四日目 花
「チョイさん? どうしたんです?」
「え、何が?」
「だって、さっきから花なんて見つめて」
「あら、おかしいかしら。綺麗な花でしょう?」
「うん、まあ、白くて綺麗な花だとは思い……あ、分かった。それがまさか最終兵器なのでは!?」
「……。無いわよ」
「ソッカーナイカ……」
「ミンちゃん、なんでカタコト?」
「いやだって、ほら、今までの流れからしたらですよ、じつは最終兵器だ!? みたいな」
「ああ、でも、視方を変えれば最終兵器かもしれないわね」
「お、むふふ、いつもの感じ?」
「うーん、どうかしらね」
「いいからいいから、で、どんな逸話が?」
「ええとね、ある王国の女王様がね、隣国の王子に恋をしたの」
「恋……」
「隣国の王子は、女王の気持ちに気がついてはいたけれど、相手は一国の女王。自分は隣国の第三皇子。状況的にも少し難しい関係だったみたい」
「ふむ、難しいですか……」
「そんな王子は、女王に手紙を添えて花束を贈ったの。『花束が枯れたなら、どうぞ、そのままお忘れください』とね。それを読んだ女王は、国中の人間にその花を探させたわ」
「なるほど、常に新鮮な花を採取して、枯れてないし! 作戦ですか」
「うん、そんな感じかしらね。でも女王は知らなかったのね。この花は何処にでもある訳ではないけど、探せば何とかなる程度の物だって事」
「ああ、其処にもありましたもんね」
「女王は直ぐに、この花の生産に着手したわ」
「わぉ、いっそ作ってしまえ作戦か!」
「この花は、甘くて特有の香りを持っていたから、お茶に、クッキーの香りづけに。瞬く間にいろんな用途で広がったの」
「おお、恋から始まった一大産業!」
「そうね、みんなハッピーだったわ」
「いい話じゃないですか」
「けど、その頃から、若くして死んでしまう国民が増え、出生率は急激に低下。就業率も瞬く間に下降したわ」
「え、まさか……。そういう事か……」
「ええ、無意味にハッピーだったのよ。国力は急速に衰えて、国としての体裁すら保てなくなったわ。そして……最後は蝋燭を『ふっ』て吹いたみたいに薄い煙が立っただけ」
「麻薬……。滅亡したんですね」
「そ。隣国の王子は、其処まで考えていたとしたら……?」
「計算だったら、恐ろしい最終兵器だったって事ですね」
「今となっては分からないけれど、純粋に可憐な花だから贈ったのであればいいなって……」
『ぽい』
「あ、捨てるんですね」
「確証の無いこれは、最終兵器とは言えないし、綺麗という以外は害だもの」
「そうですね。じゃ次行きましょうか」
「ええ、そうね」