第23話 タッグバトル
地鳴獣オルゴ。
山地に住むクマ型モンスターでイシダのお気に入り。
イシダが改良によるマイナーチェンジを続け、私の知っているだけでも3回は見ている。
「イシダ・シラベ……聞いた事があるぜ。確か日本史上最悪の大量殺人を行った殺人鬼。未だに逃亡中聞いていたがまさか異世界に転生していたってわけか」
「随分と有名になったものね」
「お前みたいなやつ、野放しにしては置けないな」
「強い事を言うのは勝手だけどどうする気?あなたはザコ妖怪にすら手こずる程度だというのよ?身の程というものを知りなさい」
「ぐ……」
「そもそもあなたが私と戦う理由があるかしら?あなたと私に何か因縁がある?私が殺人鬼だから?確かに私は殺人鬼。だけどそのこととあなたと何が関係ある?もしかしてあなた、不倫した芸能人のニュースを見てけしからん!とか抗議の電話をする正義マンかしら?」
正義マン。
聞いた事がある。
正義心を振りかざす不特定多数の人達により父様は辛い幼少期を送ったと。
イシダもまた、同じような経験をしたという。
だとしても……
「……確かに、俺とお前には何も因縁が無い。関係の無い男だ。だけどな、お前は今まさに他人の身体を乗っ取り人を傷つけようとしているよな?それだけで十分なんだよ。俺は兄貴みたいなヒーローじゃねぇ。でも目の前で苦しんでいる奴くらいは救ってやらねぇとな!」
その言葉を聞いた瞬間、私のマジックポーチが光り神様から貰った虹色の卵が飛び出しタツルの中に入っていく。
「え?ちょっと待て。何か入ったぞ!?何これ!?」
私のすべきこと。
シトリーの天秤。
イシダはデメリットしか言わなかった。
だがそれはつまり隠しておきたいメリットがあるという事で……
「タツル、あんたに戦う力が立ちないというなら私が補ってあげる」
「えっと……それはどういう意味で……」
私は魔道具を取り出す。
それは以前出来た魚の力が宿ったものとは違う彫像。
獅子の姿がかたどられたものであった。
「覚悟しといて。私も何が起きるかはよくわからない」
「えぇっ、そんな無責任な」
「だけどね、何だか頭がものすごくすっきりして来て、滾ってきたのよ!こんなの本当に久しぶり!獣纏――」
魔道具からあふれた光が私のみならずタツルも包み込む。
私は右肩に、龍琉は左肩にそれぞれ獅子のたてがみを思わせる装甲を纏う。
そして二人の首にオレンジ色のマフラーが巻かれる。
「えー、ちょ、待ってって。何だよこれ!?」
「あらあら、気づいちゃったか……」
イシダが苦笑する。
「私とあんたの能力は天秤で釣り合ったわけよ。そして私が扱う魔道具の効果もあんたはシェアできる」
恐らく先ほど彼の中に入った虹色の卵が受信の役割を担っているのだろう。
父様も自分の能力を母様達とある程度シェアすることが出来る。
ならば娘であり同じく呪いの能力者である私だって……
「そうか……よ、よくわからんがつまり俺達は今、『相棒』ってことでいいのかな」
「そういう事。せっかく力を分けているんだから……足を引っ張らないでよ!!」
「やっぱり面白いわねリリアーナ!でもあなたの能力が彼に分けている分下がっていることは忘れちゃいけないわよ!!」
魔獣が跳躍し私目掛けフライングボディアアタックを仕掛けてくる。
するとタツルが前へ出て魔獣をリフトアップして防いだ。
「その分俺が……カバーしてやるだけさ!!」
そのまま魔獣を地面に叩きつける。
私がそこへすかさずギロチンドロップを落とす。
「グァッ!」
うん、ナイスコンビネーションじゃない。
まあ、ケイトと組んだ時ほどではないけどね……
起き上がった魔獣に対しタツルは前転しながら距離を詰め腹部に蹴りを、さらに肩や胸などにチョップを叩き込み腕を持って私目掛け飛ばす。
「何だ、わかってるじゃない」
こちらに向かって投げ飛ばされる魔獣に対し、私は地面に手をつき回転。
「デネボラインパクト!」
脚に錬成した斧で魔獣の顎を蹴り上げた。
大きくよろけ倒れ込んだ魔獣。
「あははっ、リリアーナ。あなたってやっぱあいつの娘だなぁ……ゴフッ」
笑いながら血を吐いた後、変身が解けイシダの端末にされていた女性に戻る。
「くそっ、こんな……」
「私の……いえ、私達の勝ちね、イシダ・シラベ。さぁ、乗っ取っているその人を返してもらうわ」
すると突如として突風が巻き起こり女性の前にモノクルをかけたローブ姿の青年が立つ。
「カイ!」
イシダにカイと呼ばれた青年は彼女を一瞥するとフッと微笑みを漏らす。
「ここは退くとしましょう。七枝の後継者、いつまでも勝利できると思わない事です」
そう告げるとカイが腕を振るう。
風が巻き起こりイシダとカイを包み、次の瞬間には姿が掻き消えていた。
何なのあいつ?




