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第27話 悪役令嬢に私はなる!

――ショッピングモール中央広場――

◇リリィ視点


 まさかこんな所で敵が襲ってくるとは。

 しかもヨウカイと人間の融合、『ヨウマ』と来た。

 これって明らかにあいつが、イシダ・シラベが関わっているじゃない。


「ヨウマ……狙いは一体何だというの!?」


「我ら盟主、イシダ・シラベ様に敵対する者の粛清。その為にまずはレム・ミアガラッハ・リリアーナ!お前の首を頂き両親に贈ってやるぜ」


 はい、イシダ関連確定ね。


「残念だけど、そんなギフトは用意させないわ」


 私は羽織っていたコートを脱ぐとお祖母様に渡す。


「リリちゃん……」


「大丈夫、ヨウマだかしらないけれどあんな奴に負けはしないから」


 そう言うと私はイツマデに突撃すると槍を錬成して振るう。

 イツマデはリョウか他の翼で飛び上がりそれを回避すると急降下しかかと落とし。

 私は槍を盾に錬成し直すとそれを受け止めるが荷重により膝をついてしまう。

 地面に降り立ったイツマデがタックルを仕掛けてきて私は後方へ飛ばされるも回転して態勢を立て直すと剣を錬成して突撃。


「甘いっ!」


 イツマデが激しく翼を動かすと突風が起きて砂埃が目に入る。


「しまった!」


 目を瞑ったところにイツマデが組み付いてきて肩にチョップを叩き込んで来た。

 私は負けじとイツマデの首筋にチョップ、怯んだところに剣で胸を斬りつけた。


「くっ、ガキにしては中々やりおる……だがそれなら大人としてのからめ手を使ってやるまでよ!」


 からめ手?

 目をこすりながら私は距離を取る。

 イツマデが指を鳴らすと空中に何やら映像が無数に投影される。


「これは……動画?」


 ミカに見せてもらったことがある。

 この世界では動画というものを撮影し、それを無料で公開・共有しているサービスがあると。

 料理の作り方や占い、雑学の紹介など多岐にわたるジャンルの動画があるという。

 空中に投影された動画にはタイトルが添えられていた。

 『戦後最大の大殺戮事件の真相!行方不明になった介護士は生きていた!?』


「これは……」


 イツマデに変身している男がさっき言っていた事だ。


「どうだ、気に入ってくれたか?お前の父親に関する考察を俺が動画にしたものさ」


「あなたの考察?あの的外れな奴ね」


「的外れかどうかなんてどうでもいいのさ。重要なのはセンセーショナルさであること。英雄と称えられた男が実は……中々そそるだろ?」


 別にそそらないし悪趣味なことは理解できる。


「娘であるお前の存在が俺の動画を更にバズらせる。この戦いは世界中に配信しているんだ。見ろ、あそこにたくさん並ぶ文字は俺の動画に対するコメントだ」


 コメント?

「ダメよ、リリちゃん!そんなの見たらダメ!!」


 お祖母様の叫びも空しく、私は『それ』を見てしまった。

 書かれている父様に対する無数の誹謗中傷。


「何……これ?」


「ウギャギャガ、これが匿名性の恐ろしさというものよ。正しいかどうかはどうでもいい。叩く相手が見つかればそれに飛びつく人間がいる」


 次々と書き込まれていく辛辣な言葉。


「ちなみにこの戦いもライブ配信しているが加工によって俺の姿は怪物には見えないようになっている。つまり、犯罪者の娘が凶器を持って大人に襲い掛かっている映像っていうのが全世界に配信されているわけだ。コメント欄も荒れてるぜぇ?」


 新たに投影された画面には『警察呼べ』とか『やっぱり犯罪者の娘は犯罪者』など書かれている。


「お前が守ろうとしている連中が姿も見せずこうやってお前に牙を剥いているわけだ。どうだ、絶望しただろう?世間がお前に求めているのは英雄の娘じゃなくてバッシングできる只の悪役ってわけだ」


「あ、悪役……私が……?」


「もう止めて!」


 お祖母様が叫んだ。

 

「何でそうやって平気で人を傷つけられるの!私達がどれだけ苦しんで来たと思うのよ!十分苦しんできたはずなのに、それなのに息子が命がけでやったことをまるで犯罪みたいに面白おかしく改変されて、それに孫まで巻き込んで……いつまで下を向いて苦しめば許されるの!」


 どれだけ胸が張り裂けそうになる想いだろうか。

 罪を犯したのは私の祖父にあたる男性だ。

 その人との縁は既に切れているらしいし既にこの世にも居ない。

 それでも、時が過ぎてもまだ呪いの様に牙を剥く。

 何だか私の祖父というのは問題だらけだ。

 母方の祖父も不倫をして結果としてミアガラッハの没落を招いた。


「そんなの俺が知るかよ。いいか、重要なのはセンセーショナルである事、だ」


 そうか……センセーショナル、か……

 私が傷つくことでお祖母様が苦しむのを見たくない。

 ならば傷つかなければよい。

 それなら利用させてもらおう、センセーショナルとやらを!!


私はイツマデに飛びかかると腹にパンチを叩き込む。


「ぐあっ!?な、何かが刺さって……」


 私が手を広げると錬成したフォークが地面を転がる。


「て、てめぇ凶器攻撃だと!?」


「それが……どうしたっていうのよ!!」


 イツマデの脚を取り父様直伝のドラゴンスクリューで倒す。

 そして次に錬成したのは……


『おい、あの子何処からかパイプ椅子を取り出したぞ!?』


 空中の画面に文字が浮かぶ。

 そう、私が錬成したのは折り畳み式の椅子。

 それを大きく振りかぶると私はイツマデの背中を激しく殴打する。


「何だ、何が起きてやがる!」


 画面には『卑怯者』とか『最近の若者は凶暴』とか書かれているが。


「うるさい!文句があるなら直接ここに来て言いなさい!!」


 叫びイツマデの顔を後ろから踏みつける。


「リ、リリちゃん何を……?」


「世間とやらが私に悪役を求めているというならやってあげようじゃない。私は元名門ミアガラッハの後継者。つまり今の私は言うなれば……」


 そう、ミカの部屋に置いてある漫画に載っていた。

 大きく息を吸い込み宣言した。


「悪・役・令・嬢ッッ!!!!」


「い、意味が違うわボケェッッッッ!!!」


「違わない!私は今、悪役令嬢になっているのよ!!」


 私はイツマデを仰向けにすると相手の脚を持ち抱えるとそのまま逆エビ固めを仕掛け腰を痛めつけてやる。


「悪徳拷問反りーーーっ!!」


「グギャギャ!?」


 どう?見事な悪役令嬢じゃないかな?

 コメント画面を見ると風向きが変わっていた。


『おい、なんかプロレスっぽくね?』『もしかして新手のゲリラ興行?』


「ええいっ!好きになどさせるかぁ!!」


 イツマデが翼を激しく動かしホールドを無理やり外すと私を羽交い絞めにして空中へ飛ぶ。


「このまま地面にお前を叩きつけて……ぐはっ!!」


 私は親指をイツマデの右目に突っ込みホールドから抜け出す。

 反則上等!今の私は『悪役令嬢』だから!

 そして空中でイツマデに肩車状態でまたがると脚で頸動脈を極め両肩の翼を捩じり上げ身体を反らす。


「父様を侮辱し、お祖母様を傷つけた!あんたは絶対に許さない!!」


「待て!待て待て待てぇぇぇぇっ!!」


 ベキベキッと音を立て翼がへし折られそのまま地上目掛けて落下していく。


「これが私とお祖母様と、父様の怒りよ!懺悔なさい!ケンタウロス・ライドクラッシュ!!」


 そのまま地面に私が体重をかけイツマデを叩きつけた。

 口から泡を吹いて気絶したイツマデを蹴り飛ばすと中指を立てて腕を高く掲げ勝利を宣言する。


「ナンバーワーンッッ!!」


 コメント欄に溢れていた誹謗中傷はいつの間にか『面白い試合だった』『新時代の興行ってやつだね、騙された』とかそういったものになっておりやがて画面そのものが掻き消えていった。


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