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第3話 家出したら神様に出会った件

――ノウムベリアーノ・レム屋敷――


◇リリィ視点◇


 あの後、私は我慢の限界が来てユリウス達を叩きのめした。

 力の限り顔を殴りつけ、アキレス腱固めや逆エビ固めをかけた。

 トドメはドラゴンスープレックスで地面に叩きつけてノックアウトだ。

 追い打ちでビームを叩き込まなかったのは一応かろうじて理性が働いたからだ。

 

 ケイトの、姉の気持ちを踏みにじってバカにしたあいつの行為をどうしても許せなかった。

 自分の事でもないのにただ悔しくて、腹立たしくて……


「リリィ、あんたなんてことしてくれるのよ!」


 数時間後、私はケイトになじられていた。

 まあ、そうなるわよね。

 これで明日のデートは無くなったわけだ。

 ユリウスのクズっぷりを考えればこれで良かった。

 だけど事情を知らないケイトは怒りが収まらない。


「ねぇ、どうして?どうしてあんなことしたの!?何でユリウスにひどい事をしたのよ!?」


 違うよ。 

 酷いのはあいつの方。


 結局、近くにいた人達に止められ警備隊に連行されてしまった。

 母達が私を引き取りに来て今は家で謹慎に近い状態。


『大丈夫です。私に任せなさい』


 そう言うと母・メイシーは学校へと向かった。

 3人の母の内リズママは父様を呼びに出かけた。

 家長であるアンママは学校の先生をしているので勿論いない

 というわけで今、家には子ども達だけ。


「答えなさいよ!何でユリウスに大けがをさせたのよ!あたしと彼がデートするのがそんな気に入らないの!?」


 まあ、確かに気に入らない。

 それについては認めよう。

 あんな奴、絶対ケイトに相応しくない。


「……言いたくない」


 そう告げるとそっぽを向く。

 言えばケイトは傷つく。

 だから絶対に知って欲しくない。


「何が『言いたくない』よ!そうやって黙りこくるなんて卑怯者のすることよ!!」


 ケイトの剣幕は凄まじいものだった。


「あ、姉上。ちょっと落ち着いてください」


 長男であるホマレが仲裁に入ろうとするが……


「ホマレ、あんたは黙っていなさい!!」


 ケイトに一喝され縮みあがってしまう。

 メールの後ろに末っ子のリムが隠れている。

 ごめんね、みんな。お姉ちゃん怖いよね?

 あれ、リムは何か少しワクワクした表情の気もするけど……で、でも怖いよね?


 多分この場を収めることが出来るのは今ここには居ない親達とアリスくらいだ。

 アリスは昔から私とケイトが喧嘩を始めると横から『コンフューズウェーブ』というビームを撃って大事になるのを止めていた。


 この先どうなるかな……

 暴力事件を起こしたのは事実だしこれは退学かなぁ。

 ユリウスっておぼっちゃまだから色々裏から手を回しそうだしなぁ。

 あーあ、やっぱり私って落ちこぼれの負け組だなぁ……

 何か腹立つなぁ……


「そうやって都合が悪くなったら黙って!あんたのやったことでお母さんだって仕事を無くすかもしれない」


 そうなんだよね。

 アンママは学校の先生をしているから……もし娘が暴力事件なんて起こしたら学校に居られなくなるかもしれない。

 バカだなぁ、私。ああ、自分が嫌いになる。


「昔っからそう、ろくに考えもせず感情だけで動いて!あんたって本当に何なのよ」


 違うよ。

 考えているの。

 いつだってそう。

 みんなと一緒に居られるように、私は色々考えて動いている。

 みんなと笑い合う資格を得るために、必死にやっている。

 すごく大変な事。でも、それが私の在り方だから……


 思えばケイトと口喧嘩している時は何だかんだで楽しかったと思う。

 でも今の喧嘩は違う。

 何と言うか……すごく苦しい。

 それに凄くイライラする


「……うるさい」


 気づけば言葉に出ていた。

 ああ、止めないと……

 でも何故だろう、沸き上がってくる感情が抑えきれない。


「何ですって?今何て言ったのよ?」


「うるさい!うるさい!うるさいって言ってんのよこの馬鹿ケイト!あたしの気持なんか知らないで、もうあんたなんか知らないわよ!あんなゲス野郎の事ずっと好きでいたらいいじゃない!!」


「ゲス野郎?リリィ、もしかしてユリウスがあなたに何か……」


「知らない!もう何もかも嫌よ!」


 我ながら悪い癖だと思う。

 時々感情の制御が効かなくなることがあった。

 私はわめき倒すと堪らなくなって……


「こんな家、出て行ってやる!!」


 そう叫ぶと家から飛び出してしまった。

 門を抜けたところでアリスとすれ違う。


「うえっ!リリィ姉!?何、何があったの!!?」


 何か聞こえてきたがもうそんな事はどうでもいい。

 私は、そのまま家出をしてしまった。


□ □ □


 家出をして半時間程。

 私は学校の裏山に居た。

  

 あー、もう……何でこうなったんだろう。

 今頃学校では母達が先生とかに頭を下げているのだろうか?


 何か、その光景を思い浮かべると腹が立ってきた。

 悪いのはあのバカ男子共なのに……

 帰ったら怒られるのだろうな。それならもう……帰らないでおこうかな。

 

 私は膝を抱えうずくまった。

 ふと、気づく。

 周囲に霧が立ち込めている。

 確かに寒い季節だが霧が立ち込めるような天候でもない。

 そして、何かが羽ばたく音が聞こえて来た。

 

「翼の音……鳥?」


 否、音が大きい。

 可愛くさえずる小鳥のものではない。

 まさか魔物?


 振り返り音のする方を見上げた。

 極彩色の翼と大きく湾曲した嘴を持つ怪鳥がそこには居た。

 5mはくだらない巨大さだ。


 そして気づく。

 胸の前で腕を組み怪鳥の上に立つ人影に。

 それは人間と同じような姿をしているがよく見れば人間とは違う存在。

 鎧を纏った戦士のような者は静かに私を見下ろしている。

 否、纏っているというのは認識が間違っているだろう。

 鎧も身体に一体化している。そんな様子だ。

 

「どうやら『迷い込んでしまった』らしいな。我が名は『クサビ』。人の繋がりを司る神だ」 


 はい?

 家出したら、神様が出て来た!?

 どういう事!?


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