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プロローグ



「リリィ、ここに座りなさい……」


 母に促されその膝に座る。

 私の事をぎょっと抱きしめた母は普段他の家族に見せるものとは違う、凛とした表情で私に問いかける。


「リリィ、あなたは『力を持った人間』です。その意味がわかりますか?」


 力を持った人間……

 そう、私は生まれつき大きな力を持っていた。

 それは両親から与えられたもの。

 意味なんて考えたことは無かった……


「ええと……ごめんなさい。わからない……です」


「……誰かを守る為です。力なき弱い人達に手を伸ばすために、与えられた力です。その事をしっかりと心に刻んでおいてください」


 誰かを守る為の力。

 それが私の……

 ぎゅるるるるる……


「…………母様?」


 何か気の抜ける音がした。

 見上げると母様の顔が少し赤い。


「メイシー、もうすぐご飯できるから手伝って~」


 キッチンから3人いる母のひとりが声をかけてくる。


「それはもう喜んで!さぁ、リリィ。あなたはお父さん達を呼んできてください」


 そう言った母の顔は、いつもの様に食い意地の張った表情だった。



 私は自分の事が嫌いだった。

 何かを楽しむには相応の資格が居る。

 だから、私は頑張らないといけない。

 皆に劣る自分が、皆の傍に居続ける為にも。

 それでも私は『平均点』。

 もっと、もっと頑張らないと……世界は私に微笑んでくれない。

 そう思っていた頃が、私にはあった。


「……夢、か」

 

 机に突っ伏しながら眠っていたようだ。

 時々見る幼い頃の夢。

 私の行き先を示す羅針盤となる夢だ。


 肩を見ると小さな毛布が掛けられている。

 『彼』が掛けてくれたのか。

 どうせなら起こしてくれても良かったのだけど、『彼』なりの優しさか。


 机の上に置いてある『写真』を眺める。

 これは私の大事な宝物。世界に一つしかないものだ。

 そこに映るのは穏やかな笑みを浮かべる一人の女性。


 机の上に置いてある原稿に目をやる。

 そろそろ完成するかな。

 

 階下から『彼』が私を呼ぶ。


「はいはい、今行くわ」


 返事をし、私は明かりを落とすと部屋を後にする。

 綴られているのは私の過去。

 レム・ミアガラッハ・リリアーナが家出をした末に『呪縛』を解く物語。 



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