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女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~  作者: イノセス
第8章~喝采篇~

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177話~黒騎士が横取りしたんじゃない?~

取材から数日たった、とある日の放課後。

蔵人はシングル部へと赴いていた。

今日は、シングル部を兼部することを挨拶に来たのだ。

兼部することにしてから数日経ってしまったが、仕方がなかろう。取材やファランクス部と結構忙しかったからね。

ローズ先生からも、ファランクス部を優先していいと言って下さったので、お言葉に甘えていた。

だが、流石に大会も近くなったので、ローズ先生に調整してもらって今日挨拶に来たのだ。


シングル部の訓練棟に入ると、今日は先生の姿は無く、数人の生徒が忙しそうに動き回っていた。

男子が数人。女子が10人程。

男子は、訓練用の器材らしきものを調整していたり、何やら書き物をしている。

彼らがマネージャーなのだろう。

女子は、床のモップ掛けや窓の雑巾がけ等を行っていた。

窓は、サイコキネシスの娘が雑巾を飛ばして拭いていた。

器用な事をする。あれを戦闘に生かせないだろうか。


蔵人が、部員の可能性を模索していると、こちらに複数人の男子が走り寄って来た。


「ちょっと、ちょっと!ダメだよ、勝手に入ってきちゃ!」

「マネージャー希望の子かな?朽木先生に言わないとダメだから、2階の観客席で待っててくれない?」


どうも、勘違いをさせてしまった様だ。

蔵人は、簡単に自己紹介と、シングル部に兼部の挨拶に来たことを伝える。

途端、男子達の眉が歪む。


「えっ!じゃあ、君が黒騎士なの?」

「本物かな?黒騎士の熱狂的なファンとかじゃないの?」

「あー、うちのクラスにも居るわ。黒騎士に成りきってビッグゲームごっこしている奴」


なんと、黒騎士のまねごとをしている者も居るみたいだ。

恥ずかしい事だが、こうして自分の考えが広まるのは悪い事ではない。

蔵人は、本人であることを示すために、盾でホーネットを作って見せる。

すると、男子達は驚いた。


「うぉおお!本物だ!」

「すげぇえ!これがあのミラドリルかぁ」

「ばかっ!違うだろ。ミラブレイクだ。写真より随分小さいけどさ」


彼らも、校内新聞を読んだ口か。

それからは、男子達もこちらの事情を理解してくれて、業務そっちのけで部活動の概要を説明してくれた。


練習は、16時から開始される。

ホームルームが15時過ぎに終わるので、凡そ1時間後のスタートだ。

それまでに、彼らマネージャーと1年生には雑務を終わらせる必要がある。

マネージャー達の業務は、その日に使う機器の始業点検や、選手達の記録の整理などだ。

1年生の女子達は、見た通りのお掃除。これは、ファランクス部も同じである。違うのは、ランクによってその仕事量が異なる事。


「Cランクの人は1階2階の床や窓、玄関の掃除。Bランクの人は、3階のトレーニング室の掃除。Aランクの人は、プロテクターとかの装備のチェックをしているよ」


なるほど。そう聞くと、圧倒的にCランクの仕事量が多い。

Aランクも、中々面倒な仕事だと思う。真夏の装備とか、涙が出る匂いがするからね。

そう思った蔵人だったが、詳しく聞くと、どうも違うらしい。

装備は、個人持ちの人が殆どらしく、Aランクは実質、自分の持ち物をメンテナンスするだけでいいのだ。


その為に、1年生の間でも集合時間が異なる。

Cランクは、ホームルームが終わると同時にダッシュで来場。全力でお掃除を行い、練習までに何とか終わらせる。

Bランクは、ゆっくりと来場。トレーニング室の床をモップ掛けして、時間までお喋りしながら機器を適当に拭く。

Aランクは、2,3年の先輩方と一緒に来場。ゆったりと準備をして、終わった頃に練習が始まる。


何と言う格差社会だ。

Cランクは、随分と酷使されているのだな。

蔵人がため息をついていると、別の男の子が口を開く。


「そんで、次は練習だね」


なんと、練習においてもランクによって格差があるらしい。

3年生は、どのランクにおいても練習の中心人物である。これは、ファランクス部も変わらない。

2年生は、ABランクは3年生と同じ訓練を受けており、Cランクは1年生の練習に付き合っている。

1年生のAランクは2年生との訓練を行い、1年のBランクはそれのサポートをしている。

そして、1年生のCランクはと言うと、


「基本的に、体力作りが主だね。異能力を使う練習は、最後の方にちょこっとやっているくらいだよ」


1年生のCランクは、走り回っているらしい。

勿論、新人戦等の選手に選ばれたBCランクの娘は、Aランクの訓練に参加できるらしいが。そんな娘は一握りだ。

部員数は、1学年で35人。Aランク5人、Bランク10人、Cランク20人だ。その中で、新人戦に出られるのは各ランク3名までである。

Cランクで言うと、選ばれる娘は2割以下だ。


確かに、史実でも中学生の部活動においては、1年生は雑用がメインであったと思う。

だが、個人の能力によって、ここまで明確な線引きはされていなかった。

これが、魔力絶対主義が浸透した結果か。

蔵人は深いため息をついて、肩を落とす。


と、その時、訓練棟の扉が開いて、女子生徒の集団が入って来た。

(かしま)しい会話が聞こえる。


「それでさ、面接は上手くいきそうなんだけど、数学が足引っ張ってるんだよね」

「異能力面接なら、学力は見ないで欲しいですよね」

「数学なんて、社会に出て何の役に立つんだって話だよね。ランクが高いんだからいいじゃん」

「それそれ!分かります!先輩」


面接とか言っているので、どうも上級生のグループらしい。

リボンに赤色が目立つので、Aランクのグループか。

その内の1人に見覚えがあり、蔵人はその人をチラリと見た。

その人も、こちらを見た。

物凄く見返してくる。

穴が開くほど見つめられて、急に眼を反らす女子。

……誰だっけ?


「木村先輩?どうしたんです?」


隣の赤リボンの娘が、木村と呼ばれた先輩を覗き見ている。

木村先輩。

はて?何処かで聞いたような…聞いたことないような…。

まぁ、いいか。

蔵人は視線を男子マネージャー達に戻し、話の続きを聞こうとした。

したのだが、それよりも先に、蔵人のパラボラ耳にヒソヒソ話が迷い込んできた。


「ねぇ。あれって黒騎士じゃない?」

「えっ、うそ。ローズ先生が言ってたの本当だったの?Cランクが兼部してくるとかなんとか」

「黒騎士って、本当に男子なんだ」


その声は、蔵人を凝視していた、木村先輩達のグループから聞こえてくる。


「男子が選手として入るなんて、あり得なくない?」

「しかも、噂ではシールドなんでしょ?まともに戦える訳ないじゃん」

「だから、木村先輩も断ったんでしょ?確か、先輩が話を付けたって聞きましたよ?」


あっ、木村先輩って、ファランクス部に来た先輩か。

嵌めみたいな質問をしてきて、後で安綱先輩が怒りを向けたあの人だ。

漸く気付けた蔵人は、木村先輩の背中に視線を送る。

すると、先輩は慌てたように手を振っていた。


「違う、違う!あれは、だって、彼がファランクス部に入りたいって言ってたんだし」

「でも、そのファランクス部が、今年は全国行ったんでしょ?校内新聞では、全部黒騎士のお陰みたいに書かれていましたよ?」

「そんな訳ないじゃん。Cランクの男子が、どうやったらAランクを倒せるの?片腕切られて、動けると思う?」

「うっ、確かに。私、腕折った事あるけど、あれはヤバかった。ヒールするのに腕掴まれた時、めっちゃ叫んじゃったもん」

「ほらね。校内新聞では色々書かれていたけど、何処まで本当か分かったもんじゃないよ」

幻覚異能力者(イリュージョニスト)かも知れないもんね。ドミネーターとか、人を騙す系の異能力者って、よく自分の異能力を誤魔化しているし」

「でも、シングル部に入るんでしょ?その黒騎士。先生達も騙されてるってこと?」


1人が質問を投げると、少しの間静かになる木村集団。

そして、木村先輩の背中が、少しピンッと張る。


「あれだよ!ファランクスって団体戦じゃん?全国大会での功績を、黒騎士が横取りしたんじゃない?」

「ああ…。そう言えば、誰かが言ってましたね。黒騎士はファランクス部のマスコットキャラみたいなものだって。部の象徴みたいな子だから、部活の栄光で輝いて見えているんじゃないかって」

「噂では、美原先輩が倒した人を、自分のキル数に数えているんじゃないかって話もありましたね。広島の呉戦だったかな?美原先輩と背中合わせで戦っていたらしいですよ、黒騎士」

「そう!きっとそれだ!」


どれだよ。

蔵人は軽く息を吐いて、首を振る。

ローズ先生の時も思ったが、シングル部は本当にプライドが高いな。

高すぎるが故に他者を見下して、自分の尺度でしか測らない。

…測れないのか。可哀そうに。

蔵人が首を振っていると、そのAランク集団に声を掛ける者がいた。


「ねぇ!木村さん。なんか楽しそうな話をしてるね」

「えっ?あっ、み、美原さん」


声の先では、海麗先輩が仁王立ちとなっており、木村集団にとても良い笑顔を向けていた。


「ファランクスとか、黒騎士とか聞こえたけど、ビッグゲームの事を知りたいの?教えてあげようか?何なら今ここで、実技でさ」


笑顔で肩を回す海麗先輩に、木村集団は一斉に顔を青くして後退りする。

その様子から、シングル部における海麗先輩の地位が、相当高い事が見て取れる。

やはり、あれだけ魔力を回せるのだから、有望な選手なのだろう。

木村先輩が、両手を全力で振る。


「み、美原さん。違うわよ。貴女、何か勘違いしているわ」

「そう、そうですよ、美原先輩。私達、ファランクスの事なんて話していないです」

「ふ~ん。ファランクスの事、なんて、ねぇ」


取り巻きの娘の失言に、笑顔を深める海麗先輩。

その彼女の様子に、


「さ、さぁ、みんな。もう練習始まっちゃうから、急いで着替えよう!」

「そ、そうですね!」


木村先輩達は、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった。

その後ろ姿を見て、海麗先輩が小さくため息をついて、こちらに歩いて来た。


「ごめんね、蔵人君。君だったら、あいつらの会話聞こえちゃってたよね?」

「会話ですか?はて、何のことでしょう?」


蔵人がそう言ってすっとぼけると、海麗先輩は少し悲しそうな顔をして、蔵人の頭に手を置いた。


「我慢しなくていいよ、蔵人君。シングル部では、私が守ってあげるから」


おおっ。頼もしい先輩だ。

蔵人は心が暖かくなる。


「ありがとうございます、海麗先輩」

「うん。任せて!」


そう言ってガッツポーズをする姿は、何処となく朽木先生を思い出すな。

先日の安綱先輩は、何処となくローズ先生の雰囲気を纏っていたし。

指導者2人の影響が、個々の選手にも出ているのだろう。


海麗先輩が来てくれてからは、周囲の人からの悪意ある視線も無くなった。

代わりに、さっきまで親しくしていた男子達も遠のいてしまう。

海麗先輩が怖いのだろう。Aランクだからね、彼女は。

蔵人は、自分にべったり張り付いて、他者を牽制している海麗先輩に声を掛ける。


「海麗先輩。調子は如何ですか?」

「調子?うん、凄く良いよ。体のキレも、魔力のノリも凄く良いし、この前の模擬戦なんて、優火ちゃん…あっ、安綱さんね。優火ちゃんともいい勝負出来たんだ。最後は判定で引き分けになっちゃったけど、ローズ先生からはもう少しだったって褒められたし」


先ほどの笑顔とは打って変わり、とても清々しい笑顔で報告してくれる海麗先輩。

よかった。ビッグゲームで無理をし過ぎて、こちらに悪影響を及ぼしたらどうしようかと思っていたけれど、杞憂であったようだ。

蔵人が安心していると、海麗先輩が顔を近づけて、口に手を添えて小声で話しかけてきた。


「あと、まだみんなには内緒だけど、今年の全日本選手に、私が選ばれるっぽいんだ」

「おお。そうなんですか?」


なんでも、全日本への出場枠は、各ランク毎に3名となっているらしい。

桜城シングル部のAランクは、総勢15名ほど。その中の3人に、海麗先輩が選ばれたらしい。

まだ、内々定みたいなものだけどね。

でも、それだけ海麗先輩の実力が認められたという事であり、それだけ彼女が強いという事だ。


「それ程の倍率を勝ち抜いたとは、流石は海麗先輩ですね」

「えへへ。ありがと」


喜びを抑えきれずに、海麗先輩が照れながら笑った。

素直で可愛い人だ。


そうして、海麗先輩とお喋りをしていると、ローズ先生が現れた。

途端、木村先輩が声を上げて、部員達を集める。


「しゅうごー!」


先ほどまでの緩慢な歩き方が何処かに行き、先輩達はキビキビと小走りする。

Cランクの1年生は、ヘロヘロになりながらもそれに追従する。

全員が揃うと、ローズ先生が周りを見回す。


「安綱は生徒会と聞いているが、九条はどうした?副部長」

「家の用事と、言われて、いました…」


木村先輩の尻すぼみな回答に、ローズ先生が「これだから上流階級は…」と(こぼ)す。

なるほど。九条様は部活動よりも家の事、社交界が忙しいのだろう。遊んでいる訳ではない。

それでも、部活に心血を注いでいる選手や先生からしたら、悩みの種なのかも。

先生が顔を上げて、こちらを見た。


「皆に紹介したい者が居る。巻島、前に出てきてくれるか?」


先生が手招きするので、前へ出て彼女の隣に並ぶ。

先生が蔵人の肩に手を置き、全員に鋭い視線を向ける。


「巻島だ。私が無理を言って、ファランクス部から兼部してくれることになった」

「巻島蔵人です。宜しくお願い致します」


そう言って深くお辞儀をすると、拍手が迎えてくれた。

意外であった。歓迎されていない雰囲気だったから、ブーイングでもされるかと思っていた。

とは言え、半分くらいの人は直ぐに拍手を止めてしまったけれどね。

位置で言うと左側、木村先輩の集団と、その奥の集団だ。

逆に、海麗先輩がいる右側の集団からは暫く拍手が続き、色よい視線も感じる。


何だろうな。派閥でもあるのだろうか。

蔵人が危惧しながら顔を上げると、ローズ先生の言葉が続いた。


「皆も知っているかも知れんが、巻島はこの夏のビッグゲームで活躍した選手だ。関東大会では、あの紫電と一騎打ちを繰り広げ、見事に撃退している」


おおっ。と言う声が巻き起こり、ローズ先生は一旦口を噤む。

声を出してしまった生徒達が小さくなるが、先生は特に咎めることもなく、話を続ける。


「私もこの前、手合わせしたが、確かに強い。今回は時期が悪く、部からの出場は見送るが、来年からは間違いなく選手候補となるだろう。男だからと侮っていると、痛い目を見るからな。佐野、樋口」

「は、はい!」「はぁい」


ローズ先生の鋭い視線に、青ラインの先輩達が頷く。

きっと、2年生なのだろう。来年はライバルになるぞ?と発破をかけているみたいだ。

だが、折角の先生のお言葉も、半分くらいの人には刺さっていなさそうだ。

相変わらず、左側の方からは蔑む様な視線を感じる。

まぁ、全員に好かれたい訳でもないから、良いのだがね。



蔵人はその後、シングル部の見学をさせてもらう。

ファランクス部へ戻っても良いのだが、折角来たので、練習風景だけでも学んで行こうと思った。

そして、その蔵人を案内してくれるのが、


「ここが、トレーニングルームだよ。基本的に、練習後に使う人が多いけど、やり過ぎて体を壊さない様にって、ローズ先生から言われているんだ」


海麗先輩であった。

大事な時期に、良いのかと聞いたのだが、良いらしい。

どうも、最近練習をし過ぎているみたいで、先生から「今日は休め」と言われてしまったらしい。

気を付けて下さいね?と、故障の怖さを伝える蔵人。


「しかし、凄い部屋ですね。最新機器まで揃ってる」


蔵人は感嘆の吐息を着く。

まるで都心のスポーツジムだ。ランニングマシーンやベンチプレスを始め、体中の筋肉を育てる素晴らしい機材が取り揃えられている。

数こそ数組しかないが、部員数も考えると十分であろう。

蔵人の様子に、海麗先輩も立派な胸を張る。


「この他にも、別棟にプールやヨガ教室、専用闘技場もあるよ。あと、1階には大浴場とサウナもあるんだ」


本当にスポーツジムじゃないか。流石はブルジョア学校の花形部活。

驚く蔵人だったが、練習風景を見て、更に驚いた。

3年生の練習を見せて貰ったが、なんと、アグレスを相手にしていたのだ。

…ああ、侵略者(アグレス)ではないよ。WTCに出てくる仮想敵の方だ。


何でも、入試で戦ったのは、このシングル部で使っているシステムなのだとか。

朽木先生の様なソイルキネシスが土塊を作り出し、それをイリュージョニストが加工し、敵に仕立て上げているらしい。

もしかしたら、WTCでも似たような技術でアグレスを生み出しているのかも知れない。


他にも、最新機器を使った訓練を見せて貰い、ファランクス部との資金力の差を見せつけられた。

…大丈夫だ。全国に行ったファランクス部は、きっと来年度の予算が上がるはず。そしたら、こっちも買うんだ。


「どうだった?蔵人君」

「ええ。凄く勉強になりました」


一通りの見学を終えて、ファランクス部へ戻ろうとした蔵人に、海麗先輩が聞いてきた。

本心で返した蔵人だったが、海麗先輩は首を振っていた。


「まだまだだよ、私達は。お金は凄い掛けているけど、こんなんじゃ駄目だと思う。少なくとも、これで満足していたら、おばあちゃんに怒られちゃうと思う」


ああ、そうか。海麗先輩のおばあ様は、あの渦を作り出した人だからな。

機械に頼り切りでは、見失ってしまうだろう。

蔵人は、海麗先輩と対峙した時の様子を思い出し、頷く。


「もし、お時間があれば、海麗先輩もファランクス部の練習を見に来て下さい」

「おっ、その顔は何かやってるんだね?分かった。また遊びに行くよ。蔵人君も、また…」


明るい笑顔だった海麗先輩だが、その先を言おうとして、口角を落とす。

うん?どうかしました?


「ううん。今のシングル部に来ても、蔵人君が辛いだけだよね。木村副部長とか、凄い嫌な感じだったし」


まぁ、彼女とはちょっとした確執があったからね。彼女の態度は分からんでもない。

だが、彼女の周りにまで敵視されるのは意外だった。

多分、それは…。


「何か、シングル部内で派閥とかあるんでしょうか?」


蔵人の問いに、海麗先輩はぎこちなく頷く。


曰く、シングル部内では、大きく3つのグループに分かれるそうだ。

安綱先輩が中心の実力主義派。海麗先輩はこちらに属する。

木村副部長の中立派。強い者に靡き、弱い者を裏で虐げるコウモリムーブをするのだとか。

そして、魔力ランクを重視する、もう一つの派閥があるとのこと。

奥の方に居た集団が、それらしい。


「今はローズ先生が顧問だから、実力派が強いけど、昔はランク派が強かったんだって」


なんと、ローズ先生ですらランク派ではないのか。

先日対峙する前のローズ先生の言動を思い出し、驚く蔵人。


「なるほど。シングル部も壁が厚そうですね。では、その壁を壊しにまた来ますよ」

「ははっ。君らしいね」


蔵人は海麗先輩にお礼を言って、その場を去る。

訓練棟を出る時、ランク派らしき人達の集団から、睨みつけるような視線を感じた。


シングル部。なかなかの伏魔殿だ。

蔵人は挑戦的な笑みを浮かべ、それらを笑い飛ばす。

シングル部の中を覗きましたが…。

ファランクス部とは大きく違いましたね。


「個々の能力が重要となる競技だからな。部の中の雰囲気は、違うだろう」


それ以外にも、桜城部活の花形と言うのも大きいでしょうね。

訓練棟入口には、歴代の栄光が飾ってあるらしいので。


「重ねた努力が栄光となり、何時しか傲りとなってしまったか」


ファランクス部がこうならないように、釘を打たないと。

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― 新着の感想 ―
[一言]  今後、蔵人が本格始動したら、まずK女史率いる派閥がまず解体されるでしょうねぇ(^^;a  そしていずれは焼にk……もとい弱肉強食な部活へと変貌する。のかぁ!?←スポーツ新聞的見出し再び(笑…
[一言] 今までのランク差別主義者って基本高ランクは強い低ランクは弱いって考えが大元にある人達だったけど、実力派とは別になったランク派ってつまり強くもない癖にランクだけ誇ってる連中って事なのかな。 ま…
[気になる点] シングル部の様子は「まあせやろな」って感じですね。西日本でもファランクス強豪校が傲慢チックな様子だったので、東日本のシングル強豪校がどんな様子かって考えればそうなるかと。 蔵人に対す…
感想一覧
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