第16話 トイレのトラウマ
リリィのトラウマは後にある程度判明しますがかなり重めになります。
私はミカの学校に連れて行ってもらった。
この世界の学校はグレードによって場所が変わり、場所もあちこちに点在しているらしい。
ミカは私達の世界で言うとグレード3のライフステージに居る。
白を基調とした建物を見上げながらふと、背筋が寒くなる。
ああ、似ている……
この無機質な感じ。私が通っていた学校の旧校舎がそうだ。
『ひっ、ぃ、ぇぐっ、ぅ、うぇぇぇぇ…………っ!』
幼い頃の忌まわしい想い出が、幻聴となって響いてきた。
あれはそう、学校での出来事。
あの日、私は尿意を催しトイレを探していた。
不幸な事に教室から一番近いトイレは一杯であった。
ならば少し遠くてもいいか、とあまり人が立ち入らない旧校舎まで私は走った。
だがそこには悪ガキのルークという上級生がたむろしていた。
私はそいつらによってトイレの個室に閉じ込められてしまったのだ。
それも男子便所に。更には上から水をかけられた。
助けを呼んでも普段は人があまりいない校舎なので誰にも聞こえない。
扉を得意のレッキングビームでぶち破ればよかったが学校では使わない様にと厳しく言われいたし何よりどうしようもない恐怖に支配されていてビームどころでは無かった
薄暗くて狭い空間に閉じ込められ誰も助けに来てくれない。
私はこのままここで死んでしまうのかもしれない。そう、思った。
結局、ケイトとアリスが気づいて助けに来てくれた昼休みまで私はトイレに閉じ込められることになった。
私はしばらくひとりでトイレに行けなくなった。
いつも家族の誰かが外で待っていてくれないとダメだった。
学校へも行けなくなって部屋にこもりっきりになった。
元々苦手だった男の子に対しては恐怖心を抱くようになった。
ケイトやアリスが居てくれたからまた学校へは行けるようになった。
でも学校は転校することになった。ケイトやアリスも一緒に。
ちなみにルークら不良連中はあの後でケイトとアリスがぶちのめしたらしい。
その事件以来レムシスターズにちょっかいをかけるなというのが常識となりそれは新しい学校にも轟いていた。
思えばそんな『レムシスターズはヤバい連中』というイメージの中でケイトにちょっかいを掛けようとしたユリウスってある意味凄いのかもしれない。
まあ、あいつは本当に許せないけど……
「リリちゃん、どうしたの?顔色悪いけど……」
「ん。大丈夫……ちょっと昔の事を思い出しただけ」
ダメだ。あの時の事を思い出すと弱くなる。
強くなるって決めたのに……
「……それで、件のトイレって何処?」
「あ、うん。第3校舎1階なんだけど……」
「じゃあ、その裏側に連れて行って」
「裏?」
ミカに連れられ怪奇現象が起きるというトイレの裏側に連れて行かれた私は周囲を見渡す。
人気も無く、大きな木のおかげで日陰。
何だか少しかび臭い
うん、恐らくここに『居る』だろう。
私はマジックポーチから小さな笛を取り出す。
「何それ?」
「私の思う通りのヤツならこれで出てくるから……」
言い終えると私は笛を勢いよく吹く。
音は出ない。
いや、正確には出ているのだ。
特定のモンスターにだけ聞こえる特殊な音域の音が。
やがて木の下にある土が盛り上がっていく。
ああ、やはりこいつだったか。
姿を現したのは全身がツタに覆われたサル型の魔物。
「オゥギュュアアアアアアアッ──!!」
そいつは赤ん坊が泣くような咆哮を上げていた。
これが赤ん坊の幽霊と言われる所以。
「げぇっ!?ちょ、何あれ!?」
「あれは私達の世界で『ヴァンピーラエイプ』と呼ばれているモンスターよ」
やはりこの世界にも居たわね。
『嘆きのミリエンヌ』の伝説を多くの子ども達が知っているのはこいつが理由だ。
陰気なところで赤ん坊の泣き声が聞こえてきたら怪談話でなくこいつがいるかもしれないと思って逃げろという事だ。
ただ、私の知っているヴァンピーラエイプよりも少し大きい。
大体が1m弱くらいしかないものだけどこいつは2m近くある。
やはり特殊個体……
「あのツタの先にある花、あれで生き血を啜るのよね。特に人間の血が好物なの……それじゃあ、日も暮れそうだから退治しましょう」
私は右手に魚の紋様が刻まれた彫像を持ち掲げた。
これは先日手に入れたカッパーゴブリンの手とクサビ様から貰ったキューブが合わさって出来たもの。私の戦う力……
ゆっくりと眼前までそれを降ろしていき、唱える。
「獣纏――!!」
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