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ビリ


全体の登場人物は、下のアドレスへ飛んでいただけると、助かります。


https://ncode.syosetu.com/n7465gz/1/


分からない人物がいたら、恐れ入りますが、飛んだ先で、サイト内検索をして拾って頂ければ、出てきます。


まだ載ってない人物もいるので、順次増やしていきます。


よろしくお願いします。(* .ˬ.))





《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。

 幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。

 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 ジャスミン・マーカス


アメリカ人。小5。女。


スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。

紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。 



氷室 メグ


小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。


ローズ・マーカス


ジャスミンの母。CIA職員。破天荒で、ちゃらんぽらんだが、娘を愛している。





 「座りなさい」


 再び正座した導師…… の静かな声。


 四人は蒼白な顔で、声の主を見つめたまま、素早く正座した。


 一九時過ぎの、バカなやりとりをしていた和室。

 空調以上の冷気と沈黙が、結局、また正座に戻った、みんなの肩にのしかかる。


 こぼれ落ちそうなほど見開いた眼で、畳を見つめるハスマイラさんの、浅い呼吸がうるさい。

 僕も似たようなモンだけど。


 「その、婚姻届け…… 」


 静かな声と視線を向けられたメグが、正座のまま飛び上がる。


 「私なりの、責任のとらせ方のつもりだったが、結局、場をおかしくしてしまった…… 出さなくていい。欲しければ持ってなさい…… ただし」


 リーファ、ナディア、ジャス子とゆっくり視線を移動させていく、導師。

 その順番で、見られた女子達がカタカタ震え出す。


 「私は少し、がっかりした…… 実に残念だ。人前で泣いた記憶など、久しくなかったのだが」


 ヘタすれば、間延びしているように聞こえる声が、僕らを追い詰める。


 そうだ、皆でメグを庇い、さっきまで本気でつぶし合ってたメグとジャス子でさえ、互いに謝り、握手して仲直りしたのに。


 紙切れ一枚で、鬼女達は狂ってしまった。

 醜いったらない、姿をさらし、いい話は台無しになった。


 「とは言え、こんな事になった責任は、私がいらないマネをしたからだ…… ハスマイラ」


 名を呼ばれ、ビクン、と肩を震わせる、褐色ポニテ。おそるおそる上目遣いで視線を合わせた。


 「私は消える。後でどうなったか教えてくれ」


 静かに平伏することで、返事を返した、リーファのボディーガード。


 さっきまでただの四〇男だった導師は、立ち上がって言った。


 「がっかりする内容であれば、凛も消える…… では」


 部屋から出て行く後ろ姿。誰も一言も発しない。

 ハスマイラさんが、顔を上げ、口を開いたのは、玄関のドアが静かに閉められてからだった。


 「……いいッスよ」


 そういいながら、真っ先に畳に手を付き、肩を上下させる。


 ローズさんが正座を崩しながら、天井を仰ぐ。


 「ファック…… 失礼。ああ、もうなんなの? 何だったのよ、アレ?」


 「……凛、オマエが小さい頃から、あんなんだったのかよ? パパのパパ…… 台湾のお祖父ちゃんより、怖かったぞ?」


 リーファが、汗びっしょり、信じられない顔で僕を見る。


 「……怖かったよ。ただ、本気で怒った事は、数えるほどしかない」


 「よく、頭おかしくならなかったな、凛? 怒ったコーチより迫力ある人なんて、ジャス、会ったことないよ」


 僕は苦々しい思いで畳に目を落とす。


「なったよ…… 知ってんだろ」


 病院で起こした僕の発作を思い出したのか、ジャス子もうつむく気配。


 ナディアが怯えたような目で、自分のママを見る。

 ナディアママは、軽く首を振る。


 「凛くんのパパが叱ってくれたでしょ? ママからは何もありません」


 「……メグ?」


 腰が抜けたのか、四つん這いになってる、鈴木さん。

 責めると言うより、同じ体勢で、ガタガタ震えてる娘を気遣っている。


 メグは、懐から婚姻届けを取り出し、震える手で僕に差し出す。


 「……ごめんなさい。メグ、凛のパパ怒らせちゃった…… どうしよう」


 僕は、どう声を掛けていいか分からなかった。


 誰もソレに手を出そうとはしない。

 折りたたまれた、その紙。

 父ちゃんのせいで、今ではババ抜きで言う『ババ』の扱いになった。


 なら、受け取れるのは僕しかいない。


 僕が引き取ると、メグは畳で丸くなって泣き出した。


 「ごめんの」


 眼に涙を浮かべたナディアが、その背を撫でる。

 メグの泣き声が高くなった。


 僕は手許の婚姻届けを見つめた。


 本来なら、破り捨てたいとこだけど…… 父ちゃんが怖くて出来ない。

 そうするのが正しい、って確信が持てないんだ。


 僕は、みんなの方を見上げて言った。


 「これは、父さんに返します」


 皆が頷くのを見てから続けた。


 「もっと大事なコトを話しましょう…… 五代を攫った、例の北朝鮮の連中…… 手がかりはありましたか?」


 ローズさんが、一瞬、懐に手を入れかけてから、苦々しげに金髪をかき上げた。


 「今のところまだよ。嫌な言い方だけど、ソイツらを見つけ出さない限り、コッチは『狙われる立場』のまま」


 ローズさんが、苛立たしげに、むき出しの腕をひっかく。


 「ター…… 公安が本気出してくれないと、難しいわね。ウチ(CIA)から正式な要請が行くのは、まだ先でしょうし」


 僕は天井を軽く見上げる。

 

 だよなあ。

 橘さんや、五代さんが本気出しても、人捜しなら、さすがに日本の警察には及ばないだろうし。

 

 「……身を隠さないといけない流れですよね」


 その時、ぽつりと、リーファが言った。


 「『もっと、大事なコト』……か…… ゴメン」


 不意をつかれた皆が、相棒を見た。


 横座り、畳をみつめたまま、緩くウェーブしたショートボブは呟いた。


 「もっと大事なコトなんか、アタシにはないから…… 訊くね」


 急に不安になるような沈黙。

 相棒の声は掠れて、震えていた。


 「なんで、イチバン付き合いの長いアタシが…… いつでもビリなの?」





(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。


毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。


宜しくお願いします!


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