好きな物
「リーゼロッテの好きなものって、何?」
教会のすぐ近くの草原に腰をおろし、そう女神様は問うた。
「そうですね、私はこの国で行われるお祭りが一等好きです」
「あら、そうなのね」
「はい、ランタンを空に飛ばすでしょう? それがとても綺麗で、一等好きなのです」
ふーん、と頷いてから、女神様はベールで顔を隠した。
「では、いつか一緒にいきましょう。そのお祭り」
きょとり、とリーゼロッテはベールで顔を隠してしまった女神様を見つめてから、ふはっ、と声を漏らした。
「無理ですよ。だって貴方様は女神様ですから。畏れ多くて私には無理です」
瞬間、息が詰まったような音が聞こえた。女神様からだ。何か喉に詰まってしまったのかと顔を覗き込んだが、ベールを顔に巻き付けていてその表情は分からない。
「ーーそうです、ね。無理を言いました」
暫くしてから聞こえたその声は、ほんの少し震えてる気がした。
女神様だって、ランタンを見てみたかったのかもしれない。それに漸く気づいたリーゼロッテは、慌てたように言葉を重ねた。
「私は一緒には行けませんが、好きな方と、行ってみたらどうでしょう? ここから東に進んだ丘の、大樹の下が、一番綺麗にランタンが見えますよ」
ベールから、女神様が顔を出した。リーゼロッテがにこにこと笑みを返すと、女神様もほんの少し口角を上げてくれた。
リーゼロッテは、鈍感であり愚鈍な信者だった。




