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祭の日

「すごい賑わいね」

 きょろきょろと屋台と人混みを見るエリネティーシャは何時もより幼気で、キュン、とリーゼロッテは少しときめいた。

 今日はお祭りの日。二人で来ていた。エリネティーシャは、ベールを被っているとはいえ天性のオーラは消せないのか、物珍しそうに遠目から見られている。

 そうしてゆっくり二人で歩いていると、お祭りに行くと必ず買う屋台が今年も並んでいた。

 瞳を輝かせているエリネティーシャに目を離さないようにしながら会計を済ます。買ったものを持って近づくと、いい匂いがしたからかエリネティーシャがこちらを向いた。

「それって……」

「はい、串焼き肉です。一本どうぞ」

 手渡されたエリネティーシャは、少し動揺しているようだった。もしかしたら串焼き肉を食べたこと無いのかもしれない。手本を見せるようにかぶりついて見せると、エリネティーシャも思い切ったように齧りついた。

 ジュワリ、と肉から汁が溢れ出す。香辛料が聞いていて、ハフハフとしながらも食べる手が止まらない。

「ふふ」

 食べ終わって、エリネティーシャは笑みを漏らした。

「わたくし、こんな食べ方したの初めて。野蛮で下品なのに、とっても美味しいわね」

「そうですね」

 串をゴミ箱に捨てて手を拭くと、リーゼロッテはエリネティーシャの手を取って走り出した。

「行きましょう、エリネティーシャ様」

「えぇ!」

 果実飴屋。串焼き屋。金魚すくい。全てが新鮮に映るのか視線が忙しない。それを微笑ましく見つめていると、不意に手を引っ張られた。

「リーゼロッテ、銃ってあんな小さな子供でも使っていいの?」

 エリネティーシャの視線の向こうには、射的屋があった。

「あぁ、あれは玩具の銃ですよ。コルクの玉を詰めて玩具等を撃つんです」

「すごいわね」

 そう言うエリネティーシャは今にもやってみたいという顔をしていた。一つ苦笑を浮かべる。そして手を引いて射的屋の前に来た。

「2人分、お願いします」

「あいよ」

 お金と引き換えに、銃1丁とコルク玉が5個渡された。恐る恐る玉を詰めているエリネティーシャの隣で、祭りの常連であるリーゼロッテは慣れた手付きで打つ準備を整える。

 狙いを定めて引き金を引くと、小さなお菓子が落ちた。

「ーーと。まぁ、こんな感じです」

「すごいわね、リーゼロッテ」

 素直に褒められるとくすぐったい。リーゼロッテはエリネティーシャの分のコルク玉も詰めてあげた。

 少しよたつきながらも引き金を引くと、小さな玩具に当たった。しかし当たりどころが悪かったのか落ちる気配はない。エリネティーシャは頬を僅かに膨らませていた。

 そんな調子で撃っていると、最後の玉で何か言葉が書かれた箱に当たった。

「お、嬢ちゃん当たりだよ。この中から一つ欲しいの持ってきな」

 リーゼロッテの前に差し出された箱の中には、可愛い指輪がいっぱい並んでいた。陽の光にあたってキラキラと輝いていて、乙女心を刺激されてしまう。

「でしたら、これください」

 それは、青の花のようなガラス細工が乗った指輪だった。煌めきがエリネティーシャの瞳に似ていて、つい心惹かれてしまったのだ。

 エリネティーシャも最後の玉を撃ち終わったらしく、戦利品を持ちながらリーゼロッテ達はお暇した。

「わたくし、結局お菓子1つしか取れなかったわ」

「初めてにしては上手ですよ」

 そんな取り留めの無い会話をしていると、もう太陽が沈みかけている事に気づいた。


「エリネティーシャ様、行きましょう」

「何処へ?」

「一等ランタンがきれいに見える場所です」


 好きな人と一緒に、大樹がそびえ立つ丘の上に、少女たちは向かった。


 後をつけている者が居るとも、知らずに。



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