人魚姫の世界へ
白一色で統一された部屋。
そこに置かれている天蓋付きのベット、いわゆるお姫様ベットにうつぶせに寝転がっている少女。
眩いばかりの金髪を腰まで伸ばし、同色の睫に縁取られる瞳はガーネットをはめ込んだような紅。
所々にフリルをあしらった膝上のワンピース。
そこからのぞく足をパタパタと動かす度に、ヒラヒラと波うつ裾が危うい。
と、パタパタと動いていた少女の足を押さえる手。うつぶせていた少女は上半身をひねり振り返る。
少女が振り返った先にいたのは、ひとりの青年。
闇を閉じ込めたような黒色の髪に同色の瞳は、オニキスのように鈍い光をたたえている。
Vネックのセーターにブラックジーンズと全身を黒に統一している。
「スカートで足を上げるなっていつも言ってるだろ!」
「むぅ。私たち以外居ないんだから別にいいじゃん」
「いいわけあるか!」
しばらく互いににらみ合っていたが、少女がため息をついてベット座り直す。
それを見届けて青年は少女にたずねた。
「やけに静かだったが何してたんだ?」
その言葉に少女は満面の笑みを浮かべ、青年の前に一冊の本を突き出した。
「……人魚姫?」
「そう!」
嬉しそうに頷く少女に、青年は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「お前、まさか‥‥」
「気に入らないの」
少女の言葉に青年の肩がびくりとはねた。
目に見えて顔色が悪くなり、目は泳いでいる。
「でも、仕事があるだろ?」
青年はなんとか言葉を紡ぐが、すでに少女の耳には入っていない。
「そんなのあとあと。じゃあ、人魚姫の世界にレッツゴー!」
少女のかけ声で突然豪奢な扉が現れた。
うなだれる青年に構わず、少女はさっさと扉をくぐってしまう。
青年はため息をつくと、少女の後を追って扉をくぐった。




