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159話~君の活躍を、是非とも聞かせてもらいたい~

パーティが始まると、殿下の前には瞬時に長蛇の列が出来てしまった。

殿下への挨拶の列だ。


「お久しぶりです、アイザック殿下」

【おお、Ms.一条!昨年の誕生パーティー以来だな】


王子達と今挨拶を交わしているのは、この会場でも一二を争う有力豪族、一条家のご令嬢だ。

輝く程美しい赤髪をミディアムに切りそろえ、可憐と言うより美しさが先ず際立つ美人さんだ。その後ろには、九条薫子さんと、そのお姉さんと思わしき人も並んでいる。お姉さんの髪色は高級感あるれるコーヒーブラウンで、恐らくソイル系の異能力者だろう。


蔵人達の番までは、まだ結構時間が掛かりそうだ。

初めに九条様の様な大貴族が一番に挨拶をする。次いで、政界や財界の有力家柄がそれに続き、その次が漸く巻島家だ。

頼人がAランク男子なので、同じ家柄の中では1番早いらしい。それでも、後数十分は掛かるだろう。


その間は、適当なテーブルで談笑をこねくり回す。

蔵人が選んだのは、男子が多い卓。

隅っこの方に、まるで机ごと逃げるかのように隠れ潜んでいるその一団は、既に何組かの令嬢達に迫られ、防衛ラインを突破されそうになっている。


蔵人は、1人の男の子に近寄る。彼は机に寄りかかって、女性から少しでも距離を稼ごうとしていた。

あっ、さっき逃げた男子高校生だ。


「失礼致します、先輩。こちら同席させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「えっ、えぇえ…あっ、男!良いよ!男なら歓迎するよ!」


男ならって…。

切羽詰まって言葉遣いが砕けて散っている男子に、蔵人は苦笑いを向ける。頼人をテーブルに誘導して、皿に幾つか軽食を乗せてあげる。ついでに、近くを通った女性ウェイターに飲み物も貰う。


「ありがとう、兄さん」


微笑む頼人に、微笑み返す蔵人。

そんな蔵人達を見て、颯太と呼ばれていた男子が話しかけてくる。


「君たち兄弟なの?僕は前田颯太だよ。天隆高校の1年なんだ」

「お初にお目に掛かります、前田様。私達は双子でございます。こちらは兄の巻島頼人。私は巻島蔵人と申します。こうしてお会いできた事、光栄にございます。何卒、これからよろしくお願い申し上げます」

「固い、固いですよ蔵人さん!男同士なんですから、もっと気楽にお話しましょうよ。お2人は学生ですか?大学…いえ、高校…でも、そちらの子は中学生っぽいな。えっ?でも双子でしたよね?」


蔵人と頼人を見比べて、首を捻る颯太君。

蔵人が中学生だと言ったら驚き、1年だと言ったら笑いだした。


「またまた、冗談が上手いですね!」


冗談に見える程、老けてるって言いたいのか?おぉう?

そんな砕けた話しをしていたら、颯太君にお客様だ。

華麗なドレスに包まれた令嬢達が、団体様でご到着なさった。

それを見た颯太君の顔は一瞬で死に、あらぬ方向に視線を向けた。


「颯太様〜」

「颯太様!」

「ご挨拶に伺いました。あら、こちらの方は?」


1人の令嬢の視線がこちらに向く。すると、颯太君の顔が強張り、縋るような目でこちらを見てきた。


「え、えっと…こちらは巻島頼人君と、蔵人君です」

「えっ!頼人様!?」


颯太君が頼人の名前を口に出した途端、令嬢達の目線が一気に頼人に降り注ぐ。

颯太君はそれを見て、これ幸いと顔を綻ばせて、そそくさとテーブルの端っこの方に避難した。

逃げやがったな!颯太!

2人の令嬢が近づくことで、青ざめてしまった頼人を背中に隠し、蔵人が彼女達のストッパーとなる。


「お初にお目に掛かります、お嬢様方。私は巻島蔵人と申しまして、こちら、巻島頼人の双子の弟にございます」


先程繰り返した挨拶の防風林で、令嬢達の爆風を受け流そうとする。

耐えろ、耐えろ俺の根っこ!

蔵人が、今度はどうやって令嬢達の気を引こうか考えている時、後ろから声が掛かる。


「頼人様!ご挨拶に伺いましたわ!」

「ひぃいい!」


蔵人の背中にドンッと、頼人がぶつかって来た。

さっきの颯太君と同じ対応しているじゃないか、頼人。

蔵人は若干頭を悩ませながら、声を掛けてきた方に向き直る。


えっ?そのまま振り返ると、迫ってきた令嬢達に頼人を晒すことになる?

大丈夫だ。令嬢達は今、固まっている。

何故なら、


「あら、お義兄様。お義兄様にもお会いしたかったですのよ」


そう言って、蔵人に微笑むこの人は、このパーティのカーストトップ、九条薫子様だからだ。

彼女の傍には、先ほど分かれた広幡様もいらっしゃる。

小さく手を振る彼女に、蔵人は目線だけで会釈をして、九条様に向き直る。


「九条様。こちらからご挨拶申し上げるべきところ、遅くなり申し訳ございません。私共に特別のご高配を賜り、誠にありがとうございます」


恐らく、彼女が蔵人を呼んでくれたからね。その意味も含めてのお礼だ。

蔵人が頭を下げていると、九条様のお姉さんらしき人も現れる。


「薫子、急に居なくなるから心配したわ。あら?こちらが貴女のお話によく出てくる、巻島頼人君?」

「頼人様ですわ、お姉様。Aランクのクリオキネシスをお持ちの、とても高貴な御方ですわ」

「あら、そうだったわね。それだけ貴重な存在だから、護衛を付けることも許されているのかしら?」

「違いますわ。こちらは頼人様のご兄弟で、蔵人お義兄様ですわ」

「あらあら。随分と歳の離れたご兄弟なのね」


なんだろうか。九条様のお姉様は、随分とおっとりとされた方だ。

それでも、その立ち居振る舞いからは高貴なオーラが滲み出ている。

この方になら、老けて見られても構わないと思ってしまう。

カリスマ性か。

蔵人が九条お姉様に好感を感じていると、周囲の人間が緊張した声を潜ませるのが聞こえた。


「まぁ、九条様直々にご挨拶されていますわ」

「巻島頼人様って、例のAランクでクリオ系の方?」

「巻島家の秘宝ですわ」

「クリオ系という事は、アッシュグレイの御髪の子がそうですの?お可愛い子ですわね」

「九条様がお目を掛けるのも頷けますわ」

「では、あちらの黒い御髪の方は何方ですの?」

「はて?召使いかしら?」

「お兄様らしいですわよ?なんでもCランクだとか」

「ふぅん…C、ですか…」


蔵人をCランクと分かり、興味が頼人に行っている視線の動きを感じる。

そんな動きを察知したのだろうか。九条様が声を少し張る。


「お義兄様!この度は関東初の偉業、ファランクス全国大会3位、誠におめでとうございます!」


九条様の声で、周りが微かにざわめく。


「ファランクス?全国3位?」

「そういえば、帰国して早々に聞きましたわ。確か桜城中等部の異能力部が全国で入賞したと」

「テレビで流れた覚えがありますわ。ファランクスの歴史上、東日本の学校で入賞は初めてだとか」

「ファランクスって、大勢の異能力戦ですわよね?それとあの男性となんの関係が?」

「えっ、ファランクスで、黒い髪…黒い選手…えっ」


九条様の目線が、一瞬周りのギャラリーに向いた気がする。

なんだろうね、その笑みは。

九条様が下手に情報を漏らす前に、対策に走る蔵人。


「九条様直々のお褒めの言葉、誠にありがとうございます。部員の皆さんも、きっと喜ぶと存じます」


部員と俺は密接じゃなく、ファランクス部の栄光も俺は間接的ですよと暗に匂わせる蔵人。

更に、


「頼人。さぁ、九条様が態々ご挨拶に来てくださっているよ。挨拶しなさい」


固まっている頼人を前面に進める。固まり過ぎてチェスの駒かと思うほど、すんなり前に出る頼人。

ただ、そのままだと何もしなさそうだったので、蔵人は頼人の耳元で「ごきげんよう」と囁く。すると、頼人も「ゴキゲンヨウ」と呟いたので、後はアクリル板で頼人の背中を押して、軽く礼をさせる。

これで、会話はファランクスから流れてくれるだろう。


「まぁ!頼人様からご挨拶頂けるなんて!この会に出席して正解でしたわ!」


九条様は大喜びで、いつの間にか持っていた扇子で、高揚した口元を隠す。

そして、


「Cランクでありながら、Aランクをも下す蔵人様にもお会いできましたし。この九条薫子、胸がいっぱいですわ!」


結局、話を戻してしまった九条様。

あーあ。頼人にお辞儀までしてもらったのに。

案の定、周りのざわめきは大きくなる。


「えっ、CランクがAランクを下す?」

「どういう事!?」

「そんな事、有り得るはずありませんわ!」

「ですが、あの九条様が言われているのですよ?それも絶賛されていますわ!」

「そもそも、九条家のお2人が態々足を運んでいますのよ?頼人様だけじゃなくて、そこのCランクの為に」

「何者ですの?あの黒い男子は」


ざわめきが広がり、人が集まる。そして、更に動揺が広がる。

気付けば、端っこにあったこの卓に、多くの令嬢と子息が集まっていた。

当然、会場では目立ってしまう。なので、


【これは、何かのイベントかい?】


当然、主賓にも伝わる。

アイザック殿下率いる使節団のご一行まで、蔵人達の卓に足を向けられた。

令嬢たちは、黄色い声を上げながら、殿下に道を譲る。

まるでモーゼの海割りの様に、蔵人達までの道筋が一瞬にして出来上がる。その道を、アイザック殿下は悠然と進む。

蔵人が、いつも通り緩衝材となるべく前に出ようとするが、それよりも先に、九条様がすすっと蔵人の横から前に出た。


「殿下。こちらは巻島頼人様。桜坂中等部1年男子のAランク、クリオキネシスでございます」

【なるほど。男性でそれは珍しいね。よろしくMr.頼人】


殿下が優しい微笑みを頼人に向けると、今度は頼人も自然と礼をする。


「初めまして、アイザック王子。巻島頼人です。宜しくお願い致します」


おお。ちゃんと挨拶出来るんだな、頼人。

考えてみたら、巻島本家でみっちり教育されているのだから、ある程度のマナーは出来て当然で、令嬢に対する態度だけが頂けないだけであった。男性である殿下には普通に対応できるみたいだ。

九条様の差し出した手が、頼人から蔵人に移る。


「そして、こちらは巻島蔵人様。頼人様の双子の弟君であり、先日行われたファランクス全国大会で大活躍をされた優秀なCランクの選手です」

【へぇ。日本のファランクスには男子リーグがあるのか】

「いえ、殿下。蔵人様は女性の選手に混じった中で、活躍されましたの」

What(なに)?】


殿下の鋭い視線が、蔵人に向く。


【女性を相手に戦っていたと言うのかい?そもそも、ファランクス戦とはBランクやAランクもいるだろう?マネージャーとか、控え選手という事ではないのかい?】

「いえ、ちゃんと出場されており、とある試合では単独でAランクをベイルアウトさせております。片腕を失った状態であるにも関わらず、です」


岩戸戦の事を言っているのだな。

蔵人は、自分が思っていたよりも、九条様がビッグゲームをよくご覧になられている事に、内心唸った。

ファランクスで出場するなんて一言も教えていなかったのに、何処から仕入れたのだろうか。その情報。


殿下達の周囲がソワソワしている。

殿下は、他の使節団メンバーと何かを相談している。

使節団のメンバーは、頭を振ったり、しきりにジェスチャーで何かを伝えている。


うむ。小声で早口すぎて、何を言っているか拾えない。ちょっと訛りが強すぎるんだよ、この使節団のメンバー。

殿下は直ぐに九条様に向き直る。顔は、元の通り微笑みを携えている。


【直ぐには信じられない話だけど、Ms.薫子。彼が優秀な異能力者という事だね?】

「おっしゃる通りですわ」


九条様の肯定を受けると、殿下は、何を思ったのか蔵人の方に歩みを進めて、目の前に立つ。


【Mr.蔵人。君の活躍を、是非とも聞かせてもらいたい】


そう言って、手を差し出された。

蔵人は反射的にその手を掴もうとしたが、蔵人の手は、王子の手に触れる前にはたき落とされてしまった。

はたき落としたのは、王子の護衛。

簡易ドレスを着た黒髪の護衛が、王子の前にさっと現れ、蔵人の手を払い退けたのだった。


「不用意な接触は危険です。殿下」


女性にしては少し低い声が、護衛から発せられる。

護衛は、その鋭い目付きも合わさって、かなり強者のオーラを醸し出している。

背も蔵人より少し高く、170…175㎝くらいか?女性にしてはかなり高い。黒髪だから、ブースト系かサイコキネシスかもしれない。はたまた、蔵人と同じシールド系か?


蔵人の手を払ったことで、周りの令嬢は非難めいた声を上げたが、蔵人の内心は穏やかだった。

何せ、よくよく考えたら、殿下と握手するとなると、いったいどういう解釈で周りに見られるか分かったものではないからだ。

殿下は先ほどの挨拶でも、親しく話しかけてはくれるが、頭を下げたり、ましてや接触するなどしなかった。それは、自身の品位を下げる行為であり、護衛が言っていたように危険でもあるから。


だから、そんな危険を冒してまで蔵人と接触したら、イギリス王室と巻島家の間に何かあると勘繰る輩が出てきてもおかしくない。

そう考えると、はたき落としてくれたこの護衛の娘には、感謝すらしていた。


「ちょ、ちょっと橙子(とうこ)!それは”強引”すぎるって!」


同僚と思わしき護衛が、蔵人の手を叩いた護衛の肘を掴む。

強引?手を叩いたことが?今のは王子を守る為じゃなくて、なにか他の意図による行為だったの?

蔵人が、同僚さんの言葉に意味を見出そうとしていると、橙子さんが蔵人の前で頭を下げた。


「失礼致しました。処罰は如何様にも受ける所存です」


手を叩いたことに対する罰は、なんでも受けますと言っているらしい。

肝の据わった高校生だな。

蔵人は一瞬関心してしまい、返答が遅れてしまったが、急いで頭を下げ返す。


「とんでもございません。こちらこそ、殿下を煩わせるような言動をしてしまい、申し訳ございませんでした」


当事者2人がお辞儀合戦を繰り広げるという異様な様子に、周りの非難も落ち着いてきた。

すると、殿下が、


【私も不用心すぎたね。ここは私の顔を立てるということで、許してくれるかい?Mr.蔵人】


頭こそ下げないが、殿下は謝罪の言葉を宣った。

蔵人は、もう直角を通り越して、地面に頭が着くんじゃないかというくらいの角度でお辞儀して、


「とんでもございません!殿下からの暖かいお言葉を頂き、不肖この蔵人、誠心誠意精進していくことを此処に誓う所存でございます!」


全力で謝意と誠意を述べて、この場を収めようとしていた。

そんな様子を見て、殿下が笑う。


【はははっ。やはり信じられないな。君が中学1年生というのも含めてね】


おお、王子様にまで老けていると認定されてしまった。公式認定どころじゃないぞ。王室認定だ。戸籍の年齢まで変わりそうで恐ろしい。

蔵人がそんな事を考えていると、壇上から音楽が流れてきた。

見ると、オーケストラの一団が壇上で新たな曲を演奏し始めていた。かなり手馴れている様で、ゆっくりと体を揺らしながら奏でられる曲は、テンポもゆっくりなワルツだ。


まるで踊れとでも言っているかの様な演奏だなっと、蔵人は他人事のように考えていたが、目の前では中央の卓を片付けるスタッフがあちらこちらに。

何処かのご令嬢が言われていたが、もうダンスが始まるのか。

護衛として来ているから大丈夫だと思いたいけど、先ほどのご令嬢達の様子が気になるんだよなぁ。


蔵人が顔を伏せて悶えていると、誰かが肘辺りを引っ張る感覚があった。

見ると、頼人が心配そうにこちらを見上げていた。


「大丈夫?兄さん」

「あ、ああ。大丈夫だよ。別に体調が悪い訳じゃないから」


蔵人は伏せていた顔を上げると、苦笑いを頼人に返す。しかし頼人は首を振る。


「兄さんの体調もだけど、ほら」


ほら、と言われて見てみると、周りにはこちらをガン見する令嬢の群れが包囲していた。

目線から分かるが、獲物は頼人だけじゃない。蔵人にも複数の視線が突き刺さって…いや、威力で言えば突き抜けんが程の眼力だ。もうちょっとで目からビームを出しそう。


「頼人様!1番目のお相手は、是非私と!」

「いいえ、是非この私、千石宮子をお相手に…」

「何を言われていますの!?頼人様の最初のお相手はこの私、九条薫子に決まっていますわ!」


頼人の方は、有象無象を一刀両断した九条様が相手をする様だ。日本屈指の財閥に勝てる子は無しと。

頼人に集まっていた集団が、サッと1歩引いて頼人と九条様の見守りモードになっている。


そっちは良い。いや、今にも死にそうな頼人の顔を見る限り、大丈夫では無さそうだが、頼人自身もダンスは踊れるらしい。巻島家のお稽古にも入っているらしいから。

問題は、こちらの方。

色とりどりのドレスと髪色が、蔵人に押し寄せる。


「お兄様!是非私とお相手を!」

「お相手は私ですわ!蔵人様、稲葉紗栄子でございます!お約束しましたわよね?」

「稲葉様!約束は私となさったのですわ!この粟田紗夜が今宵のお相手と、蔵人様はお思いですわ!」


おっと、冒頭で頼人にアタックしてきた三人衆までこちらに流れ込んできた!やはり俺の断り文句を美化した状態で受け取ってしまった様だ。

踊る約束は一切していない筈だが、やはりこうなってしまったか…。

さて、どうしよう…。

頭を抱えたい衝動を抑え、蔵人はご令嬢たちに向き合う。


「申し訳ございません。学がないもので、ダンスは覚えが無いのでございます。皆様の華麗な舞を汚すことになりますので、どうぞ、私めは護衛と思って頂きたく」


正直に、踊れないと断ってみる。

何となくでいいのなら踊れるかもしれないが、何分習ったのはかなり前の、それも異世界のダンスだ。蔵人だけが恥をかくなら良いが、お相手にも降り掛かってしまったら目も当てられない。

そう、蔵人は配慮した。

のに、


「まぁ!でしたら私がお教え致しますわ!」

「いいえ!私が!私が蔵人様に手とり足とり…」

「蔵人様を頂くのはこの私ですわ!」

「ああ、蔵人様に愛を囁かれながら一晩中…うふ、ウフフ…」


なんかヤバいのがいるぞ!頂くって、直球投げてきたな!

蔵人は身の危険を感じ、1歩下がる。

このままでは、ダンスをしなけらばならなくなる。

何か、何かいい手は…。

蔵人が、この場の逃げ道を必死で探している、その時、

声が響いた。


「いい加減にされたらどうです!穂波さん!」


優雅な空間を切り裂く女性の叫び声に、会場はシンッと静まり返った。

主人公にもスポットが集まってしまい、随分と注目されてしまいました。


「まだ、半信半疑…いや、殆ど疑っている令嬢が多いみたいだな」


どうも、海外から帰国してきた人ばかりみたいですね。

九条さんも、イギリスの社交界に出ていたみたいですし、ご令嬢は夏も忙しかったのでしょうね。


そして、誰かが叫んでいますね。

穂波さんと言う人が、糾弾されていますけど…はて?何処かで聞いたお名前…。

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― 新着の感想 ―
[一言] パーティー会場→糾弾する叫び声→婚約破棄? ・・・悪役令嬢もの読み過ぎました。
[気になる点] この世界の有力な男性は、ごく一部の例外を除いて蛇に睨まれた蛙ほどの度胸も無いから、蔵人やアニキみたいに毅然とした態度で接する事が出来るタイプは無条件で惚れられそうですね。 一部は、蔵人…
[気になる点] 消極的な高ランクや良家の子息を誘い出すパーティーという名の狩り場ですね こうやって良い男を会員制ならぬ身分制の社交場で根こそぎ御令嬢たちが囲っていくと…
感想一覧
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