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第6話 対決!カッパーゴブリン

本話からリリィの一人称で話が進んでいる時について表現が変わります。

地の文の時は異世界ニルヴァーナの言語で思考しています。

対して台詞では日本語をしゃべっています。

異世界語で発生している時は※で注釈を入れています。

【】の部分は日本語の聞き間違い、言い間違いになります。



◇リリィ視点◇



 石の階段を降りた先、声のする方へと歩いていく。

 それにしても随分と綺麗に整備された道だ。

 しかもこれは石畳ではない。

 触れてみる。ざらざらしている。


 この地面、材質が気になる。

 何かしらね……興味深い。

 少しだけ表面を削ってサンプルを貰っておく。


 おっといけない。

 声の主を探さなくては。

 更に周囲を探索を続け、ある事に気づく。

 ある場所を境に結界の様なものが張られている。

 

 結界魔法の使い手がこの世界にもいるということ?

 もしくは同じような体系の術がこの世界にもあるという事だろうか?


 結界に触れてみる。

 特段弾かれるとかはない。

 クオリティの低い結界だ。

 私はよっこらせと結界の一部に手をかけ穴を開け広げると中へ入る。


 一応、破った個所は軽く補修をして内部を探索することにした。

 そして、小さな池のほとりでそれを見つけた。


 地面に膝をつき頭から血を流す青年が居た。

 男の人か……


 少し離れたところには奇怪な姿をしたモンスターが体を震わせながら立っていた。

 緑色の体色、禿げあがった頭、鳥の様な嘴、手足には水かき、背中には亀を思わせる甲羅。

 

 体色から察するにゴブリンの仲間かもしれない。

 それにしてはサイズが大きいが変種の様なものだろうか?

 男がピンチであることは明らかだ。


「なっ……」


 倒れていた男が私に気づく。


「バカな。何で【一般人】がここに!?」


 え、何を驚いているのだろう?

 今、【日本人(にっぽんじん)】がここにって言ったけど……

 そうか、私の髪は父様と同じ黒色。

 日本人に見間違えられたのか。

 そもそもここは『日本』ではないのか?


 いや、今重要な事は現地の人との初コンタクトだ。

 男の人は苦手だけれど仕方が無い。

 初対面の印象は非常に重要だと教わっている。

 私は軽く咳ばらいをすると、初対面の挨拶をする。


「お、おほん……えー、【恥ずかしめまして】!!」


「え……はい?」


 あら、返事がない。

 何か間違えただろうか?

 発音とか?

 否、もしかしたら単に失礼な人なのかもしれない。

 そう言えば挨拶をしても帰さない人というのが一定数いるらしい。


「クルルルルルゥゥ」


 変種ゴブリンが唸り声をあげている。

 私に気づき、暗く濁った瞳でこちらを見定めている。

 何かの状態異常にかかっているのだろうか?

 それにしても何でこんな所にモンスターが……


「そ、そうだ。逃げろ。そいつは【河童】だ!」


 男がモンスターの名を叫ぶ。

 何、【(カッパー)】?

 つまりこいつはカッパーゴブリンというモンスターというわけね。

 どの辺が(カッパー)なのかはわからないけれど思うに背中に背負った甲羅がそうなのだろう。熱伝導率が高そうだ。


「逃げろ?それはお断り申す!!」


「申す!?」


 あれ、何か変だったか?

 いや、多分日本語が不自由な人なのだろう。

 何せ私の日本語は現地出身の父様直伝。

 問題はない。


 モンスターに襲われ怪我をしている人が居る。

 それを見捨てて逃げるなど出来るものではない。


 これでも7歳の時の冒険者として登録をし今は5等中級冒険者だ。

 変種のゴブリン程度、しかも単体ならば問題なく討伐できる。


 私はモンスター目掛け飛びかかり右腕でチョップを繰り出し肩を撃ち据える。

 更に回転し反対サイドの胸元にもチョップを叩き込んだ。


 そしてそのまま少し退いたゴブリン相手にがっつりと組み合った。

 何か青臭いにおいがするしちょっと湿った感じが気持ち悪いが実力を量るならこれだ。


「鑑定のロックアーーーーップ!!」※異世界語です。


「えぇぇ、組みに行った!?バカそんな事をしたら」


 なるほど、こいつの実力がわかってきた。

 ゴブリンの中でも強い部類の実力を持っていると見た。

 だがふと、気づく。

 何故だろうか、体の力が抜けていく。

 まさかドレイン系のスキル持ち!?


 私は慌ててロックアップを解きゴブリンを蹴って距離を取る。

 まさかゴブリン如きがドレインスキルとは異世界恐るべし!

 とは言え、大した吸収率ではない。

 この程度なら問題はない。


 ゴブリンが姿勢を低くし一気に突っ込んでくる。

 ゴブリンタックルとかいうものか?


「ぶちかましだ!!」

 

 当たってやるわけにはいかない。

 私は魔力を噴出し被弾の直前、後方に跳躍。

 そして回転して木の幹に脚をつけるとそれを蹴りタックルを終えたゴブリン目掛け跳躍。

 同時に魔力を練り一振りの剣を錬成するとすれ違いざまに一閃。

 その腕を斬り落とす。


「ルルルゥ!?」


「何だ、どこに剣なんか隠し持っていたんだ!?」


 違う。

 隠し持っていたわけではなく作っただけ。

 所詮は(カッパー)。大した防御力ではない。

 次は首を切り落とし勝負を決めよう。

 

 踏み込み、剣を振るうがゴブリンは身体を反転させ背中の甲羅で刃を受け止めた。

 衝撃の後、剣が音を立てて折れる。


 折れた!?

 まさか(カッパー)如きに防がれるとは防御能力を甘く見積もってしまった。


「いいか、【河童】の弱点は頭の【皿だ】!」


 頭に【サラダ】ですって!?

 あの現地人、こんな時に頭がおかしいんじゃないの?

 空腹なの?空腹がそうさせたのかしら?

 

 何処に【サラダ】が……いや、待って……聞き間違いの可能性もある。

 ……ああ、そうか『皿』だ。

 なるほど、何故頭に皿を乗せているのか理解に苦しむ点はあるけどあれが弱点ということか。


 それにしても……実に不可解!

 弱点が剥き出しになっているなど、不可解極まりない。

 異世界の魔物とは理にかなわない姿をしているものね。

 まあ、そういうモンスターはあちらの世界でも時折見かけたけれど……

 

 私はゴブリンの背負う甲羅を足場に飛びあがる。

 狙うのは頭部の皿。


「『サザランドの黄金雷』!せいっ、はーっ!」


 脳天目掛け体重をかけて垂直ドロップキックを放つ。

 その一撃により頭の皿が砕け散った。

 同時にゴブリンは絶叫を上げ前のめりに倒れその生命活動を停止した。

 ちなみにこの技の名は昔連れて行ってもらった雷が最も多い街の名前から取らせてもらった。


 まさか異世界に辿り着きいきなり新種のゴブリンと出くわすとは

 帰ったらここの事を書いてみよう。

 面白い物語になるかもしれない。


読んでくださりありがとうございます。


順調にダメな日本語を振るい勘違いを続けるリリィです。

先が思いやられますね。


それにしてもリリィの喋る台詞にある程度制限がかかるのが難しい。

面白いですけどね。

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