122話~随分と酷い言いようやな~
えぇ~…。
宜しくお願い致します。
「イノセスよ。ここで土下座しても、運営には伝わらんぞ?」
伏見さんのお見舞いに行った次の日。
ファランクスの練習前に、蔵人は伏見さんと、鶴海さんを交えて、昨日の詳しい話を聞いた。
簡単にまとめると、伏見さんの件は、彼女がスランプに陥ったことが原因の様だった。
何時も競い合っていた鈴華との差が、大会が本格的に始まった途端に明確になってしまい、焦ってしまったのだとか。
ベンチに座る伏見さんが、少し俯きながらウーロン茶の缶を強く握る。
「ウチ、どないしたらええんか分からんくなってしもうて。練習しても、練習しても、追いつける気がせんくて。そんで、昨日は気が緩んでしもて、先輩の攻撃をモロに喰らってしもうたんですわ」
「なるほど。そう言う事だったのか」
本物の天才を前にして、今まで培ってきた自信が揺れてしまったのだろう。
蔵人だって思った事だ。伏見さんが迷うのは仕方がない。
あまりに眩しい光を見てしまい、彼女は自分の道を見失ってしまっている。
今はひたすらに走って、走り続けているみたいだが、果たしてその道の先に結果があるか分からない。
下手をしたら、今走っているのは道ではなく、ただ藻掻き苦しむ沼かもしれない。
努力が報われない。その多くは、努力する方向が違うから起こる事だ。
蔵人が伏見さんを真っ直ぐに見つめる。
「先ず言える事は、努力とは、しても必ず結果に結びつくものでは無いが、努力しないでいい結果は得られない物だ」
「昨日、翠にも言われましたわ」
あら?そうなのね。
蔵人は、伏見さんの隣に座る鶴海さんに微笑みかける。
「流石は鶴海さんだ」
「そ、そんな事ないわよ。良く言われている言葉を、偉そうに言っただけなんだから」
いきなり話を振られた鶴海さんが、慌てて謙遜する。
可愛らしい。
蔵人が鶴海さんを見ていると、伏見さんがふぅと息を吐く。
「あの~、すんません。2人でイチャイチャしとらんで、どうしたらええか教えてもらえませんか?」
「おっと、済まない。イチャイチャは抑えるよ」
「蔵人ちゃん!イチャイチャなんてしていないわよ!」
真っ赤なお顔を隠しながら、鶴海さんが抗議の声を上げる。
からかったつもりは無いのだがな。
蔵人は鶴海さんに謝りながら、ジト目を向けてくる伏見さんに向き直る。
「さて、伏見さん。実際に訓練に入る前に、状況を整理させて貰いたい。君の悩みは、努力してもなかなか鈴華に追い付けないから、どうやって訓練したら良いかを知りたい。と言う事だね?」
「うっ、そ、それで、おうとります。恥ずかしい事やけど」
伏見さんは言いにくそうに、顔を俯けて肯定する。
蔵人はそんな伏見さんに、違う違うと声をかけて顔を上げさせる。
「それは何も恥ずべき事ではないよ、伏見さん。寧ろ、強くなるために必要な要素が、既に1個揃っているんだ」
蔵人の言葉に、伏見さんが困惑気味な顔を上げる。
「それは、どう言うことです?」
伏見さんの問に、蔵人は1つ頷く。
「俺はね、こう思うんだ。努力ってのは登山みたいなものだと。登山ってのは、ただ山道を歩くだけじゃないんだ。事前に登る山やルートを地図なんかで設定して、登っている最中も、ちゃんと自分が目的地までの道を進めているか、地図を読んで、ルートを確認しなければいけない。そうしないと、気付いたら別の登山道や沢に迷い込んでしまうからね。登っていると思ったら、ただのトラバース…山をぐるりと周っただけなんて事もある」
「すんません、よう分からんのですが?」
回りくど過ぎたか。
蔵人は反省して、具体例を出す。
「つまりだ。伏見さんは今まで、どの山に登るか、どの登山道で行くかも考えずに歩いていた様な状況だったんだよ。それじゃあ山頂所か、登山道にもたどり着けない。けど、今伏見さんは登る山を見つけた。打倒鈴華というのが、先ず君が目指す頂だ」
「ああ、そういう事ですか。つまりは目標、みたいなもんでっか?」
伏見さんの言い換えに蔵人が頷くと、伏見さんは少し残念そうな顔をする。
「なんや、ウチの登ろうとしている山は、随分と小さい言いますか、低い山やなって思えますわ」
「寧ろ、その方が良いんだよ」
蔵人の力強い言葉に、伏見さんの伏せ気味だった目線が上がる。
「最初から富士山や槍ヶ岳を登ろうとしても、ルートを設定するどころか、ルートが見えてこないだろうからね。山のレベルが高すぎて、どうしていいか分からなくなっちゃうんだ。そうしたら、初めの1歩すら進めない。そうじゃなくて、今の伏見さんみたいに、先ずは身近な、出来そうな目標を立てるんだ。すぐそこの丘や、高尾山なら何となく行けそうな気がするでしょ?そういう所から少しづつクリアしていくんだよ」
伏見さんは、少し考える素振りをする。
「行けそうな山かぁ」と呟いているので、前向きに考えていると思う。
もう一息か。
「先ずは打倒鈴華。それが叶ったら、今度はそれより大きな山を目指せばいい。鈴華を踏み台にしてやる!それくらいの意気込みで、やってみよう」
蔵人がそう言うと、伏見さんは困った様に笑った。
「随分と酷い言いようやな」
言葉自体は非難している風だが、声色は随分と明るくなった。
本来の伏見さんらしくなって来たな。
彼女は手に持ったウーロン茶を一気に飲み干すと、光が戻った目をこちらに向けてきた。
「よっしゃ!ほんなら次は、登山ルートやな。今までも色々と、やってはみてはいたんですが…」
「では次に、自分に何が足りていないのかを確認しようか。打倒鈴華に足りていないのは、体力なのか、異能力の使い方なのか」
「体力は、あると思います。基礎練では負けたことないんで」
「では、異能力の方だね。伏見さんは鈴華と似た戦法を取っているけれど、マグネキネシスとサイコキネシスでは全く異なる性質を持っているだろうから、鈴華との差と言うより、伏見さんだけが持つ特徴を見つけていこう」
「特徴?ですか?」
伏見さんの問に、蔵人は頷く。
「異能力ってのは、同じタイプの異能力でも、個人で得意な事が異なっているみたいなんだ。例えば、俺の友達で西濱って人がいるんだけど…」
そこまで言って、蔵人は迷った。
この話は、伏見さんだけじゃなくて、西風さんや祭月さんにも聞いて欲しいと思った。
自分の個性を把握し、育てる事が出来れば、必ず大会でも役に立って行くはずだから。
ただ火や土塊を飛ばすだけの使い方をする人には、成ってほしくはない。
今この場に2人を呼ぶかどうか、一瞬迷った。
「どないしました?カシラ」
ふと見ると、心配そうに蔵人を覗き込む伏見さん。
いつの間にか、蔵人は考え込んでしまっていたらしい。
首を振り、再起動する蔵人。
「ああ、ごめん。ちょっと迷ってね」
「迷う、ですか?」
「うん。でも、そうだな…」
蔵人は、考える。
ジッと、目の前の伏見さんの顔を凝視する。
すると、視線を向けられた伏見さんが慌てだした。
「な、なんでっか?ウチの顔に、なんや付いとりますか?」
慌てて、鼻下や口元を拭く伏見さん。
蔵人は首を振る。
「いいや、そうではなくてね。伏見さん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願いですか?ウチに出来ることやったら」
「ありがとう。この訓練で学んだことを、後々西風さんや祭月さん、これから入る新入部員にも教えてあげて欲しいんだ」
そう。別に俺が一々教える必要はない。
蔵人は自分の案に、確信を持つ。
ただの生徒として聞くのでは無く、後で自分が先生に成るのだと思えば、訓練に対する本気度が1段階上がる。
覚えるのと教えるのじゃ、必要な情報量が桁違いになるからね。
伏見さんは元から真面目で、訓練もしっかりやってくれるだろう。
そんな彼女でも、心構えがしっかりしたら、より吸収力が上がってくれるだろう。
蔵人の提案に、伏見さんは不安そうな瞳を返す。
「う、ウチがですか?そう言うんは、カシラの方がええと思うんやけど」
「いや。伏見さんなら出来るよ。鈴華じゃ無理かもしれないけれど、君なら出来る。そうしてくれると、俺も助かるんだ」
蔵人が助かる。
その言葉で、伏見さんの顔がぱぁっと華やぐ。
「分かりました!ウチ、みんなの先生になれるよう、精一杯頑張ります!」
やる気いっぱいになった伏見さん。
本当に、真面目な生徒さんで助かるよ。
蔵人は彼女を連れて、まだ誰も居ない訓練棟へと移動した。
蔵人は先ず、伏見さんの異能力、サイコキネシスの現状分析をする。
この異能力の基本動作は、物を動かしたり、圧縮したりするもので、一般的には無属性の近距離攻撃タイプに分類される。
このサイコキネシス、イメージとしては〈腕〉である。
透明な腕が自分の周りに生えてきて、それを使って物を掴んだり浮かしたりしている。
伏見さんの場合、この腕は最大4本、重さは合計で200kg程度まで持ち上げられるらしい。腕が伸ばせる範囲は3m。
伏見さん自身が目視できる範囲であれば、ボタンの掛外しや綾取りなんかの細かい操作も出来る。
若葉さんみたいに、機械の隙間に腕を入れることは出来ないみたいだ。
ここから、伏見さんの異能力が持つ特徴を探っていく。
先ずは、腕の数が増やせないか聞いてみたが、4本が限界との事。
これは、以前にも何度か挑戦したことがあったらしいので、とりあえず保留。他の訓練をしている合間に、増やせないか何度か挑戦することで、今回は置いておく。
次は許容重量だ。
訓練棟にあったウェイトトレーニング用の重りを拝借して、何処まで持てるかを確認する。
結果…本当に200㎏丁度であった。
これも、何度か筋トレの要領で試しているらしいので、継続してもらうという事で保留。
次は、腕を伸ばせる範囲だ。
腕を限界まで伸ばしてもらい、長さを計る。
結果は、こちらも3mピッタリで…。
「ちょっと待って下さい。なんや、もっと行けそうな気ぃしますわっ!」
伏見さんが歯を食いしばり、ふんぬぅううっと気合を入れる。
すると…10㎝伸びた。
おお、これは、もしやこっち方面か?
伏見さんにも確認したところ、まだ出来そうな感覚があったのだとか。
「せやけど、攻撃できる範囲が伸びたかて、役に立つんやろか?伸ばした分だけ、腕の強度が下がってまうし」
伏見さんの疑念も最もだ。
試してみたところ、腕は伸ばせば伸ばす程、攻撃力が下がってしまう傾向にあった。
1m伸ばした状態では、蔵人の水晶盾すら破壊出来たのに、3mも伸ばすと、鉄盾も一撃では破壊できなかった。
これでは、牽制程度にしか使えない。
相手の後ろに手を回せば、奇襲が出来るかともと考えたが、伏見さんの目が届かない場所だと、命中率が極端に下がってしまった。
こんな状態で距離だけ伸びても、果たして使い物になるのだろうか。
それを伏見さんは危惧した。
でも、それこそが訓練という物だ。
「それを考えるのが、次のステップだね」
蔵人の言葉に、伏見さんは首を捻る。
「考える言うたかて、攻撃にも防御にも使えん力をどないせいっちゅうんです?」
「単純に威力がある技だけが、強い力ではないよ。それに、伸びる特性だけを使うのではなく、色々な特性と組み合わせて使う方法もあるからね」
蔵人の盾もそうだ。
防御力が高い盾だけではなく、透明性が高い盾、磁性体を持つ盾、柔軟性がある膜。これらを複合的に使用して、Aランクと渡り合っている。
蔵人がアドバイスをすると、伏見さんの頭から湯気が立ち上る。
「く、組み合わせでっか?うぐぅっ…ウチは、あんまそういうの考えるの、得意やないんやけど…」
伏見さんの頭がオーバーヒートしてしまった。
どうどう。落ち着かせて、クールダウンさせる。
クールダウンの間に、今まで使っていた技を、どうやって考え出したのかを聞いた。すると、
「サイコキネシスっちゅうたら、殴るもんやって、先生も言うとったんで」
どうやら、小学校の教育で教わったらしい。
でも最近は、他に手がないかと頑張って考えていたと言う。
それこそ、成績が落ちるくらいに。
…それは、不味いな。
「考えていた、と言うけれど、伏見さんはどうやって考えたの?考え方と言うか、使ったツールを教えてくれない?」
蔵人の質問に、伏見さんは明らかに慌てた様子で声を上げた。
「えっ!?つ、ツール?いや、そんなもん、無いですわ。ただこう、飯食う時も、寝る時も、どないしたらええかな~とか、どんなんやったら鈴華みたいに出来るんかな~って、頭の中で思い描いてたんですわ」
恥ずかしそうに言う伏見さんに、蔵人は眉を顰める。
ああ、良くあるパターンだと。
蔵人は訓練フロアの端に置いていた自分のバッグに歩み寄りながら、思う。
考え事をする時に陥りやすい事の1つに、ただ無作為に”考えるだけ”を行ってしまう事がある。
どうしよう?どうしたら?と、何も見えない暗闇に答えを求め、手探りを続けてアタフタしている。
これでは、なかなかいい考えなんて思いつかない。
考えないといけない!と言うプレッシャーも追加されていれば余計にそうだ。
無から有を生み出そうと、無理して力んでいる状態だ。
こういう時どうしたら良いか。それは、
「伏見さん、これを」
「これは…CD?いや、DVD…やろか?」
「そう、DVD。中身は、今話題の映画。アメコミヒーローが活躍する、シリーズ1作目だよ」
「えっ?映画?」
唖然とする伏見さんに、蔵人は力強く頷く。
そう。これが、打開策。
別に映画だけが打開策と言う訳では無い。
こういう考えに行き詰まった時は、ヒントを得ようと他者やメディアを活用して、情報収集した方がいい。
それは別に、本や画像じゃなくても、実施に体験してみるのも良いだろう。
バンジーやスカイダイビングは難しくとも、水泳や遊園地などでも色々と経験出来る。
出来れば未体験な経験の方が刺激を受けやすいけど、散歩していつもの風景や人間を見るだけでも違うだろう。
動くことで、脳に血液と共に酸素が行き渡り、良いアイディアが生まれやすくもなるからね。
「つまりは、色んな体験、経験をして、その中からヒントを得て、自分の物にしていくんだ」
無から有は生み出されない。
何にもない空間でウンウン唸るより、色々見聞きして考えた方が、効率良く思考する事が出来る。
大事なのは、常に頭の片隅でヒントを得ようと渇望すること。
やりたい事忘れて映画を楽しんだら、ただの休憩になっちゃうからね。
「カシラも、こういうモン見て色々考え付くんですか?」
「うん。そうだね。そういうのも、いい刺激になるからね」
そう言って微笑む蔵人だが、実際は違う。
蔵人の場合、今までの経験が物を言っている。
色んな人に会い、様々な場所に行き、そこで色んな攻撃を見たり、受けたりしている。
そういう経験が豊富だから、ただ考え込んでいる様に見える中でも、頭の中では忙しく動き回っている。
記憶と言う箪笥の引き出しを、あっちこっち引っ張り回しているのだ。
でも、伏見さんの場合、まだ中学生である。
今まで受けてきた経験だけで考えるよりも、外から刺激を受けた上で考えるのがベストだろう。
そう思う蔵人は、彼女にDVDを渡した。
映像の方が、よりイメージし易いだろうと言う考えもあって。
「分かりました!ウチ、家で見てきます!」
理解できたようで、伏見さんは気合を入れていた。
…出来れば、半分遊び感覚で見て欲しいのだがね。
脳をリラックスさせた方が、経験とアイディアを上手く結び付けてくれるものだから。
そう言う訳で、その日は満足気に帰った伏見さんであった。
だが、次の日にはまたしても事件が起きてしまった。
いや、怪我とかではない。
ただ、午前練習に出てきた伏見さんの顔が、ゲッソリとしていたのだ。
顔が若干青く、目の下にクマさんがいるんだけど、もしかして寝不足かな?
渡したDVDは1枚で、せいぜい2時間程度だったんだけど、そいつのせいなの?
「伏見さん、大丈夫かい?」
「ああ、カシラ。すんません。大丈夫ですわ。ただ、昨日から寝れてへんだけですわ」
「ええっ、どうして?」
蔵人は慌てた。
貸したDVDのせいか!?何をした、蜘蛛男!
蔵人が、貸したタイトルの赤タイツ男に睨みを利かせていると、伏見さんが事情を説明してくれた。
「その、カシラから借りた映画で、色々思い付いたんで、他にも似たような作品見たんですわ。ワイヤーアクションっちゅうんが良さそうやったんで、そう言うの仰山使うとる奴で探して、良いアニメがあったんですわ。で、それ見とったんですけど、内容が結構グロくて、母親や友達がどんどん巨人に喰われていくん見てたら、夜に眠れんくなってしもうたって訳ですわ」
ああ、あのアニメか。
蔵人は理解して、彼女の顔を覗き込む。
疲れきっているものの、眼光ギラギラな少女の様子に、何か掴んだ事を悟った。
「良いアイディアを掴めたみたいだね」
「勿論ですわ!今からウチの技見たって下さい!あの兵長バリのワイヤーアクション、見せたるさかい!」
蔵人の問いに、太陽が輝くような笑顔を返す伏見さん。
うん。とっても元気に見える。
だけど、
「まぁ、待ちなさい」
元気そうに見える伏見さんだったが、蔵人は抑えた。
こんな徹夜明けバリバリなテンションで練習させたら、確実に怪我をする。
蔵人は部長に言って、その日伏見さんは帰ってもらった。
明日しっかりと見せてもらうから、今日はゆっくり寝てね?と厳命して。
そして、次の日から、そのワイヤーアクションを見せて貰った。
縦横無尽にフロアを飛び回る伏見さん。
彼女は、周囲に浮かせている蔵人の盾を使い、サイコキネシスの腕でその盾を掴み、腕を縮める事で、機動力を生み出した。
「……っと、あっ、しまっ!」
偶に、掴み損なって転倒したり、壁に当たりそうになるけれど、その度に蔵人の膜クッションを搭載した盾が受け止めているので、怪我はしていない。
蔵人としても、仲間を守るいい練習となっている。
でも、次第に伏見さんがミスる回数も減っているので、蔵人の練習にはならなくなりつつあるが。
それから数日が経つ。
今日も桜城ファランクス部は、各所から叱咤激励の声が飛び交い、活気あふれる練習に励んでいる。
全国大会に向けて、部員の熱は、日増しに熱く大きくなっていた。
その中でも、
「よっしゃ!次や!」
伏見さんのやる気に満ちた声が、一番大きく響いていた。
はい。伏見さんの奮闘記でした。
「大方これで、逡巡する者は出揃ったか?」
そうですね。これにて、迷う子羊はいなくなりました。
結局、迷われていた子は、
美原さん、久我さん、鶴海さん、日向さん、伏見さん、でしたね。
「主人公も、迷っていたな」
それは、いつもの事です。