第三章 ネトデラ少女
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。
ジン
クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい
佐竹
クラスメイト。女。クラスのボス。
「switch?持ってるよ。全然やんないけど」
放課後、僕はポニーテールの、クラスメートを捕まえた。
「ありがたい。佐竹、ナディアん家に、switch届いたら、セッティング頼めないかな。多分ネットの開通とか無理だろうし」
「あー……ちょっと来て」
僕らは比較的人の少ない階段の前に移動した。
昔と違って、今は1学年4クラスくらいだから、どこの階も無人の教室だらけだ。
「林堂、ナディアと組むの内緒にしといた方がいいよ。冷やかされるの、ヤでしょ?」
「それな。でも、それやんの、主にオマエラじゃん」
「だからだよ!」
佐竹が必死に叫んだ。
「私達にイジられて、林堂とナディアが苦しむなんて…… アタシ耐えられない!」
「死ね」
「まあ、あんまり、イジんないよ。応援はするけど」
「応援って…… オマエ、スマブラ好きなの? なに、その呆れた顔」
「私らには謎だけど、男子が付き合いとか嫌がるの、冷やかされるのがヤダからなんでしょ?」
「単純に、付き合ってなにすんの?ってのもあるけど、まあ、そう」
小4の時、告られて付き合ったことあったけど、一回家に遊びに来て終わりだった。
学校では冷やかされる、他の女子としゃべったらニラまれる、あんな目に合うのは、一回で充分だ。
「じゃあ、みんなに小学生大会、ナディアんち厳しいから無理っぽいって言っときなよ。
今朝の事、見た奴らに、付き合ってんの?って聞かれても、アホかで済むって。
言ってる奴自身も、イスラムクラスでありえないって思ってるよ」
「……確かに」
「後、私もswitchの事なんか、全然わかんないから林堂が行きなよ」
「いや、それ、ムリゲー。イスラムクラスじゃなくても、女子ん家なんかいけるか」
「いや、組むんだよね?」
「……そりゃ、そうだけど」
「今回は、私も付いてってあげるからさ」
僕は唸って、窓の外の住宅街に、目を向けた。
勢いで、ナディアに組むって言ったものの、ハードル高いんだよな、よく考えたら。
女子で、基本、男子禁制のムスリムで、最新式のspと、チャージ切り札マッチに、なれなくちゃならない。
そうだ、他にもたくさん問題あるし、それを全部ナディアに説明してから、もう一度ホントにやるのか、聞いてみよう。
「わかった、僕も行くってなると…… 今日いきなりってわけには」
「聞いてみる…… あ、ちょうど出てきた。ナディアー! じゃ、後でね」
教室から、ヨタヨタランドセルまみれで出てきた、ナディアを見て、僕は仰天した。
前と背中、両手と頭合計5つを持ってる。
「……何やってんだ?」
「林堂か。ジャンケンで負けたから、次の電柱まで運ぶんじゃ……」
「いや、外出るまで、電柱ないぞ?」
「……たしかに!なんぞ、しんどいオモタ……
ジャンケンすると、うち以外みんな、おんなじのん出すけん、いっつも全員に勝つか全員に負けるかなんじゃ。
文句言うたら、偶然言うし。不思議じゃ」
いや、チーミングしてるだろ、佐竹。
「……まあ、ドンマイ。ナディア、Switch来るんだろ? 僕、設置と使い方、説明しに行こうか?」
ナディアが、ボトボトっとランドセルを落として凍りついた。
そのまま、くるりと背中を見せ、ペンギンの様にギクシャクと教室に戻っていく。
ピシャリと扉が閉まり、数秒後。
キャーって女子達の叫び声と、机を叩く音、十連打だドン!という喚き声。
再び、ロボットの様な動きで出てきたナディアが僕に、目を白黒させながら言った。
「ママ……ゲフン、ゲフン……オカンに連絡したら、明日来てもかまわんて……
けんど、家、建て替えるから、三日待ってくれんか」
「ちょっと、何言ってんのか、わかんない」
今夜、次話を投稿します!