結婚式
「ーーこれが、わたくしの大切な思い出。貴方の事が好きになった記念日」
話を聞き終わって、胸の高鳴りが止まらない。両思いだったという事実に、頬が火照ってしまう。
「ねぇ、リーゼロッテ」
「……はい」
さらり、とリーゼロッテの緑の髪にエリネティーシャが優しく触れる。くすぐったくてリーゼロッテは身動ぎした。
「そろそろわたくしの事、『様』は無しで呼んでほしいわ」
「へ、ぁ」
額と額が合わさる。至近距離で、目があった。リーゼロッテは、暫し口をぱくぱくした後に、小さくその名を呼んだ。
「エリネティーシャ……」
「はい、リーゼロッテ」
ふわりと花が綻んだような笑顔に、キュンと心が鳴いた。思わず、こんな言葉が口から漏れた。
「エリネティーシャ、結婚式しよう……?」
「結婚式」
「うん、ずっと一緒にいる約束」
一瞬だけ、エリネティーシャも泣きそうな顔になった後、もう一度笑って何度も頷いた。
「えぇ、しましょう。結婚式」
その言葉にホッとして、リーゼロッテはエリネティーシャの手を取った。ポケットの中から、さっき射的屋で取った指輪を取り出す。
「病める時も、健やかなる時も、ずっと、大好きだよ」
「わたくしも、ずっと貴方が大好きですわ」
薬指に、はめ込んだ。白くて細い指に、青いガラス細工がよく映える。
リーゼロッテ達は見つめ合った後、ゆっくりとベールをめくった。エリネティーシャの僅かに赤らんだ顔が露わになる。そして、そのまま2人は唇を近づけあった。
目を瞑って、近づける。後もう少しできっと重なる。
「あ……」
だけどそれは叶わなかった。エリネティーシャが唐突に声を上げてチラリと目を開く。
ーーすると、エリネティーシャの腹が真っ赤に染まっていた。
「エリネティーシャ!」
ゆっくり崩れ落ちるエリネティーシャを抱きとめる。なんで、どうして。そんな考えが尽きない。頭の中をぐるぐるする。
「大丈夫。女神様だから」
この場に似つかわしくない、能天気な声が聞こえて顔を上げると、そこにはリュートがいた。手には真っ赤に色づいたナイフを所持している。
「何を言ってるんですか! エリネティーシャは人間です」
「いいや、女神様だよ」
平行線で話に終わりが見えない。そんな事を考えているリーゼロッテには目もくれずリュートは語りだした。
「初めて会ったときから、彼女は僕の女神様なんだ。柔らかくて美しくて、とても高潔な。だから君みたいなゴミと、嫌、誰とも好きあったりしちゃいけないんだよ」
「だから刺したと?」
「うん、だって彼女がまだ女神様のままだったら死なないだろう? ……だけどもし死んじゃったら、女神様から墜ちたエリネティーシャ様を救えるって事だ。とても喜ばしい」
理解が追いつかなくて頭が焼ききれそうだ。
でも今はそんな事よりもエリネティーシャだ。リーゼロッテは、あまり負担がかからない様にエリネティーシャを抱えた後、勢いよく走り出した。




