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153話~これが俺の、俺達桜城の異能力だ!!~

「「ユニゾンッ!!」」


島津姉妹が声を張り上げると同時、彼女達を膨大な魔力が覆う。

まるで、荒ぶる大海の様に。

まるで、怒りにも似た魔力の大渦。


その魔力が渦巻くと、空気が痺れ、地面が胎動する。

ドクッドクッと脈打つ地面が、彼女達を覆い、それが見る見る内に大きくなっていった。


「「「「うぉおおお…」」」」

『な、なんと!ファランクスでユニゾンだとぉお!?』


2人のユニゾンは、嘗て蔵人達が行った時の様に、見上げる程に大きな土人形を形作った。

土塊が集まり、創り出す兜や鎧、大刀は金属製に見える。

鎧武者のゴーレムか。


赤褐色の鎧武者が大きく1歩を踏み出すと、芝生が沈み込み、地面が微動する。

まるで、筑波戦のグレイト10だ。

あの時はAランクが1人と、金属の塊であった。

だが、今回はAランクとBランクのユニゾン。

その脅威は、計り知れない。


挿絵(By みてみん)


「シールド・ランパート」


その脅威を認識し、蔵人は構える。

今、自分が出来る最大の防御でもって、鎧武者を迎え撃たんとする。


その蔵人を見下ろし、鎧武者が刀を構える。

赤褐色の土が創り出したそれは、今は赤黒く変色していた。

いや、違う。あれは圧縮。

まるでアジ・ダハーカの鱗の様に、魔力が極限まで圧縮されたが故の黒であった。

その威力は、正に…。


振り下ろされる寸前、蔵人は飛び退く。

途端、ランパートが粉々に砕け散った。


丹治所長曰く、ランパートはAランク上位の性能を誇る。

それを一瞬で粉々にする、あの鎧武者の攻撃は、間違いなくSランク級。

蔵人は、飛び退きながら唾を呑む。


「シルバー・ホーネット!」


相手との距離を確保すると同時、白銀の女王蜂達を一斉に放つ。

鎧武者はそれを、防ぐ素振りも見せない。

次の一刀を繰り出す為に、只々構える。


そんな鎧武者の表層で、女王蜂の針は虚しく空回転を繰り返した。

削れない。

硬すぎる。

黒刀だけでなく、武者の鎧自体もAランク以上の防御力を誇るのか。


さて、どうやってこれを攻略するかと思案する蔵人。

その目の前に、鎧武者の一刀が迫って来た。


瞬時に、盾の移動で避ける。

だが、避け終わって着地すると、既に、次の一刀がこちらへと迫って来ているのだった。


早い!速すぎる!

驚愕。それと同時に、全力でもって、その場から離脱する。

急激な移動に、体の節々から悲鳴が上がる。

そんな中、目の前を黒い刃が通り過ぎる。

風圧で、体が前へと引きずり込まれそうになる。


だが、負ける訳にはいかない。

鎧武者は既に、次の動作を準備しているのだから。


その巨体からは想像できない程、余りにも素早い連続攻撃。

これは、ユニゾンの練度も相当なものだ。

そして、その巨体通りの強烈な一撃と、強固な外壁。

まさしく、Sランク級の武人。

こいつを屠る為には、Sランク級の攻撃力が必要となる。


どうする。

蔵人は自問する。

この巨人を倒すには、対巨星盾を最大限まで回転させ、相手の弱点を突く他にない。

だが、本当にそれで貫通できるかは分からず、そもそも、その隙を見つけることも難しい。

素早い巨人の攻撃を、避けるだけでも精一杯な現状である。

とても、準備時間が必要なシールド・クラウズなど、発動している暇がない。


では、1人でなければどうか。

蔵人は周囲を見回して、記者席で時折光る、カメラのフラッシュを捉える。

若葉さんが居れば、ユニゾンも可能である。

慶太が、日向さんが、頼人が居てくれたら、Sランクにも対抗出来るユニゾンで打ち返せる。


蔵人は頭を振る。

何を考えている。

弱気になるな。現実を見ろ。彼女らをフィールドに招くことは出来ない。

であるならば、皆と連携して、この巨人を倒す他無いだろう。

鈴華との連携。伏見さんとの連携。海麗先輩と、部長と、近藤先輩との連携…。


何か、何かないのか。

巨人の三連撃を躱しながら、蔵人は沸騰しそうな頭で思考を巡らせる。

そこに、

影が差す。


巨人の一撃。

そう思って、覚悟を決めた蔵人だが、

その影は、余りに小さかった。

その影は、直ぐに蔵人を通り過ぎてしまった。


なんだ?鳥か?飛行機か?

そう、蔵人がそちらに視線を向かわせると、

そこには、鳥のように羽ばたく、1人の選手がいた。


「ようやっと出て来よったな、巨人!」


彼女の横には、白銀に輝く一本の腕が見える。

真夏の太陽がその腕に当たると、まるで刃物の様に、ギラリと光を返す。

その刃を携えて、

彼女は、笑った。


「これがウチの、ウチなりの答えや!」


蔵人を見続ける巨人の首に、その隙だらけの首元へと向かって、

伏見さんは思いっきり突撃する。


激突!

途端、ガクンッと頭が前に傾くゴーレム。

倒れそうになり、蔵人に振り下ろすはずだった刀を地面に突き刺し、それに耐える。

あの鎧武者が、初めて見せる大きな隙だ。


その巨人の背中の向こうから、一羽の明るい鳥が羽ばたいた。

巨人を振り返り、その鳥は悔しそうに(さえず)る。


「しもたぁっ!(うなじ)斬り損なってもうた!」


そう言いながらも、伏見さんは諦めた様子もなく宙を駆け抜け、再び鎧武者へと進路を取るのだった。

宙に揺れる金髪が、少し悔しそうな伏見さんの顔色とは別に、嬉しそうに跳ねているように見えた。


「見とれよ!次こそ、斬り飛ばしたるさかいなぁ!」


ヤバい!伏見さん、完全にハイは状態になっている。

態勢を整えた鎧武者が、伏見さんを見上げている中に、彼女は飛び込まんとしていた。

(うなじ)を斬り飛ばしたところで、その巨人は死なないというのが分かっていないのか?


このままでは、伏見さんが迎撃されてしまう。

蔵人は急ぎ盾を集め、それを回し出す。

だが、

間に合わない!

これでは、トップスピードの前に、彼女が斬り刻まれる!


そう、思った瞬間。

伏見さんに向けて構えた鎧武者の腕が、その腕に握られた刀が、

下がった。


下がった方向。鎧武者の足元。

そこに、


「マグネット・フォース!」


片腕を天へと伸ばし、鎧武者の刀を掴まんとする鈴華の姿があった。

彼女のマグネキネシスが、鎧武者の刀を引き付けてくれているみたいだ。

あの刀には、磁性体となる成分も入っているだろう。

もしくは、鈴華が魔力自体を引き付けられるようになったのか。

どちらにせよ、鈴華のお陰で、伏見さんは間一髪助かった。

伏見さんは刀を避け、鎧武者の顔面に一発入れてから、こちらへと降りてきた。


伏見さんの奮闘に、一言労いの言葉でも掛けようと寄る蔵人。

だが、それを追い越して、銀髪を逆立てた鈴華が一喝した。


「おい!早紀。おめぇ危なかったぞ、さっきの」

「なっ、何言っとんねん。あんくらい、余裕で避けとったわ」

「そんな訳ねぇだろ!今のはホント、あとちょっとでミンチだったんだぞ?少し頭冷やせって!」

「自分こそ、その異能力でゴーレムの動きくらい止めたらどうなんや」

「んだとぉ!」


喧嘩を始めてしまった2人。

そこに、蔵人は血相変えて駆けこむ。


「お前ら!前を見ろ!」


蔵人に言われて、前を見る2人。

そこには、既に構え終わった鎧武者の姿があった。

早い!そして不味い!


「退避っ!」


蔵人は叫び、ランパートを作り出す。

だが、2人が鎧武者に背を見せるより早く、黒刀がこちらへと振り下ろされた。

避ける?ダメだ。2人が間に合わない。

伏せる?体の半分が消し飛ぶぞ。

やられるっ!

そう思った直後、


黒刀が、ランパートに接触する前に、跳ね上がった。

ランパートが防いだんじゃない。

その前に、ランパートの前に立つ者が1人。


「いったぁあ!」


海麗先輩が、拳を摩ってピョンピョンしていた。

その拳は、黒。

彼女の黒拳が、黒刀を弾き返してくれたのだった。

あの威力の黒刀を殴って、痛いで済んでる貴女は一体…。


「蔵人!」


蔵人が海麗先輩の凄さに放心していると、彼女が振り向いて叫んだ。


「お願い!アレを倒して!」


巨人を示して、そう言う彼女。

だが、直ぐに鎧武者が再起し、海麗先輩へと黒刀を振り下ろす。

それを、辛うじて弾き返す彼女。

この攻防、長くは続かない。

そして、どう足掻いても海麗先輩に勝ち筋は無い。


作らねばならない。俺達で。

蔵人はチラッと戦場を見る。

海麗先輩が相手していたBランク2人は、部長と木元先輩が相手してくれている。

浮遊とサイコキネシスで刀の軌道を反らして、妨害してくれている。

それも、長くは続かないだろう。


蔵人は、視線を後ろに向ける。

そこには、申し訳なさそうな2人の顔があった。


「ごめん、ボス」

「カシラ!すんません!」

「良い。切り替えるんだ」


蔵人の言葉に、瞬時に真剣な顔をとなった鈴華と伏見さん。

2人に向けて、蔵人は頷く。


「あの鎧武者を倒すのには、君達の力が必要だ。協力してくれるか?」


蔵人の提案に、


「ああ、勿論だ。あたしはあんたについて行くぜ」

「うっす。今度こそやったりますわ!カシラ!」


2人も頷いてくれる。

蔵人は簡単に作戦を説明する。

その間にも、部長達が止めていた相手Bランク2人が海麗先輩に追いついてしまい、鎧武者がこちらへと向き直った。

でも、何とか間に合った。

蔵人は、蔵人と2人は、その迫る脅威に立ち向かう。


「2人とも、準備はいいな?では、作戦開始!」

「外れ能力の力、見せてやるよ!」

「ウチの努力も、見せたるわ!」


3人が一斉にバラけ、鎧武者は一瞬誰を追うか迷った様に見えたが、結局蔵人を追ってきた。


蔵人は、戦場をふと横目で見る。

海麗先輩も、部長も、相手のBCランクに足止めされていて、こちらには来られそうにない。

この1年トリオで挑むのだ。この鎧武者(Sランク)に。

そう思うと、無性に、無性に心が騒めき、血が(たぎ)る。


鎧武者の素早い剣戟が、蔵人を襲う。

蔵人は、背中にシールドを付けて、ちょこまかと地面を這うように逃げ回る。

急激な移動を繰り返す度に、体に物凄いGが掛かり、胃液が逆流しそうになる。

口を開けば、全てをぶちまけるだろう。

でも、やめない。

こうしているだけで、鎧武者は無心に、蔵人を追う。

今、鎧武者は蔵人だけに集中している。

そこを、


「うなじ、もろたでぇええ!!」


伏見さんが強襲する。

相変わらずうなじ狙いだが、今回はそれでいい。

首を強打された鎧武者は、つんのめりそうになるも刀を地面に突き刺し、堪えた。

そのまま、忌々しそうに伏見さんを振り返る。


大きな隙。再び訪れた大きなチャンス。

それを見て、蔵人は動く。

手を広げると、そこには無数の盾が生まれ出でる。

その無数の小さな盾は、夏の陽光を受けて、ギラギラと鈍く光る。

鈍色の、盾達。

鉄盾。

それを、全弾一斉射撃する。


盾の・(シールド・)大・雪崩(アヴァ・ランチ)!」


無数の鉄盾が、鎧武者に飛来する。

だが、たかがDランクの放つ盾では、ゴーレムを倒す所か、傷1つ作る事も出来なかった。

それでも蔵人は、再び、自分の周りに盾を集める。

集める。

大きな3層に分かれた盾、それが、4枚。


盾・一極集中(シールド・クラウズ)!!」


対巨星盾。それを、高速で回し出す。

鎧武者が、蔵人に向かって構える。

この技の威力を知っているが故に、下手に近寄らず、迎撃しようとしている。


その手に持つのは、漆黒に血塗られた、一本の大刀。

金剛(Aランク)を超えた者だけが持つ史上最強の黒金剛(Sランク)

この世界の頂点(てんじょう)が、蔵人を迎え撃つ。


『島津姉妹のユニゾンゴーレムが、Sランクのみが持つブラックダイヤソードを構えた!これは不味い!不味いぞ!幾らAランクすらも貫く黒騎士だろうと、Sランクは全くの別次元!一瞬で蒸発してしまう!』


そんな実況の声も、観客の悲鳴も無視して、

今、蔵人は一直線に、構える島津姉妹の元へ、

飛んだ!


極大の凶刃ドリルに、鎧武者は構えを深く、ただ鋭く研ぎ澄ます。

斬る。

土塊のぶ厚い壁に阻まれていても分かる、2人の殺気。

完全に殺す気でいる、島津姉妹の圧。

また、蔵人しか見ていない。


「すずかぁあ!!」


蔵人は叫んだ。鈴華の名前を。

声を送った先は、武者の足元。

そこで、彼女は両手を上げていた。

高く高く、武者に向けて手を上げて。


「マグネット・フォース!」


最大限の磁力を、発生させる。

その途端、

武者の両手足が、地面に吸い寄せられた。

武者の手足と、鈴華の足元には、先程蔵人がばら蒔いた鉄盾が張り付いていた。

その鉄盾同志に磁力を発生させ、強力な磁場を作り出していた。


鎧武者の膝が折れて、座り込む。

辛うじて上半身だけ持ち上げるも、そこまでだった。

漆黒の刃を滑るように進むドリルは、直後、頑強な鎧武者の胸部に突き刺さる。


「ミラァア・ブレイクゥウ!!!」


金剛盾の切っ先が、音を立てて鎧武者の装甲を削りだす。


「いけぇ!ボス!」

「蔵人!貴方なら出来るわ!」

「蔵人君!」


ガリッ!

鎧武者の表層が、剥がれる。


「蔵人ちゃん!」

「巻島君!」

「兄さん!」

「くーちゃん!」

「くー太郎!」

「坊ちゃま!!」


ガリガリガリッ!

みんなの声が、思いが、蔵人の背中を押す。

やがて、強靭なドリルが、鎧武者の全ての装甲を、


削れたのは、表層から数十cmの所までだった。


そこが、限界だった。

蔵人の、限界だった。

Cランクの限界は、ここまでであった。

これが、この世界の天井か。


鎧武者の声が、蔵人の耳に響く。


『流石は黒騎士様です。島津家の秘術。それをもってしても、ここまで押されるとは』

『円が熱を上げるだけあるわ。これだけの逸材、大和魂を忘れた公家に渡すのは惜しい』

『黒騎士様。私達と一つになりましょう。この国の未来の為に』


そう言って、鎧武者の腕が、徐々に、徐々に蔵人へと迫って来る。

まるで、抱き寄せるかのように。

愛おしい人を抱きしめようとするかのように。

そんな歪な愛に、蔵人は、

笑った。


「ふふっ」

『黒騎士様?いかがなさいました?』


円さんの声に、蔵人は武者を見上げる。


「確かに、今の俺ではここまでだ。だが、何れは突破してみせる。技巧と努力を重ねてな」

『黒騎士様!では、我々と共にされると』

「いいや。この試合を諦めたわけではない。何故なら」


何故なら、と、蔵人は笑う。

嗤う。


「何故なら、これはファランクスだ。俺は、1人ではない!」


そう言って、蔵人は後ろを見る。

そこには、


「カシラァアア!!」


一羽の、明るい小鳥が突っ込んできていた。

伏見さんはそのまま、ドリルの中に、蔵人の突き出す右手の横に、蹴りを入れる。

すると、立ち止まっていたドリルが、再び動き出す。

前へ、前へと。


「これが俺の、俺達桜城の異能力(たましい)だ!!」


蔵人のドリルが、

否、

蔵人達のドリルが、鎧武者のぶ厚い装甲を削っていく。

蔵人1人では限界だった天井が、今!


天上(リミット)突破ブレイクゥウ!!!」


ガリガリガコッ!!


蔵人達の連撃に、鎧武者の体はとうとう悲鳴を上げ、その巨体にドリルを食い込ませる。

そのまま、ドリルは鎧武者の体を貫通する。

ぶ厚い装甲を、次々とぶち抜いて、全てを貫通させてしまった。

武者の背中から飛び出す蔵人達。

2人はそのまま芝生を滑り、勢いが止まったところで立ち上がる。

立ち上がった、その時、


『黒騎士様』


声。

後ろから、鎧武者の声が。


振り向くと、そこには体に大きな穴を開けた鎧武者が佇み、その穴の向こうから、夏の青空が見えた。

鎧武者がゆっくりと、こちらを向く。

右手を広げ、こちらに向けていた。

蔵人を、取り戻そうとするように。

その開いた穴に、取り込もうとするように。


「カシラっ!」


慌てて、伏見さんが蔵人を守ろうとするが、蔵人はそれを止める。

彼女の肩を掴み、ただジッと、鎧武者を見上げる。

その鎧武者は、手を伸ばし、蔵人に触れ、


『黒騎士、様。お慕い、して、おりま…』


その言葉を言い切る前に、触れそうであった指が崩れて落ちる。

次で、手のひらが、伸ばしていた腕が崩れ落ちる。

肩が、体が次々と崩れ、支えられなくなった頭部がゆっくりと落ちていった。

その崩れた武者の中から、島津姉妹の姿が一瞬見えたが、直ぐに消えてしまった。


『ベイルアウト!彩雲1番、島津巴選手!そして、2番、島津円選手!島津姉妹がベイルアウトだぁあ!』


その放送の最中、蔵人達は体を正面へと戻す。

観客達へと、視線を戻し。

手を上げる。


伏見さんは両翼を上げ、喜びを爆発させる。

蔵人は右手を真っ直ぐに、天高く突き上げた拳を固く握り、そこから飛び出た人差し指で空を指す。

この世界の天井を指して、蔵人は吠える。


世界(ちじょう)限界(てんじょう)は、ねぇんだぜ!!」

「「「うわぁああああ!!!」」」


蔵人のその様子を見て、観客席は総立ちとなり、逆に彩雲の武者達は一斉に刀を取り落とし、頭を垂れた。

自軍の大将を討ち取られたのだ。

それを頭と祭り上げていた者達は総じて戦意を喪失し、直ぐに彩雲ベンチから空砲が虚しく響いた。


『彩雲側から棄権の合図が発せられました!ビッグゲーム3位決定戦、勝ったのは、関東王者、桜坂聖城学園だァあ!!』

「「「うわぁあああ!!!」」」

「「「お、う、じょう!お、う、じょう!」」」

「「「くっろきし!くっろきし!くっろきし!」」」


『正に、大、どんでん、返しぃい!!Sランク級のユニゾンが現れた矢先!桜坂の三騎士がそれを打ち破ったぁ!彩雲の島津姉妹を倒したのは、桜坂8番、久我鈴華。9番、伏見早紀。そして、この人!96番、黒騎士様。なんと、全員1年生達だァあ!!』

「「「うぉおおおお!!!」」」

「凄い!さすが、桜城の1年ズや!」

「早紀ちゃぁあん!」

「鈴華さまぁあ!!」

「「「黒騎士さまぁああ!!」」」


歓声が何時までも鳴り止まない中、蔵人と伏見さんは、駆け寄ってきた鈴華や海麗先輩、部長達に囲まれていた。

全員ボロボロで、如月戦よりも壮絶な戦いであったことを物語っていた。

それでも、誰もが勝利の栄光に瞳を輝かせ、歓喜に顔中を綻ばせていた。


観客席に視線を送る。

桜城の応援団が、感極まってスタンドで飛び跳ねている。

吹奏楽部は軒並み、楽器を高々と持ち上げている。


そんな中、観客席の最前列、選手関係者しか入れない所に、西風さんと頼人が並んで座っていた。

その彼の横には、怖いくらい真顔の火蘭さんが座っていた。

その顔は、何処か怒っているようにも見えて、

何処か、戸惑っているようにも見えた。


蔵人は彼女に向かって、拳を突き出した。

次は、貴女の番ですよ。

そう、思いを込めて。

「終わったな」


はい。決着が付きました。


「無理してユニゾンで対抗するかと思ったが、個の力で貫いたか」


いえ。1人ではありません。皆さんが助けてくれました。

桜城ファランクス部の勝利です。


「人の力とは、絆とは、足し算ではないのだな」


イノセスメモ:

ビッグゲーム3位決定戦。桜城VS彩雲。

桜城領域:52%、彩雲領域:48%。

試合時間5分11秒。彩雲側の棄権により、桜城の勝利。

ビッグゲーム3位:桜坂聖城学園。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今までの修行の成果、勝利と敗北の積み重ねが今の活躍につながっているところ。 もうすぐファランクス編から貴族編?に入りそうですが、ファランクス編からは特に仲間の成長もしっかり描写されているこ…
[気になる点] パクり方が下品。自分の作品に昇華せず、上っ面だけ使い回すのは見ていて気分が悪い。 [一言]  知恵と工夫で頑張るスタイルだった頃のほうが面白かった。  シールドのランク上限を硬さにしか…
[一言] ユニゾンだけが絆技じゃないと言わんばかりの決着 蔵人の名を持つ者が、島津を打ち破ったのか… 歴史の中では丸目蔵人佐長恵が島津家久の釣り野伏にやられて武将としては失脚したけど
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