その理由
翌朝。
少女は砂浜に落書きをしていた。
いや、正確にはその落書きは魔法陣。
魔女である彼女が力を使うのに必要なものである。
後少しで完成する魔法陣の上に、黒い革靴が重なりその部分を払った。
少女は革靴の持ち主を睨みつけた。
「なにするの?」
少女のガーネットと青年のオニキスが交わる。
「お前こそ何をしてる?コレは心変わりの陣だろう」
「そうだけど」
「誰に使うつもりだった?」
「人魚姫」
「昨日の話を覚えてるか?」
「覚えてるよ。でも、こっちのが楽だし」
「楽だからって、そんな事していいと思ってるのか?」
「昨日からうるさいよ。私の下僕のくせに」
少女のガーネットが深く濃くなっていくのを見ながら、青年は大仰にため息をついた。
「だからこそ、だ」
青年の言葉に少女は眉根を寄せて、首を傾げる。
そんな少女を見ながら青年は問いかける。
「人魚姫、好きだろう?」
「?うん」
「もし、人魚姫が王子を刺したら“人魚姫”という話は無くなる」
「うん?」
「嫌だろう?そんなことは」
「!」
青年の言葉に少女は目をパチクリさせている。
元々大きな目がこぼれ落ちそうなほど見開かれる。
「勘違いしているようだから言っておくが、俺は誰が死のうが消えようが興味はない。俺がお前に意見するのは、全てお前のためだ。分かったか?」
少女はコクリと首を縦に振ると魔法陣をぐしゃぐしゃにくずした。
その場に勢いよく立ち上がると、城をビシリと指差した。
「いざゆかん、人魚姫ちゃんに会いに!」
少女が城に行こうと一歩を踏み出すと、砂浜にある岩場から人影が飛び出してきた。
その人影を指差し少女は叫んだ。
「あ〜!あんたはっ!?」




