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金髪と黒髪の二重奏 ~プロローグ 1~

林堂 凜


 主人公。 小6、男。

 幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。

 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。





ジャスミン・マーカス


アメリカ人。小5。女。


スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。


紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。 



氷室 メグ



小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。




 

 その日は、あいにくの強風だった。



 私立・富田林国際学園。


 大阪東南部、自然豊かな地域に位置する、小・中・高一貫のマンモス校。


 小規模な遊園地並の土地を有する、伝統ある野球強豪校だったが、部内の不祥事により廃部。


 それを韓国系の財閥が買収。


 元から備わっている潤沢な設備と、財力に物を言わせ、全国から破格の待遇で有名選手を集めて、見事に往年の輝きを取り戻す。


 同時に『k-popダンス』『韓国メイク』等、時代の流れを掴んだ学部を創設、多くの女子生徒を獲得することに成功した。


 忠実に日本の教育方針に従い、専門科目以外では、ハングルを用いることもない。


 その姿勢は、文化的な誹謗中傷を免れ、それどころか、『珍しく分かっている連中だ』と、ネットの賛辞を受ける事となった。


 工作員養成機関という裏の顔を知るものは、ごく少数。




 二人は、そこにいた。

 


◇◇◇

 


 繰り返しになるが、九月終盤のその日は、あいにくの強風だった。



 ナイター設備が照らす、一九時に近いグラウンド。


 夕焼けの消えかけた山々に小さくこだまする、部員達のかけ声。

 

 強豪野球部がウリなだけに、第一から第三グラウンドまでが、山地を切り拓いて設置されている。


 白を基調とした、五階建ての校舎が第三グラウンドを挟むようにそびえ立っていた。


 冷え始めた風が吹き抜けていく、その屋上。


 ネズミ返しのある高い金網が囲む、むきだしのアスファルト。

 三角コーンや、それに設置する赤白の仕切りバー、足場や建設資材が、端を縁取るように積まれている。


 校舎内から屋上へ出る為の、重そうなスチールドア。


 何の変哲もない、金属製の取っ手がカチャカチャと音を立て……。

 

 カチリ。


 ピッキングが成功した時特有の、細い金属音が風に噴き散らかされる。

 

 そのノブが、ゆっくりと回った。


 静かに開くドア。屋上側から取り付けられてるチェーンに当たってすぐに止まる。


 数秒して、にゅっと出てきた、ボルトカッター ――大型の金属はさみ―― が金属製の鎖をがっちりくわえた。


 きぃこ きぃこ


 油圧製らしい動きを何度か見せたかと思うと、真っ二つになった輪っかが弾け、だらりとチェーンが地面にわだかまる。


 テキトーに放り投げられた、ボルトカッターが、打ちっ放しのコンクリートで派手な音を立てた。


 制服のスカートから伸びる、真っ白な足が屋上を踏む。


 「サイアク……風つえぇってば、さすがど田舎」


 めんどくさそうに、吐き捨てながら現れた、チェックの制服。

 フリルの襟元を飾る、細いリボン。


 その上に乗った白面と碧眼。それらを縁取る、フレームの細いメガネ。


 風に煽られる肩までの髪、スレンダーな身体を包むミントの香り。

 コーカソイドの美少女の見本。ダルそうな半目と、能面が余計だが。


 「どけってば、まな板……うっわ、風つよ。メグ、生パンなんですケド?」


 後から出てきて、顔を出した途端、長い黒髪が風に踊った。

 あわててひっこみ、またジャスミンを風よけにする、メグ。


 振り向きもせず、バイオリンケースを提げたまま、づかづかと屋上の縁に歩を進める、金髪。


 「……ジュニアアイドル失格じゃん、ソレ? あくまで『生パン風』じゃねえと、個撮(個人撮影)の値段下がるよ?」


 夜目にもつややかな黒髪を風に任せ、こちらも不機嫌な顔で、後に続くメグ。

 細かいチェック模様の制服は、前を行くジャスミンと同じだ。


 手に提げたおしゃれなリュックと、トートバッグ。

 歩きながら取り出した、アーミーグリーンの無骨なポーチが似合わない。

 

 「イマドキ、そこまで情弱な毒親、アンタに合うブラくらいレアっしょ…… レディオ・チェック(通信感度)、こちら『雪女』 <ドクターマリオ>を通過…… この風で、ホントにやるの?」


 メグが、インカムからの声に耳を澄ませてる間も、ジャスミンはヴァイオリンケースから取り出したバレルやストックを、几帳面に地面へ並べ続けた。


 ガンパウダーで所々ヤケドしてる手の甲が、死にかけた夕陽の名残で微かに見えた。


 ナニ、やってんだろ、アタシ。


 風に煽られ、視界を邪魔する自分の髪にも嗤われてるような気がした。


『最後のお願いだ……みんな、銃なんか持つな』


 目頭が熱くなり、思わず吐き捨てた。


 「バカッ」


 「知ってるっての……」


 背後にいたメグが、となりにしゃがみ込む。


 もちろん、ジャスミンを気づかうためじゃない。


 狙撃のためのスポッター・スコープの三脚を開きながら、呟く。


 「旦那様も……このゲームを続けてるアタシ達も……全員、救い難いバカだって」


 ジャスミンは、手慣れた様子でライフルを組み立てながら、そちらを見ずに呟いた。


 「……初めて訊くけど……こんなヨゴレな学園に、営業来た事叩かれねえの? 今撮影してる時代劇、降板させられるぞ」


 メグは、スポッタースコープを覗きながら、向かいの校舎の一点にピントを合わせつつ、しれっと言った。


 「問題ない。いまのところは、爆アゲなガッコだからね……今からそうじゃ無くなるワケだけど、『そんなん知らんかったがな』で通すし」


 ジャスミンは素っ気なく言った。


 「あっそ」


 ホッとしたのを隠すため、必要以上に素っ気なく。





【毎週火・木は更新お休みします】


(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。


毎日深夜0時過ぎ、週五更新を目標にしてます。


宜しくお願いします!


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