女神停止宣言
この世界には、一人に一つずつ『祝福』を授かっている。
ミイシュルト学園には、女神様がいる。
リーゼロッテが敬愛する、誰よりも尊く愛おしい女神様。熱心な彼女のシスターであるリーゼロッテは、講堂で皆の前で話し始めようとする女神様を、つぶさに見つめていた。
太陽に照らされていなくても輝くふわりと柔らかい金髪と、十字が浮かんだ青の瞳は、空気に溶けてしまいそうな柔いミルク色の肌によく似合っている。
「おはようございます、皆様」
静謐さを秘めているが、暖かさを含んだ声に、周囲から「ほぉ……」とため息が漏れる。リーゼロッテは、胸の前で手を組み、既に涙ぐみながら声を聞いている。
白いレースに身を包んだ女神様は、顔を覗かせてゆったりと笑い、そんな皆に声をかけた。
「ーーわたくし、今日で女神様辞めますの」
一瞬の、静寂。
その次に起こったのは、どよめき。疑問。
「なんで、女神様……」
リーゼロッテも例に漏れず、さっきとは違う涙を流しながら、女神様ーーエリネティーシャを見た。女神様はさっきと変わらず慈愛の笑みを浮かべている。
この日、女神様は自らの女神としての権能を停止することを宣言した。




