剣を持つ理由
あの日から、エリネティーシャは目を覚まさない。リュートは、証拠が何もなくて捕まえる事が出来なかった。『廉潔』を授かっている彼は、あまりにも周りからの心象が良かったからだ。
段々白くなっていくエリネティーシャに、不安は尽きない。
「やあ」
不快な声に振り向くと、リュートが立っていた。眉を潜めるリーゼロッテには目もくれずエリネティーシャに触ろうとする。
「触らないでください」
そう言って手を払うと、肩を竦められた。
「君の事は嫌いだったけど、気は合うと思ったんだけどな」
「気の所為でしょう」
リュートはもう一度笑った後、リーゼロッテに問かけてきた。
「でも君だって、最初に『辞める』と言われた時、少し死んだら良いと思っただろう?」
「いいえ。私が死ぬつもりでした」
素早いリーゼロッテの返しに、少しリュートは驚いたかのようだった。
「何故? もう彼女は女神様じゃない、と言ったんだよ。腹立たしくないの?」
もうこの人とは対話は無理だと、リーゼロッテは悟った。だから、リュートに向き合う。
「私と、決闘しましょう。私が勝ったらもうエリネティーシャ様に近づかないで。貴方が勝ったら私が身を引きます」
「へぇ、いいよ」
『女神様を愛する者』と『エリネティーシャを愛する者』の戦いが、今火蓋を切った。




