思考の縁で
あの日、女神様に見抜かれていたと気付かされた日から3日経っている。リーゼロッテは、何もする気が起きなくて、ずっと寮の自室の布団にくるまっていた。ご飯もあまり食べる気になれなくて、少し痩せてしまった。
「エリネティーシャ、エリネティーシャ」
ふと思い出したかのように女神様の名前を呟くと、受け入れがたいとでも言いたげにリーゼロッテは布団に潜った。
今日も行く気になれない。両親に気づかれたら叱られてしまうと知っているけど、それでも無理だった。
そんな風にぼぅ、としていると、唐突に鍵が開けられる音がした。驚いている間に、ドアノブが回った。
「やつれたわね、リーゼロッテ」
それはエリネティーシャだった。
「ーー今更、なんの用ですか?」
つい冷たい言葉が出てしまった。やってしまった、と顔を青くしたけど、エリネティーシャはそんな事気にしてないようだった。
「何も食べていないようだったから、ご飯を持ってきたのよ」
確かに、エリネティーシャの手中には、トレイに乗ったスープがあった。不思議なもので、スープの優しい香りを嗅ぐと食欲が刺激される。ぐぅぅ、とお腹が鳴ったリーゼロッテに、一つ苦笑をした後、リーゼロッテのいるベッドに腰を落とした。
飢えを感じながらも、リーゼロッテは気になった事を聞いてみた。
「そういえば、何故めが、ーーエリネティーシャ様は入ってこれたのですか?」
「鍵を貸してくださいと頼んだら快く貸してくださったわ」
ガバガバなセキュリティに絶句していると、エリネティーシャは付け足した。
「皆、貴方がこんなに休むから心配してるのよ」
「なる、ほど」
少し照れくさくなる。ベッドにリーゼロッテも腰掛けると、エリネティーシャに手を差し出した。
「何、その手は」
「え、そのスープ下さるのではないのですか?」
ため息を一つつくと、エリネティーシャはリーゼロッテの口元にスプーンですくったスープを近づけた。
「自分で食べれますよ?」
「いいから享受なさい」
でも女神様にしてもらうだなんて、そう思ったリーゼロッテの心中を知っているかのように、エリネティーシャはリーゼロッテを見据えた。
「リーゼロッテ、わたくしは信者にではなく、友人であるリーゼロッテに食べさせるのです。だから、恥ずかしいという感情を持つならまだしも、申し訳ないと考えるのはあまりにもお門違いですよ」
「……はい」
大人しく雛鳥のように口を開けると、スープが入ってきた。
「美味しいです」
「良かった」
こうしてお皿が空になるまでの間、餌付けは続いた。




