じゃあ、白雪姫を黒騎士様がやって、王子は私が…」
「却下!そんな貴女は継母…いえ、老婆になった継母で十分よ!」
「それ最後、転落死するじゃん!」
おいおい。喧嘩をするなよ。
「桃太郎なんていかが?鬼とかを現代風にアレンジするんですの」
「アラジンとかは?異能力でド派手な演出をしたら盛り上がるわ」
「かさじぞー!」
結構真面目な議論も増えてきた。
でも白井さん。地蔵も無機物だからね?そろそろ動ける役に目を向けよう?
男子達も意見交換している。
「浦島太郎も良いかも。あれって実は宇宙に行っていたって話もあるんでしょ?そこら辺を取り入れて…」
「異能力が発現した辺りの世界大戦も面白いよ?ドイツとフランスの塹壕戦の真っ最中、突如フランスの高ランクが飛んできて、ドイツ軍を殲滅するんだ」
「それよりさ、スラダンやろうぜ!俺、流〇楓やりたいんよ!」
佐藤君以外、己の興味に全力投球である。
吉留君は、歴史マニアなのかな?でも、第一次世界大戦は止めておこう。血生臭過ぎる。
そして鈴木君。色々ヤバいからそれ以上は言わんでくれ。
何はともあれ、議論は白熱し、皆楽しそうである。
良かった。
放課後。
ファランクス部に行こうと、桃花さんと一緒に廊下を歩いていると、何やら人だかりが出来ていた。その人の壁の向こうから、怒鳴り声というか、言い争いの声が聞こえる。
なんだなんだ?喧嘩か?
近くの人に聞いてみる蔵人。
「すみません」
「なんですの?今大変な事に…ひゃっ!黒騎士様!握手してください!」
いきなりで飛び上がってしまった女子生徒は、着地と同時に手を差し出してきた。
器用な娘だな。
蔵人が握手すると、顔をふやかせた彼女だったが、すぐに顔を元に戻す。
「私も詳しくは存じ上げないのですが、どうも文化祭での演目がクラス同士で被ったらしく、どちらのクラスが演じるにふさわしいかで争っているみたいですわ」
なるほど。そういう集団なんですね。
しかし、演目が被るとかあるんだなと、蔵人は思った。
余程、有名な童話や出来事を取り上げたのだろうか。
「話し合いが難航しているんでしょうか?」
「分かりませんわ。でも、先ほどクラス対抗戦という言葉が聞こえましたわ」
なんと、演目を決めるだけで大規模戦闘が始まろうとしているのか。
それはそれで青春なのだが、蔵人は1つ考えがあったので、この軍事衝突に対して仲裁しようかと考えていた。
その考えは、題目が被っているなら大きくストーリーを変えてしまい、被らないようにしてしまえないかというもの。
「少し通していただけますか?」
「危険ですわ、黒騎士様。せめて親衛隊を…あっ、いえ、今のは、聞かなかったことに…」
女子生徒は急に口を押えて、小さくなって蔵人に道を譲った。
親衛隊がどうしたって?うん?
蔵人はみんなに頭を下げながら、前に進んでいく。
桃花さんも一緒に来てくれる。待ってて良いよ?って言ったんだけれどもね。
人垣をある程度進むと、廊下のど真ん中で対峙する2つの集団が見えた。人数は互いに8人程度。
その集団の先頭にいる2人の人物を見て、蔵人は額を手で押さえた。
「このままでは不味いですわ」
「金獅子様が体を低くしましたわ!」
「お姉様も構えちゃった!」
「待って待って!ここで始めるつもり!?」
おいおい。校則に触れることを大衆の面前でやるなよ…。
蔵人は頭痛を抑えながらも、今にも飛び掛かりそうな2人の間へと走って割り込み、飛び掛かって来た2人を水晶盾で取り押さえた。
「双方!動くな!」
蔵人の声に、大衆が息をのみ、集団の目が一気に刺さる。
大衆の声が背中をくすぐる。
「どなたです?」
「あの男、黒騎士です」
「黒騎士様!?なぜあのお方がここに!?」
大衆も集団も、蔵人がここにいることに目を開く。
蔵人は、そんな人達には一切気を向けず、水晶盾に阻まれた2匹の猛獣に睨みを利かせる。
「動けば、戦艦の砲撃をも耐えたこのクリスタルシールドが、お前達のお尻をペンペンするぞ!」
取り押さえられた2人、鈴華と伏見さんは、突然の事に唖然としていたが、自分達が不味い所を蔵人に見られたと気付いて、顔を歪ませる。
「か、カシラ…」
「なんで、ボスがここにいるんだよ」
何故って、そりゃ見てわかるだろう?
蔵人は、拳を抑えた2人を見て、水晶盾を消して向き合う。
「二人とも、何で対峙していたかは後ろの人達に聞いたよ。演目が被ったんだって?」
「そうなんだよ!あたしらが先に決めたのに」
「何言うてんねん!うちらが先や。自分ら教室出るんうちらより遅かったやないか」
「題目決めたのは6限目の最初の頃ですぅ。遅かったのは配役で揉めたからですぅ」
「うちらなんて、6限目始まってすぐに決まっとったわ!うちらのほうが先や」
「こっちなんて6限目始まる前から決めてましたぁ」
「さっき、言うとった事とちゃうやろが!」
「心の中では決まってたんですぅ」
「なんやそれ!」
「ストップ!ストップ!」
蔵人はいがみ合う2人の間に手を挟んで止めた。
息をするように喧嘩するんだから、この娘達は。
「どっちが先かは問題じゃない。早い者勝ちじゃないんだからな。それで、お互いに譲る気はなく、話し合いでは解決できなかったってことでいいね?」
「無駄ですわ、カシラ。こやつ日本語通じんのです。さすが国語0点はちゃうな」
「んだと!数学赤点常習犯が!」
「はい、喧嘩はストップ。2人とも、こっちを見てくれ」
少し気を抜くと、互いに顔を突き合わせて、牙を見せ合うんだから。
「どっちも譲れないなら、そのお話の内容を少しいじって、被らないようには出来ないかな?」
「そいつは難しいですわ、カシラ」
「物語じゃないからな。そのまま伝えないと意味がないんだよ」
おや、史実だったのか。それは難しい。
IF歴史にしてもいいが、その後の史実と繋ぎ合わせなどで違和感が出てしまう。
それに、鈴華が言った「意味がない」から察するに、何かメッセージ性のある事柄なのかもしれない。猶更オリジナルストーリーは受け入れられないだろう。
ならば、
「では、クラス合同で演じるというのはどうだろう?」
文化祭はクラス単位で発表となる。だが、別に複数のクラスと合同で出し物をしても構わないのだ。
体育祭とは違い、その出来で通信簿が良くなる物でもないからね。
ちなみに体育祭は通信簿に関係してくる。異能力や体育の欄が変わってくるし、推薦にも大きく関わるのだとか。
鈴華と伏見さんが、蔵人越しに顔を見合わせる。
「う~ん。こいつと?」
「あぁん?なんやと?!」
蔵人は急いで、2人の視線に割って入る。
「その題目では、登場人物は少ないのかな?」
「いいや。かなり多いな」
「確かに、1クラスじゃ足りまへんわ」
「なら、寧ろ好都合じゃないかい?お互いにやりたい演目で出来るんだから」
蔵人がそう結論づけて、数歩後ろに移動すると、睨まないで顔を合わせる2人。
「まぁ、確かにボスの言う通りだな」
「せやな。むしろ2クラスでも足りんかもしれんわ」
そんなに大規模な演目なのか。カルタゴの戦いとか?
「一体、何の演目を演じるの?」
蔵人の問いに、2人は顔を見合わせ、こちらに笑顔で回答した。
「「黒騎士物語」」
「お前らもか!」
ブルータス!!
蔵人はエアちゃぶ台をひっくり返した。
文化祭に向けて、中等部でも動き出しましたね。
「見事な演説であったな」
近衛さん、考えを改めてくれたのですね。
これで、生徒会とも上手くいきそうです。
「後は、久我嬢と伏見嬢か」
…2人が協力し合ったら、さぞかし素晴らしい黒騎士物語が爆誕しそうですね。
主人公の苦悩の表情が、今から思い浮かびます…。