武士道とは死ぬことと見つけたり
全体の登場人物は、下のアドレスへ飛んでいただけると、助かります。
https://ncode.syosetu.com/n7465gz/1/
分からない人物がいたら、恐れ入りますが、飛んだ先で、サイト内検索をして拾って頂ければ、出てきます。
まだ載ってない人物もいるので、順次増やしていきます。
よろしくお願いします。(* .ˬ.))
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
ジャスミン・マーカス
アメリカ人。小5。女。
スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。
紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
ローズ・マーカス
ジャスミンの母。CIA職員。破天荒で、ちゃらんぽらんだが、娘を愛している。
どうこく、だったっけ。
ローズさんの膝に顔を埋め、こっちにおしりをむけたまま、絶叫するみたいに泣き続けるジャス子。
気を利かせた鈴木さんが窓を閉め、エアコンを『強』にした。
メグのしょぼくれた顔。
リーファの悔しそうな泣き顔。
うつむいたナディアも、顔を歪めている。
娘の頭を撫でながらも、ローズさんの声は厳しかった。
「ハニー、アナタのとった手段は最低…… 林堂くんの身体に傷が残ったら、私達、どう責任をとるの?」
ハ? 何言ってんだ、この人?
ジャス子の大きくなった泣き声が、余計に僕の頭を赤くする。
……何で、ジャス子のせいなんだよ?
そこまで追い詰めた俺が悪いに決まってんじゃんか?
これ以上恥かいてたまるかよ!
口を開こうとした俺を、「よせ」の一言で黙らせ、父ちゃんは優しく言った。
「ジャスミンちゃん、顔を上げて。ちょっと聞いてくれるかな?」
元気よく返事しようとした、ハスマイラさんがフリーズする。
父ちゃんがチラッと視線を向けただけで。
なんでかワカランけど、ありがたい。
さすがにそんな空気読まないマネしたら、リーファが追い出すだろうから。
怯えたようにおずおずと振り返る金髪。
泣きすぎて、顔は真っ赤。
「……自分語りをするつもりはありませんが、みんな聞いて下さい。私は国のために尽くしてきました。でも、それは全くの間違いでした…… ある日、息子は、リーファちゃんを護りたいと言いました。私はうれしかった……」
呼吸まで止め、まつげ一本動かさないハスマイラさんの横、リーファが切れ長の眼を見開いて、口許を覆う。
「『国』などという、抽象的なものに命をかけるくらいなら、愛する誰かの為に死ぬ方がよっぽどいい…… 但し、愛するものを亡くしたときの喪失感は、計り知れない…… 私はコイツに、徹底的な『自己犠牲』と、生き残る術を叩き込みました」
父ちゃんを食い入るように見つめる、みんなの真剣な眼差し。
僕自身も初めて聞く、父ちゃんの当時の気持ち。
ハスマイラさんの眼にも、正気の光が宿り、一言一句聞き逃さないって顔をしてる。
「男女平等主義者達が、なんて言おうと関係ない…… 私は息子にこう言い聞かせてきました。『愛する者の為に死ぬことが、武士の本懐だ。自分が選んだ者の為に死ね』」
思い出した。
ある日、トレーニングが苦しすぎて、泣いてた僕に言ったセリフ。
『武士道とは死ぬことと見つけたり…… 命をかけるものが見つからない、人生はミジメだ』
「……クール」
ハスマイラさんの、感極まった呟き。
冗談じゃない、そんな極端な考え方のお陰で、こんなヘンな人生になったんだっつーの。
そもそも、『死ね』ってナンダヨ。
そこは『生きろ』だろ?
ブツブツいっつもグチってたのも、ついでに思い出した。
……でも。
父ちゃんが、前を向いたまま、出し抜けに言った。
「凛…… オマエその傷、後悔してんのか?」
「まさか」
僕の即答に、ジャス子が眼を見開き、ローズさんが笑顔を浮かべる。
『わかってたわよ』そう顔に、書いてあった。
僕は正座をしなおすと、今度こそ胸を張って、みんなに顔を向ける事が出来た。
恥ずかしくないのかって?
ハズカシイ事はした。
でも…… 間違って無いことも出来た。
間違いはあったけど、全てが失敗じゃ無かったはずだ!
「さっき、みんながメグを庇った時に分かった…… 今はここにいないけど、オリガと店長を含めたコイツラに、命をかけたのは、間違いなんかじゃない」
あぜんとした、女子達の涙に濡れてる顔。
花が咲くように、笑顔になっていく、ママ達の顔。
「なんとなく分かるんだ…… 僕はコイツラ、誰かの為に死ぬ」
ローズさんが、首を振って笑う。
「ファナティックね…… そりゃ、娘もおかしくなるはずだわ」
ため息が聞こえた。
ナディアだ。
この中で、一番冷静なのがコイツらしいって思った。
「また…… そういうとこじゃろ? だから……」
「知らない。愛想が尽きてるならちょうどいいだろ? 勝手にやる。この中で真っ先に死ぬのは俺だ。オマエラじゃねえんだよ」
「もう、エエワ…… やっぱ、凛は凛じゃの」
うんざりしたボヤキに、隣のナディアママが混ぜっ返す。
「あら? 降りるの?」
「……知らんけ」
正気に戻ったらしいハスマイラさんが、げんなりした顔で言った。
「林堂くん…… それ、『六人のうちの誰かと結婚する』って言ってる様なもんッスよ?」
「いや、何でそうなるんですか!?」
せっかく、治まりかけてるのに、ヤメテ!?
父ちゃんの穏やかな声。
「よく言った…… これで、お互い、母さんに殺されずに済むな……」
冷や汗が出た。
冗談には聞こえなかった。
また、思い出した。
『女の子に、いたずらしたら、殺すで?』
母さんに、低学年の頃、言われました。
確かに、言われました。
いや…… 僕の行為、万死に値するのでは?
鈴木さんが、流れる涙をハンカチで拭きながら、微笑む。
「メグ、もういいわね? ぼっちだったアナタに、こんな素敵なお友達が出来るなんて…… みんなに言うことがあるでしょ?」
「……ごめんなさい」
「ハニー、ぼっちだったアナタは、何て言うべきかしら?」
「……悪かったよ」
お互いのママに促され、のろのろと這いよりあって、握手する二人。
どこか、ホッとしてる二人の顔。
皆がもらす笑顔。
僕はホントにうれしかった。
隣から、鼻をすする音が聞こえ、びっくりして振り向く。
メガネを外した父ちゃんが泣いてる。
僕にとっては、地球が反対に回り出すくらいの事件だ。
その顔に気付いてか、みんなが笑う気配。
なんだか心が温かくなる。
何もかもが……。
「さっき、オマエに書かせたコレ…… 使わなくて済みそうや」
懐から取り出した、安物の茶封筒。
書き損ねた宛先が書いてあるから、捨てるつもりのヤツだったみたいだ。雑だなあ。
「……あ、さっき玄関で、あわてて名前書かされたアレ? PTA役員かなんかの用紙だと……」
封筒から、取り出した紙を広げながら笑う。
「アホか、なんでこんな時に……」
そう言って、笑いをとるためか、みんなに向けて広げた紙。
世界は笑顔のまま、動きを止める。
照れ笑いの四〇男が、かざした紙は。
僕の名前と、その他、必要事項の書かれた……。
『婚姻届』
破り捨てようと手をかけながら、ホッとしたように、世界一のKYは笑った。
「責任とらすつもりやったんやけど…… ワシの先走りやったな、ハズカシいワ」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





