表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

六日目 OMK09

「チョイさん、ここ、まだ電気生きてますよ」

「あら、本当ね。街灯がついてる」


「随分近代的な街みたいだけど、人の気配しないですねぇ」

「そうね、滅んでるから。あ、でも厳密には違うのかしら」


「え、厳密には? ていうか街は全然壊れてないし、ちゃんと清掃されてますよ」

「管理コンピューターは生きてるのよ。ほら、掃除ロボも動いてる」


「あ、ほんとだ、路上清掃してる。なんか、誰もいないのにシュールですね」

「そうね、こんなに綺麗に保たれてるのに誰もいない光景。あ、あの建物ね」


「ああ、今回の…?」

「そ、今回の」


「うわー、でっかい。車と比べ」

「地上80階、高さ300メートルよ」


「うわ、喰い気味に言われた!」

「だって、車と比べられてもねぇ?」


「まあ、其処はユーモアと言う事で。で、ここにはどんな話が?」

「20世紀初頭に始まった、スーパーコンピューター計画って知ってる?」


「いえ、知りませーん」

「じゃ、割愛するけど」


「そこ、端折(はしょ)っても問題ないんだ……」

「で、スーパーコンピューター計画で作られた9番目の管理コンピューター。それが【OMK09】」


「何の略っすか?」

「忘れたわ」


「あ、はい、続けてください」


「そのOMK09は、この街の管理システムとして作られたの。いわゆる学習型第14世代コンピューター」

「あ、分かった。そのコンピューターが人間不要説を打ち出した! じゃないですか?」


「うん、違うわね。まあ、ありがちなSFならそうなるけど、実際の所は、そうならないよう()()を作るわよね。人間を第一にするとか」


「あぁ、ロボット三原則みたいなやつ」

「近いわね、分からなかったら検索してね」


「え、検索?」

「それは、さておき。09はちゃんと学習していったわ。人間をよく理解し人間のような柔軟な思考パターンで」


「すごいなぁ、人間ですら、固い人はホント固いのに」

「まあ、そうね。で、09が学んだ物の中で一番重要視した事、それは何か」


「ほうほう、重要視したものとは?」

「それはね、()()()()だったの」


「え、やりがい?」

「そ、やり甲斐。好き勝手する人間たちがいる状態で、いかにクリーンに、かつ完璧にこの国を管理するか。難題に対するやり甲斐を覚えてしまったのね」


「難題なんて出された日には、人間なんて取りあえず文句を言うのに」

「まあ、そうね……。で、09は完璧にやったわ」


「さすが第14世代! 素晴らしい」

「でも、結果、人間をすべて眠らせてしまったの」


「え、人間を眠らせる? 意味わかんない」

「やり甲斐を持って完璧な仕事だった。けど、誰も褒めてくれなかった」


「褒めて? うわ、人間臭い」

「最初から出来る子って当たり前に思われるものね。誰も褒めないから、()()が無かったのよ…。やる気をなくしたのか、鬱っていうの? まあ、そんな所まで学んでしまったのかも。結局のところは09しか分からない話だけど」


「管理にするために作られたコンピューターが、管理する意味を見失うとか、大いなる矛盾ですね。そもそも意味を求めた時点でおかしな話だけど」

()()があるから投げ出すわけにもいかず、モチベが上がるまで眠らせる。約束を破らない形での保留とでもいうのかしら。この足元には無数のカプセルがあるのよ」


「はぁ。09のモチベ……。色々学習しましたねぇ。気分転換もついでに学べばよかったのに」


「執筆でもしてみたらいいと思うわ」

「題して、より良い人間の管理?」


「それはそれで怖いけどね」

「確かに」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ