扉の向こう
扉を抜けたらそこは空でした。
「そんなこと言ってる場合か!」
扉を抜けた先に地面は無く、ふたりは重力に従い落下を続けている。
しかし、落下地点にも地面は無く、青い海が広がっていた。
「海かぁ、落ちても大丈夫かな?」
コトリと首を傾げる少女に青年は眉間にしわを寄せ首を振る。
「この高さじゃ、下が海でも高確率で死ぬぞ」
そうは言うが、青年からは全く焦った様子などは見られない。
それは少女も同じである。
が、海はグングンと近づいている。
「手を」
青年は少女に手を伸ばす。
少女も青年に手を伸ばし、体に抱きつく。
バンッという音と共に青年の背から漆黒の翼が飛び出した。
「セーフ。さて、ここどこかな」
青年の肩に手をかけ、辺りをキョロキョロと見渡している。
「どこ、というよりどの場面かだろ?」
抱き抱えている不安定な状態で動く少女にヒヤヒヤしながら、収まりの良い位置に抱え直す。
「ん〜、多分もう王子に会ってるとは思うんだけど」
「とりあえず陸に行くか?」
「うん」
少女の返事を聞き、青年は陸に向かって飛び上がった。
「それにしても、お前の移動はどうにかならないか?」
青年は溜め息混じりに少女に声をかけた。
かなりの速度で飛んでいるため、少女の耳元へ唇を押し付けるように囁く。
「どうにかって?」
「せめて土の上に出してくれ」
「え〜、わかんない方が面白いのに」
少女は青年の首に腕を絡めクスクスと笑う。
楽しそうに笑う少女をチラリと見やり、青年は深いため息をついた。
「わかった、好きにすればいい」
「んふふ、当然。それにこんな風に私のこと抱っこできてうれしいでしょ?」
そう言って少女は青年に満面の笑みを向けた。
「そうだな……」
青年は苦笑しながら頷いた。




