「ポーカーフェイス」に隠した手放す決意
君への想いは胸の内に
鍵を掛け、他の誰にも見せはしない
君の一番の笑顔を引き出したのは僕じゃない
悔しいけれど、僕じゃない
君のその笑顔がとても眩しく、また、とても綺麗で
蕾を綻ばせ、花開くように美しく咲いた君を
たとえ陰ながらでも、ずっと見ていたいと僕は願った
そばにいられなくてもいい
むしろ僕がそばにいてはいけない
あの男の横で君が笑うなら
笑えるなら
ずっと笑っていてくれるなら
喜んで君を手放そう
頭で納得しても伸びてしまう自分の腕を掴み引き止め
君のために僕が出来ることを
僕にしか出来ないことを
君に相応しいのは僕じゃないから
君が君の幸せを手に入れられるように
君を失っても、僕の中には君があり続けるだろう
思い出の中の君と、遠くであの男に笑顔を見せる君を
深く、こよなく、ずっと愛している
幼い日の出会いは物語みたいな偶然ではなかった
両家によって組まれた政略的なもので
家の財力や国への影響力を鑑みたゆえのこと
それでも僕は運命を感じたんだ
可愛い君、大好きな君、心から愛しい君
けれど僕はそれを君に上手く伝えられなかったから
伝える術を持てないまま
線を引かれ、壁を築かれ、堀を作られて
いつしか君は軽く口角を持ち上げる淡い微笑に
それでも見ていられるだけで幸せだった
そんな表情の君でも、僕はただそばにいられるだけで
笑っている君が好きだ
僕に見せるのとは違う、心からの笑顔
君の幸せを願うから
僕は君の社交界での評判を地に落とすことを決めた
あの男に君が届くように
君とあの男が、手と手を取り合えるように
彼女に罪悪感はあるけれど
でもそれはきっとお互い様
彼女は高位貴族に、僕はより強い魔力を未来の子に
君と僕とが政略だったのと同じこと
君が彼女に変わっただけ
真実の愛を見つけてしまったのは君の方
さあ、愉快な夜会の始まりだ
今はまだ、君は僕の婚約者
婚約者の君に別れを告げよう
さあ、婚約破棄を始めよう






