三日目 経典
「チョイさん。この島、なーんにも無いですね」
「そうね。昔は豊かな国があったわ。火山にのまれてしまったけど」
「海にぽつーん。見当たす限りの岩盤。ホントなんにもないけど……なんか意味あるんですか? ここ」
「恒例の、此処にも最終兵器があったのよ」
「うわぁ、やっぱりぃ。あ、でも火山とその最終兵器は関係ないですよね? だって火山を噴火させるなんて、人類にはとても無理でしょ」
「ここの文明レベルでは無理ね。裕福で大らかな国だったんだけど」
「滅びちゃったらねぇ……。で、チョイさん、此処にはどんな最終兵器があったんです?」
「この瓦礫避けたら有ると思う。ほい!」
『バァァン』
「わー、チョイさん力持ちぃ。10トンくらいの瓦礫が、ぶっ飛びましたよ!」
「なんか説明っぽいけど、ま、いいわ。あったあった。この石板」
「石板って、一体何が書いてあるんです?」
「この国に流行った宗教の、いわゆる経典。教えが彫り込まれているわ」
「経典が、最終兵器?」
「そうよ。『良い行ないをすれば来世が開かれ、来世でも幸せになれる』とか書かれてるわ」
「え、スタンダードな、いいこといってる教え。チョイさーん、それのどこが最終兵器?」
「とてもいい国民だったみたい、凄くみんな良い行ないをしたわ」
「う? うん。で、どこが、以下略でーす」
「火山が爆発したのよ」
「はい、それはさっきも聞きました」
「うん、言ったわね。で」
「で?」
「みんな凄くいい行いをして、教えの通り来世に行けると、だれも疑わなかったの」
「あ、もしかして……」
「ええ、本来あるはずの、死への恐怖、今への執着すら、なくなっていたの。……そして誰も逃げなかった」
「いや……。うん、考えものっすね」
「そこまで行くと、洗脳なのよね」
「なるほど……。うん、最終兵器ですね」