小さな約束
「エリネティーシャ様、誰彼構わず信用してはいけませんよ」
「リーゼロッテ、わたくし貴方より先輩なのだけれど」
あんな男が好きな人の言う事は信用が出来ない。その意思を込めて首を振って見せると、困ったようにエリネティーシャは眉を下げた。
その顔に罪悪感を刺激されて肩に額をグリグリと押し付ける。「前髪が崩れるわよ、リーゼロッテ」そう冷静に返された。
「私、エリネティーシャ様の事が本当に好きになったのは、実は最近なんです」
いきなりこう話し始めると、エリネティーシャの肩が跳ねた。
「私が、試験で3位で手紙でまた両親に怒られて落ち込んでいるとき、エリネティーシャ様に『わたくしは1位です』て言われて、私一瞬憎んでしまったんです、貴方の事」
エリネティーシャを抱きしめると、じんわりと暖かさが伝わってくる。
「けど、その次に『貴方はわたくしのシスターなのですから、つまり貴方はわたくし。わたくしは貴方。なので貴方も1位です』って言われて、その時私はエリネティーシャ様の事が好きになったんです」
『1位』だと言われたことだけじゃない。リーゼロッテを慮ってくれた、それが何よりも嬉しかったのだ。そしてきっと、この時リーゼロッテはエリネティーシャにーー恋に落ちた。
今までは、信仰心によって見えなくなっていた恋心。自覚すると、エリネティーシャが今もリュートの事を考えているのではと不安でたまらなくなる。
「エリネティーシャ様、好きです」
「……わたくしも」
ぶわりと顔に熱が集まる。不意打ちのその言葉に顔を赤くしていると、綺麗な碧眼と目があった。
「リーゼロッテ」
名前を呼ばれる。声が出なくて首を傾げて見せると、少し緊張したような顔でエリネティーシャは話しかけてきた。
「あともう少しで、お祭りがあるでしょう? 一緒に、行きたいのです、リーゼロッテと」
「……いいんですか?」
リーゼロッテはエリネティーシャの想い人ではないのに。そんな心中知らずか、エリネティーシャは不安そうにリーゼロッテを見つめている。
自分の事が想い人では無いと知っている。だけどリーゼロッテは、それでも好きになった彼女と一緒にいたいと思った。
「私も、行きたいのです。貴方とお祭りに」
指切りげんまん。幼子のように指を重ねる少女たちは、淡い、一時の夢のような笑顔を浮かべていた。




