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第7話 言葉の壁とお持ち帰り

タイトルだけ見ると何かヤバイ内容なのか!?と思いそうですが当然の如く『勘違い』です!

◇リリィ視点◇


 私にとって異世界である日本。

 そこで最初に出会い成り行きで討伐したカッパーゴブリン。

 その骸は瞬く間に風化して崩れ去ってしまった。


 ただ、切り落とした腕だけはミイラ化してその場に残った。

 これは何かの研究とかに使えるかもしれないわね。

 とりあえず拾い上げるとマジックポーチに収納する。


 そして男に近づいていく。

 ちょっと怖いけれど怪我をしているのなら放っておくわけにはいかない。


「河童をあんなにあっさりと倒してしまうなんて君は一体……?」


 どうやら額の傷は大したことがなさそうだ。

 とりあえず手をかざし治癒魔法を使用する。

 同世代の中では平均点の治癒魔法だがこれくらいの傷であるなら回復できるだろう。


「これは……治癒魔法か!?あ、ありがとう」


 今、『ありがとう』という言葉が聞こえた。

 確かお礼を言われた時の言葉があったわね。

 こういう時にきちんと返すのが礼儀正しい子のすること。


「いえいえ、【同意いたしまして】」


「え?同意?えっと……」


 何やら男は困惑している様子だ、

 なるほど、私の華麗な日本語に驚いているのね。


「と、とりあえず自己紹介をするよ。俺の名は東雲龍琉(しののめたつる)だ」


 シノノメ・タツルと名乗った青年は小さな紙きれを差し出してきた。


 何でも屋 東雲堂

 東雲龍琉


「――!!?」


 何よこれ。古文書?

 半分以上読めない。

 かろうじて『何でも屋』は読める。

 確か冒険者的な職業だったかな?

 日常の簡単なお手伝いクエストを主にこなしていく職業らしい。

 その後の文字は……


「えーと、ひ、ひがし……く、くも……」


「あーいやそれで『しののめ』って読むんだが……まあ、珍しい読み方だとは思うが」

 

「!!!」


 何という敗北感。

 あれだけ勉強したのに人の名前ひとつ読めないというの!?

 いや、待って。一度冷静になろう。

 この人の名前が特殊なのかもしれない。

 そうよ。そうに決まっている。


「ところで君は……間違っていたら済まないが『異世界人』だよね?」


 この男、異世界人を知っている?

 そう言えば治癒魔法を使った時もあまり驚かなかったっけ。


「仕事柄色々な人に出会うんだけどその中には異世界出身の人もいてさ……えーと君は転生者、かな?」


 転生者とは元居た世界で命を落とし生まれ変わった人の事を指す。

 私の父がそれに該当する。まあ、その中でも特殊な部類なのだけど……

 私はそれとは違い転移者、というくくりになると思う。


「転生ではないわ。だけど【ユッケ】あってこの世界に来たの。私は【天津飯】よ」


「えーと……あれだよね、ちょっと日本語が不自由なのかな?こういう人って初めてだな。大抵は神様とかから異世界の言葉がわかるようにして貰っているからコミュニケーションには問題がないはずだけど……」


 何てことよ。今、同情されたわよね?

 間違いない。この男、同情してきたわ。

 日本語が不自由ですって?

 とんでもない侮辱だわね。


「ま、待って!私の父親は日本人なの。だから日本語は【ぺろぺろ】なの!」


「お父さんが日本人?あー、あれか。あっちに転生した人の子どもって事かな?それにしてもやっぱり日本語がなぁ」


 シノノメが私に憐みの視線を向けているのを感じた。

 まさかまた間違えたというの!?

 私は日本語をしっかり習得した。

 そのはずなのに現地人には全然通じないというの!?


 即ちそれは勉強不足ということ。

 そんな、私が勉強不足……

 父様から色々教えてもらったのに……勉強不足……


「あの、何か点滅しているけど大丈夫?」


 シノノメに言われて気づく。

 腕輪の宝玉が点滅している。

 確かクサビ様が、私のエネルギー残量を教えてくれる腕輪だと言っていた。


「嘘、もうエネルギー切れ!?何で!?」


 私の魔力量は平均点だ。

 多すぎも無く少なすぎもしない。

 あの程度のムーブで枯渇する様な量ではないはず。


 いや、だが現にこうやって点滅しているという事実がある。

 ならば考えるべきはそうなった理由だ。


「あっ……そう言えばゴブリンにドレインされていたっ……け……」


 唐突に力が抜けていき私はその場にヘタレ込んでしまった。

 よく考えればいつもの様に魔力噴射で制動をかけたり武器錬成をしたり治癒魔法を使ったりもしていた。


 あれ程、元の世界と同じ感覚で力を使うなと言われていたのに……異世界での消費力を舐めていた。

 いや、それにしてもおかしい。何でこんなに消費しているのだろう?

 ああ、ダメだ。頭がクラクラする。


「だ、大丈夫か!?とりあえずこんな子を放っておくわけにもいかないし……と、とりあえずウチへ連れて帰るか……」


 ああ、これはまずい流れだ。

 今、この男『連れて帰る』って……

 知っている。これはいわゆる『お持ち帰り』

 

 男が私の身体に触れてくる。

 やだ……止めてよ、私に触ったりなんかしないで。

 男の人に触られるなんて……嫌だ、お願いだから止めて。


 まさかたどり着いた異世界で助けた男にお持ち帰りされるなんて……嫌だ。もう『あんな想い』はしたくない。

 誰か助けて、父様、母様、ケイト、アリス……

 誰か助けてよ……お願い、誰か……

 私は心の中で助けを求め続け、気絶した。


読んでくださってありがとうございました。

お持ち帰りと勘違いしているリリィの運命は!? 


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