第24話 祖母
◇リリィ視点◇
イシダ撃破後、私はタツル同席でヤヨイさんと話をすることにした。
恐らくは大丈夫なのだろうけど克服したと思われる『シトリーの天秤』のデメリットが出て来てややこしい事になる可能性もあったからだ。
何となくだがこの男なら変な方向に行きかけたら引っ張り戻してくれる気がした。
「えーと、リリちゃんが大事な話があるっていう事でそれにタツ君が同席するこの状況って……」
ヤヨイさんは私達を見てしばらく思案していたがある結論を出す。
「タツ君に何かされたのね?」
「いや、何でそういう事になるんですか!?」
「ごめんなさい。私なりにタツ君を見張っていたつもりだったけどとうとうやってしまったのね」
「やってません。何もやってません」
「タツ君!嫁入り前の娘さん何をしたというの!」
うわぁ……
こいつ、信用ないなぁ……
「えっと、何かされたとかそう言うわけじゃないから。ついでに私の居た世界的には女の子は『お嫁に行く』じゃなくて『お婿を貰う』側かな」
勿論、お嫁に行く女性もいるが大体は婿を貰う。
女性の籍に男性が入る事が多いからだ。
「タツ君をお婿に!?ダメよ、考え直しなさい」
「あんたって……どれだけ信用無いの?」
「うーん……」
同席させる相手を間違えたかもしれない。
「あのね、取り合えずこの男がどうこうはあっちに置いておいて……その、実は先日見せてもらった息子さんの写真について話があるの……」
「え、ええ……写真って、リョウの写真よね?」
リョウ……
ああ、やはりそうだ。
父様の本名は良哉……
「えーと、【短刀チェニック湯】に言います」
「それ、単刀直入な。今までで一番ひどいぞ」
間違えた。
やはり異世界言語は難しい……
「た、単刀直入に言います……私は、私は実は……」
声が震える。
あと少し、あと少しで言えるのに。
すると私の肩にタツルの手が置かれる。
「ひっ!」
男の人が肩に触っている。
恐怖が首をもたげるが一瞬の事。
この手は大丈夫。だから……
不思議と心の中の氷がすっと解けていく感じがして……
「ヤヨイさんの孫……です!」
言えた!
するとヤヨイさんは自分の胸に手を置き小さく息を吐いた。
「そう……やっぱり、あなたはリョウの娘なのね」
「あれ弥生さん、気づいていたんですか!?」
「何となくだけど、ね。色々とね、あの子に似ているところがあったからもしかしたら……って思っていたわ」
そうか。
私がヤヨイさんに感じるものがあったのと同じだ。
ヤヨイさんもまた、私を見て思う所があったという事。
「異世界転生の概念を聞いた時、あの子ももしかしたら、と思っていたの。あの子は遺体も見つからなかったわけだし……」
「はい。父様は私が生まれた世界に転生し、そこで母と結婚して私が……」
「リリちゃんの家族について敢えてあまり聞かなかったけど……リリちゃんの他にも居るのよね、兄弟」
「えっと……6人キョウダイです」
「マジかよ。お前の親父さん頑張ったな」
こら、デリカシーが留守番してる!
「ややこしいけど母親が3人居るのよ。ひとりにつき2人ずつ子どもがいるから、6人」
「ハーレムって奴かぁ」
「タツ君、ちょっとお口にチャックしていなさい。何なら縫いましょうか?」
「はい……」
ほら、話の腰を折るから怒られている。
「3人母親が居て同じ家に住んでいるけど全員仲が良いです。私達の事も分け隔てなく扱ってくれているんです。それで、写真の子は3人目の母親の子でホマレって名前」
「素敵な名前ね。名前はお父さんにつけてもらったのかしら?」
「私を含む前半の3姉妹は母親がそれぞれ付け合ったけど後半の3人は父様が。ちなみにホマレの本名はジェスロードホマレっていって……」
それを聞きヤヨイは「ああ」と宙を仰ぐ。
「あの子昔からそういうところあったから……」
多分ネーミングセンスの事だろう。
ホマレの名前を点ける時、父様は何日も考え悩み抜いた。
結果として最初に予定していたジェスロ、ホマレ、ロード。
そのすべてを捨てきれず合体させた名前が付けられてしまったわけだ。
あっちの世界では長い名前は珍しくないがあの子の何というかあちらの世界基準でもちょっと変わっている。
「後はみんな女の子。私は2番目で上にケイト、下にアリスって子がいるの。それで……私たち3人は同じ日に生まれたの」
「マジか!それって親父さん随分と……」
「タツ君、次は縫うわよ?」
「うぐっ……」
あー、これについてはごめん。
私たち3姉妹のエピソードを語ると大抵の人がここで驚くから……
その後も私は自分の家族の事をヤヨイさん、否、お祖母様に話して聞かせた。
お祖母様はそれを「うん、うん」と嬉しそうに聞いてくれていた。
「ところで、タツ君を同席させた理由だけど……まさかお付き合いするとか言うわけじゃあないわよね?」
「え!?」
お付き合い?
それってつまり……えっと……え?
「改めて、おばあちゃんとして言うわね……止めておきなさい。絶対に!」
「いや、弥生さん。どんだけ俺に対する評価低いんですか?」
「だって、タツ君とリリちゃんは年が結構離れているじゃない。だから、ね?」
「俺、24ですよ!まだ若者です」
「リリちゃんは?」
「…………15歳だけど?」
ほらね?とお祖母様は肩をすくめる。
まあ、確かに歳は離れている。
父様を例に取ったとして一番若いリズママとの年齢差は7歳。
ちなみに母様との年齢差は4歳だ。
「ちょっとした犯罪になるわ」
そういうものだろうか?
あっちの世界ではそういうのは珍しくない。
名家出身の子だと割と若くして年上の婚約者がいたりするし。
まあ、そもそもだけど……
「えーと……それなら大丈夫だと思う。私、そういう恋愛とかまだよくわからない。男の人、人の事はやっぱり怖いから……ただ彼は私が変な方向に行かない様にしてくれる感じだからそこは信用しているっていうか」
彼に恋愛感情があるか?
そう聞かれると答えは「NO」だ。
正確には『恋愛感情というものがよくわからない』のだけれど……
お祖母様はタツルの方をじっと見て……
「でもこれは監視が必要そうね……」
「えぇ!?だ、大丈夫ですって……恐らく」
「いや、何でそこで自信無さげに言うのよ!?」
さっきの公園での格好良さはどこかに落としてしまったのだろうか。
いや、こいつ普段はおおむねこんな感じの『ザンネン』だったわね……
ちなみに弥生が龍琉を警戒している理由は後々語られます。
彼自身はいい青年なのですが弥生の抱いている懸念とは?




